理想の実店舗ビジネスを実現する、Shopifyの活用方法と運営パートナー選び[ハイカーズデポ]

東京・三鷹市にあるアウトドアショップ「Hiker’s Depot(ハイカーズデポ)」のオーナー土屋智哉さんは、ながらく「自分のお店にネットショップはあわない」と考えていました。しかし、2021年にShopifyを導入し、ECをスタートした今では、「なぜもっと早くやらなかったのだろう」と大きな心境の変化が起きているといいます。それは、Shopifyが売上を伸ばしただけではなく、土屋さんが大切にしている「お店での接客」にもポジティブに作用したからでした。

今回は、土屋さん(株式会社ハイランドデザイン)と、Shopify活用をサポートする株式会社ディスプレイの見元俊一郎さんに、店舗ビジネスをより良くするECの考え方とビジネスサイズにフィットするShopifyの活用方法をうかがいました。

三鷹・ハイカーズデポ
「Hiker’s Depot(ハイカーズデポ)」のオーナー土屋智哉さん(左)と、ウェブ制作会社ディスプレイの見元俊一郎さん(右)

ネットショップをやるつもりはなかった

Hiker's Depot(ハイカーズデポ)」は、軽くてシンプルな装備で山登りやハイキングを楽しむスタイル「ウルトラライト」のアイテムを扱うアウトドアショップです。2008年に東京の三鷹市にオープンして以降、山登りのエキスパートからビギナーまで、多くの山登り愛好者やハイカーたちの支持を集めています。

ハイカーズデポの店名には、「すべてのハイカーにとっての“貯蔵庫、倉庫” “停車場、駅”でありたい」の意味が込められています。

2021年には、ShopifyでECもスタートしました。

WordPressで開発した公式ウェブサイトをフロントに、ShopifyのBuy Button(購入ボタン)を利用して、購入ページを構築。アプリは、納品書の発行や配送伝票との連携など、ベーシックな機能のものを中心に導入しました。そして、Shopify POSで店舗とECの在庫を一元管理しています。

とてもシンプルなShopify活用でも、ECの利用者や売上の伸びは順調です。

しかしハイカーズデポでは、セールや配送料無料のキャンペーン、メールマガジンの発行といったECで推奨される施策を一切行っていません。扱う商品もすべてECに掲載せず、ECの売上が店舗の売上を超えないように調整をしています。

なぜなら、ハイカーズデポのオーナー・土屋智哉さんは、「ネットショップをやるつもりはなかった」のです。

「シンプルに歩く」を楽しむウルトラライト

土屋さんは、大手アウトドアショップ店のバイヤー時代に、アメリカ発のウルトラライトに出会い、その考え方のとりこになりました。

ウルトラライトとは、多機能で重厚なアウトドアギアを装備するのではなく、軽くてシンプルな装備で歩き、自然との一体感を味わうハイキングの考え方です(ギアとは、道具やアイテムのこと)。

土屋
ウルトラライトはミニマリズムと一緒で、物を持たない方向へ行くんですよ。商品もサービスも、基本的には「もっと便利に」「これもあれもできる」というように、限りない欲望がついて回りますよね。アウトドアギアも多機能性が求められるなかで、ウルトラライトは必要最低限の機能で身軽に、が基本。足るを知るといいますか、「これだけで山に行けるんだ」という、従来の固定概念や思い込みをブレイクスルーする感覚が良かったです。

さらに、「シンプルな生活を送る」「多くの物を持たない」の考え方は、アウトドアだけでなく、世の中の多くの事柄につながる感じもして。そのようなウルトラライトのあり方に惹かれました。

お店での接客を大切にしたいから、ECはやらない

土屋さんがハイカーズデポをオープンしたのは、ウルトラライトを多くの人へ伝えるためでした。商品を販売するだけでなく、ウルトラライトを体験するワークショップの開催や、トレイルを中心としたアウトドアに関する情報発信と、10年以上に及ぶ活動は「ウルトラライトといえばハイカーズデポ」というポジションを確立します。

専門店だからこその豊富な知識、情報をもとに、お店でお客さん1人ひとりと話すことを大切にしたい。土屋さんは、お客さんとフィジカルにコミュニケーションできないECは、ハイカーズデポに最適ではないと考えたのです。

登山用のザック。「シンプルな道具は強い」と土屋さん。

土屋
ハイカーズデポが扱うウルトラライトギアは、特性が強すぎるんです。例えば一般的なザックよりも軽いザックを置いていますが、薄い生地を使っているぶん、何かしらの弱点も持っています。それを知らずに「軽くて便利なんでしょう?」と買うと、「もっと便利だと思ってたのに」とがっかりされてしまう可能性があるんです。

つまり、ウルトラライトギアとして本当に見て欲しい機能とお客さんの期待がすれ違う可能性が高いんですね。すると返品になりやすいし、その対応作業も発生します。お客さんの期待に応えられないばかりか、お互いに不幸になってしまう。だから、ちゃんとお客さんと話すことを優先したいと思い、ECはやりませんでした。

