LP(ランディングページ)とは、マーケティングキャンペーンやバナー広告などを通じて訪問者が最初に閲覧するページのことです。多くの場合独立したページで、商品の購入、サービス登録、問い合わせなど、訪問者に特定の行動を促すために使用されます。英国で行われた調査によると、ウェブサイトの第一印象について寄せられたフィードバックの94%がデザインに関するものでした。せっかく広告費をかけて集客しても、LPのデザインが見づらいと、訪問者がすぐにページを離れてしまうかもしれません。
こうした問題には、小規模なショップだけではなく、世界的に有名な大手ブランドでも直面しています。潜在顧客である訪問者を、顧客に変えるには、ターゲットを深く理解し、その心をつかむデザインを作ることが重要です。
この記事では、潜在顧客を顧客に変えるLPデザインのコツを解説します。実際に成果を上げている15のデザイン事例を参考にして、効果的なLPを作成していきましょう。
LPで成果を上げるための工夫
1. ファーストビューに重要な要素を盛り込む
サイトを開いたときにスクロールせず見えるエリアである「ファーストビュー」にショップの重要な要素をしっかり盛り込むことが大切です。ファーストビューの範囲は、パソコンやスマホ、タブレットなど、使用デバイスによって異なりますが、多くの場合、ページの上から約600ピクセルまでが目安です。
訪問者の大多数は、ページを開いたあとスクロールしないままサイトを離れてしまうので、必ず目に入るファーストビューを活用し、ショップの魅力や価値をこのスクロールなしで見える領域に凝縮させることが成功への鍵となります。
2. メリットが伝わるキャッチコピーを載せる
LPのキャッチコピーでは、製品の特徴を伝えるだけでなく、訪れた人が得られるメリットをわかりやすく示す必要があります。
例えば、スマートフォン用の防水ケースを売りたい場合、「IP68等級の防水性能」と伝えるよりも、「泳ぎながら写真が撮れる」というメリットを強調すると、より伝わりやすくなります。
さらに、顧客が実際に使う言葉を取り入れるのも、メリットを伝える上で効果的です。レビューやSNSの投稿をチェックして、顧客自身がどんな言葉を使っているかを参考にしましょう。
また、ブランドの世界観に合った表現を使用することも大切です。こうすることで、顧客にブランドのイメージを印象付けやすくなります。
3. 画像と配色にこだわる
色やフォント、画像の選び方も重要です。キャッチコピーとあわせて、画像やイラスト、動画を効果的に配置することで、キャッチコピーと画像が相互に引き立てあい、視覚的に訴えるページを作ることができます。
画像は商品写真に限らず、イラストや動画も取り入れるとさらに効果的です。
4. レビューを活用する
顧客のレビューなど、実際のユーザーが作成したコンテンツであるUGC(ユーザー生成コンテンツ)も、LPに取り入れると効果的です。
実際の顧客の声を掲載すると、初めて訪れる人にも商品への信頼感が高まり、購入してもらいやすくなります。

顧客レビューは、潜在顧客の購入意欲を高めます。
レビューを掲載するときは良い評価だけでなく、中立的な意見や少しネガティブな意見も掲載しましょう。そうすることで、訪問者は商品を具体的にイメージしやすくなり、納得して購入できます。
5. CTAを効果的に配置する
訪問者に具体的な行動を促すCTA(コール・トゥ・アクション)が、クリックやタップしやすく、目立つ位置に配置されていることも重要です。CTAは、「今すぐ購入」「詳しく見る」「無料で登録」などが記されたボタンや、テキストそのものを指します。CTAが明確だと、購入や申し込みなどにつながりやすくなります。
一般的に、CTAはページ上部のファーストビューやページ途中、最後などに配置されます。ただし、効果的なCTAの内容と配置は、ターゲット層によって異なります。CTAのテキストの内容を変えたり、ボタンの色を変えたり、配置を換えたりして、最も訪問者からの反応が良いパターンを見つけましょう。
なお、設置するCTAボタンの種類は一つに絞ると訪問者が迷わずに行動できます。
ランディングページのデザイン例
1. カクトク
フリーランス営業職と企業をつなぐサービスを提供する「カクトク」のLPは、サービスを利用した企業のロゴ一覧がファーストビューに、取材実績のあるメディアのロゴ一覧がページの下部に掲載されており、世間的な評価や信頼性が伝わる構成となっています。
サービス自体の認知度がそれほど高くなくても、世間的に知名度の高い企業やメディアのロゴを表示しておくことで、訪問者に安心感を与えることができます。
(出典:https://client.kakutoku.jp/)
2. Ally
ママのためのオンライン相談サービスAlly(アリー)のLPでは、潜在顧客に対する質問が記されています。
「こんな思い抱えていませんか?」という質問の下に、訪問者が心に抱えていそうな課題を並べて共感を誘い、その解決策としてサービスを提示するという、問題解決型の構成となっています。
心の悩みという重たいテーマを扱いながらも、全体のデザインには柔らかで軽やかなイラストを多用し、利用者が気軽に相談できる親しみやすい雰囲気を醸成しています。

