ビジネスで課題を抱えている場合はShopifyにご相談ください。 お問い合わせはこちら

アークテリクスがShopifyで加速したEC売上10倍成長、「売って終わり」にしない顧客体験の最大化

カナダ発の高機能アウトドアブランド「アークテリクス(ARC'TERYX)」。過酷な環境下で機能するプロユースの性能と洗練されたデザイン性を兼ね備え、近年は日本国内でもアウトドア愛好家のみならず、都市部での日常使いやインバウンド層からも支持を集めています。

実店舗を積極的に拡大する一方、オンラインショップでは大きな壁に直面していました。以前利用していたグローバル共通のプラットフォームは柔軟性が低く、日本独自の施策をスピーディーに展開できなかったのです。そこでShopifyを導入(2024年にPlusプランへアップグレード)し、俊敏性の高いシステム基盤とデータドリブンな事業運営を実現。店舗網の拡大やブランド認知の向上、商品力の強化といった複合的な取り組みが実を結び、EC売上は約4年で約10倍に伸長。こうした成長を支える基盤となったのが、Shopifyでした。

【Shopify導入による成果】

  • EC売上が約10倍(年平均成長率80%以上)
  • 注文数が約9倍(年平均成長率70%以上)
  • 平均注文単価(AOV)が20%以上向上

  ※Shopify導入前と導入後4年間での比較

今回、アークテリクスがShopifyをどのように事業戦略に組み込み、現在の成長を実現したのか。そして最新のAI活用やOMO(Online Merges with Offline)戦略の先に、何を見据えているのか。アメア スポーツ ジャパン株式会社で、アークテリクスのE-comマネージャーを務める須田康平氏に話を伺いました。

アメア スポーツ ジャパン株式会社 アークテリクス E-comマネージャー 須田康平氏

顧客体験の最大化へ。戦略を支える実装力とアジリティ

アークテリクスは現在、オンラインストアを商品の販売機能にとどまらず、顧客との長期的な関係構築を担う重要な基盤として位置づけています。特に事業の核に据えているのが、実店舗とデジタルを融合させた一貫性のある顧客体験の提供です。

「アークテリクスにおいて、オンラインストアはブランド全体の世界観を体感していただく重要な接点です。2014年の原宿ブランドストア出店以来、私たちは実店舗での最高のゲストエクスペリエンスをブランド戦略の核としてきました。オンラインストアは、その体験をいつでも、どこでもお客様に届けるための延長線上にある存在なのです」(須田氏)

実店舗の物理的なスペースには限りがある一方、オンラインストアは全製品群と詳細情報に24時間アクセスできるブランドのハブとして機能します。同社のオンライン戦略は、顧客のカスタマージャーニーに沿った以下の4つのフェーズで構成されています。

  1. 情報収集: 製品の特性やストーリーを深く伝える
  2. 購入体験: デジタルならではのスムーズな決済と導線
  3. CRMコミュニケーション: 会員プログラムを通じた継続的な関係構築
  4. アフターサービス: 製品を長く愛用するための修理受付など

こうした一貫したブランド体験の実現には、市場の変化に合わせてスピーディーにサイトをアップデートし続ける柔軟性が不可欠です。しかし、以前利用していたグローバル共通のプラットフォーム(Adobe社 Magento)では、理想の顧客体験を形にするためのスピード面で大きな壁に直面していました。

「グローバル主導のプラットフォームは、大規模インフラとしてのスケールメリットこそあったものの、柔軟性が低く、日本市場のニーズに合わせたローカルな施策をスピード感を持って実行することが困難でした」(須田氏)

そこで同ブランドは2021年、Shopifyへのリプレイスを決断します。選定の最大の決め手について、須田氏は次のように語ります。

「最も重視したのは、日本単体で独自の施策やサイト表現をスピーディーに実装できる環境でした。Shopifyであれば、新機能の追加やUIの改善を迅速にテストし、効果がなければ即座に元に戻すといった運用が可能です。この圧倒的なスピード感とアジリティこそが、導入の最大の理由でした」(須田氏)

アメア スポーツ ジャパン株式会社 アークテリクス E-comマネージャー 須田康平氏

導入成果:売上10倍の実現と、現場の「実装力」向上

Shopifyへの移行と、それに伴う施策の高速なPDCAサイクルは、売上に確かな成果をもたらしました(2024年にShopifyのPlusプランへアップグレード)。2021年の移行以降から2025年までの4年間で、アークテリクスのEC領域は次のような成長を生み出しています。

