アパレル商品を販売するEコマースブランドにとって、クオリティの高い商品画像(英語)は必要不可欠。商品説明(英語)の文章がどんなに優れていても、多くの顧客にとってはそれだけでは物足りません。商品を購入するかどうかの決断は、商品の写真にかかっていると言っても過言ではありません。
ただし、なくてはならないからと言って、写真撮影に高い金額を費やす必要はありません。プロとアマチュアの差は、実のところ「経験値」であると言っても過言ではないでしょう。
ちょっとした写真のセンスと適度な予算があれば、このガイドは必ず役に立つはず。このガイドでは、撮影の秘訣や注意事項を踏まえながら、アパレル写真の撮影方法について説明していきます。
アパレル撮影に必要な機材
撮影に使う機材の種類は予算によって異なります。低価格の機材を揃えて低予算に抑えることも、特殊な照明やディスプレイなどのより高価な機材に投資することも可能です。
それではここから、アパレル商品の撮影に必要な機材を見ていきましょう:
カメラ
アパレル撮影にデジタル一眼レフカメラは必要ありません。デジカメでもコンパクトカメラでもスマホでも、商品画像は手元にあるカメラで十分に撮影できます。新しいカメラを買う予算があるなら、Quoraによる商品撮影に最適なカメラについてのスレッド(英語)をチェックしてみてください。
三脚
三脚は、撮影中に誤ってカメラを揺らすことから生じる「ぶれ」を取り除いてくれます(ちなみに「ぶれ」は誰にでも起こります)。使い方はいたって簡単で、カメラを取り付け、商品をフレームに収め、写真を撮影するだけ。三脚はフリーサイズではないため、お手持ちのカメラに合うものを選ぶようにしてください。
照明
アパレル商品の撮影には照明が必要になります。自然光が入る窓付の部屋がある場合は、そこで撮影するのが一番です。ない場合には、ソフトボックス(英語)のような人工照明が必要になります。人工照明機材はアマゾンなどでも見つけることができます。
注意:オンラインで見る撮影用の照明キットを一括りにしないように気をつけてください。LED照明や反射板はすぐに必要になるものではありません。シンプルなセットアップから始めて、撮影に慣れてきたら新しい機材を取り入れるのをおすすめします。
フォームボード(発泡スチロール)の白い反射板
自然光または人工照明のどちらを使ったとしても、商品には必ず影が生じます。優れた画像を撮影したくても、暗くなってしまうことがほとんどでしょう。そんな時に白いフォームボードを置くことで、影に光を反射させて明るくすることができます。
留め具またはテープ
テーブルを使って撮影する場合には、テープや留め具を使ってフォームボードや背景シートを固定すると便利です。
白い背景
撮影には白い背景を用意しましょう。たくさんの商品を一度に撮影する場合には、スイープと呼ばれる白い背景用のシート(英語)を購入することをおすすめします。スイープとは大きなロール状の白い紙のことで、商品を置いて撮影するための背景をつくることができます。シートが汚れてしまったらその部分を切り取り、新しい紙を引き出して使用すればいいだけです。
スイープの代わりに厚紙を使うことも可能です。お近くの文房具店やオンラインにて格安で入手することができるでしょう。
トルソーまたはモデル
アパレル撮影に便利に使えるトルソー。90ドル前後(日本では5,000円前後)から購入することが可能です。トルソーの代わりに、友達や家族のメンバーに頼んでモデルになってもらってもいいでしょう。
トルソーやモデルの代わりに、テーブルなどの平らな表面を使って商品撮影をすることもできます。平らにレイアウトされた商品画像もブランドからは人気があります。この場合は服が平面に置かれるので、90度上の角度から撮影することになります。
ネットショップのためのアパレル撮影 - 7つのステップ
機材が揃ったところで、ここからはアパレル商品の撮影方法を見ていきましょう:
1. 服の準備
画像では完璧な状態の商品を見せることが大事です。服には保管や輸送の間にシワができたり、型崩れしたりすることがあります。特に商品見本は、元々完璧に仕立てられていないことが多いため、配送などよって傷んでしまうこともあるでしょう。
商品画像用の服の準備は、撮影においてとても重要な出発点となります。しかし多くの人はこのステップを飛ばし、Photoshopや無料の写真編集用ソフトウェア(英語)に頼って、シワやシミなどの目に見える欠陥を修正しようとする傾向にあります。でもそれは決しておすすめできるものではありません。Photoshopの高度な編集技術の習得にはかなりの時間や専門性を要し、また過度な編集は画質を落とすリスクを伴います。
そのため、できるだけ完璧な状態に近い商品を撮影し、Photoshopは最後の仕上げや色補正にのみ使用するよう努めましょう。
