ECサイトの立ち上げには、さまざまな工程が含まれます。ブランドに合うドメイン名の取得、ECプラットフォームの選択、テンプレートのカスタマイズ、商品カタログの登録など、やるべきことは数えきれないほどあります。なかでも、ECサイトの運営で最も大切な要素のひとつであるホスティングサーバの選択は、おざなりにされがちです。
ホスティングサーバの選択は、クレジットカードの機密情報保護や、サイトの読み込み速度改善など、訪問者が快適にネットショップを利用するためのパフォーマンスに影響します。
この記事では、おすすめのECホスティングサーバ9選を紹介します。各社を比較し、自分のネットショップに最適なサービスを見つけましょう。
ECホスティングとは?

インターネット上でウェブサイトを公開するためのスペースを提供するホスティングサービスのなかでも、ECサイトの運営に特化して必要となる機能やインフラを備えたサービスのことを指します。顧客が快適に買い物ができるようにするため、ページの高速表示や安全な決済処理、ショッピングカート機能、24時間体制のカスタマーサポートなどに対応していることが特徴です。
2025年おすすめのECホスティングサーバ9選

1. Shopify
日本国内において、Shopify(ショッピファイ)を導入しているネットショップは38,000件を越えています。特筆すべきは、ホスティングサーバの稼働率(正常に稼働している時間の割合)が99.99%という業界最高水準の安定性を持っている点です。また、複数のサーバを活用したCDN(コンテンツを素早く届けるためのネットワーク)によって、世界中の訪問者が快適にアクセスできる高速性も確保しています。
ほかにも、ECサイトの運営に役立つ以下の機能も利用可能です。
Shopifyのホスティングを利用すれば、サーバが突然使用できなくなったり、バグ対応などに時間を取られたりすることはなくなるでしょう。トラブルが起こらなければカスタマーサポートに連絡する必要もなくなるため、マーケティングなどの本来の業務に集中できます。
ITreview評価:4.2/5.0
価格:月額3,650~44,000円(年払い)、Plusのみ2,300米ドル~(3年契約時)
2. さくらのレンタルサーバ
さくらのレンタルサーバは、1996年から運営されている国内では老舗のホスティングサービスです。チャットやメール、電話など複数の窓口を設け、24時間365日受け付けている手厚いサポート体制が魅力です。マニュアルも画像や動画でわかりやすく準備されているなど、初めてウェブサイトを立ち上げる場合にも安心できるよう配慮されています。
ほかにも、次のような特徴があります。
- 初期費用が不要(マネージドサーバプランを除く)
- 無料のSSL対応
- 十分なデータ保存容量(100GB~2TB)
- 専門知識なしでできるCMSインストール
- 精度の高い迷惑メール対策
- 追加費用なしで利用できるCDN
比較的低価格でネットショップを立ち上げられるため、経費をなるべく抑えて事業を始めたい方に適したサービスです。
ITreview評価:4.0/5.0
価格:月額121円~(ライトプラン)、25,661円~(マネージドサーバ ラージプラン) ※3年契約時
3. ロリポップ
ロリポップは、コストの低さや設定の簡単さから、個人ブログなどで広く利用されてきたホスティングサービスです。ビジネス向けのプランでは、WordPress(ワードプレス)の表示速度を高速化させるプラグイン、LiteSpeed Cache(ライトスピードキャッシュ)が標準装備されています。これにより、同価格帯のホスティングサービスのなかでは国内トップクラスの表示速度を実現させています。
サイトの表示速度以外にも、次のような特徴があります。
- 無料の独自SSLで通信を保護できる
- WordPressを簡単な操作でインストールできる
- 対象のプランを1年以上契約するとドメインの取得費・更新費が無料になる
- メールなら24時間以内に返信があるサポート体制
各種機能の使い方や設定方法などがまとまったマニュアルも完備しています。サーバ・ドメイン代込みでホームページを制作するサービスもあるため、ネットショップの制作から運用まで、なるべく手間をかけずに進めたい方に最適です。
ITreview評価:4.0/5.0
価格:月額99円~(エコノミー)、550円~(ハイスピード)、2,200円~(エンタープライズ)
4. ConoHa WING
