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ちいかわマーケット: Shopify Plusプラン導入でサーバーダウンゼロ、EC改革3年でGMV5倍以上の成長を実現した舞台裏

公式Xアカウントのフォロワー数は380万人を超え(2025年3月時点)、SNSを中心に絶大な人気を誇るキャラクター「ちいかわ」。その公式オンラインストア「ちいかわマーケット」は、ファン待望のグッズを販売するECサイトとして2020年にオープンしました。

しかし、その人気ゆえに爆発的なアクセス集中によるサーバーダウンで、在庫・受注数が管理画面から確認できないといった課題が発生し、運営体制に限界を感じていました。そこで2022年、ShopifyのPlusプランへのリプレイスを実行。強固なインフラと高度な分析機能を活用し、EC基盤を強化しました。その結果、売上は導入後の3年間で5倍以上に伸長。さらに、オペレーションの効率化や顧客体験の向上にも成功しました。

【ShopifyのPlusプラン導入による成果】

  • GMV(流通取引総額):5倍以上*
  • 年次平均成長率:140%(直近3年間)
  • Shop Pay決済比率:約40%

*ShopifyのPlusプラン導入からの3年間

今回は、「ちいかわマーケット」が直面した課題やShopifyのPlusプラン導入の背景、そこから得られた成果について詳しく聞きました。

左から株式会社グレイ・パーカー・サービス 営業本部 WEB事業部 姜 俊模 氏、WEB事業部 次長 小林 辰也氏、WEB事業部 松下 友氏、コマースメディア株式会社 代表取締役 井澤 孝宏氏

 

購入できないファン続出、人気ゆえ直面した障壁

「ちいかわ」は、イラストレーターのナガノ氏が2017年にX(旧Twitter)で連載を開始した漫画・アニメ作品。『なんか小さくてかわいいやつ』、通称「ちいかわ」たちが登場するストーリーは、愛らしいキャラクターたちのほのぼのとした日常と、時折見え隠れするシリアスな世界観のギャップが魅力となり、瞬く間に人気を博しました。2022年4月には「めざましテレビ」内でアニメ放送もスタートし、国内外で幅広いファンを獲得しています。

この「ちいかわ」をはじめ、「ナガノキャラクターズ」「mofusand」「コウペンちゃん」などのキャラクターのグッズ制作や公式オンラインストアの運営を手がけているのが、株式会社グレイ・パーカー・サービスです。同社は、キャラクターの世界観を大切にしながら、オンラインとオフラインを融合させた商品展開を行い、多くのファンに愛されるグッズづくりを推進しています。

2020年に国内のECプラットフォームで「ちいかわマーケット」を立ち上げた同社は、キャラクターの人気拡大とともにEC売上を急速に成長させました。しかし、その成長に伴いオンラインストアの運営は深刻な課題に直面します。

特に新商品の発売時には、サイトに膨大なアクセスが集中し、サーバーがダウン。その結果、多くのファンがサイトにアクセスすらできないという事態が発生していました。グレイ・パーカー・サービスの松下氏は、当時の状況を次のように振り返ります。

「注文状況を確認しようにも、管理画面にすらアクセスできず、どの商品がどれだけ売れたのかを把握できませんでした。在庫がまだ残っているのか、どれほどのファンが購入しようとしているのかも不透明なまま。新商品を発売するたびにサイトがダウンし、SNS上では批判が噴出。1日に数百件ものクレームが寄せられることもありました」(松下氏)

株式会社グレイ・パーカー・サービス 営業本部 WEB事業部 松下 友 氏

また、当時利用していたプラットフォームは、分析画面が見づらく、操作性にも難があり、集計作業が困難でした。その結果、販売データを適切に活用できないという課題も抱えていました。

こうした状況を打破するため、グレイ・パーカー・サービスは2022年、EC基盤をShopifyのPlusプランへ移行することを決断します。

 

「ちいかわマーケット」がEC基盤に求めた条件とは?

「ちいかわマーケット」の最大の課題は、爆発的なアクセス増加に耐えうる強固なEC基盤を構築することでした。同社のオンラインストア事業を率いる小林氏は、ShopifyのPlusプランを選定した理由を次のように語ります。

「サーバーの強度、セキュリティの担保、拡張性を考えたときに、Shopify以外の選択肢はなかったと言えます。特にキャラクターECのように突発的なアクセス集中が発生する業態では、Shopifyのような安定したインフラが不可欠でした」(小林氏)

サーバーの強度、セキュリティの担保、拡張性を考えたときに、Shopify以外の選択肢はなかったと言えます。特にキャラクターECのように突発的なアクセス集中が発生する業態では、Shopifyのような安定したインフラが不可欠でした

株式会社グレイ・パーカー・サービス

小林 辰也氏 — WEB事業部 次長

 

 