商品は上から下、そして内側から外側までしっかりとチェックしてください。いらないタグ、ステッカー、余分な繊維などが付いていないかどうかを確かめ、あった場合には必ず取り除きましょう。保管中にできてしまったシワはアイロンや蒸気をあてて伸ばしてください。傷んでいる箇所は補正し、いらないものは取り除きましょう。埃や糸くずなどを取る場合には、ローラー式の粘着テープが役立ちます。
2. 写真スタジオのセットアップ
いつくかの機材さえ揃えれば、ほぼどんな部屋でも簡単に写真スタジオへと変えることができます。必要なのは、カメラ、三脚、白い壁、Cスタンド(センチュリースタンド)、ガムテープ、そして自然光(英語)だけ。もし予算に余裕があり、撮影する場所や時間を柔軟に管理したいようであれば、もう少し多くの機材を揃えてもいいでしょう。
撮影場所の周りからは不要なものをどかして、撮影しやすいように整理整頓してください。
背景
背景には常に白かグレーのものを使って、余分なものが写るのを防ぎ、できるだけ実物に近い色を再現してください。背景にはどんな写真ショップでもすぐ手に入る、つなぎ目のない白いロール紙が最も適しています。ロール紙をすでにお持ちなら、背景用の照明キットを100ドル以下(日本でも1万円前後)で購入してもいいでしょう。
ロール紙を床までカーブさせながら延ばして端を留めれば、いらないシワや影を防ぐことができます。
スタンドを使うと背景を置く場所の選択肢が増えるため、スタジオ内を移動するスペースが確保できるようになります。スタンドを買う予算がない場合には、ロール紙を天井と床にテープで留めて使うことも可能です。
背景の準備ができたら、その中央かつカメラの正面に、モデルかトルソーに着せた商品を配置してください。
カメラ
商品撮影ではカメラは極めて重要な位置を占めていますが、それだけで良い写真が撮れるとは限りません。カメラはあくまでも必要機材の一部であると考え、全予算をつぎ込まないようにしましょう。おすすめは、少なくとも手動で「露出」や「絞り」を調整できるデジタル一眼レフです。ただし予算がないようであれば、手元にあるスマートフォンを使って安価に済ませることも可能です。
また、必ず三脚を使いましょう。安定性があるためカメラが振動することなく、ブレのない写真が撮れるようになります。さらに手元が空くため他の作業も楽になります。高価な三脚を買う必要はありませんが、どんなものでもとにかく使うことに意義があります。
三脚とカメラは商品の正面に配置してください。ほとんどの場合、カメラを動かす必要はありません。角度の異なるショットを撮りたい場合には、商品を動かせばいいのです。
照明
窓から入る自然光(英語)は、高品質なのにお金がかからない光源です。大きな窓があり十分な自然光が入る場所なら申し分ありません。ただし予算が許すようであれば、簡単に使用できる照明キットをレンタルもしくは購入することをおすすめします。
人工照明機材が手元にあると、自然光が足りない時でもいつでも撮影が可能になります。そのような使い勝手のよさが効率を生むと同時に、安定した照明のおかげでプロ仕様の画質を維持できるようになります。照明の設定には、ライトヘッド、ソフトボックス、Cスタンド、電池パック、ポケットウィザードが必要となります。
「ライトヘッド」と聞くと、照明そのものを想像するかもしれませんが、ストロボ、またはフラッシュのことを示しています。初めて購入する場合には「モノライト」と呼ばれる単体式のストロボがおすすめです。照明キットの中では、ライトヘッドが最も高価な機材となるでしょう。場合によってはカメラよりも値が張ることもあるかもしれません。そのため、じっくりとリサーチを重ねて、長期間使えるものを選ぶようにしてください。
「ソフトボックス」とは、光を拡散させて、商品に光を均一に照らすためのものです。「Cスタンド」はライトヘッドとソフトボックスを設置するために使います。「ポケットウィザード」とは、ライトヘッドをフラッシュとして使う際に、カメラと光を同期させるためのリモコンのようなツールです。
3. 照明の設置
自然光を使う場合には、間接光が均一に入る窓の近くに商品を配置しましょう。モノライトユニットを使う場合には、真上から見た下の図のように、照明を効果的に設置してください。
照明が商品全体に均一に当たるように、商品に対して45度の角度に光源とソフトボックス(またはアンブレラ)を配置します。カメラは被写体の正面に置きましょう。背景に近すぎる場所に置くと、商品に影ができてしまうので気をつけてください。影ができてしまった場合には、影がなくなるまで被写体を背景から離してください。光源の電力は約半分に設定しましょう。
手動で適正露出を設定するには、カメラの「露出補正」機能を使います。カメラのファインダーにある露出補正の設定値を「0」に調整することで適正露出が設定されます。
ただしストロボを使用している場合には、フラッシュが点くまでカメラが光を認知しないため、そこまでシンプルにはいきません。
