マーケティング担当者は、どのキャッチフレーズが最適か、どの画像が最も魅力的かといった問題を、何時間も議論することがあります。しかし、ABテストを利用すれば、これらの議論の明確な答えを出すことができます。さらに重要なのは、ABテストを行うことで、マーケティングチームが顧客、ウェブサイト、製品に関する知見を積極的に得られることです。これは、従来の手法では得られない知識です。
しかし、ABテストをマーケティング戦略にうまく組み込むためには、この手法の背後にある原則を理解する必要があります。
この記事では、ABテストについて解説し、ECストアで実施できるテストの例を紹介します。
ABテストとは?
ABテスト(別名「スプリットテスト」)は、ウェブページ、広告、メールなどの異なるバージョンをオーディエンスに見てもらい、どちらがより効果的かを確認する手法です。これは、オンラインストアで最も一般的なテスト手法です。
正式なABテストのやり方は、2つ(またはそれ以上)のバージョンを、ランダムに選ばれたターゲットオーディエンスに向けて同じ期間に提供するというものです。これは、異なるバージョンを順番に表示する前後比較テストとは異なります。また、ABテストでは、複数のバージョンを用意する場合も、テストするのは1つの変数のみです。たとえば、異なる文字を使ったボタンを3つテストすることはABテストですが、ボタンの文字とバナー画像のように複数の変数を同時にテストする場合は、多変量テストと見なされます。
ABテストを実施するには、異なるバージョンを同時に異なるユーザーに提供するためのコードが必要です。広告のABテストでは、MetaやGoogleがこれを自動的に行います。同様に、Klaviyoのような一部のメールプラットフォームには、ABテスト機能が組み込まれています。ウェブサイトのABテストには、Google Optimizeなどのカスタムまたはサードパーティのコードが必要です。
ABテストのメリット
すべてのデジタルマーケティング活動では、データが生成されます。広告キャンペーンはクリック率に関するデータを、ウェブサイトはコンバージョン率に関するデータを提供します。ABテストの主なメリットは、特定の意思決定を行うために必要なデータを収集できることです。
ABテストは常に特定の仮説から始まります。たとえば、「サインアップフォームで10%の割引を提供すれば、コンバージョン率が上がるはず」などです。ここで収集するデータは、仮説に関する結論を出すのに役立ちます。これは、仮説に対する答えが即座に出るだけでなく、ビジネス全体に関するより多くの情報を得ることができます。この例では、顧客がどれほど価格に敏感であるかを理解するのに役立ちます。
ABテストは主にマーケティング活動ですが、テストで得た洞察はUX、製品開発、ブランディング、営業など、さまざまなビジネス上の意思決定に活用できます。
ECストアのABテスト7例
ECストアが実施できるABテストには多くの種類があります。以下は、最も一般的で影響力のあるテストの例です。
ヘッダーコピー
これは、ページ(通常はランディングページ)の上部にあるヘッダーの文章を指します。訪問者が最初に目にする大きな文字の文章であるため、サイトにとって最も価値のある第一印象をテストするのに最適です。
たとえば、Gymsharkなら、下の画像にある「POWER. MADE TO FAIL IN」というフレーズの異なるバージョンをテストするでしょう。

件名
メールマーケティングにおいて、件名は最も重要な要素で、メールの開封率を左右します。オーディエンスがメールを開かなければ、メールの中身が効果を発揮できません。どのような件名が既存のオーディエンスの目を引くかをテストすれば、メールのパフォーマンスを向上させることができます。
たとえば、DUERなら、下のメール件名「Introducing: The Premium Dura Soft Midweight Tee」の別のバリエーションをテストするでしょう。

広告キャッチフレーズ
広告プラットフォームでは、さまざまなキャッチフレーズのバリエーションを迅速かつ簡単にABテストできます。これにより、広告キャッチフレーズに関する洞察が次のキャッチフレーズやテストする次のバージョンを形成する自己強化ループが生まれます。
たとえば、下のBN3THの広告では、本文のキャッチコピー(「Numb crotch? No thanks.」)または画像のコピー(「Ride Longer & Comfier, Save 25%🚵♂️」)をテストすることができます。

CTAテキスト
CTAテキストは、ウェブサイト、広告、メールでテストできます。優れたCTA(コール・トゥ・アクション)は、オーディエンスに「私は~したい」と感じさせるので、CTAをテストすることでページ上のユーザーの意図を理解するのに役立ちます。
たとえば、下のVahdamの出口意図ポップアップフォームでは、ボタンの文章の異なるバージョンをテストして、どのコピーからより多くのフォーム入力が得られたかを確認できます。

製品画像の種類
製品画像の種類をテストすることで、製品のコンバージョン率を上げる要因を理解できます。実用的な製品であれば特徴を強調するシンプルな画像が効果的ですが、そうでない製品はライフスタイルを重視した使用状況を示す画像が効果的です。
たとえば、Blender Bottleは、ランディングページの写真として、まずはジムからオフィスに直行するオフィスウェアを着た人物のライフスタイル写真を表示し、そのあとで機能を示すシンプルなボトルの写真を表示し、それぞれの効果を比較することができます。

