多様な働き方が実現している今、自宅でお金を稼ぐ方法の1つとして、自分の好きなことを仕事にできるハンドメイド副業に注目が集まっています。一方で、ハンドメイド副業で利益をあげるために、何から始めるべきか分からない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ハンドメイド副業の始め方を9つのステップで解説しています。ぜひ参考にしてください。
ハンドメイド副業の始め方

1. 市場調査を行う
市場調査とは、企業が商品・サービスを提供する業界に関する情報を収集・分析することです。ビジネスプラン・マーケティング戦略の策定に加え、ブランディング・価格設定にも役立たせることができます。具体的には以下を分析しましょう。
- 顧客ニーズ:顧客がサービスや商品に何を求めているのかを分析します。購買意欲を掻き立て、売り上げや顧客満足度をアップさせるうえで欠かせない情報です。
- 競合他社のビジネスモデル:競合調査を通して自社と競合他社を比較し、事業の競合優位性を確立できるポイントを見極めます。顧客に選ばれる商品・サービスの開発・提供に大いに役立ちます。
これらを把握すれば、新たな市場機会や顧客層の発見、ハンドメイド商品販売を開始する際のリスク軽減にも役立ちます。
また、市場調査で得た情報をもとにペルソナ設定も行いましょう。ターゲットの年齢・性別だけでなく、性格や価値観などを細かく分析することは、他社との差別化を図り顧客の価値観に寄り添ったマーケティング戦略を練るうえで欠かせません。
2. 商品をデザインする
市場調査で得た情報やペルソナ設定をもとに、商品をデザインしましょう。ハンドメイドキャンドル・アクセサリー・お菓子などハンドメイドで売れるものは多々ありますが、いずれもデザインする際に意識するポイントは共通しています。
- 商品の強みを決める:見た目・商品の機能性など、商品の何を強みにするのか、顧客のニーズに合わせて決めていきましょう。
- 素材選び:コスト面を考慮しつつ、アプローチしたい層に最適な素材を選びましょう。例えば環境意識が高い顧客にアプローチしたい場合は、サステナブルな素材を用いることが考えられます。
- 商品のバリエーション:多くの方に選んでもらえる商品にすべく、様々な色・サイズを取り揃えましょう。
なお、商品によっては製造・販売するうえで許認可等の取得が必要となります。事前によく確認しましょう。例えば手作り石鹸を製造・販売する場合、化粧品製造販売業許可を受けた上で、薬機法に基づく適切な表示をしておく必要があります。
3. 商品を販売する場所を決める
ハンドメイド商品を販売する方法は、オンライン・対面・委託の3種類があります。ハンドメイド商品の販売は、オンライン販売を含めたマルチチャネル販売が主流のため、コスト面を踏まえつつ、可能な限り多くのプラットフォームで出品するとよいでしょう。以下では、オンライン販売のプラットフォームを4つ紹介します。
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ハンドメイド販売サイト:ハンドメイド商品を求める顧客が集うサイトのため、集客力を最重要視する方におすすめです。一方で、サイトによってシステム利用料や販売手数料がかかるのが懸念点です。
例)Etsy(エッツィー)、minne(ミンネ) -
オンラインショッピング:ハンドメイド販売サイトと同様で集客力に強いですが、月額手数料・決済手数料などのランニングコストを要します。
例)Amazon(アマゾン)、楽天市場 -
ECサイト開設:自身でECサイトを立ち上げることで、自社のイメージ・ブランディングを反映した独自性を求められます。一方で、ゼロから自身で集客していく必要があります。
例)Shopify(ショッピファイ)ストア、BASE(ベイス) -
フリマアプリ:スマートフォンで販売まで完了できる点が強みです。一方でアプリによっては手数料がかかり、またハンドメイド販売サイトよりもハンドメイド商品を求めるユーザーが少ない傾向があります。
例)メルカリ、Yahoo!オークション
オンライン販売プラットフォームの中には顧客が商品を購入したときのみ手数料がかかり、出品したものの購入に至らない場合は手数料がかからないケースも少なくありません。委託販売の場合は手数料が高い傾向にあるため、それに比べるとオンライン販売の手数料は安価と考えることができます。
4. ブランドアイデンティティを決める
ブランドアイデンティティとは、企業側が設定する「理想的な姿」を指します。自身のブランドにどんな独自性があり、商品の購入を通してどんな良い体験をもたらしたいかを踏まえて、一貫性のあるブランドアイデンティティを検討しましょう。ブランドらしさを明確に表現することで、顧客にブランドの魅力を感じてもらえます。
- ロゴと事業名:ブランドらしさを反映したロゴ、事業名を選びましょう。
- デザインの色彩: ブランドのイメージを捉えた色相を意識しましょう。
- フォント: ブランドの個性に沿った、美しく読みやすい書体・様式にしましょう。
- イメージビジュアル: サイト設計からSNS投稿の形式など、広報活動を行う上で軸となる、ブランドを象徴するようなビジュアルアプローチを決めましょう。
- コミュニケーションスタイル: 例えばフレンドリー、プロ意識、遊び心など、一貫したスタイルで活動を行いましょう。
- キャッチフレーズ:ブランドを象徴するような、印象的なフレーズを作りましょう。
5. マーケティング戦略を練る
マーケティング戦略は、商品を潜在的な顧客に届けるために必要不可欠です。より多くの顧客にブランドを知ってもらうため、商品の制作・販売前から綿密に作成していきましょう。マーケティングによっては低額、または無料でできる施策もあります。
ハンドメイド副業で集客力や売り上げを向上させる方法は、下記のとおりです。
- SNSマーケティングを行う:インスタグラムでプレゼントキャンペーンを実施するなど、SNSを活用します。