(出典:https://ans-design.jp/ally)
3. Path
写真編集のバーチャルスタジオであるPath(パス、英語)では、ニュースレターへの登録促進のみに目的を絞ったLPが用意されています。ニュースレターの概要を示した文章と、氏名やメールアドレスを入力するフォームのみというシンプルな構成としたことで、サイトの目的が一目でわかるようになっています。
このようなメルマガへの登録を促すLPは、オンラインストアのオープン前や改装中に表示する準備中のページとして作成するのもよいでしょう。こうすることで、ショップを閉めている間も潜在顧客との接点を確保できます。

(出典:https://pathedits.com/pages/newsletter)
4. アスザックグループ
インフラなどのものづくりを行うアスザックグループの、高校生向け採用LPは、社員数や男女比、平均年齢、平均残業時間など、就活生が知りたい会社の特徴がアイコンと数字でコンパクトにまとめられている点が秀逸です。イラストや写真がふんだんに使用されたにぎやかなページですが、伝えるべき情報が取捨選択されているため、見やすさは損なわれていません。
ヘッダーと、ページの下部に募集要項へのリンクが明るいオレンジ色のボタンで配置されており、CTAが明確なのも利点です。

(出典:https://recruit.asuzacgroup.jp/highschool/)
5. Netflix
サブスクリプション業界のパイオニアといわれるNetflix(ネットフリックス)のギフトカードを紹介するLPは、画像や配色にこだわることで重要な情報が伝わりやすくなった例といえるでしょう。背景色を黒でまとめることで、画像や情報が引き立つようになっています。また、メインビジュアルとキャッチコピーのすぐ下には「どこで購入できるか」という最も重要な情報が店舗ロゴという形でわかりやすく表示されています。

(出典:https://www.netflix.com/gift-cards)
6. カレーでニクる。
ハウス食品のレトルトカレー「カレーでニクる。」のLPは、キャッチコピーと写真のレイアウトで、商品の特徴を一目で表現することに成功しています。
ファーストビューのセンターに大きく配置された左右対称の「肉」の文字と、「カレーでニクる。」という、特徴的なキャッチコピー、そしてシズル感たっぷりのカレーの写真によって、肉を重視したカレーという商品のページであることが伝わります。
また、背景色が2色に分けられており、それぞれ豚と牛のアイコンが添えられていることから、豚肉版と牛肉版の2種類があることも一瞬で理解できるようになっています。

(出典:https://housefoods.jp/products/special/nikuru/index.html)
7. Creatorpreneur Academy
クリエイターとして副業で稼ぐ方法を伝えるオンラインコースCreatorpreneur Academy(クリエイタープレナー・アカデミー)のLP(英語)は、ファーストビューで表示する情報を絞ることで、伝えたい内容を引き立たせることに成功した例といえるでしょう。
Creatorpreneur AcademyのLPのファーストビューには「Scale up your creative side-hustle to the next level(クリエイティブな副業を次のレベルへ)」という見出し、登録用のボタン、動画が配置されており、見た目は非常にシンプルです。
オンラインコースの説明文は、一般的に長くなってしまいがちなものですが、長すぎる文章は、訪問者の離脱を招く原因になります。Creatorpreneur Academyは動画で訪問者に語りかける方法を選ぶことで、すっきりと見やすく、プロフェッショナルな見た目のLPを実現しました。