価格設定と割引
価格設定は、技術面からも顧客の視点からもテストするのが難しい場合があります。ほとんどのウェブサイトABテストツールでは、価格をテストする機能を提供していません。また、これらのテストは、より高い価格で購入した顧客が、他の人が自分より安く購入したことを知って不満を抱くリスクがあります。しかし、IntelligemsのようなShopifyアプリでは、価格テストが可能です。
また、割引コードのテストも、同様の知見を得ることができる効果的な方法です。たとえば、同じオーディエンスを対象に、広告の内容は同じで割引オファーだけが異なる(25%オフと2500円オフなど)2つのマーケティングキャンペーンを展開し、どちらがより良いパフォーマンスを示すかを確認できます。
要素の削除
ABテストは、「引き算がプラスになる」こともあります。たとえば、ショッピングやナビゲーションの選択肢が多すぎるウェブサイトがある場合、マーケティング担当者は、あえて選択肢を非表示にしてコンバージョンへの影響をテストすることがあります。
たとえば、LOLAは、下のページのナビゲーションから、ブログ「The Spot」へのリンクを削除した場合の購入コンバージョン率への影響をテストすることができます。

ABテストの実施方法
ABテストの実施は体系的なプロセスです。テストは以下の5つのステップで行います。
1. 仮説を立てる
優れたABテストは、パフォーマンスを改善する方法に関する理論から始まります。この理論は、既存のデータに基づくものでも、自分の意見に基づくものでも構いません。理論を仮説に変えるには、「(Xの変更)により(Yの指標のパフォーマンス)が向上すると考えています」という形式で述べます。
たとえば、「製品ランディングページのメイン画像を大きくすることで、コンバージョン率が向上すると考えています」という形です。
仮説では、改善の程度を具体的に示す必要はありません。方向性を示すだけで十分です。
2. テストバリエーションを作成する
これは、広告マネージャー、メールプラットフォーム、ウェブサイトABテストツールで行うことができます。バリエーションには、後で簡単に分析できるように説明的なラベルを付けておいてください。たとえば、新しい広告バリエーションを「バリエーションB」と名付けるのではなく、「バリエーションB - 感情的なCTA」と名付けます。
3. オーディエンスを選択する
ABテストは、全オーディエンスに提供することも、オーディエンスのサブセットに提供することもできます。たとえば、ウェブサイトの場合、全オーディエンスに提供するとは、ウェブサイト訪問者の半分が元のサイトを見て、半分がテスト中の新しいバージョンを見ることを意味します。ただし、新しいバージョンをオーディエンスの25%にのみ提供することや、国外からの訪問者のみをターゲットにすることもできます(この場合、国外からの訪問者の半分が元のバージョンを見て、半分が新しいバリエーションを見ることになります)。
あなたにとって適切なオーディエンスは、仮説が適用されると思われるグループと、結論を出すのに必要なデータをどれくらい早く集めたいかによって決まります。
4. テストを実施する
通常、マーケティング担当者は、テストを確実に成功させるために、ABテストを少なくとも2週間実施します。これにより、顧客が週末に異なる行動をするなどの偶然や変動を考慮するのに十分な時間が確保されます。同じウェブページまたはオーディエンスに対して、複数のABテストを同時に実施しないようにしてください。テスト結果が曖昧になる可能性があります。
5. 結果を分析する
ABテストを分析する際は、統計的に有意な結果を求めます。これは、表示されている結果が信頼できるものであり、サンプル規模が小さすぎることや偶然の結果ではないことを示すデータ式です。これは、オーディエンスの規模が小さい場合は、大きなパフォーマンスの違いを確認する必要があるためです。しかし、オーディエンスの規模が大きい場合は、小さなパフォーマンスの違いでも結論を出すことができます。
Google Optimizeのようなツールは、統計的有意性を計算してくれます。その他の結果については、統計的有意性計算機(英語のみ)を使用できます。
結果を分析し、チームと共有したら、次のテストを行う準備が整います。
ABテストの例に関するよくある質問
ABテストは、なぜECビジネスにとって重要なのですか?
ABテストは、顧客、メッセージング、ウェブサイトをより良く理解するのに役立ちます。ECビジネスを成功させるには、顧客との密接な関係、明確なメッセージ、高いコンバージョン率のウェブサイトを持つことが大切なため、これらの領域の情報を得ることは非常に価値があります。
ABテストは通常どれくらいの期間実施されますか?
通常、ABテストは結論が出るまでに少なくとも2週間実施されます。ただし、ABテストは最短で3日、最長で3か月実施することもできます。期間は、ビジネスが収集できるデータの量によって決まることが多いです。
ABテストを実施するためのベストプラクティスは何ですか?
明確な仮説を作成する
一度に1つの要素をテストする
結果が統計的に有意であることを確認する