【Shopify導入による成果】

  • EC売上が約10倍(年平均成長率80%以上)
  • 注文数が約9倍(年平均成長率70%以上)
  • 平均注文単価(AOV)が20%以上向上

  ※Shopify導入前と導入後4年間での比較

特にShopifyが大きく貢献しているのが、顧客接点の最適化による「コンバージョンの改善」と「LTV(顧客生涯価値)の向上」です。同社では、グローバルから提供される素材に日本独自の企画・撮影を組み合わせたコンテンツを内製し、PLP(商品一覧ページ)やサイト全体のコンテンツを継続的に磨き込んでいます。

たとえば、同ブランドが独自に展開するWebコンテンツ「System of Dress」は、標高や温度帯、利用シーンに合わせて最適な製品の組み合わせをマッピングし、見た目の近い製品の違いを視覚的にわかりやすく伝えています。

 「このページはエンゲージメントが非常に高く、SNSでもクリックだけでなく『保存』される率が高い、読み物としても成立するサクセスストーリーの一つです」(須田氏)

Webコンテンツ「System of Dress

さらに、売って終わりにせず、ローカルのお客様と長期的な関係を築くため、ブランド体験をシステム上で一貫させる独自の施策も展開しています。

その一つが、購買金額ベースではなく、アウトドアアクティビティやイベントへの参加、レビュー投稿といったブランドとの関わり(体験)そのものに対してポイントを付与する独自のロイヤルティプログラム「EXPERIENCE POINTS(XP)」です。 

「XPは金額ベースではなく、自然と向き合い、アークテリクスとのつながりを持っていただける『体験』を価値にした制度です。Shopifyと連携し、購入から来店イベント、レビュー投稿まで、お客様の体験全体をシームレスにつなぎ込む仕組みを構成しています」(須田氏)

また、製品を長く愛用してもらうための修理プログラム「ReBIRD」の窓口業務もオンラインに統合されました。ここでもShopifyのエコシステムが力を発揮。予約管理アプリ「Cowlendar」を活用し、実店舗のリペアカウンターの空きスケジュールの確認や予約を、オンラインストアから即座にできる仕組みを実装しています。

修理プログラム「ReBIRD」予約画面

現在、アークテリクスは日本、オーストラリア、ニュージーランド、台湾の各市場でShopifyを運用しています。さらに、同グループ内のサロモン、ウィルソン、アトミック、ピークパフォーマンスといった他ブランドもShopifyを採用しており、ブランドの垣根を越えたナレッジ共有が日常的に行われています。

「将来的な拡張性の高さから、我々グループの他のブランドも広くShopifyを導入しています。年2回のメジャーアップデートで最新のコマース機能が追加されていくプラットフォーム側のメリットに加え、グループ内での情報共有が大きな強みです」(須田氏)

ECチームを運用担当から成長推進チームに変える、Shopifyの機能・アプリ活用

アークテリクスのShopify運用の特徴は、自社の課題解決に直結する機能はもちろん、アプリについては国内外問わずスピーディーに選定し、現場のオペレーションに組み込んでいる点にあります。

UI/UXの改善によるコンバージョン向上から、バックエンド業務の自動化まで、その活用範囲は多岐にわたり、次のようなメリットを生み出しています。

  • 自動化ツール「Shopify Flow」:定型業務の削減

顧客・注文管理、不正対策、ポイント付与など、多岐にわたる業務を自動化し、ECチームの働き方そのものを変革しています。サイトを更新するだけの受動的な体制から脱却し、売上最大化のための攻めの施策にリソースを集中できる組織へと進化しました。

  • AIアシスタント「Sidekick」:自然言語によるデータ分析の高速化

Shopifyに搭載されたAI機能を導入し、売上やコンバージョン・トラフィック分析のレポーティングに活用。新規顧客とリピーターの比率比較、期間ごとの数値推移、商品単位・カテゴリー単位での売上分析まで、専門的なSQLの知識がなくとも、自然言語の指示だけで即座にデータを可視化できるようになりました。以前はダッシュボードを開いてCSVに書き出すといった作業が必要でしたが、その手間がなくなったことで、意思決定のスピード自体が大きく向上しているといいます。

