ドロップシッピングは、在庫を持たない発送方法です。ECサイト(販売サイト)は、消費者(購入者)に対して商品を販売します。しかしECサイトは商品の在庫を持っていません。
商品を持っている業者がECサイトからの注文をもとに商品の発送を委託し、消費者(購入者)は、商品を持っている業者から発送された商品を受け取ります。
目次
ドロップシッピングとは? 仕組みを簡単に説明
ドロップシッピングは、ECサイトが在庫を持たず、在庫を持ったり発送をしたりする機能は別の拠点や委託業者に依頼する方法です。
ECサイト(販売サイト、以下「ECサイト」)は、消費者(購入者)に対して商品を販売します。しかしECサイトは商品の在庫を持っていません。ECサイトは商品を持っている業者(以下「商品管理業者」)に商品の発送を委託し、消費者(購入者)は、商品管理業者から発送された商品を受け取ります。
また、Shopifyにはドロップシッピングを簡単に可能にするアプリがあります。
ドロップシッピングに関わる三者
ECサイト(販売サイト)
ECサイトは、ブランドを構築し、消費者(購入者)との接点を作ります。
ECサイトを立ち上げたり、公式ウェブサイトの購買ページを用意したりと、さまざまな手法でブランドとその商品の販売経路を構築します。
商品を持っている(発送をする)業者
商品を持っている(発送をする)業者は、ECサイトと業務委託契約などを締結して、商品在庫の管理、梱包、発送などを担います。
ECサイトが消費者へ商品を販売後、商品を持っている(発送をする)業者が商品を発送します。
商品在庫を持つ、それらの発送をするだけではなく、印刷などを実施して商品を作る役割を担うこともあります。例えばTシャツ、スウェットなどの洋服、帽子、バッグ、ポーチなどの服飾小物、スマホケースやマグカップやタンブラーなどの小物に、ECサイト(ブランド)のロゴデザインやキャラクターデザインなどを印刷するなどの加工をする工程を担うこともあります。
また、ドロップシッピングを解説する記事などでは、この役割を担う業者のことを卸売業者やサプライヤーなどと表現していることがあります。
消費者(購入者)
消費者(購入者、以下「消費者」)は、ブランドのファンや、商品の購入希望者です。ドロップシッピングにおいては、消費者はECサイトAで購入手続きを行い、商品を持っている(発送をする)業者Bから商品が発送され、受け取ります。
消費者は欲しい商品Cを購入して受け取ることが目的であるため、「ドロップシッピングにおける商品の発送元は、実はBである」という点は大きな問題ではありません。
ドロップシッピングとECサイトとの違いとは?
(Unsplash: tommao-wang)
ドロップシッピングを導入しない場合
ドロップシッピングの仕組みを導入していない場合、ECサイトが販売・商品在庫の確保と管理・商品の発送・カスタマーサービス・商品販売に必要なマーケティングやブランディングなど、全ての業務を実施します。
ドロップシッピングを導入する場合
ドロップシッピングの仕組みを導入する場合、ECサイトは主にカスタマーサービス・商品販売に必要なマーケティングやブランディングなどを行います。
商品在庫の確保と管理・商品の発送は、商品を持っている(発送をする)業者が担います。
ドロップシッピングのメリット
(Unsplash: bannon-morrissy)
- ECサイトは在庫の保管・管理をしなくていい
- ECサイトは発送・梱包作業をしなくていい
- ECサイトは配送や物流業者とのやりとりをしなくていい
- ECサイトを立ち上げる場合、初期費用や管理すべきものが少ない
-
得意なことに専念できるため、合理的
1. ECサイトは在庫の保管・管理をしなくていい
これに伴い、商品在庫を保管する倉庫を保有しなくてよくなります。
2. ECサイトは発送・梱包作業をしなくていい
商品発送のための梱包や梱包資材も不要です。
3. ECサイトは配送や物流業者とのやりとりをしなくていい
ECサイトは発送や梱包を担わないため、配送や物流業者との接点は基本的にありません。
ただし、配送や物流業者に関連したトラブルなどが発生して、商品の発送や到着に遅れが出る、その延長で消費者に迷惑がかかる場合のカスタマーサポートは、ECサイトが実施することになります。
4. ECサイトを立ち上げる場合、初期費用や管理すべきものが少ない
ドロップシッピングは商品在庫の確保、物流関連の業務を基本的に実施する必要がないため、簡単に、より手軽にECサイトを立ち上げることができます。
5. 得意なことに専念できるため、合理的
ECサイトはブランドの構築やマーケティングへ、商品管理業者は商品管理や印刷・発送業務などに専念できるため、それぞれが得意業務に従事するだけで成立します。
ドロップシッピングのデメリット
(Unsplash: bench-accounting)
