EC撮影では、撮影技術だけでなく事前準備が重要です。撮影アイテムの準備、撮影内容の文書化、スケジュール管理、スタジオや商品のセッティングなど、緻密に準備することで円滑で質の高い商品撮影につながります。
また、撮影段階で完成イメージに近い仕上がりになるよう、ライティングや構図を整えておくことで、撮影後の画像編集の工程数を減らすこともできます。
この記事では、商品撮影の流れや、つまずきやすいポイントを紹介します。商品撮影の進め方や撮影方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
事前準備

1. 撮影を計画する
撮影をスムーズに進行させるには、撮影当日の流れをあらかじめ計画しておくことが重要です。1日のスケジュールをまとめておき、撮影する商品や撮影方法、ショットサイズ、使用する機材などをリスト化しておくと、関係者全員が混乱することなく統制された対応を取ることができます。
当日の撮影を円滑に進められるよう、ショットリストとコールシートを事前に用意しておくと安心です。
ショットリスト
ショットリストは、撮影シーンやショットについて詳細をまとめた工程表です。「何を」「どのように」撮影するかという指示を記載しておくのが一般的です。以下のような情報をExcelなどにまとめ、撮影の進行に合わせて随時更新します。
- 撮影する商品リスト
- モデル
- 商品アングル
- 強調すべき特徴(刺繍、質感など)
- 撮影方法(平置き、横置き、マネキン使用など)
- そのほか必要な概要(撮影の細かな内容、商品がある場所など)
撮影中はショットリストを手元に置き、撮影漏れが起こらないように進行管理に活用しましょう。
コールシート
コールシートは、当日の撮影スケジュール・場所・スタッフの集合時間をまとめたドキュメントです。特にモデル撮影の場合、待ち時間が長くならないよう、セット準備の工程も含めて細かく記載することが重要です。コールシートは1週間前を目安に配布し、関係者全員のスケジュールを共有・確認します。
2. 必要な機材を整える
商品撮影では次のような機材が一般的に使われます。撮影する商品やカットに合わせて、必要なものを揃えましょう。
- デジタル一眼レフカメラ(スマートフォンでも可)
- 三脚
- 照明
- 白背景
- レフ板
- ライトコントロールパネル
- 小道具
当日の流れ
1. スタジオを準備する

EC撮影では、商品ごとのバラつきを防ぐために、撮影環境を統一してセッティングしましょう。同じカテゴリの商品は背景・構図・光の条件を揃えて撮影することで、商品ページに統一感が生まれ、世界観が伝わりやすくなります。
撮影前に、次の設定を確認し、必要に応じて調整します。
- 照明の位置や角度
- カメラと商品の距離
- 背景紙やレフ板の配置
- 撮影時間帯(自然光を使う場合)
これらのセッティング内容は事前に記録を取っておくと、次回の撮影時に同じセットを再現できます。

さらに、現場の安全対策として、照明類のコードに足を引っかけないよう、砂袋やクランプなどで固定し、三脚が安定するよう設置しましょう。撮影セットは意外と事故が起きやすいため、事前対策が大切です。
2. 商品をスタイリングする
高品質な物撮りには、撮影前のスタイリングが大切なポイントです。気になる点は編集で修正・補正できますが、撮影時に整えるほうが自然な仕上がりになります。
スタイリングのポイントは次の通りです。
- タグ、ステッカー、目立つラベルを外す
- ほこりや糸くずなどを除去する
- 配送中の損傷、汚れを確認する
- 必要に応じて損傷を修理する
- 衣類の場合はスチーマーでシワを伸ばす
- アクセサリーはクロスで表面を磨く
モデルやマネキンを使用するアパレル撮影では、クリップやピン、ガーメントテープを使用して商品のシルエットを整えると、商品をより魅力的に見せることができます。予算に余裕がある場合は、プロのスタイリストを起用するのも一つの手です。

また、特殊な撮影手法として、ゴーストマネキン撮影があります。ゴーストマネキン撮影とは、専用マネキンや画像編集を活用して、服だけが立体的に見えるように仕上げる手法です。モデルを使わずに、商品のシルエットや着用感を訴求できるのが特徴です。
3. 撮影する