来店が難しいお客さんに対しては、問い合わせフォームを設置し、メールでコミュニケーションを取っていました。在庫があれば、銀行振込対応で販売をする通販のような方法です。

土屋さん自身はECを使いますし、その良さも理解しています。しかし、クラシックな販売方法を貫くハイカーズデポが好きなお客さんを、大切にしたいと考えていました。また、「やり方を変えるとお客さんから失望されてしまうのではないか?」の心配もあったそうです。

時代が変わると「お客様のために」も変わる

長年、ハイカーズデポのウェブサイト制作を担当するディスプレイの見元俊一郎さんは、ECカートの導入を提案しながらも、接客を大切にしたいという土屋さんの気持ちを深く理解していました。「土屋さんは、接客なしに、いつの間にか商品が勝手に売れてしまうことを気にかけていらっしゃいました」と話します。

そんな土屋さんが「ECへの意識を変えたほうがよさそうだ」と思い始めたのは、「お客さんにとって、今は何が最適だろうか?」とあらためて考えたことがきっかけでした。

アウトドア市場の成長は著しく、ハイカーズデポのウェブサイトのPVも伸び、ここ数年はお問い合わせの相談数が増えていました。ときには、メールの返事に時間を取られ、接客に影響が出てしまうことも。土屋さんは、接客ができないジレンマを抱えるだけでなく、在庫のお問い合わせに対して売り切れを伝えることも心苦しかったと言います。

アウトドア市場が成熟するに伴い、関連する情報も増え、お客さん自身でウルトラライトギアを知る環境も整ってきました。土屋さんは「お客さんが自由に買い物ができない状態は、かえってストレスをかけてしまっているのではないか?」と感じ始めます。

少しずつ、土屋さんの考えは変わっていきました。そして、いつしか「お客さんの利便性を上げ、販売業務の生産性を高めることで、もっとお店での接客に力を入れたい」と考えるようになり、カート型ECの導入を決めたのです。

Shopifyの導入で生産性が向上&実店舗の運営がスムーズに

売上のためではなく、お客さんのためにECを始めたい。

土屋さんの気持ちを汲み取った見元さんは、Shopifyの基本機能を活用した商品ページを構築していきます。かねてから「ECをやるならShopifyです」と提案していた見元さん。ウェブ制作の仕事をする中でShopifyを知り、将来性を感じていたそうです。

見元
機能開発のスピードも早いですし、なによりハイカーズデポの生産性を高めるうえで、実店舗とECの在庫が一元管理できる無料のShopify POSが魅力的でした。ベーシックプランから月額の利用料はかかりますが、ECが軌道に乗ってくれば、決済手数料含めてEC運営にまつわるコストは安くなります。導入は簡単でスムーズでしたし、安定感もあります。Shopifyを選んで正解でした。

Shopifyを導入後、土屋さんは「なんでやらなかったんだろう!」と思うほどの衝撃を受けました。

Hiker’s Depotの店内

Hiker’s Depotの店内。最近では登山初心者の方も「道具にこだわりたい」と来店するそう。

土屋
圧倒的に、店舗に余裕が生まれました。お客さんと僕の間で交わしていた、購入に至るまでのやりとりが簡略化されて、お客さんはストレスがなくなったと思います。以前は、夜中に問い合わせをいただいても、僕がお店に来るまで対応できなかったんですよ。

今は出社して、決済も済んで出荷するだけの状態になり、やることが単純化しました。Shopifyが代わりに売ってくれている。ぱぱっと出荷作業が終われば、あとの時間は店頭での接客にもきちんと回せますし、時間が有効に使えるようになりましたね。

商品ページにはカートボタンだけでなく、お問い合わせボタンも置き、相談や質問があるお客さんとも、引き続きメールでコミュニケーションを取っています。Shopifyを導入する前よりも、丁寧に対応ができるようになりました。

でも、「アナログで対応してきた10年間は、決してムダな日々ではなく、自分にとって必要な時間でした」と、土屋さんは振りかえります。見元さんも「“少し手間がかかってもハイカーズデポで買いたい”と思う濃いファンが生まれることにつながったのでは?」と分析しています。

土屋さんにとってECは、売上を上げるための手段ではありません。日々の店舗運営をサポートするもう1人の優秀なスタッフであり、万が一何かがあって店舗が運営できないときの保険、転ばぬ先の杖のような存在です。

がんばらないSNS運用のポイント

お客さんとのリアルなコミュニケーションを、とても大切にしているハイカーズデポ。一方で、情報の発信はデジタルメディアを活用している点が特徴です。

まず、2年前にリニューアルしたウェブサイトは、ブログ「Hiker's Notes」や取り扱いアイテムの詳しい紹介ページなど、コンテンツが豊富です。

購入ページを兼ねるアイテム紹介ページでは、商品の基本情報だけでなく、商品の持つストーリー、実際に使ってみた感想や使い方の提案など、土屋さんによるオリジナルの文章が綴られています。