まずはシャッタースピードを1/200秒またはそれ以下、そして絞りをf-11またはそれ以上に設定してください。その後何枚か試し撮りをしてから、設定を微調整して露出とフォーカスを最適化しましょう。
バッテリーパックの容量によっては、シャッタースピードが速すぎると光源が間に合わないことがあります。そのため、フラッシュを点ける間隔には充電時間を考慮してください。
4. スタイリング
モデル
スタイリングにはモデルを起用するのが最も理想的です。顧客が自ら商品を着る姿を思い描けるだけでなく、よりプロフェッショナルな印象をも与えるからです。モデルは商品に命を吹き込んでくれますが、プロのモデルを雇うとなると高額になってしまうのが悩ましいところです。
トルソー
妥当な金額で手に入るトルソーは、動くことがないため取り扱いも簡単でとても便利です。
トルソーへのスタイリングは時間をかけて行い、服が大きく見えてしまうようであれば、ボディにうまくフィットするようにピンで留めたりつまんだりしてみましょう。
トルソーが商品の妨げになる、または商品の価値を下げてしまうと懸念しているなら、撮影後のゴーストマネキン加工(英語)をおすすめします。各アイテムの撮影枚数を数枚増やすだけで、商品画像からトルソー部分を取り除くことができ、シェイプやフィットがわかる3D画像ができあがります。
平面レイアウト
「平面レイアウト」とは、平らな場所に被写体を配置して真上から撮影することです。「俯瞰撮影」または「真上撮り」とも呼ばれています。トルソーやモデルの代わりに美しい商品撮影を実現してくれるため、売上にもプラスの効果をもたらしてくれるでしょう。
平面レイアウトはソーシャルメディアでもよく使われています。もちろんウェブサイトのコンテンツ用にも活用できます。
平面レイアウトは、商品を着ている姿を誰もが思い描けるような、標準的なデザインの服に適しています:
- Tシャツ
- セーター
- ジーンズ
- スポーツパンツ
- ビーニー
- ソックス
スポーツウェアやアウトドア用ギアなどのより複雑なデザインの服は、フィットを見せるためにもモデルかトルソーを使った方がいいかもしれません。まずは商品を平面に配置して、どのように見えるか試してみましょう。
ハンギング
ハンガーを使って商品を壁や白い背景越しにかけて撮影する「ハンギング」。商品を目の高さで見せたい時に使用される手法です。予算も安価で済み、他の手法よりも手間ひまかかりません。
ハンギングは、シルクなどの軽量な素材で作られたアイテムの撮影にぴったりです。一度スタイリングの準備をすると、シワにならないのも利点です。
5. カメラの設定
カメラの設定を間違ってしまうと、どんなにPhotoshopで修正を試みてもプロ仕様の写真に仕上げることはできません。そのため、商品撮影に入る前に、カメラの「ISO感度」「絞り」「ホワイトバランス」機能をしっかりと理解することが大切です。
ISO感度
ISO感度はISO 600〜ISO 640以下に設定しましょう。ISO感度が高いと、グレーや色の付いた斑点のようなノイズやざらつきが生じてしまい、古い映画のような見苦しい画像になってしまいます。ISO感度が高いほどノイズが多く生じるためシャープな写真は撮れず、ディテールがぼやけて写ります。三脚を使えばISO感度の設定値をISO 100〜ISO 200に維持できるので、画像の透明度やシャープネスを最適化することが可能になります。
絞り
カメラ設定で「f」の付いた数値(例:f-16、f-2.8など)で表される「絞り」は、フォーカスを制御するための機能です。通常は絞りの数値が大きいほど、画像のより大きな範囲にピントを当てられるようになります。絞りを「f-11」以上に設定すれば、商品全体をフォーカスすることができるでしょう。
ホワイトバランス
ブルーかオレンジのフィルターを通して撮影されたような写真を見たことはありませんか?それはきっと、ホワイトバランス設定がオフだったからでしょう。光源ごとに色温度が異なるため、「色かぶり」という現象が生じ、カメラが実際の白色を認識するのが困難になります。そのような場合にホワイトバランスを設定することで、カメラが白の色味をどのように認識するかを制御できるようになります。
光源にはさまざまな種類がありますが、最も一般的なのはタングステンランプ、蛍光管、LED、自然の太陽光などです。
ホワイトバランスは、使用している光源の種類に応じて設定することも、ホワイトバランスを「自動」に設定してカメラ任せにすることもできます。どちらを選択するとしても、ホワイトバランスの設定を忘れないことが重要です。忘れてしまうと、Photoshopで正確な色を再現するのにかなり苦労するでしょう。
6. 写真の撮影
ついに心待ちにしていた時がやってきました!カメラを被写体に向け、シャッターを半押しして被写体にピントを合わせ、写真を撮影してみましょう。撮影中は光の加減を見ながらカメラの設定を調整してください。経験を重ねていけば、そのうち直感的に調整できるようになるでしょう。