株式会社グレイ・パーカー・サービス 営業本部 WEB事業部 次長 小林 辰也氏

Shopifyはエンタメ業界でのEC実績が豊富であり、アクセス集中にも耐えられるインフラが整っていることが、導入の大きな決め手となりました。また、受注管理やWMS(倉庫管理システム)とのスムーズな連携を実現できる環境が整備されている点もポイントだったといいます。

Shopifyへのリプレイスでは、ShopifyのPlusプランのパートナー企業である株式会社コマースメディアが技術的な支援を行いました。同社 代表取締役の井澤孝宏氏は、「これまで多くのシステムを使ってきましたが、特にこの業界で課題となるのが、受注処理の安定性。私自身も過去にこの部分で苦労してきた経験があり、Shopifyに出会ったときに『受注処理の安定性をクリアできるのはShopifyだ』と確信しました。さらに、当時のちいかわマーケットの出荷量相当の対応実績があったため、その安定性と信頼性を具体的に示しながら導入を進めました」と振り返ります。

Shopifyの本格導入に先立ち、まずは他のキャラクターのオンラインストアで試験的に導入しました。その結果、以前のプラットフォームよりも運用しやすく、急増する顧客数にも対応できることを確認していきました。その実績を踏まえて、満を持して「ちいかわマーケット」へのShopify導入を実施しました。

「ECの本質は、スムーズな購買体験を実現し、ファンに満足してもらうこと。そう考えたときに、ShopifyのPlusプランは最適な選択肢でした。Shopifyはただ使いやすいだけでなく、最も重要な『お客様の体験を向上させる』ための環境を提供できるんです」と小林氏は力を込めます。

ちいかわマーケット

 

安定運営に売上アップ、Shopify導入で得た4つの効果

「ちいかわマーケット」では、システム基盤の最適化と安定したEC運営を両立させるため、ShopifyのPlusプランの導入が決定されました。現在では、拡張性と安定性を兼ね備えた信頼できるプラットフォームとして、「ちいかわマーケット」の成長を支える存在となっています。特に、導入によって得られた成果は、以下の4点です。

1. サーバーダウンゼロ、安定したインフラの確立

導入以来、サーバーダウンは一度も発生せず、大規模な発売時にも安定した運用を実現しています。1分間に3000件以上ものチェックアウト処理を記録するなど、アクセス集中への耐性が格段に向上しました。

「以前は発売直前からサイトが落ちてしまい、ファンが買えない状況が続いていました。現在はサーバーダウンの心配なく、より多くのお客様に商品を届けることができています」(松下氏)

サーバーの安定稼働を実現する一方で、同社ではさらなる強化をShopifyに期待をしています。Shopifyは他社プラットフォームと比較しても高い耐久性を備え、標準仕様で高い処理能力を誇ります。また、上位のPlusプランになると、さらに大規模なトラフィックにも対応できます。こうした高い性能を持つShopifyですが、同社では一時的に決済が集中する局面にも万全を期すため、システム側で設けられている制限(キャップ)のさらなる強化に期待を寄せているのです。

2. データの活用基盤が整い、需要予測の精度が向上

購入データのリアルタイム把握が可能になり、MD(マーチャンダイジング)の精度が飛躍的に向上しました。Shopifyの分析ツールでは、追加の設定や作業なしで、売上やコンバージョン率、セッション数など主要な指標を1つの画面で確認でき、迅速かつタイムリーな意思決定が可能です。さらに、レポートのカスタマイズも柔軟に行え、関心のある項目や切り口を自由に追加することで、より深い分析ができます。

こうしたデータと、蓄積されたMDの知見を掛け合わせることで、在庫管理や販売予測の精度が向上し、より効果的な商品展開が実現しました。加えて、データに基づいたPDCAサイクルを回すことで、販売戦略の改善スピードも向上しています。

「購買データを可視化することで、適正な在庫管理を実現しました。過去3年間の販売データを分析し、どの商品がどの程度売れるのかを精緻に予測できるようになったのです。特に、過去の類似商品の販売傾向を活用することで、初日に完売する可能性が高い商品は事前に追加生産を検討するなど、データに基づいた迅速な判断が可能になりました」(姜氏)

株式会社グレイ・パーカー・サービス 営業本部 WEB事業部 姜 俊模 氏

 

3. 「LINE ID」連携でCRMを強化

顧客との関係をより強固なものにするため、「LINE ID連携」を導入。現在、サイト利用者の50%以上がLINE IDと連携しており、LINEを通じたマーケティング施策が可能になりました。

「以前はユーザーの行動履歴をもとにしたマーケティングが難しい状況でしたが、LINE連携によって、より精度の高いCRM施策が打てるようになりました」(小林氏)

 