「プログラミング知識が全くない状態でも自然言語でAIに指示を出せるため、データ分析のスピードと気軽さが格段に向上しています」(須田氏)

  • 不正注文検知システム「Forter」:botによる不正注文への対策と作業負荷の排除 

同ブランドは高単価で注目度の高い商品が多く、botをはじめ様々な不正購入パターンへの対応が大きな課題でした。専用の検知システムを導入し、これまで目視チェックに割いていた作業負荷を、限りなくゼロに近い状態へと抑え込むことに成功しています。

  • レビュー収集アプリ「Leeep」:UGC活用によるコンバージョン率の向上 

レビューや写真の収集・表示を自動化するアプリ「Leeep」を導入し、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を強化。購買の意思決定を強力に後押ししています。「セッションの中でUGCを閲覧しているユーザーとそうでないユーザーとで、コンバージョンに明確な差が出ていることがわかります。お客様からのリアルな声や画像を拡充することは、購買の後押しに大きく寄与しています」(須田氏)

  • 返品管理アプリ「Recustomer」:返品業務の自動化とCS負荷軽減 

ECにおいて労働集約的になりがちな返品対応業務に導入。オペレーションの大部分を自動化し、カスタマーサポートの負荷を削減しました。「今まで手作業で行っていた返品作業の大部分を自動化できています。バックエンドの業務効率化において非常に大きなメリットです」(須田氏)

こうしたShopifyの機能やアプリをフル活用し、業務の自動化とデータ分析の高度化を進めた結果、ECチームの働き方にも劇的な変化が起きました。

「以前はサイトに商品を載せて更新したら終わりという『農耕民族』的な働き方でしたが、Shopifyのエコシステムを活用してリソースを創出したことで、自ら販売最大化のためにデジタル施策などの新たなトライアルに時間とエネルギーを割く『狩猟民族』のような働き方へと変革できました」(須田氏)

施策を打っては効果を検証し、次の一手につなげる仮説検証型の体制へ。ECチームは、売上最大化に向けて自らトライ&ラーンを重ねる組織へと進化しています。

今後の展望:パーソナライゼーションとOMOの深化

着実な事業成長を遂げた今、アークテリクスが次に見据えるのは、データとAIを活用した顧客体験のさらなるパーソナライズと、店舗・オンラインの境界線をなくすOMO戦略です。

須田氏は今後の注力領域として、以下の3つの柱を掲げます。

  • モバイルアプリの強化:会員プログラム「バードクラブ」を起点とした、顧客一人ひとりに寄り添うパーソナライズされたコミュニケーションの深化。
  • AIとデータの活用:意思決定のデータドリブン化に加え、商品接客やディスカバリーなどフロントエンド領域へのAI導入。
  • オムニチャネルの拡張:Shopify POSの活用も視野に入れた、ECと店舗間における在庫流動性の向上と、顧客体験のシームレスな統合。

特に昨今、検索エンジン上でAIが直接回答を提示するAIO(AI Optimization:AI検索最適化)やエージェンティックコマースのトレンドが加速する中、同社はAI側が正しくデータを読み取れるよう商品情報の構造化を進めています。須田氏は、AIが正確に理解できるデータ設計と、お客様に向けた「ブランドビジネスとしての本質」、その両方が並行して重要になると強調します。

「AIが進化していく中で、システム面やAIエージェントに最適化された情報設計は当然Shopifyを使って整えていきます。一方で、より本質的なところで言うと、お客様に真に選んでいただける製品やサービスをきちんと提供し続けることが何より大事です。AIは我々が一方的に発信する情報だけでなく、お客様からの声や市場全体の評価も学習します。だからこそ、お客様自身に『アークテリクスが欲しい』と思っていただける状態を我々が作ること自体が、結果としてAIエージェントに選ばれるブランドになる本質なのだと考えています」(須田氏)

Shopifyという俊敏なシステム基盤を強みに、急速な成長を遂げたアークテリクス。テクノロジーの実装力と揺るぎないブランド戦略の両輪で、店舗とオンラインが融合した「最高のゲストエクスペリエンス」の実現へ向けて、同ブランドは歩みを進めています。

業界

Fashion & Apparel

以前のプラットフォーム

Adobe Commerce / Magento

ご利用の製品

Shopify Plus, Shopify Flow, Sidekick
ビジネスで課題を抱えている場合はShopifyにご相談ください。 お問い合わせはこちら