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)を共有する:ハッシュタグを作り、自社商品に関連するSNS投稿を促すなど、ユーザーが自ら制作・発信したコンテンツを活かして認知度向上、信頼構築を図ります。
- 口コミマーケティングを行う:カスタマーレビューを商品ページに設置したり、インフルエンサーマーケティングを行ったりして、商品の認知度向上と顧客の購買決定につなげます。
- 動画マーケティングを活用する:制作過程や、完成した商品を紹介する動画を投稿します。
- リファラルマーケティングを実施する:紹介コードを使った紹介キャンペーンの実施や、優良顧客向けのロイヤルティプログラムを構築します。
- コンテンツマーケティングを行う:ブログ・SNSなどのメディアで有益な情報を提供することで顧客との信頼関係を構築し、商品の販売へとつなげます。。
6. 価格を決定する
商品の価格設定の際に考慮すべき経費は以下のとおりです。
- スタートアップコスト:設備の整備や、初期のマーケティング・ブランディングに必要な経費
- 直接コスト:商品の材料購入・包装・発送に必要な経費
- 間接コスト:ソフトウェアライセンス費用、オンライン販売時の手数料、マーケティングコスト、保険、その他のビジネス運営に関連する定期的な経費
見積もった経費をもとに利益率を検討の上、価格を設定します。価格の決定にあたっては、原価・需要・競合他社の類似商品の価格が参考になります。利益率は20%〜100%で設定するのが一般的なため、市場調査の結果などを踏まえて最適な価格を決定しましょう。
なお、思うように売り上げが増加しない場合は利益率を下げるのではなくまずはコストを削減できないか考えてみてください。もしコスト削減が難しい場合は、ビジネスプラン自体を改善する必要があるかもしれません。ビジネスプランを見直す場合は、付加価値の高い商品を同じ価格帯で販売している競合を探して比較してみてください。
7. 商品を制作する
準備が整ったら、商品を制作しましょう。ビジネスを始めるのに必要な商品数は、扱う商品の種類や販売形態によって異なります。受注生産品やカスタム商品を販売するのであれば、展示用のサンプルとして必要な数を作れば事足りるでしょう。大規模イベントや実店舗でのフェアに参加する場合、ある程度まとまった数を在庫として制作しておく必要があるかもしれません。その場合、在庫管理や仕入れ先の確保も重要になってきます。特に特定の仕入れ先の事情で材料が仕入できなくなるリスクに備えて複数の仕入れ先から購入できる体制を整えることも大切です。
8. オンラインストアを開設する
商品を販売するオンラインストアを開設しましょう。ハンドメイド商品をオンラインで販売する場合は、自身でECサイトを作成し、ブランドアイデンティティに沿ったサイトの制作も検討しましょう。
なお、自身でECサイトを開設する場合はShopify(ショッピファイ)がおすすめです。手掛けるハンドメイド商品に合った無料テーマを使用して、写真、フォント、色でカスタマイズしましょう。また、SEOやマーケティングツールも基本機能として備わっているため、ウェブ制作の知識がない方でも簡単にECサイトを開設できます。さらにInstagramやFacebook(フェイスブック)などのSNSとも連携可能なため、ソーシャルコマースを活用することもできます
9. 確定申告を実施する
確定申告とは、1月1日〜12月31日までの所得をもとに所得税の金額を計算し、国(税務署)に申告する手続きです。ハンドメイド副業で所得が一定以上を超えた場合は、確定申告の対象になります。副業で確定申告が必要なケースは下記のとおりです。
- 給与を1ヶ所から受け取っている:副業の所得が年間20万円を超える場合
- 給与を2ヶ所以上から受け取っている:年末調整されていない給与所得と、給与以外の副業所得の合計が20万円を超える場合
確定申告書の提出は税務署への持参、郵送、e-Tax(国税電子申告・納税システム)で可能です。提出期限は3月15日(土日祝の場合は翌平日)となるため、期限を過ぎないように注意しましょう。
なおスムーズに確定申告を実施するためにも、事業用の口座とクレジットカードを作ることを検討してみてください。個人と事業用で銀行口座と分けることで収支を明確にでき、また事業に関わる支払いも専用のクレジットカードを用いることで、いつ・どこで・どれくらいのお金を使ったかを履歴で残せるため、経費を計上する際の漏れを防ぐことができます。
まとめ
サイドビジネスで稼ぎたい方にとって、ハンドメイド商品の販売は最適な手段の1つといえます。しかし、副業で利益を出すためにはデザイン設計から集客、販売方法、商品の制作まで、顧客ニーズ・市場の最新トレンドを踏まえながら一貫性を持って対応していく必要があります。
副業を行っている方の中には、開業届を提出して本格的に取り組んでいる方もいます。ぜひ本記事で紹介した1つ1つのステップを地道に実施して、競合他社に勝るビジネスモデルを確立できるよう努めてください。
ハンドメイド副業に関するよくある質問
ハンドメイド副業で稼いだら確定申告は必要?
ハンドメイド副業で所得が一定以上を超えた場合は、確定申告が必要です。副業で確定申告が必要なケースは下記のとおりです。
- 給与を1ヶ所から受け取っている:副業の所得が年間20万円を超える場合
- 給与を2ヶ所以上から受け取っている:年末調整されていない給与所得と、給与以外の副業所得の合計が20万円を超える場合
ハンドメイド副業はいくらまで非課税?
ハンドメイド副業で所得が発生した場合はすべて課税対象になります。
上記で確定申告が必要な条件を記載しましたが、これはあくまで「所得税」上の話です。確定申告を行わなくていい場合でも、副業の所得が赤字でない限りは住民税が課税されます。
文:Ryutaro Yamauchi