物流コストとは、梱包や保管、配送といった商品を顧客のもとに届ける際にかかる費用のことです。ECサイトを運営するにあたって、利益の出る送料負担を実現するには、物流コストの削減が欠かせません。この記事では、ECサイト向けに送料を削減する方法やコスト削減に成功した企業の事例を紹介します。
配送コストを削減するアイデア10選

1. 配送会社と法人契約を結ぶ
配送会社と法人契約を結ぶと、割引料金でサービスを利用できたり、一括割引を受けられたりするため、送料削減や物流コスト削減に役立ちます。
法人契約を行う際は、自社のビジネスモデルに適した配送会社を選ぶことが重要です。たとえば、ヤマト運輸では法人が利用できるウェブサービス「ヤマトビジネスメンバーズ」を提供しています。サービスを活用すれば、送り状の作成や請求書の確認、集荷依頼などをオンライン上でスムーズに行えるため、人件費を削減できるでしょう。日本郵政の法人サービスでは、ゆうパックで年間100個以上の荷物、または集荷で年間200個以上の荷物を発送する場合に法人割引が適用されます。
こうしたサービス内容の詳細のほか、契約前には次の項目を確認しましょう。
- 料金体系
- コストパフォーマンス
- 配送スピード
- 信頼性
- カスタマーサービスの質
加えて、条件面での交渉も可能な限り行い、よりよい条件で契約を結べるように働きかけることも大切です。たとえば、依頼可能な出荷数や事業の売上金額などの具体的な数値を交渉材料にすれば、値引きの交渉がしやすくなります。まだ売り上げが大きくない場合は、今後見込んでいる出荷数を交渉材料にしましょう。なるべく好条件で法人契約を結ぶことで、より大きな物流コストの削減を実現できます。
2. 適切な梱包材を選ぶ
物流コストを削減するには、適切な梱包材を選ぶ必要があります。配送に使用する梱包材のサイズが大きければ大きいほど、配送料金が高くなるためです。商品のサイズに合わせて、最小限の梱包材を使用しましょう。
また、重量を軽減できる素材を使用することも物流コストの削減に効果的です。普段使っているダンボールより軽いものはないか、代用できる梱包資材はないかを調べてみましょう。ダンボール以外でよく使われている梱包材には、ポリメーラーやクッション封筒、厚紙封筒などがあります。
軽量で安価な梱包材を選ぶことは、送料を抑える方法のひとつです。しかし、梱包材の耐久性や保護能力に不安がある場合は、使用を控えたほうが無難です。顧客のもとに商品を無事に届けることを最優先にしましょう。
3. 在庫を抱え過ぎないようにする
在庫を保管するために倉庫を借りている場合は、在庫管理費がかかります。在庫を抱え過ぎないように意識して、無駄なスペースを減らすことも物流コストを削減する効果的なアイデアです。
在庫を抱え過ぎないようにするには、物流代行業者の活用を考えるとよいでしょう。代行業者の多くは商品数や商品を保管するラック数・スペースに基づいて保管料を設定しているため、不必要なスペースを減らすことができ物流コストを抑えられます。
ECサイトの運用で利用できる物流代行業者には以下のような業者があります。
スクロール360
通販大手のノウハウを活かし、化粧品や健康食品など幅広い商材に対応しています。高品質な梱包と顧客体験を重視した「おもてなし物流」が特長です。ライトプランは、出荷1件あたり399円から利用できます。
オープンロジ
常温から冷凍まで対応できるため、食品にも対応しています。小ロット・従量課金制を採用しており、初期費用と固定費をかけずに利用できます。全国70拠点から最適な倉庫を選べるため、配送コストを抑えやすいです。
日新ECパートナーズ
大阪を拠点に、全国配送を短納期・低コストで提供しています。出荷・人件費などをまとめて月790円~の定額制で利用でき、全工程を代行するため運用がシンプルで効率的になるため、中小事業者に好評です。
STOCKCREW(ストッククルー)
初期費用・固定費ゼロで始めやすく、小ロットにも対応しています。アプリケーションやソフトウェアと連携するAPI連携機能があるため、ネットショップの発送業務を自動化できる点も特長です。DMサイズ260円~と、業界でも競争力のある価格設定が魅力です。
4. ドロップシッピングを活用する
ドロップシッピングとは、商品が売れた際にメーカーや卸売業者が購入者に直接発送するサービスです。ドロップシッピングを利用すれば、事業者は商品を在庫として保有する必要がなくなります。倉庫のレンタル代といった在庫管理にかかっていたコストを削減できるでしょう。事前に商品を仕入れる必要もなくなるため、在庫を確保するためのコストもかかりません。