(出典:https://creatorpreneur.aliabdaal.com/)
8. Jolie
シャワー用の浄水フィルターを販売するD2CブランドJolie(ジョリー)のLP(英語)では、読者が興味を持つ情報をメールアドレスや氏名の登録と引き換えに提供することで、メールマガジン登録へと誘導する戦略を採用しています。JolieのLPでは「自分の地域の水道水にどんな化学物質が含まれているのか?」を示す水質レポートを無料でメールアドレス経由にて提供しています。「タダでお得な情報を入手したい」という消費者心理をついた、秀逸なLPと言えるでしょう。
製品の機能やメリットを前面に押し出すのではなく、水質に興味のあるユーザーにレポートを提供する形で、自然とレポートの提供下であるJolieと、化学物質を除去する浄水フィルターに興味を持ってもらう導線を設けています。

(出典:https://jolieskinco.com/pages/water-report)
9. Ahrefs
SEOツールのAhrefs(エイチレフス)は、サイトエクスプローラーやサイト管理など、複数の機能を提供していますが、その機能ごとにLPを設けていることが特徴です。こうすることで、それぞれの機能のターゲット顧客に的を絞った表示を実現しています。
また、それぞれのLPでは、商品である各ツールの表示画面をクリックしながらシミュレーションできるようになっており、訪問者を飽きさせない工夫が見られます。文字と内容が非常に多いLPではありますが、クリックしたくなるような工夫が施されているという点で一見の価値があるといえるでしょう。

(出典:https://ahrefs.com/ja/keywords-explorer)
10. るるる温泉
栃木県の旅館「湯守田中屋」が開発した、温泉の源泉を粉にした商品「るるる温泉」のLPは、商品の特徴的な性質を、アニメーションかつファーストビューで示したという点で秀逸であるといえます。
「のめる」「たべれる」「はいれる」という、るるる温泉の特徴をファーストビューで伝えつつも、下にスクロールすると、泉質の特徴や効能などを、より詳しく読むことができるようになっています。さらに下部で商品の購入に進むことができるようになっており、導線も明確です。

(出典:https://ru-ru-ru.com/)
11. 土屋鞄のランドセル
土屋鞄のランドセルのLPは、まずビジュアルで訴え、後から説明を加える構成になっています。
LPに掲載する商品説明は、短くても「これはどんな商品か?」が一目ですぐわかるようにすることが大切です。ただし、詳細情報はすべて冒頭に詰め込まず、ページ下部で顧客の疑問や不安に対応する情報を詳しく掲載するとよいでしょう。土屋鞄のランドセルはこの手法を上手に取り入れています。
ページを開くとすぐに、色とりどりのランドセルの写真が目に飛び込みます。素材の質感や色の美しさを視覚的に確認し「いいかも」と感じて、スクロールしていくと、職人のこだわりや機能性、安全性といった詳しい情報が表示されるため、安心して検討できるようになっています。
「ランドセル一覧を見る」「店舗一覧・来店予約はこちら」「カタログを申し込む」「販売スケジュールはこちら」と、CTAは全部で4つありますが、ファーストビューにすべてまとめられているため、ページ内で迷うことはないでしょう。

(出典:https://tsuchiya-randoseru.jp/)
12. mitete
葉酸サプリmitete(ミテテ)のLPでは、実際の使用者の声を活用することで、安心できる雰囲気を作り出しています。妊娠している女性をターゲット層としていることから、利用者の声には、元気な赤ちゃんを抱っこした女性の写真が添えられています。
miteteにはほかにも多くのレビューが寄せられていますが、それらはあくまでSNS内にとどめ、LPには一部の声を抜粋して提示しています。
健康食品やサプリなどは、たとえ使用者の声であっても、誇大な表現や効能効果の暗示を行ってはいけないということが薬機法で定められています。もしも、商品として健康食品やサプリを扱っており、LPでレビューを採用したい場合は、実際の使用者の声から問題のないものを探し、使用許諾を得てから抜粋で使用するのがいいでしょう。


