物流コストとは、梱包や保管、配送といった商品を顧客のもとに届ける際にかかる費用のことです。ECサイトを運営するにあたって、利益のでる送料負担を考えるなどの取り組みを行い、物流コストを削減することは重要です。この記事では、ECサイト向けの物流コスト削減アイデアやコスト削減に成功した企業の事例などを紹介します。
物流コストを削減するアイデア8つ
配送会社と法人契約を結ぶ
配送会社と法人契約を結ぶことは、配送コストを抑えるための有効な手段です。法人契約を結ぶことで、割引料金や一括割引を受けることができます。
法人契約を行う際は、自社のビジネスモデルに適した配送会社を選ぶことが重要です。ポイントは、コストパフォーマンスや配送スピード、信頼性、カスタマーサービスの質などです。これらのポイントに加えて、各社のサービス内容と料金体系も詳しく調べましょう。
加えて、条件面での交渉も可能な限り行い、よりよい条件で契約を結べるように働きかけることも大切です。たとえば、依頼可能な出荷数や事業の売上金額などの具体的な数値を交渉材料にすることで、値引きの交渉がしやすくなります。まだ売り上げが大きくない場合は、今後見込んでいる出荷数を交渉材料にしましょう。なるべく好条件で法人契約を結ぶことで、より大きな物流コストの削減を実現できます。
適切な梱包材を選ぶ
物流コストを削減するには、適切な梱包材を選ぶ必要があります。配送に使用する梱包材のサイズが大きい場合は、配送料金が高くなりやすいため、商品のサイズに合わせて最小限の梱包材を使用しましょう。
たとえば、小さい荷物を送るときに大きめのダンボールを使うと、余計な送料を支払うことになってしまいます。可能であれば、ダンボールの代わりにポリメーラーやパッド入りの封筒など、小さな梱包資材を使いましょう。梱包材と商品の間に余計な空間が生まれなくなり、送料の節約につながります。
また、重量を軽減できる素材を使用することも物流コストの削減に効果的です。普段使っているダンボールより軽いものはないか、代用できる梱包資材はないかを調べてみましょう。
このように、軽量で安価な梱包材を選ぶことは、物流コストを削減する有効なアイデアのひとつです。しかし、梱包材の耐久性や保護能力に不安がある場合は、使用を控えた方が無難です。顧客のもとに商品を無事に届けることを最優先にしましょう。
在庫を抱え過ぎないようにする
在庫を保管するために、倉庫などを借りている場合は、在庫管理費がかかります。在庫を抱え過ぎないように意識して、無駄なスペースを減らすことも物流コストを削減する効果的なアイデアです。
在庫を抱え過ぎないためには、物流代行業者の活用を考えるとよいでしょう。代行業者は、保管する商品の点数に基づいて料金を設定しており、不必要なスペースを減らすことで物流コストを抑えられます。代行業者を利用する際は、保管スペースに余剰がないか定期的に確認し、契約内容を見直すことも大切です。
さらに、倉庫の賃借料を抑えるために、土地代が比較的安い郊外にある倉庫を利用するのもひとつの手です。倉庫内で機械を使っている場合は、機械の購入費や維持費なども見直すことで、在庫管理にかかる費用を最小限に抑えられるでしょう。
ドロップシッピングを活用する
ドロップシッピングとは、商品が売れた際にメーカーや卸売業者が購入者に直接発送するサービスです。ドロップシッピングを利用することで、事業者は商品を在庫として保有する必要がなくなるため、在庫管理にかかっていたコストを削減できます。事前に商品を仕入れる必要もないので、在庫を確保するためのコストもかかりません。
さらに、ドロップシッピングでは業者が購入者に直接発送するという仕組みのため、商品を自社倉庫を経由させる必要がなくなります。商品を自社に配送する際の配送料と、自社から購入者に届ける際の配送料を削減できるので、配送コストの削減にもつながります。
配送ポリシーを作成する
配送ポリシーの作成は、間接的に物流コストの削減につながります。配送ポリシーとは、商品の配送に関する規定を詳しくまとめたものです。配送ポリシーには、以下の項目を記載しましょう。
- 配送コスト
- 配送にかかる予定日数
- 返品条件
- 問題発生時の対応方法
特に返品ポリシーでは、細かい部分までルールを定めるようにしましょう。他のビジネスと比較して、ECサイトでは返品が多い傾向があるためです。
購入者のなかには、届いた商品が自分の期待していたものではないといった理由で、無料で返品できると考えている人もいます。このような購入者都合の返品であっても、満足度を維持するために、販売者が返品に必要なコストを負担しなければならないことも多いでしょう。そこで、配送ポリシーに「お客様都合による返品の場合、送料はお客様に負担していただきます」などと記載することで、購入者都合の返品を減らせるだけでなく、返品に必要なコストを削減できます。
真空パック機(真空包装機)を使用する