さらに、ドロップシッピングでは業者が購入者に直接発送するという仕組みのため、自社倉庫を経由させずに商品の発送が可能です。商品を自社に配送する際の配送料と、自社から購入者に届ける際の配送料が不要となるため、配送にかかる物流コストの削減につながります。ドロップシッピング業者に依頼する際は、日本語で利用できるサービスを選びましょう。
5. 配送ポリシーを作成する
配送ポリシーとは、商品の配送に関する規定を詳しくまとめたものです。商品の購入前に配送に関するルールや条件を事前に共有しておくことで、返品や交換を未然に防げるため、不要な配送コストの削減につながります。
配送ポリシーには、以下の項目を記載しましょう。
- 配送コスト
- 発送予定日
- 返品条件
- 問題発生時の対応方法
特に返品ポリシーでは、細かい部分までルールを定めるようにする必要があります。ほかのビジネスと比較して、ECサイトでは返品が多い傾向があるためです。
購入者のなかには、届いた商品が自分の期待していたものではないといった理由で、無料で返品できると考えている人もいます。このような購入者都合の返品であっても、満足度を維持するために、販売者が返品に必要なコストを負担しなければならないケースも少なくありません。こうした事態に対応するためには、配送ポリシーに「お客様都合による返品の場合、送料はお客様に負担していただきます」などと記載すると有効です。購入者都合の返品を減らせるだけでなく、返品に必要なコストを削減できます。
6. 真空パック機(真空包装機)を使用する
真空パック機は、物流コストを効果的に削減できるアイデアのひとつです。真空パック機は、内部の空気を抜いて真空にできる機械です。配送する商品や荷物の体積を減らせるため、通常より小さめの梱包材で配送できるようになり、物流コストを抑えられます。
梱包時に体積が大きくなりやすいアパレル商品には、特に有効な手段です。たとえば、Tシャツ5枚を最小サイズのダンボールに詰めてゆうパックで配送する場合、最低でも820円の送料がかかります。しかし、真空パック機で体積を減らした場合は、ダンボールではなくレターパックに入るため、全国一律で430円、厚さが3cmを超える、または対面での受取を希望する場合は600円で配送できるようになります。
7. 安価な配送業者に依頼する
ECサイトの物流コストにおいて、大きな割合を占めているのが送料です。日本ロジスティクスシステム協会が実施した「2023 年度 物流コスト調査報告書【概要版】」によると、物流コストのうち、輸送費が57.6%と半分以上を占めていることが明らかとなりました。
送料を抑える方法として効果的なのが、配送料が安い業者に依頼することです。ECサイトの運営で広く利用されている配送会社は「日本郵便」「ヤマト運輸」「佐川急便」で、それぞれ料金体系が異なります。一例として、各社で利用できる最小サイズの60サイズの荷物(縦・横・高さの合計が60cm以下)を発送する際の料金を紹介します。
- 日本郵便:820~1,750円
- ヤマト運輸:940~2,340円
- 佐川急便:910~2,552円
取り扱い可能な荷物のサイズや重量も異なり、一定のサイズを超えるとほかの配送会社が安くなる場合も考えられます。各社の送料比較を行い、最も配送料を安く抑えられるのはどの業者なのかを見極めましょう。
8. 商品ごとに配送方法・配送業者を変更する
商品の特性に応じて配送方法を変える戦略も、物流コストを削減できる有効なアイデアです。たとえば、保冷が必要な60サイズの商品を配送する場合、ヤマト運輸が1,215円、佐川急便が1,185円、日本郵政のゆうパックが1,045円から利用できるため、ゆうパックを選ぶとよいでしょう(2025年3月現在の情報)。一方、化粧品などの60サイズより小さな商品を配送する場合は、ヤマト運輸の宅急便コンパクトであれば720円から利用できるため、ゆうパックよりコストを抑えられます。
このように、配送する商品ごとに適した配送方法・配送業者を利用することで、配送コストを削減できます。
9. 店頭受取を活用する
実店舗を運営している場合は店頭での受取サービスを導入することで、配送にかかる費用を削減できます。オンラインで購入した商品を購入者が来店して受け取る形式にできるため、配送業者を利用する必要がなくなります。梱包資材の費用や送料といったコストが不要となり、物流全体にかかる負担を抑えることができます。実店舗がない場合であっても、配送業者の営業所やコンビニで受け取れるようにすれば、一つひとつの商品を顧客の自宅まで届ける必要がなくなり、送料を抑えやすくなるでしょう。