ConoHa WING(コノハウィング)は、コストパフォーマンスの高いレンタルサーバとして、人気を博しています。サーバ処理速度の高速性を特徴としており、高性能なCPUやSSDをサーバに搭載しているほか、独自にチューニングしたキャッシュ機能や、PHPアプリケーションの高速実行環境などを提供しています。
そのほかの特徴は、次のとおりです。
- 追加料金なしで使えるセキュリティ診断機能
- 無料の自動バックアップ機能(2週間分)
- 無制限のドメイン・メール・データベース
- 専用AIアシスタント付きブログ生成ツール
- 使いやすい管理画面
申し込み後、すぐにWordPressの導入や独自ドメインの設定が可能で、初めてウェブサイトを作る方でも手順がわかりやすい点が特徴です。各種セキュリティ機能やメール・ファイルの管理機能も充実しており、あらゆる規模のビジネスに対応することができます。
ITreview評価:3.9/5.0
価格:月額660~5,687円(3年契約時)
5. mixhost
mixhost(ミックスホスト)は、WordPressを使用するサイトに適したホスティングサービスです。テーマやプラグインの初期設定があらかじめ行われたテンプレートにより、新たにサイトを立ち上げる場合も最短90秒でサイト公開が可能となります。また、既存のWordPressサイトがある場合には、ログイン情報があれば簡単な設定で移転できる「らくらく引っ越し」サービスが用意されています。
ほかには、以下のような特徴があります。
- 移行作業の代行サービス
- サーバ故障やデータ消失に備えるクラウドサーバ
- 追加料金なしで利用可能なサイト作成ツール
- 安全なテスト環境からのワンクリック本番反映も可能
- 毎日自動でバックアップする機能
WordPressに特化した専用管理ツールが無料で利用でき、複数サイトの管理やバックアップ・復元作業もワンクリックで済ませることが可能です。クラウドサーバの採用により、急激なアクセス増加やサイトの障害などにも柔軟に対応できるようになっています。
ITreview評価:4.3/5.0
価格:月額495~1,408円(初回3年契約時)、680~1,980円(3年契約で更新時)
6. XServerレンタルサーバー
XServerレンタルサーバーは、累計250万件を超えるサイトが運営されてきた実績を持つホスティングサービスです。高性能なサーバ機器を採用するとともに、WordPressの高速化チューニングが施された仮想マシン環境「KUSANAGI」の技術も導入しています。大量アクセスを高速に処理できるほか、他ユーザーの影響を受けないリソース保障機能も提供しています。
ほかには、以下のような特徴があります。
- 独自SSL証明書が無料で利用可能
- 毎日の自動バックアップ
- ドメインが2つまで永年無料
- 官公庁・大手企業の利用実績もあり
- ホームページの制作から公開までを無料で代行(XServer Businessのみ)
また、技術的な知識がなくても簡単にWordPressを導入でき、別サーバからの移転作業も必要事項の入力のみで済ませられる点も特徴のひとつです。24時間365日のサポート体制もあるため、分からないことやトラブルがあっても安心してサイト運営に取り組めるでしょう。
ITreview評価:4.6/5.0
料金:月額990円〜(スタンダード)、3,960円~(ビジネス) ※期間限定セールを実施中は価格に変動あり
7. さくらの専用サーバ PHY
さくらの専用サーバ PHY(ファイ)は、自由度の高い物理サーバをすぐに利用できる専有ホスティングサービスです。クラウドサービスと連動した複合的なネットワーク設計も可能で、企業が自社で運用・使用するような柔軟なネットワーク接続を実現することができます。設定から運用までを一元管理できる専用管理ツールもあり、オンラインでの申し込み完了後、最短10分という速さでサーバを利用開始できます。
- さまざまなOSに対応
- 高スペックな物理サーバを専有で利用可能(専用サーバ)
- アクセスが集中した際の負荷分散にも対応
電源やネットワーク機器を冗長化しているため、いずれかのシステムに障害が起こったとしても問題なく稼働できるように対策が講じられています。技術者が常駐する現地サポートを24時間休まず提供し、万が一の機器故障にも迅速に対応できる点も強みです。
ITreview評価:4.0/5.0
価格:初期費用297,000~880,000円、月額料金35,200~99,000円
8. Amazon Lightsail