撮影中はできる限り多くの写真を撮ってください。商品を前後左右そして45度の角度から、またあらゆるディテールも忘れずに撮影しましょう。商品の特徴を際立たせるために、クロースアップショットも試し撮りすることをおすすめします。
アパレル商品の商品ページには、たくさんの画像を掲載してください。刺繍やビジューがあしらわれているならそれらを際立たせ、商品の特徴となるディテールはクロースアップで撮りましょう。そうすれば、購入を考えている顧客に商品の価値が必ず伝わります
写真の枚数は多いことが理想的です。最終的に使用する写真の選択肢は多いに越したことはありません。ウェブサイトに掲載する商品あたりの写真枚数が多いほど、売上が増加することもわかっています。さまざまな角度から撮影された多くの写真を目にすることで、顧客は商品から受ける印象に信頼感をもてるようになります。
7. 投稿用の仕上げ
撮影後はウェブサイト用に商品画像を仕上げていきます(英語)。撮影後の処理で目指すのは、最適なパフォーマンスを保ちながら画像をできるだけプロ仕様に近づけることです。
撮影に要する一つの工程を外注するなら、最も簡単で有益なのがこの仕上げ工程だと言えます。デジタル資産の受け渡しは容易ですし、かなりの時間やコストを節約できるという利点もあります。
ご自分で仕上げ作業を行う場合には、アラインメント、クロップ、背景の除去、色補正などをしっかりとチェックし、安定感のあるプロ仕様の写真に加工しましょう。またそれぞれの工程を記録し、撮影や編集の基準的な仕様として設定することができます。
アライメント
それぞれの画像の中では、商品が同じ大きさに揃っており、中央に配置されていることを確かめてください。また商品の向き、角、縁が他の画像ときちんと揃っているかを確認するのも大切です。アラインメントのチェックには、Photoshopで基準テンプレートを作成すると便利です。
クロップ
顧客がオンラインでスムーズなショッピング体験をするためには、アラインメントと同じく商品画像を一様にクロップする必要があります。アラインメント用の基準テンプレートを使用していれば、ウェブサイトの仕様通りに画像を均一にクロップしてサイズ合わせをするのはそう難しくないでしょう。
背景
背景は白いものが一般的に推奨されており、マーケットプレイスによってはそれが必須というところもあります。なお、もう一歩踏み入って、背景を取り除いて見苦しい部分を完全に消去してしまうことも可能です。背景を取り除くと、ウェブサイトをより柔軟にデザインできることに加えて、ファイルサイズをある程度軽減できるようになります。
色
ホワイトバランスに気を配っていても、蛍光色、赤、ピンクなどの色は正確にカメラで捉えることは難しく、多くの場合はPhotoshopでの微調整が必要となります。
不正確な色を掲載すると、顧客に失望感と不満感を与えてしまいます。そのため、商品の色は時間をかけて正確に表示してください。目標とするのは、顧客が商品を受け取った時とまったく同じ色味を商品ページに表示することです。
色を微調整する方法はたくさんあるので、Photoshopの機能をチェックしてお気に入りのツールを見つけてください。色補正が完了したら、画像ファイルを忘れずにSRGBフォーマットに変換しましょう。これで顧客のために丹念に調整した色が、他のブラウザーやコンピュータ画面、そしてウェブサイトなどで正確に表示されるようになります。
アパレル撮影の改善
アパレル商品を自ら撮影するのは大きな挑戦だと思います。一回目で完璧な写真は撮れないかもしれませんが、心配することはありません。目標とすべきは、撮影ごとに改善点を見つけて、ベストな商品画像へと近づけることです。よりよい商品画像を提供することは、より多くの売上だけでなく、よりたくさんの顧客があなたの商品を楽しめることを意味しています。
ここまでに説明してきた、美しいアパレル商品画像を撮るための7ステップ(「商品準備」「スタジオのセットアップ」「照明の設置」「商品のスタイリング」「カメラの設定」「撮影」「撮影後の仕上げ作業」)を覚えておけば大丈夫です。これらのステップをきちんと踏めば、近いうちに自分でも驚くほどの高品質な商品画像を撮影できるようになるでしょう。
詳しくはこちらをご覧ください:一枚の写真で高い売上を実現:初心者のための魅力的な商品画像の撮影方法(英語)、クリエイティブなマーケティング事例17選
アパレル撮影についてのよくある質問
アパレル商品はどのように撮影すればいいの?
アパレル撮影の設定方法は?
アパレル商品を準備する
写真スタジオをセットアップする
照明を設置する
商品をスタイリングする
カメラを設定する
写真を撮影する
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