1. 利益が少ない
ドロップシッピングを導入する場合と導入しない場合、ECサイトが手にする利益は前者の方が大きく、後者の方が下がります。
あなたがECサイトを立ち上げてドロップシッピングを行う場合、商品管理や発送を担わない分だけ利益も減ります。
しかし、ドロップシッピングをしない(自社で在庫を抱える)決断も、慎重になるべきと言えます。日本でドロップシッピングをせずに自社で在庫を抱えている企業は多数存在しています。例えば株式会社ジャパネットたかたは、株式会社ジャパネットロジスティクスサービスを抱え、2022年6月現在、日本に7箇所の物流拠点を設けて、在庫を抱えています。在庫を抱えるモデルで成功している企業の場合、これほどの規模で実施しています。
2. ECサイトは、契約する商品管理業者の選定が重要
契約する商品管理業者が複数のECサイトと手を組んでいる場合、在庫数の反映などがどのタイミングで行われるのか、即時なのかそうでないのかに応じて、消費者に提供できる情報が変動します。
例えば在庫数が即時反映されない場合に、消費者が迷惑を被る以下のような事例が発生する可能性があります。
- 消費者は、ECサイト上で購入できた
- 倉庫で実際には在庫が尽きていた
- 消費者は購入支払い手続きが済み、数日で商品が到着すると考えている
- 消費者は購入手続きの数時間後、あるいは翌日などに、「(倉庫の在庫がなくなっていたため)商品の発送や到着が遅れる」と連絡を受ける
- 待つことのできる消費者は待ってくれるが、早く受け取りたかった消費者は購入キャンセルを希望する
- ECサイトは顧客を逃す
仕組みがうまく機能すれば消費者を待たせることはありませんが、仕組みが機能しない場合、消費者が商品を手にするまでに時間がかかることもあり、それに伴いカスタマーサポートが余計に発生する可能性もあります。
3. ECサイトは、カスタマーサポート体制の構築が重要
万が一何か起きた場合に消費者にうまく対応できるカスタマーサポート体制を持つことが大切です。
2020年に経済産業省が発表した報告書によると、アメリカのECサイト利用者は年々ECにおける配送のスピードを重要視している傾向にあります(参考)。
ドロップシッピングは、消費者からの注文を受けるECサイト、注文をもとに商品を梱包・発送する商品管理業者が異なるため、うまく連携しないと時間がかかります。即時連携できる体制を構築することが重要です。
ECサイトがスピード配送サービスなどを打ち出さない限り、消費者が配送の遅さなどで怒ることはあまりありません。
しかし、在庫数が不明確だった、支払い後の在庫不足や天候悪化により通常よりも消費者への配送に時間がかかる、これらを予想できていたのに事前連絡がなかったあるいは連絡が遅すぎた...このような消費者に迷惑をかけるような混乱は、ECサイトと商品管理業者の連携や、ECサイトのカスタマーサービス部門が事前に危機管理をすれば未然に防げます。
4. ECサイトは、商品の差別化がほとんどできないこともある
ドロップシッピングECサイトに商品や在庫を提携する商品管理業者は、複数のECサイトに商品在庫を提供しています。
ECサイトXとYに、実は同じ商品管理業者Zが扱っている全く同じ商品Zが売られている場合、違いを打ち出すのが困難です。
5. 価格面での競争力が出しづらい
ドロップシッピングはECサイトに残る利益が少ないこともあり、価格面での競争力が出しづらくなります。
在庫を大量に買い付けて抱えることのできる大企業は、商品1点あたりの単価を抑えるようなこともできます。しかしそもそも在庫を抱えないドロップシッピングの場合、価格面で競争力を出すことより、ブランディングやマーケティングなど他の面での強みを出しましょう。
ドロップシッピングでよくある失敗例と解決策
(Unsplash: mika-baumeister)
ECサイトの視点で発生する、ドロップシッピングでよくある失敗の例と解決策です。
1. 競合が多く利益が少ない
ドロップシッピングモデルが可能な商品には、すでに競合が多く存在しています。通常、激しい値下げに伴い利益減少が発生し、ビジネスモデルの構築が難しくなります。
成功するには、価格で勝負せずに他の方法をお客様に提供し、ECサイトの価値を高めましょう。例えばサービスの強化や、商品を厳選すること、購入者特典の付与などがあります。どのように商品を選ぶのかのアイデアについてこちらをご覧ください。
2. 在庫同期が難しく、品切れ商品が表示される
在庫状況を即時反映できず発生してしまう失敗例です。これを解消するためには。複数の商品管理業者を使って商品ラインを重ねましょう。単独の商品管理業者にのみ頼ると起こる問題も、複数の商品管理業者と契約すると、リスクを減らすことができます。