(出典:https://464981.com/lp?u=yousan)
13. 私の30日茶
ハーブやアロマ関連を扱う「生活の木」の商品である「私の30日茶」のLPは、ハーブティーの全成分が視覚的にわかりやすいようにまとめられている点がポイントです。ハーブティーの材料の写真が、抽出した茶の写真の周りに並べられており、配合されている成分がイメージしやすいようになっています。
また、9種類あるハーブティーの購入ボタンには、それぞれのパッケージに使われている色が使用され、複数のバリエーションがあることを印象づける工夫がなされています。


(出典:https://www.treeoflife.co.jp/campaign/my30daystea/)
14. メリット
花王のシャンプー「メリット」はすでに認知度の高い商品であることから、そのLPは認知度ではなくブランディングの向上に軸足を置いたものとなっています。
センターにゆったりと配置された手書き風のキャッチコピーとサブコピーは、具体的な利点を列挙するのではなく、メリットという商品そのものが生活にもたらす価値を伝えています。「メリット」がシャンプーであるという情報は、やわらかなタッチのイラストで補足されているのみです。
ストーリーを追うように下部にスクロールすると、自然とオンラインショップに誘導される流れになっています。

(出典:https://www.kao.co.jp/merit/)
15. Shopify POS
Shopify POS のカナダ版LP(英語)では、ファーストビューに配置した画像で情報を効果的に伝えています。上部に余白を持たせた写真には、コンパクトな端末のみが映し出され、すっきりとしたレジ環境を視覚的に伝えています。
また、CTAボタンは中央に配置され、背景に対してコントラストの高い黒色に設定されているため見やすく、迷うことがありません。
内容を詳しく聞きたい人に向けては、右下にチャットでの問い合わせボタンが配置さています。問い合わせボタンは常に右端に設置されているため、LPをスクロールしながら、疑問を抱いた瞬間にチャットへ問い合わせることが可能です。

(出典:https://www.shopify.com/uk/pos?country=gb&lang=en)
まとめ
ランディングページ(LP)は効果的に作り込むことで、商品の購入や問い合わせなど特定の行動を訪問者に促しやすくなります。そのためには、ただ要素を並べるのではなく、訪問者の興味を引くデザインと、自然に行動へと導く構成が必要です。ファーストビューに重要な要素を盛り込む、画像や配色にこだわる、CTAを効果的に配置するなど、さまざまなコツを知ることで、ブランドに効果的なLPをつくることができます。
Shopifyウェブサイトのデザインは、初心者でも簡単です。ShopifyにはLP作成に必要なツールやアプリ、テーマがすべて揃っているため、テンプレートを利用してすばやくスタートすることも、オリジナルデザインのページで、あなたのブランドらしさを表現することも可能です。Shopifyを活用して、ブランドの魅力を最大限に引き出すLPを作成しましょう。
よくある質問
ランディングページ(LP)とはなんですか?
ランディングページとは、マーケティングキャンペーンやバナー広告などを通じて訪問者が最初に閲覧するページのことです。省略してLPとも呼ばれます。特定の商品やキャンペーンに特化して作られ、訪問者に「購入」「登録」などのアクションを促す役割があります。1ページにまとめられていることが多いです。
LPに必要な要素とは?
基本的な要素としては、パッと目をひく見出し、コンパクトな紹介文、CTAボタン、お問い合わせや登録用のフォームなどがあります。さらに、動画や画像、レビュー、SNSでの評判(ソーシャルプルーフ)、商品紹介のデモなどを加えると、説得力が増します。ホームページと同様、見る人に伝わりやすい構成を意識しましょう。
LPとホームページの違いは?
LPは、1つの目的に特化して作られている点が特徴です。メニューやリンクが少なく、訪問者が迷わず行動できるように設計されています。一方、ホームページは幅広い情報が掲載されており、ナビゲーションも多めに設定されています。
LPデザインの作り方は?
Shopifyなどに搭載されたホームページビルダーなどを使えば、専門知識がなくても簡単にLPを作成できます。テンプレートを選んで、画像やテキストをドラッグ&ドロップで配置するだけなので、初めての人でも直感的に操作することが可能です。
おすすめのLPデザイン参考サイト・ギャラリーは?
文:Taeko Adachi