ネットショップで買い物をする際、買い物客はその製品が自分の生活にどうフィットするかを知りたいと考えます。「このソファをリビングに置いたらどう見える?」、「この口紅は私の肌の色に合う?」、「このドレスを着たらどんな感じになる?」などです。
従来は、これらの答えをオンラインで伝えることは困難でした。静止画や説明文では限界があります。しかし、AR(拡張現実)を利用すれば、買い物客はスマートフォンのカメラを使って製品の3Dモデルを自宅のリビングに仮想的に配置することができます。ARを使用すれば、製品のサイズやスタイルが適切かどうかを確認できます。また、ARは美容やファッション製品にも利用でき、口紅などのアイテムを自分の顔に仮想的に配置することができます。コロナ禍によって小売業がオンライン化した今、これらの体験はますます魅力的になっています。
「これは、長いあいだEコマースにあった明らかな問題点を解決するものです」と、ShopifyのShopアプリAR担当プロダクトリードであるラス・マッシュマイヤーは言います。彼は、企業がAR体験をシームレスに店舗に追加できるよう支援しています。
いまや、こうした製品を自分の顔や自宅、環境、体で実際に体験できる段階に入りつつあります。これは、実際に店舗を訪れていたときの体験に戻るようなものです。
ラス・マッシュマイヤー
「今では、ショールームでソファを見るだけではなく、自宅のリビングにそれを置いた様子を見ることができるので、ずっと良い体験になりました。」
ブランドがARで成功を収める方法
製品を3Dで表示できることは、コンバージョン率を大きく向上させます。ファッションブランドのRebecca Minkofが3Dモデルを試したところ、以下のことが分かりました。
- 買い物客が3Dで商品に触れたあと、商品をカートに入れる可能性が44%も高くなりました。
- 3Dで商品に触れた買い物客は、注文をする可能性が27%も高くなりました。
- ARで商品に触れた訪問者は、注文をする可能性が65%も高くなりました。
ARは、その商品が自分のライフスタイルにどうフィットするかを正確に確認できるようにするだけでなく、非常に実用的なツールでもあります。たとえばGunners Kennelsの犬用ケージ(英語記事)のような大型商品の場合、ARを使うことで、ペットや自宅に適したサイズかどうかを、仮想的に部屋に配置して確認できます。
GunnersがARを追加した際には、以下のような成果がありました。
- カートのコンバージョン率が3%向上
- 注文のコンバージョン率が40%向上
- 返品率が5%減少
コンバージョン率の向上と返品率の低下が組み合わさることで、収益の増加につながります。
ラスはまた、ブラウザでのショッピングからモバイルアプリでのショッピングへの移行が、ARのような体験を容易に処理できる、より高度なコンピューティング能力をもたらすと指摘しています。
この技術は非常に新しいもののように感じられますが、AR体験を作成するためのツールはすぐに利用できます。
ARトレンドを後押しする要因
変化するショッピング習慣と新たな技術の融合により、ARは特に適切で魅力的なEコマースツールとなっています。
コロナ禍により自宅でのショッピングが一般的に
以前は、ショッピングといえば店舗に行って、試着したり、サイズを測ったり、少なくとも商品を間近で見ることを意味していました。
しかし、コロナ禍のあいだにショッピングはオンラインや店頭受け取りに大きくシフトし、画像や説明文だけで購入する品を評価しなければならなくなりました。対面でのショッピングが可能になってからも、試着室が閉鎖されたり、化粧品を試すことができなくなったりなど、状況は以前とは異なりました。

ここで、ARがそのギャップを埋めることができます。たとえば、高級ゴミ箱メーカーのSimplehumanのモバイルサイトでは、クリックするだけで商品を自宅に配置した様子を見ることができます。どんな感じになるかと推測する必要はなく、ゴミ箱のようなシンプルなアイテムが自宅のインテリアにどうマッチするかが明確にわかります。
新しい世代の買い物客
最近のレポートによると、Z世代が主に利用するスナップチャットのユーザーの93%が、ARを利用してショッピングすることに興味を持っていることがわかっています。また、スナップチャットユーザーは非ユーザーに比べて、ARを使ってメイクや服を試す可能性が1.6倍高くなっています。
スナップチャットは、ARの利用をサポートするプラットフォームとしてARの普及に経済的な利害関係がありますが、ブランドにとっても証明されたコンバージョンの向上要因でもあります。
「この世代は、技術だけでなく、スマートフォンとも共に育ってきた世代です。人々は、より迅速に意思決定を行い、購入するものや生活に取り入れるものをより良く選ぶ上で、ARがいかに効果的であるかに気づき始めたところだと思います。」とラスは言います。
技術の利用が容易に