うまく対応しても、在庫の即時反映ができず消費者が購入後に在庫不足が発覚したり、それにより配送に時間がかかるかもしれません。その場合は、注文のキャンセルだけではなく、アップグレードされた商品を無料で提供しましょう。注文からお金は得ることができませんが、ロイヤルカスタマーを構築できるかもしれません。
3. 商品を正しく、詳しく理解する
ECサイトでドロップシッピングモデルを採用し在庫を持たない判断をするとしても、それは消費者に関係のないことです。カスタマーサポートは、消費者から商品詳細に関する問い合わせを受けたら、回答できる内容には全て回答する必要があります。「手元に商品がないから、その質問には回答できない」などあってはならないことです。
これを解消する方法は4つあり、カスタマーサポートの手元に商品見本がある状態を作ること、消費者から発生しそうな質問に対して回答を完全に用意すること、商品紹介を文章・写真・動画で作成してECサイトに設置すること、商品によってはお試しセットを用意することです。お試しセットの用意は、消費財や食品に有効です。例えば通常では1製品100パック入りで販売するティーバッグ(茶葉)を、人気フレーバー5種類を1パックずつセットにしてお試しセットとして販売するなどです。
4. 外部に発送を任せると失敗することもあり得る
ドロップシッピングの仕組みを導入すると、在庫管理と発送を商品管理業者に任せることになります。これによりあなたはECサイト周辺の業務にリソースを集中させることができますが、在庫管理と発送は完全に自身の手を離れている状態になります。
万が一、配送の遅延やトラブル時に、対応は適切に行われるでしょうか。商品管理業者は、配送業務を通じて消費者との接点を持つことになります。ここで失敗などがないように気をつけましょう。
また、消費者の満足度に関連するため、商品管理業者による商品の包装や梱包のされ方、それにより配送を受け取った消費者がどのような印象を持つか、ECサイト側は確認すべきです。
商品管理業者と定期的にコミュニケーションを取り、可能な限り現場も訪問し、商品を管理する倉庫状態などを確認・記録します。写真や動画を送ってもらってもいいでしょう。配送関連業務を一手に引き受けてもらっていることへ感謝なども定期的に伝えましょう。
定期的に匿名で商品を注文するなどもして、配送された商品がどのように届くのかなどの抜き打ち検査も入れましょう。
終わりに
(Unsplash: roberto-cortese)
ドロップシッピングはECサイトが在庫を持たなくて済むことから、立ち上げやすいモデルです。ECサイトが顧客と強力な接点やコネクションを有している場合、かなりの爆発力を有します。
「そのECサイトで購入したことこそがステータスになる」「そのブランドロゴさえついていれば飛ぶように売れる」ような、忠誠心が高く強力なファンを有しているECサイトやブランドの場合、ドロップシッピングモデルは良好な利益が見込めます。
しかし、物を並べればそれだけで売れる時代も終わりつつあります。消費者はシビアに比較をし、レビューを確認し、商品を使う自分の影響を考慮します。
例えばオーガニックコットンを使っている服、ペットボトルをリサイクルした再生素材を使っているトートバッグ、育成が早い竹を原料にしたカトラリー、包装には漂白剤や着色料を使用しておらずプラスチックの利用率は●%にとどめられている、など、より良いストーリーを持つものが支持されやすい時代です。ECサイト運営側は、ぜひ、商品の選定にさまざまな配慮を持たせましょう!
ドロップシッピングとは:質問と回答
(Unsplash: rosebox)
よくある質問
Q1: ドロップシッピングとは?
ECサイトは、消費者(購入者)に対して商品を販売します。しかしECサイトは商品の在庫を持っていません。ECサイトは商品を持っている業者(以下「商品管理業者」)に商品の発送を委託し、消費者(購入者)は、商品管理業者から発送された商品を受け取ります。
Q2: ドロップシッピングとECサイトとの違いとは?
商品在庫の確保と管理・商品の発送は、商品を持っている(発送をする)業者が担います。
Q3: ドロップシッピングのメリットとデメリットは?
メリットは、ECサイトは在庫の保管・管理や発送・梱包作業をする必要がなく、初期費用や管理すべきものも少なく、得意な業務に専念できるため、合理的である点です。
デメリットは、自分たちで在庫を抱えるよりも利益が少ない点、契約する商品管理業者の選定とカスタマーサポート体制の構築が重要である点、商品の差別化がほとんどできないことがある点です。自分たちで在庫を抱えるよりも利益が少ない点については、「自分たちで在庫を持つこと」もまた、各種コストが幾重にもかかることは念頭に置くべきでしょう。その上でどのメリットとデメリットを優先させるか検討しましょう。ドロップシッピングは、非常に便利であることは確かです。