12,000文字近いテキストが掲載されたページもあります。土屋さんが「お客さんにぜひ伝えたい、提案したい」と思うアイテムを中心に、お客さんが知りたい情報を過不足なく発信していることが、結果としてSEOにも良い影響をもたらしています。

海外メーカーのブランド名はカタカナ表記にし、お客さんが検索しやすいように工夫

見元
ハイカーズデポのサイトを見て、商品を理解して、違うお店で購入するようなケースもあると思います。でも土屋さんは、それでも良いとおっしゃるんです。長い目で見てブランドを育てていくには、専門店としての本質的な評価を上げることが大事だと考えていらっしゃるんですね。

ブログ「Hiker's Notes」は、ウルトラライトや山歩きの楽しみ方、カルチャーを発信しています。ハイカーズデポが関わるイベントやワークショップのレポート、ハイキングの道すがらに起きた出来事、感じたことをまとめたハイキングエッセイなどが掲載され、まるでウルトラライトのメディアのようです。

そして、SNSも欠かせません。2009年に始めたTwitterでは、山歩きやウルトラライトのカルチャー情報を。2020年からはInstagramでも、取り扱うアイテムの紹介を中心に発信しています。

Instagram
Instagramでも、ウルトラライトのカルチャー情報を発信

ウェブサイトの更新からSNSのテキスト作成、アイテムの撮影まで、すべて土屋さんが手がけています。更新が大変では?と思いますが、土屋さんは「更新を義務化していないので」と軽やかに話します。

土屋
SNSは、やらないときはやらない。1週間発信していないときもありますけど、そんなときも「まぁいっか」という感じ。「1日1回更新しなきゃ」と義務感でやると、楽しくないですよね。僕は「この商品のことを発信したい!」と思ったときにSNSを使っているし、発信したくなる情報を探すようにしています。ウェブサイトは、ニュースやブログなども含めて週に1回は更新するように意識していますが、SNSは気が向いたらです。

土屋さんからは、とても自然体にハイカーズデポを運営している印象を受けます。しかし、はじめから順調にブランドの認知や売上が伸びてきたわけではありません。

ハイカーズデポを始めた当時は、まだまだ日本でウルトラライトが知られていない頃だったゆえに、思うように売りたい商品が仕入れられなかったと言います。それでも、ウルトラライトの考え方を広め、実店舗で接客をしたいという軸をぶらさずに続けてきたからこそ、今のハイカーズデポがあるのです。

土屋さんの信念は、ユーザーレビューを置かないところにも現れています。

土屋
専門店がレビューに頼るのは、専門知識に対して白旗あげてるのと同じように見えるんです。専門店は、レビューよりも絶対にもっと詳しい話ができるわけですから、その自信を持ってやるべきだと僕は思っています。

メーカーサイトのレビューは、お客さんとのキャッチボールだと思いますが、ハイカーズデポは違う。レビューを置いたらもっと売上が上がるかもしれないけれど、うちはやらないです。

「お店が好き、接客が好き。好きじゃないことはやりたくないってだけ」と土屋さん。

ビジネスの考え方からShopifyの活用まで、すべてがウルトラライトのシンプルなあり方に紐付いています。

ビジネスを理解してくれ、信頼できるEC支援のパートナーと出会おう


これから、ハイカーズデポはどのような展開を考えているのでしょうか。

土屋さんは、「Shopifyの基本機能でどこまでできるか?を追求していきたい」と話します。土屋さんが感じるShopifyの良さは、ECを伸ばす施策のバリエーションが、たくさんあるところです。

たとえば、顧客の行動分析ができるマーケティングダッシュボードレポートや、メールマガジンツールのShopify メール、Facebook広告やTikTok広告の出稿など、ShopifyにはECビジネスの成長を促すさまざまなツールが備わっています。

お客さんのデータも蓄積されてきたことから、データを活用した施策にも取り組む構想があります。ウェブサイトから商品購入ページを独立させ、Shopifyへ完全移行も検討しているそうです。見元さんは「土屋さんが実現したいビジネスのあり方にあわせて、Shopifyの活用や提案をしていきたい」と語りました。

土屋
この数年間で、自分自身のネットビジネスに関する先入観が大きく変わりました。具体的なことは決めていませんが、自分の考え方ときちんと向き合いながら、Shopifyで新しいことができればいいなと思います。

そして、ずっとサポートしてくださる見元さんは、ハイカーズデポのお客さんでもあり、僕がやりたいことを深く知ってくださってる方。小さなお店やハイカーズデポみたいな専門店は、自分達のビジネスを理解してくれるウェブのアドバイザーや、ECを一緒に運営してくれるパートナーを探すことが大事です。そんなパートナーと出会えたら、個人店で頑張ってらっしゃる方やウェブショップ運営で悩んでいる方も、うまくShopifyを導入できるんじゃないでしょうか。


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