真空パック機は、物流コストを効果的に削減できる画期的なアイデアです。真空パック機とは、内部の空気を抜いて真空にできる機械のことです。配送する商品や荷物の体積を減らすことで、通常より小さめの梱包材で配送できるので、コストを抑えられます。
特に、梱包時に体積が大きくなりやすいアパレル製品は、真空パック機で空気を抜くことで、保管や配送時に必要なスペースを大きく減らせます。たとえば、Tシャツ5枚をダンボールに詰め、ゆうパックで配送する場合、最低820円の送料がかかります。しかし、真空パック機で体積を減らした場合は、ダンボールではなくレターパックに入るので、全国一律で370円で配送できるようになります。
ただし、真空パック機を導入するにあたって、初期費用がかかる点には注意しましょう。加えて、操作方法の習得に時間がかかること、複数人で使用する場合はマニュアル作成が必要になる可能性があります。初期費用や使う労力を考慮しても、長期的に見れば物流コストの削減につながるため、費用対効果は高いといえるでしょう。
安価な配送業者に依頼する
ECサイトの物流コストにおいて、大きな割合を占めているのが送料です。送料を抑える方法として効果的なのが、配送料が安い業者に依頼することです。
ECサイトの運営で広く利用されている配送会社は「日本郵便」「ヤマト運輸」「佐川急便」で、それぞれ料金体系が異なります。取り扱い可能な荷物のサイズや重量も異なり、一定のサイズを超えると他の配送会社が安くなる場合も考えられます。各社の送料比較を行い、最も配送料を安く抑えられるのはどの会社なのかを見極めましょう。
商品ごとに配送方法・配送業者を変更する
商品の特性に応じて配送方法を変える戦略も、物流コストを削減するための効果的なアイデアです。たとえば、保冷が必要な商品を配送する場合は佐川急便のクール便、化粧品を配送する場合はヤマト運輸の宅急便コンパクトを利用するなどが考えられます。
このように、配送する商品ごとに適した配送方法、配送業者を利用することで、配送コストを削減できます。
物流コスト削減の成功事例
企業が実際に物流コストの削減に成功した事例として、上記3つを紹介します。参考になる取り組みがあれば、積極的に取り入れてみましょう。
保税倉庫を利用する
保税倉庫の利用により、物流コストの大幅な削減に成功した企業があります。保税倉庫とは、通関手続きが完了していない外国貨物を保管する施設で、関税や消費税が一時的に保留されるため、保管中の経費を抑えることが可能です。
実際、国際物流に携わる企業が保税倉庫を導入し、必要なときに必要な量だけ輸送する方式を採用した結果、年間約1,000万円の輸送コスト削減を実現しています。海外に発送することが多い場合は、保税倉庫の利用を検討してみましょう。
拠点を集約する
物流拠点を集約させることで、コストを削減できる場合があります。ある機械メーカーは、5つの物流拠点を3つにまとめることで、倉庫の賃料や人件費、管理費など、合計で20%のコスト削減に成功しました。
ただし、場合によっては配送距離が長くなる可能性があるため、あらかじめシミュレーションを行い、適切な拠点の数と場所を十分に検討することが重要です。
アウトソーシングを活用する
物流業務を外部に委託する「アウトソーシング」を活用することで、物流コストを削減できた企業もあります。社内のスタッフが担当していた配送や在庫管理などの業務を、専門のノウハウを持つ外部の業者に委託することで、必要な人員を減らすことができ、コスト削減につながったようです。
ただし、アウトソーシング自体にもコストがかかるので、業者に委託する前にコストパフォーマンスを検討しておくことが重要です。
まとめ
物流コストを削減するためには、配送会社との法人契約や適切な梱包材の選択、適切な在庫管理、配送ポリシーの作成、真空パック機の利用が効果的です。また、物流拠点の集約やアウトソーシングの活用もコスト削減に役立つでしょう。
特に配送ポリシーの作成は、返品に必要な送料負担を減らせるだけでなく、消費者に信頼感を与える要素にもなります。Shopifyでは、ECサイト上に配送ポリシーを簡単に作成できるので、ぜひご活用ください。無料体験も実施中です。
よくある質問
送料負けとは?
送料負けとは、フリマアプリなどに商品を販売した際に、送料や梱包コストが売り上げより高くなり、結果として損失が発生する状況のことです。たとえば、大きな商品を販売する場合、梱包サイズによって配送料が増加し、販売価格ではカバーできない場合があります。
物流コストを下げるには?
- 配送会社と法人契約を結ぶ
- 適切な梱包材を選ぶ
- 在庫を抱え過ぎないようにする
- 配送ポリシーを作成する
- 真空パック機を使用する
- 物流コストを見直す
- 拠点を集約する
- アウトソーシングを活用する
物流コストを下げるには、上記の取り組みが効果的です。いずれかひとつでも取り入れることで、物流コストの削減につながる可能性があるので、積極的に取り組みましょう。
物流コストが高い原因は?
- 燃料費の上昇
- 人件費の増加
- ドライバー不足
- 顧客ニーズの多様化
文:Yukihiro Kawata