パーソナライズが効果的であることは、マーケティングにたずさわる者なら周知の事実です。
「調査によると、メールの件名に相手の名前を加えることで、開封率は可能性が大幅に向上し、メールへのエンゲージメントが高まり、退会率が低くなることが示されています」と、Googleのデータと測定のチーフストラテジストであるニール・ホインが、『Shopify Masters』のエピソードで述べています。
すべての購読者のために手動でメールの件名をカスタマイズすることは時間の浪費です。そこで、多くのマーケターはオートメーション(自動化)を利用します。オートメーションを導入することで、メールの件名をパーソナライズするなど、通常は時間がないために試せないマーケティング戦略を実行できます。この記事では、Shopifyの販売者たちがマーケティングオートメーションソフトウェアを使用してビジネスを成長させる実例と、オートメーションをマーケティングツールキットに組み込むためのベストプラクティスについて紹介します。
マーケティングオートメーションとは?
マーケティングオートメーションとは、手動での作業なしに商品やサービスを促進するためのソフトウェアを使用することを指します。オートメーションにより、デジタルマーケティング戦略の実行に伴う反復的なタスクを効率化できます。(例えば、ニュースレターにサインアップしたり、ショッピングカートに商品を入れたりした際に自動的に送信されるパーソナライズされたメッセージなど)
これらのメッセージは、特定のアクションを行った際に顧客に特定のメッセージを届けるためのワークフローに基づいて送信されます。ワークフローはテンプレートを使用することもできますし、ゼロから構築することも可能です。また、キャンペーンの途中で変更して結果を最適化することもできます。
例えば、潜在顧客がウェブサイトを訪れ、プロモーションコードを受け取るためにメールアドレスを登録したとします。そのアクションがトリガーとなり、ウェルカムノートと割引コードを始めとし、数週間にわたって製品についての情報などの一連のメールを送信することができます。
マーケティングオートメーションの種類
- メールマーケティング
- デジタル広告
- 顧客関係管理
- チェックアウトアップセル
- 顧客体験
適切なソフトウェアやコーディング能力があれば、デジタルマーケティング戦略のほぼすべての部分を自動化できます。以下は、マーケティングオートメーションツールを使用する一般的な方法のいくつかです。

メールマーケティング
メールマーケティングは、自動化の最も一般的な利用法です。実装するのは簡単なうえ、大量のメールを送信するのではなく、パーソナライズされたメッセージを適時送信できるようにします。
オリーブオイル会社Graza(英語サイト)は、Klaviyo(英語サイト)を使用して、特定の基準を満たす小グループの顧客に合わせたメールを自動で送信しています。「メールによる直接的なコミュニケーションにより、恩恵を受けていると思います」と、Grazaの共同創業者兼CEOアンドリュー・ベニンはケーススタディで述べています。「私たちは200人または300人の顧客に向けてフローを送信しています」このように顧客を小さなグループにセグメント化することは、手動で行うと非常に時間がかかります。2024年には、同社なこれにより4800万ドル(約72億円)以上の売上達成を目指しています。
購入頻度別、メールマーケティングキャンペーンを実施する場合を例にあげてみましょう。一度だけ購入した顧客にはあるバージョンのプロモーションメールを送り、過去3ヶ月で複数回購入した顧客には別のバージョンを送る、というように行うことができます。次のようなフローとなることでしょう。

特定の条件が満たされたときに、特定の顧客セグメントに自動的にメールを送信するだけでなく、ほとんどのメールオートメーションソフトウェアはA/Bテストもサポートしており、同じメールの異なるバージョンをテストし、効果の高い方のバージョンを自動的に配信できます。
デジタル広告
デジタル広告は非常に高額になる可能性があるため、マーケターにとって投資収益率の確認は欠かせません。効率的な広告支出を確保するための戦略に、オートメーションがあります。これは通常、異なるタイプの顧客に異なる広告を自動的に表示することや、同じ広告の異なるバージョンをテストして最適なものを自動的に表示することを含みます。
例えば、寝具会社Cozy Earth(英語サイト)は、Metaを使用してオートメーションされたFacebook広告を実施しています。ケーススタディによると、Cozy Earthは機械学習を使用して150以上の異なる広告の組み合わせをテストし、最適なものを選択して表示しました。