3DレンダリングやARを自分の店舗に追加することは、複雑そうに見えますが、実は非常に簡単になりました。最初のステップは、3Dモデルを作成することです。これにより、ARを利用する前からコンバージョンを向上させることができます。
サム・グッドウィンとリチャード・ディーンがMYPadLを立ち上げたのは、カスタマイズされた「バンズ」作りに特化するためでした。ピックルボール・パドル用のシリコンバンドがあれば、どれが自分に合うかをすぐに見分けることができます。ブランドのウェブサイトでは、バンズの3Dモデルをカスタマイズできるので、どのような製品になるかを正確に知ることができます。

サムとリチャードは3Dモデルが必要だと分かっていましたが、2人ともそれを作成する専門知識はありませんでした。しかし幸いなことに、Shopifyのコアテーマは3Dモデルを表示できる機能が付いています。静止画像と同じように、3Dモデルのファイルをアップロードするだけです。カスタムテーマの場合は、オプションを追加できます。モデルの作成もますます簡単になっています。
「それが私たちにとって大きな心配事でした」とサムは言います。「私はウェブサイトの構築はできないし、リチャードもできません。そこで、助けを求めました。」
彼らはShopify App Storeを使って、3DモデリングとARに特化したAngle 3D Configurator(英語のみ)を見つけ、3Dモデル作成プロセスに活用しました。また、Shopify Experts(英語のみ)を検索して、助けてくれる専門家を見つけることもできます。そうした助けによって、リチャードとサムは技術的な専門知識がなくてもカスタマイズ可能な3Dモデルをサイトに追加することができました。
3Dモデルの準備にはある程度の投資が必要ですが、ラスによると、そのコストはかつての数千ドルから数百ドルに下がってきています。
サムは、3Dモデルがコンバージョン率にも影響を与えたと言います。
「リチャードも同じ意見だと思いますが、3Dモデルのコンポーネントは効果的です。汎用的なものではありません」と彼は言います。
MYPadLの次のステップは、その3DモデルをARアプリケーションで使用することです。Shopifyには、それに対応するAR機能(英語記事)もあります。始めたばかりの場合は、まずコア製品に焦点を当て、その影響を測定し、そこから拡大するのが理にかなっています。
「現時点では、その投資収益率は疑う余地がなく、販売者にとっても購入者にとっても非常に魅力的です」とラスは言います。
ECサイトの拡張現実(AR)に関するよくある質問
拡張現実はEコマースでどのように使用されていますか?
拡張現実(AR)は、よりインタラクティブで没入感のあるショッピング体験を顧客に提供するために、Eコマースで使用されています。たとえば、多くの小売店がAR技術を利用して、購入前に衣服やアクセサリーを仮想的に「試着」できるようにしています。同様に、ARは店舗や製品の仮想ツアーを提供するためにも使用されます。ARは、製品情報やチュートリアルを提供したり、インタラクティブな広告やマーケティング資料を作成したりするためにも利用できます。
拡張現実技術はEコマースにおいて効果的なツールですか?
はい、拡張現実技術はEコマースにおいて効果的なツールです。AR技術を使用することで、買い物客は製品をさまざまな角度や視点から視覚化することができます。これにより、購入に関してより情報に基づいた決定を下すことができるようになります。さらに、ARは、衣服を仮想的に試着したり、家具が居住空間に配置した様子を視覚化したりすることで、より没入感のあるショッピング体験を提供することができます。この技術は、顧客体験を向上させ、コンバージョンを増加させるために使用できます。
拡張現実ショッピングとは何ですか?
拡張現実ショッピングは、物理的な世界と仮想的な世界を組み合わせて、消費者に向けて強化されたショッピング体験を創出する新しい技術です。これにより、買い物客は物理的な環境に製品を仮想的に配置して、アイテムの視覚化、操作、購入ができ、家にいながらショッピングできるようになります。この技術は、顧客のエンゲージメントと満足度を向上させる没入型のショッピング体験を作成するために使用されます。
仮想現実とは何ですか?Eコマースでどのように使用されていますか?
仮想現実(VR)は、実世界の環境をシミュレートするインタラクティブなコンピュータ生成体験です。これは、Eコマース顧客のために没入型でインタラクティブ、かつリアルな体験を作成するために使用されます。VR技術は、顧客が店舗を仮想的に探索したり、製品を閲覧・比較したり、アイテムをカスタマイズしたり、購入前に製品の仮想ツアーを体験したりするために利用できます。また、仮想ショールームやインタラクティブな製品デモを作成するためにも使用されます。顧客がより没入感のある方法で製品に触れることができるようにすることで、Wコマース企業はより魅力的でパーソナライズされたショッピング体験を提供できます。