撮影環境や商品のスタイリングを整えたら、事前計画に従って撮影を行います。まずは、絞り・ISO感度・ホワイトバランスなどをテスト撮影しながら、商品が正確かつ魅力的に見える設定を探ります。カメラの準備が整ったら、実際の撮影に進みます。撮影中は、状況に応じて必要な微調整を加えながら進行しましょう。
また、画像キャプチャーソフトを使用して、カメラとパソコンを接続し撮影すると、その場で写真を確認でき、カタログ化や補正などの作業が即座に行えます。代表的なソフトとしてCapture One Pro(キャプチャー・ワン・プロ)やAdobe Lightroom(アドビ・ライトルーム)などがあり、いずれも無料トライアルが用意されているため、まずは試してみると良いでしょう。
撮影のポイントは、商品の特徴が正確にわかる写真を意識することです。実物に近い色や質感、サイズ感をできる限り再現し、商品を具体的にイメージできる写真に仕上げましょう。また、衣類の場合は、洗濯表示や縫い目といった細部が確認できる写真も掲載すると、商品の品質や取り扱い方法が把握でき、安心した購入につながります。
撮影後
1. 画像を処理する

画像処理では、背景カラーや影の出し方、マージンや整列位置などの条件を統一するよう心がけましょう。Photoshop(フォトショップ)などの画像編集ソフトの機能を活用すると、露出やコントラストなどの主要な調整をすべての写真に一括適用できます。
2. 最終チェックして公開する
最終チェックは編集者とは別のメンバーが担当するようにしましょう。客観的な視点で確認することで、見落としを防ぎ、写真の品質を向上できます。
また、画像サイズは公開前に圧縮しましょう。画像が重いとページの読み込み速度が落ち、顧客の離脱につながります。コンバージョン率に直結するだけでなく、検索順位が下がる要因にもなるため、ファイルサイズには注意が必要です。
画像の最適化が完了したら、Shopify(ショッピファイ)などのEC管理画面から商品画像をアップロードして公開します。
商品撮影でつまずきやすいポイント

カメラ設定がうまくいかない
プロのカメラマンでない場合、思い描いたイメージと違う写真になってしまい、どこを調整すべきか判断できなくなることがあります。こうしたトラブルを防ぐためにも、本番前に必ずテスト撮影を行い、絞り・ISO感度・ホワイトバランスなどの設定を事前に確認しておくことが重要です。
予定通りに撮影が進まない
撮影は複数の関係者が関わるほど、計画通りに進みにくくなります。セット準備の遅れや、商品のスタイリングに思った以上に時間がかかるケースも珍しくありません。
そのため、予定通りに進まない前提でスケジュールを組み、余裕を持ったタイムラインを設定しておくことが安心につながります。
意思疎通が難しい
モデルを起用する場合や、アシスタントと一緒に進める場合、こちらの意図やイメージが十分に伝わらず、理想の仕上がりとズレが生じることがあります。また、伝え方によっては相手が必要以上に緊張してしまうこともあります。
円滑に撮影を進められるよう、理想に近い参考画像の共有や、具体的で的確な指示出しなど、撮影イメージが伝わる工夫をこらすことが大切です。また、声かけする際は笑顔を心がけることで、場の雰囲気が和みリラックスした状態で撮影できます。
まとめ
商品撮影には多くの準備が伴います。撮影の流れを計画し、スタジオ環境を整え、商品の状態を確認するなど、撮影に入るまでの工程を丁寧に進めることが大切です。
また、撮影は計画通りに進まないことも少なくありません。スケジュールには余裕を持たせ、撮影イメージを事前に共有し、関係者全員とのコミュニケーションを密に取りながら進めることで、質の高い商品撮影につながります。
商品撮影の流れに関するよくある質問
商品撮影の一連の流れは?
- 撮影を計画する
- スタジオを準備する
- 商品をスタイリングする
- 撮影する
- 画像を処理する
- 最終チェックして公開する
商品撮影に必要なものは?
商品撮影には以下のようなものが必要になります。
- カメラ(スマートフォンでも可)
- 三脚
- 照明
- 白背景
- レフ板
- ライトコントロールパネル
- 小道具
ただし、すべてを揃える必要はなく、完成イメージに必要なものだけを選んで準備しましょう。
文:Momo Hidaka