10. 保税倉庫を利用する
越境ECや海外取引の多い場合は、保税倉庫の活用も物流コストの削減に役立ちます。保税倉庫とは、通関手続きが完了していない外国貨物を保管する施設です。関税や消費税の支払いを一時的に保留できるため、保管中の経費を抑えられます。
また、保税倉庫から直接出荷先へ搬入することで、移動距離や荷扱いの手間が減る点も配送コストの削減につながります。不良品や規制変更による返品も、国内通関前であればそのまま返送できるため、無駄な輸送費の発生を防げるでしょう。
保税倉庫の利用を依頼できる業者としては、東日本倉庫やJPロジスティクス、ユニエツクスNCTなどが挙げられます。
配送コスト削減の成功事例

プラス株式会社
プラス株式会社は、グループ内の調達業務と物流センターを統合して物流体制の効率化を図りました。従来は複数拠点で分散していた機能を6拠点に集約し、物流コストの削減に成功しています。会員制サービスにおいては、配送希望日をあらかじめ指定する仕組みを導入し、不要な配送回数を減らすことで、配送コストの削減を実現しました。
出荷拠点の見直しや配送日の指定サービスなどの導入は、EC事業においても可能です。配送コストを抑えるために検討してみましょう。
ユアサ商事株式会社
ユアサ商事株式会社は、配送効率の改善を目的としてルート最適化システム「Loogia(ルージア)」を導入し、自社便の積載率を向上させました。以前は固定ルートで配送していたため効率の悪さが課題でしたが、出荷量や届け先に応じて毎日のルートを見直した結果、積載効率が10%アップしました。路線便の利用を減らし、年間の運賃を10%削減する成果を上げています。
EC事業においても、配送ルートを見直すことが送料の削減につながる可能性があります。たとえば、顧客が多い地域を把握し、周辺に拠点を配置するなどの取り組みが考えられます。
株式会社ワークマン
株式会社ワークマンは、店舗受取を活用した通販サービス「Click & Collect(クリックアンドクレクト)」を導入し、宅配便の利用を抑えることで配送コストの削減に成功しています。ネット注文の約7割が店舗に在庫があり、店舗受取であれば最短3時間で顧客が商品を受け取れる仕組みを構築できる点も導入の後押しとなりました。また、商品受取のために来店した顧客のリピート率の高さが売上アップにもつながっています。ほかにも、実店舗では試着やサイズ変更が可能です。
実店舗の強みを活かして競合のECサイトとの差別化を図り、送料を削減できる方法として株式会社ワークマンの施策は参考になるでしょう。
株式会社ドーム
アンダーアーマー製品の国内総代理店である株式会社ドームは、配送コストの上昇に対応するためにヤマト運輸と連携し物流体制を見直しました。小売・量販店向けの大規模配送と、EC向けの消費者の自宅への配送を一括して委託することで、年間の配送コストを約30%削減しました。非対面受取サービス「EAZY(イージー)」やネコポスの活用によって、再配達の削減と顧客満足度の向上にも成功しました。
株式会社ドームの施策は、ECサイトの送料を抑えるうえで有効なモデルといえるでしょう。業者と消費者で委託先が異なる場合は、一括委託を検討する価値があります。
まとめ
物流コストを削減するためには、配送会社との法人契約や適切な梱包材の選択、適切な在庫管理、配送ポリシーの作成、真空パック機の利用が効果的です。また、ドロップシッピングや物流代行業者の活用もコスト削減に役立つでしょう。
特に配送ポリシーの作成は、返品に必要な送料負担を減らせるだけでなく、消費者に信頼感を与える要素にもなります。Shopifyでは、ECサイト上に配送ポリシーを簡単に作成できます。無料体験も実施していますので、お気軽にお試しください。
よくある質問
送料負けとは?
送料負けとは、フリマアプリなどに商品を販売した際に、送料や梱包コストが売り上げより高くなり、損失が発生する状況を指します。たとえば、大きな商品を販売する場合、梱包サイズによって配送料が増加し、販売価格ではカバーできない場合があります。
物流コストを下げるには?
- 配送会社と法人契約を結ぶ
- 適切な梱包材を選ぶ
- 在庫を抱え過ぎないようにする
- 真空パック機を使用する
- 店頭受取を活用する
- 保税倉庫を利用する
- 拠点を集約する
- 物流代行業者を活用する
物流コストが高い原因は?
- 燃料費の上昇
- 人件費の増加
- ドライバー不足
文:Yukihiro Kawata