顧客関係管理

顧客関係管理(CRM)ソフトウェアは、顧客のデータを収集し、保存して顧客とのインタラクションを改善します。多くのCRMは、自動的なリードスコアリング(購入する可能性が高いコンタクトを予測する)から顧客セグメンテーション(共通の特性に基づいてコンタクトをグループ化する)まで、さまざまなオートメーション機能を提供しています。CRMは、メール送信や電話番号のダイヤルなどのタスクもオートメーションできます。
CRMソフトウェアはB2Bマーケターに最も人気がありますが、大規模な顧客データベースを持つ企業にとっては有用です。
例えば、電子ピアノを製造するRoland Corporation(英語サイト)は、ActiveCampaign(日本語未対応)のCRMソフトウェアを使用して、顧客の行動追跡とパーソナライズされたメッセージングをオートメーションしました。ケーススタディによると、「店舗での対面による相談を希望する潜在顧客は、もちろん許可を得た上で、営業パイプラインに登録され、専門家とより1対1の体験を得ることができます」と、ローランドのグローバルCRMマネージャーであるポール・スミスは述べています。「それから、各顧客が営業過程のどの段階にいるかに基づいてオートメーションされたタスクがあります。これにより、顧客に直接フォローアップのメールを送信することができます」
チェックアウトアップセル
プロテインバー会社Aloha(英語サイト)は、小売パートナーに注力していた期間を経て、再び直接消費者向けの販売に乗り出すことを決定しました。その際、収益性が重要でした。そこで、Alohaのマーケティングチームはオートメーションを利用して平均注文額を増加させました。「私たちは、チェックアウトの最後にアップセルを行うことを始めました」と、AlohaのCEOブラッド・チャロンは『Shopify Masters』のエピソードで述べています。
Shopifyストアと統合して、チェックアウト時に自動的にアップセルまたはクロスセルを行うさまざまなアプリがあります。例えば、ReConvert(英語サイト)は、顧客の特性に基づいてオファーをパーソナライズするオプションや、チェックアウト後のサンキューページに表示される時間制限のあるアップセルを提供します。

顧客体験
従来、マーケティングとカスタマーサービスは別々の存在と見なされていました。マーケティングオートメーションは、メールやブログ投稿のスケジューリングを意味し、カスタマーサービスオートメーションは、よくある質問に対する定型的な回答を提供するチャットボットを含んでいました。
今日、企業は顧客によりシームレスな顧客体験(CX)を提供したいと考えており、オンサイトチャットが重要なマーケティングチャネルになりつつあります。「CXとマーケティングの関係は、eコマース企業の中で最も乖離していることが多く、両者にとって非常に不利益です。私たちは同じ目標に向かって取り組んでおり、学び合うことがたくさんあります」と、DTCビデ社の元CXマネージャーであるグレース・チョイは、顧客チャットソフトウェアGorgias(英語サイト)のケーススタディで述べています。