Amazon Lightsail(アマゾンライトセイル)は、シンプルかつ低コストにクラウドリソースを用意できるように設計された、仮想プライベートサーバサービスです。WordPressやAdobe Commerce(アドビコマース)などの環境があらかじめ構築・設定されたブループリントが用意されており、数クリックでセットアップを完了できる機能を備えています。
ほかにも、次のような特徴があります。
- 直感的に使える管理画面
- 無料の固定IPアドレス
- DNSの管理機能
- データ転送量1~8TBまで対応
こうした特長から、ITreviewが四半期に一度実施する表彰イベント「ITreview Grid Award」において、5年連続ホスティングサービス部門で受賞している実績があります。
ITreview評価:4.4/5.0
料金:月額5~384米ドル(Linux/Unixの場合)、月額9.5~574米ドル(Windowsの場合)
9. GoDaddy
GoDaddy(ゴーダディ)は、世界的に知名度の高いホスティングサービスです。WordPressを使うウェブサイトでよく利用されており、ストレージ容量やデータ転送、処理能力の違いによって、3種類のプランが用意されています。
どのプランを選んでも、次の機能を利用することができます。
- 24時間体制のネットワーク監視
- 150種類の無料アプリ
- サイトを高速表示するために世界中に配置されたデータセンター
- ワンクリックでできるWordPressの導入
なお、ネットショップの処理能力や表示速度を高めたり、30GBの保存容量や優先サポートを利用したりする場合は、プランをアップグレードする必要があります。
ITreview評価:なし
価格:月額899~2,199円
ECホスティングの種類

ECホスティングサービスは、その提供形態によって大きくSaaS型ホスティングとセルフホスティングに分類することができます。
SaaS型ホスティング
あらかじめアプリのインストールや設定などが行われたサーバを利用する形態が、SaaS型ホスティングです。ストレージ領域だけではなくウェブサイトの構築・実行環境も整っているため、専門的な知識がない事業者にとって最もわかりやすく安全性が高い方法となります。
SaaS型ホスティングの場合はコストを抑えやすいため、個人事業主などの小規模事業者に適しています。また、決済処理や在庫管理、POSなど、ネットショップの運営に必要となる機能やアプリケーションをオプションとして提供しているサービスもあります。
セルフホスティング
SaaS型ホスティングより柔軟な環境を求めているのであれば、自分でサーバを管理できるセルフホスティングを検討してみましょう。環境設定やウェブアプリケーションの用意を自分で行なう必要がありますが、その分、自由度の高いウェブサイト運営が可能となります。
セルフホスティングを利用する場合には、規模や速度に応じた以下3つの選択肢があります。
- 共用サーバ:ほかのサイトとサーバリソースを共有するタイプです。ほかのサイトの負荷が高ければ、自分が運営するサイトの表示速度に悪影響を及ぼす可能性があります。コストは低めですが、アクセス数が増えてくると力不足になる可能性が高いでしょう。
- 仮想プライベートサーバ(VPS):仮想化されたサーバ内に自分専用のスペースを確保できるため、ほかのサイトの影響を受けづらいメリットがあります。保存容量や通信容量を、ネットショップの規模や成長に合わせて柔軟にスケールアップすることもできます。
- 専用サーバ:サーバを使うのが自分のみとなるタイプで、ほかのサイトからの影響を受けなくなります。ネットショップ月間訪問数が数万単位となった際は、検討してみるとよいでしょう。
注意点として、セルフホスティングは費用が膨らみやすい面もあります。ECサイトの表示速度や優先サポート、通信量などに応じて段階的に課金されたり、必要な機能を用意するためにアプリケーションを別途契約したりする場合もあります。サイト規模に応じたリソースや機能について、入念な検討が不可欠です。
ECホスティングサーバを選ぶ方法

インターネットで「ECホスティング プロバイダー」と検索すれば、たくさんのサービスが見つかります。しかし、どのサービスが自社ECサイトに適しているのか、わからなくなることもあるでしょう。
ここでは、初心者がホスティングサーバを選ぶ際、特に意識すべき5つのポイントを紹介します。
1. 価格
ECサイトに適したホスティングを選ぶ際は初期コストだけでなく、レンタルサーバの費用といった長期的なコストにも目を向ける必要があります。なかには、アクセスの解析機能やファイルストレージ、メールアカウントの追加に別途コストがかかるプランもあります。料金プランだけでは見えづらい費用もあらかじめ確認しておきましょう。