「ちいかわマーケット」LINE公式アカウント



また、顧客体験向上の一環として、eギフト機能も導入。オリジナルのデジタルメッセージカードを添えて商品を贈る仕組みを整え、購入者だけでなく、受け取る側の体験も向上させています。「ギフトとしての体験価値を高めることで、購入者だけでなく、受け取った方にも『ちいかわ』を知ってもらい、新規顧客獲得につなげたいと考えています」と小林氏は話します。


オリジナルメッセージカード付きのeギフト機能

4. 効率的な運用実現と、顧客体験の向上

「ちいかわマーケット」ではコマースメディアの支援を受けて、サイト運営の最適化を進めながら、顧客体験の向上を実現しています。

まず、Shopifyのタグメタフィールド(フォーム上に新たに情報入力欄を追加でき、そこで入力されたデータを取得できる機能)を活用し、商品の登録・管理を効率化。従来は手動での作業が多く煩雑だった商品管理も、構造化されたデータ管理により作業時間とミスが削減され、運用負荷が軽減されています。特に、販売管理や受注予約商品の制御を細かく設定し、適切な販売可能数の管理を行っています。

また、キャラクターごとにフィルターを設定し、ユーザーが求める商品を素早く検索できる環境を整備しています。

「通常のECサイトでは、商品ページ内で異なるキャラクターをバリエーションとして登録することが多く、ユーザーが検索した時に関係のないキャラクターの商品までレコメンド表示されてしまうことがありました。Shopifyの柔軟性によってカスタマイズが可能になり、ユーザーが求めるキャラクターだけをスムーズに表示しています」(井澤氏)


コマースメディア株式会社 代表取締役 井澤 孝宏氏

さらに、Shopifyのエクスプレスチェックアウト機能「Shop Pay」を導入し、購入プロセスをスピードアップ。現在、決済の約4割強がShop Pay経由で行われており、特に在庫がすぐに減る人気商品では「1秒でも早く決済したい」というユーザーにとってメリットの大きい決済方法となっています。

こうした取り組みの結果、2022年から2024年にかけてGMV(流通取引総額)が5倍以上に伸長と大幅な成長を達成しました。

 

【ShopifyのPlusプラン導入による成果】

  • GMV(流通取引総額):5倍以上*
  • 年次平均成長率:140%(直近3年間)
  • Shop Pay決済比率:約40%

*ShopifyのPlusプラン導入からの3年間

一方で、まだ課題も残されています。人気商品ゆえに、悪質な転売業者による買い占め行為が発生し、本当に商品を求めているお客様にご迷惑をおかけしてしまうケースも見受けられます。こうした状況を受け、同社ではお客様に安心してご購入いただけるよう、継続的な対策に取り組んでいく考えです。

EC基盤強化のその先へ──ちいかわマーケットの次なる挑戦

Shopify Plusプランを導入後、「ちいかわマーケット」は大きな成果を上げ続けています。今後の成長戦略の中心となるのが、海外展開の強化で、物流や決済基盤の整備を進めています。すでに日本語のほか4言語(英語・韓国語・中国語簡体字・中国語繫体字)で翻訳対応を実装済みで、海外SEOにも効果が表れています。

「ちいかわの世界観とお客様の体験を大切にしながらサイトを構築してきましたが、ファンの皆さんに満足してもらうために、まだまだやれることは多いと感じています。Shopifyという強固なEC基盤を手に入れた今、次のステップは海外展開。世界中のちいかわファンに向けて、スムーズに商品を届けられる体制を構築したいと考えています」(小林氏)

さらに、姜氏はデータの可視化が進んだことで、EC運営の中でも特に難しい在庫管理の最適化に挑戦していきたいと話します。「AIを活用した需要予測の可能性を探っています。生成AIツールや、Shopifyのアプリエコシステムを活用しながら、より精度の高い販売計画を構築したいと考えています」と期待を寄せます。

同社では「ちいかわマーケット」以外にも、4つのオンラインストアでShopifyを導入しています。小林氏はShopifyの柔軟な拡張性と高い安定性を改めて実感したと話します。

「Shopifyの良いところは、ストアの規模に関係なくフィットする点です。大規模ECからスタートアップまで、どんな事業者にも適用できる柔軟性があります。特に、エンタメECのようにアクセス集中が発生しやすい業態では、安定したインフラとセキュリティの強固さが不可欠です。こうした要件を他の手段で満たそうとすれば、スクラッチ開発や高額なエンタープライズ向けプラットフォームを検討せざるを得ません。それらを必要とせずに、これだけの環境を実現できるのは、Shopifyならではの強みでしょう」(小林氏)

さらに、直近では別のキャラクターのオンラインストアをShopifyで立ち上げる計画もあります。Shopifyを軸にEC戦略を強化し、海外展開、そして顧客体験のさらなる向上を目指していく考えです。

業界

メディア・エンターテイメント, おもちゃ、手工芸品・ギフト

パートナー

以前のプラットフォーム

国内プラットフォーム

ご利用の製品

Shopify Plus, Shop Pay
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