グレースは、TUSHYの顧客チャットインターフェース内でマーケティングキャンペーンを提供するためにGorgiasを使用しました。例えば、TUSHYのウェルカムキャンペーンは、サイトを離れようとしている新規訪問者に自動的にチャット内の割引コードを提供します。しかし、このキャンペーンは営業時間中のみ実行されるため、質問が発生した場合には、チャットボットがCXエージェントに会話をスムーズに引き継ぐことができます。
マーケティングオートメーションのベストプラクティス
- 具体的かつ測定可能な目標を設定する
- 顧客の旅をマッピングする
- 結果を監視し、戦略を調整する
マーケティングオートメーションを実施する最良の方法は、ビジネス目標を明確にし、その戦略を実施するための適切なマーケティングオートメーションソリューションを見つけることです。
これにより、ビジネスは非常に関連性の高いコンテンツを作成し、見込み客を育成し、ブランドロイヤルティを構築できます。以下は、小規模ビジネスで実施を検討すべきベストプラクティスです。
具体的かつ測定可能な目標を設定する
オートメーションは、マーケティング戦略をサポートするものであるべきです。それが逆効果となっては意味がありません。オートメーションに投資する前に、どのチャネルや戦略に焦点を当てたいかを決定しましょう。その後、オートメーションがどのように目標達成に貢献できるかを考えます。
オートメーションソフトウェアの利点の1つは、レポートを作成できることです。単にメールを送信するだけでなく、開封率を知らせてくれます。しかし、明確な計画がなければ、そのデータは無意味に終わります。2023年のレポートでは、ビジネスリーダーがデータを効果的に活用する上での最大の障壁の1つとして、膨大なデータ量を挙げており、セキュリティ脅威に続いています。
「データにより顧客を理解しようとする際、そのデータをどう扱うかの意図を持って行っていないことが多いです」と、Googleのデータと測定のチーフストラテジストであるニール・ホインは『Shopify Masters』のエピソードで語っています。例えば、メールの開封率は単独ではほとんど意味がありません。
しかし、メールを開く顧客による平均注文額は高くなる傾向があるなら、開封率を上げることで売上アップにつながる可能性を調べる価値はあるでしょう。これで、メールオートメーションを使用する理由ができます。さまざまなメールマーケティング戦略をテストして開封率を上げることができるかを確認したいのです。そして、オートメーションはこのプロセスをスムーズかつ迅速にし、仮説を検証するために必要な開封率データを提供します。
「情報を収集するためだけでは意味がありません」とニールは言います。「その情報を、どのようにメールや顧客体験のパーソナライズやより良い価値の提供に活用できるかを考えてください」
顧客の旅をマッピングする
すべてのオートメーションワークフローはトリガーから始まります。例えば、メールリストへのサインアップ、カートの放棄、特定の回数の製品説明ページの閲覧などです。顧客のアクションがソフトウェアをトリガーし、特定のマーケティングキャンペーン(割引コード付きのメールやチェックアウト時の特定のクロスセル提案など)を自動的に提供します。
トリガーの選択が不適切であれば、どんなに素晴らしいマーケティングキャンペーンでも意味がありません。顧客の旅をマッピングすることで、実際の顧客があなたのビジネスとどのように関わっているかを視覚化し、顧客が取るアクションに基づいて彼らが何を必要としているかをより良く理解できます。そうすれば、正しいトリガーと正しいキャンペーンを組み合わせることができます。
結果を監視し、戦略を調整する
マーケティングオートメーション戦略を実施した後は、結果を監視することが重要です。これにより、戦略が効果的かどうかを判断し、調整が必要かどうかを確認できます。
監視できる重要な指標はいくつかあります。
- リード転換率:リードが顧客に転換する割合。
- リードあたりのコスト:各リードを生成するためにかかる費用。
- リードの質:顧客に転換するリードの数を総リード数で割ったもの。
これらの指標を監視することで、マーケティングオートメーション戦略の効果的を把握できます。期待する結果が得られない場合は、戦略を調整して、機能する組み合わせを見つけるまで続けましょう。
マーケティングオートメーションに関するFAQ
マーケティングオートメーションの例は何ですか?
マーケティングオートメーションの良い例は、ユーザーがウェブサイトでニュースレターにサインアップし、その後、彼らの興味に合わせたコンテンツを含む一連の自動メールを受け取ることです。
マーケティングオートメーションはどのように機能しますか?
マーケティングオートメーションは、メール送信、ソーシャルメディアへの投稿、ターゲット広告の配信などの反復的なタスクをオートメーションするためのソフトウェアの使用を指します。マーケティングチームは、特定のアクションや条件が特定の反応を引き起こすかを指示するワークフローを作成することで、これらのタスクをオートメーションします。ソフトウェアは、正しい条件が満たされるたびにその反応を実行します。
優れたマーケティングオートメーションプラットフォームは?
マーケティングオートメーションプラットフォームは多数あります。どれが最適化かは、独自のニーズや予算によります。一般的なマーケティングオートメーションプラットフォームには、HubSpot、Marketo、Oracle Eloqua、Mailchimp、Pardotなどがあります。
マーケティングオートメーションとCRMは同じですか?
いいえ、マーケティングオートメーションとCRM(顧客関係管理)は同じではありません。マーケティングオートメーションは、マーケティングタスクやプロセスをオートメーションすることに焦点を当てていますが、CRMは企業が顧客関係を管理するためのプラットフォームです。ほとんどのCRMソフトウェアには、何らかのオートメーション機能が搭載されています。