Shopifyを活用すれば、月額3,650円からドメイン名の取得や無制限の帯域幅、在庫管理、PCIに準拠した決済機能をまとめて利用することができます。こうした機能を個別に支払って整備すると、より高額になる可能性があります。
2. 速度と帯域幅
サイトの速度と帯域幅に注目しましょう。サイトの表示速度は、コンバージョン率や検索順位に影響を与えるほど重要な要素です。株式会社ユナイテッドアローズが実施した調査では、サイトのページ表示速度が向上するほど、コンバージョン率も高くなる傾向が見られました。
帯域幅の上限も考慮すべき要素のひとつです。帯域幅とは、一定時間内に転送できるデータ量のことで、上限を超えてしまうとページの表示が遅れたり、アクセス自体が制限されたりするおそれがあります。トラフィックが増加しても快適に閲覧できるECサイトの運用を目指すのであれば、帯域幅が無制限のプランを視野に入れましょう。
3. 稼働率
稼働率が限りなく100%に近いホスティングサービスを選ぶと安心です。わずかでもECサイトがアクセスできない状態に陥ってしまうと、販売の機会を逃すことになりかねません。
サーバがダウンするといったトラブルに備えて、ホスティングサービスのバックアップ体制もきちんと確認しておきましょう。バックアップの取得頻度や復元方法はサービスごとに異なるため、運営するECサイトの規模に適したものを選ぶ必要があります。設備面では、複数電源の確保や冷却システムといった障害の防止策が講じられているかもチェックポイントです。
4. プライバシーとセキュリティ
サイバー攻撃のリスクに備えて、プライバシーとセキュリティの対策も万全にしておく必要があります。外部から不正なコードを埋め込まれたり、顧客情報が盗まれたりしないよう、マルウェアスキャンやファイアウォールといった機能が備わっているホスティングを選ぶことが重要です。
暗号化通信を行う電子証明書がない場合、サイトは「安全でない」と表示されることがあり、訪問者の信頼を失う原因にもなります。また、クレジットカード決済を扱う店舗では、PCIなどの国際的な安全基準に対応したホスティングを選びましょう。より高い安全性を求めるなら、クラウド型の保護サービスを併用するのも一案です。
5. カスタマーサポート
年中無休のサポートを掲げるサービスは多いものの、対応のスピードや質には差があるという点には注意が必要です。電話やチャットによるリアルタイムでの対応があれば、緊急時に役立つでしょう。一方、急ぎでない内容はメールなどで気軽に問い合わせできる仕組みがあると便利です。
SaaS型ホスティングと比べて、セルフホスティングを採用したサービスでは、追加料金でより手厚いサポートが受けられるプランが設定されている場合があります。自社の運用スタイルに合ったサポート体制を考えたうえで、最適なサービスを選択しましょう。
まとめ
ECサイトを運営するにあたって、どのホスティングサービスを選ぶかは非常に重要です。選んだホスティングサービスによって、自分のECサイトがいつでもどこでも快適に利用できるかどうかが決まります。
ここで紹介したECホスティングサービスから、自分に最適なサービスはどれなのかをじっくり検討してみてください。30日間の返金保証や無料でお試しできるところもあるため、実際の使用感を確かめるのもよいでしょう。Shopifyでも無料体験を実施していますので、まずは一度ご利用ください。
よくある質問
Eコマースに適したホスティングサービスは?
Eコマースに適したホスティングサービスは、Shopifyです。ウェブホスティングだけでなく、ネットショップのデザインや在庫管理、決済など、運営や販売に欠かせない機能も利用することができます。
ECホスティングは必要?
どのようなネットショップにおいても、ホスティングは必要です。ホスティングサービスが画像やテキスト、コードなどのデータを管理し、訪問者にサイトを表示できるようにサポートします。ホスティングがなければ、サイトが正しく表示されません。
セルフホスティングの3つの種類は?
セルフホスティングには、ほかのサイトとサーバを共用する共用サーバ、サーバの一部だけを個別に使える仮想プライベートサーバ、サーバ全体を単独で使う専用サーバの3種類があります。
ECサーバとは?
ホスティングサービス事業者が、ウェブサイトのデータを保存しているコンピューターのことです。訪問者のブラウザからリクエストがあると、サーバからデータが送信され、ページが表示されるようになります。
文:Yukihiro Kawata