オンデマンド印刷と聞くと、プリントオンデマンド出版や絵・イラストの販売を想像する人も多いでしょう。しかし、オンデマンド印刷を活用して実施できるビジネスは、ほかにもあります。
この記事では、オンデマンド印刷の概要に加えて、サービスを活用してオリジナルグッズを販売する手順や、おすすめのオンデマンド印刷サービスなどを解説します。新規事業のアイデアを考えたり、オンデマンド印刷ビジネスを始めたりするのに役立ててください。
オンデマンド印刷とは

オンデマンド印刷(プリントオンデマンド)とは、注文を受けるごとに必要な数だけ印刷できる仕組みのことです。最近では、アパレルや雑貨などにイラストやデザインを印刷して、オリジナルアイテムを受注生産できるビジネスモデルとして普及しています。また、サプライヤーであるオンデマンド印刷業者によっては、製造から発送まで行うため、販売者は在庫を抱えるリスクや管理の手間もなしでビジネスを始めることができます。
オンデマンド印刷のメリット

- デザインができ次第、すぐに販売を開始できる
- 商品の追加やデザインの変更、試験的な販売が簡単にできる
- 在庫管理の手間や過剰在庫のリスクを軽減できる
- 販売や配送も委託できるオンデマンド印刷サービスが多い
オンデマンド印刷は、デザインをアップロードするだけで希望の製品にプリントや刺繍をしてくれるため、ほかの販売方法と比べると手軽に始められます。デザインの変更やバリエーション増加も柔軟に行えるため、試作品の作成や市場の反応を見ながらのテスト販売も容易です。
また、受注後1点から印刷できるため在庫を抱えるリスクがありません。ドロップシッピングのように制作から配送まですべてオンデマンド印刷サービスが代行してくれるため、ひとりでビジネスを始めることも可能です。
オンデマンド印刷のデメリット

- 少量印刷に適しているため、コストは割高
- 印刷できる商品の種類が限られている
- フルフィルメントの自由度が低い
オンデマンド印刷の多くは1点からの少量生産に適した仕組みのため、大量生産する場合に比べると製造単価は高くなりがちな点に注意が必要です。またオンデマンド印刷では、あらかじめ用意されたアイテム以外にはプリントできないのが一般的です。希望する製品が取り扱いにない場合は、ほかの手段を検討する必要があるので注意しましょう。
配送までオンデマンド印刷会社に任せる場合は、送料設定や配送方法、梱包などのフルフィルメントを販売者側で自由に管理することはできません。そのためブランディングや顧客体験の面にこだわりたい場合は、対応が難しいこともあります。
おすすめのオンデマンド印刷サービス

pixivFACTORY(ピクシブファクトリー)
pixivFACTORYは、画像をアップロードするだけで、クッションやアクリルグッズなど70種類以上のグッズを簡単に制作できます。発注は1つから可能で、まとめて発注するほど価格が安くなるのが特徴です。pixivが提供しているショップ作成サービスBOOTH(ブース)を使えば、月額固定費や出品費用を負担することなく販売も始められます。
SUZURI(スズリ)
SUZURIは、画像をアップロードしてオリジナルグッズを制作できるサービスです。価格設定や販売数が自由に設定できるため、自分に適した販売スタイルで事業を行えます。大口注文の場合は割引が適用され、限定アイテムの利用やノベルティ作成の依頼も可能になります。
Printful(プリントフル)
Printfulは、最短1時間で販売を開始できるオンデマンド印刷サービスです。在庫保管や配送の代行、再配送率が0.24%の高品質製品、複数言語に対応した24時間年中無休のサポートなど、充実したサービスが特徴です。Shopify(ショッピファイ)とアカウントを連携させることで、よりスムーズにビジネスを始められます。
オリジナルプリント.jp
オリジナルプリント.jpは、アパレル雑貨など1500種類以上のグッズを制作できるサービスです。価格と納期を即座に確認できるため、事業計画を立てやすく、独自のデザインツールを使用すれば、データのアップロードやデザインも簡単にできます。対象商品なら13時までの注文で当日発送が可能です。Shopifyと連携ができるため、入稿したらすぐに出品でき、発注手配も簡単です。
paintory(ペイントリー)
paintoryは、アパレルに特化したオンデマンド印刷サービスです。プリントや刺繍で自由に製品をカスタマイズでき、オリジナルのネームタグをつけることも可能です。Shopifyと連携することで、受注処理から発送まですべて自動化できるため、デザインやマーケティングなどに専念できます。
オンデマンド印刷を活用したグッズ販売のやり方

1. 販売する商品を決める
Tシャツやクリアファイル、シールなどのアイテムのうちから、オンデマンド印刷を活用してどの商品を販売するかを決めます。闇雲に商品ラインナップを増やしてしまうとショップの統一感が失われてしまうため、商品の種類はターゲットに合わせて厳選することも重要です。その分、カラーバリエーションなどを充実させて顧客が選べるようにすることで、購買意欲や満足度を高められます。
ほかにも、マグカップ専門のショップにしてデザインがすべて異なる一点物として販売するのも、統一感を出しつつバリエーションを豊かにする方法として良いでしょう。
2. デザインする
オンデマンド印刷ビジネスの成功には、魅力的なデザインが不可欠です。自分でデザインできる場合は、自身のデザインスキルを存分に活かしましょう。Pinterest(ピンタレスト)などでインスピレーションを得るのも一つの方法です。
自分でデザインすることに自信がない場合は、デザインを外注する方法もあります。CrowdWorks(クラウドワークス)やLancers(ランサーズ)、ココナラといったクラウドソーシングサイトを活用すると、理想のデザイナーを見つけやすくなります。外注する際は、希望するデザインの参考となるような資料や下書きのほか、利用目的やターゲットにする顧客層などの情報も具体的に伝えることで、よりイメージに近いデザインを制作してもらえます。
3. 制作したデザインを商品に合わせて調整する
デザインが完成したあとは、販売する商品に合わせてデザインを微調整しましょう。利用するオンデマンド印刷サービスがデザインの入稿に関するガイドラインを公表している場合は、その規定に沿った画像データを作成することで、より質の高い仕上がりになります。
デザインの配置を調整する際は、デザインツールが重宝します。たとえば、Tシャツを制作する場合はTシャツデザインの作成アプリを使用し、パターンの配置や配色などを確認します。オンデマンド印刷サービスが提供しているデザインツールを活用し、実際の商品がどのように見えるかを把握することで、より理想に近い商品に仕上げられるでしょう。
4. 商品価格を設定する
価格設定の際は、原価以外にも、税金や決済手数料、送料を考慮に入れ、利益を確保できるようにしましょう。特に送料については、まず販売価格に組み込むべきかどうかを検討する必要があります。
顧客が決済に進んだ際に送料が追加されるシステムを採用すると、購買意欲が減退する可能性があるため注意が必要です。商品代金にあらかじめ送料を加算して販売価格を設定すると、販売価格は高く見えるかもしれませんが、決済時に合計金額が増えないため、カゴ落ち(決済まで来て購入をやめてしまうこと)しにくくなります。
送料を無料にする場合には、商品や期間を限定したキャンペーンとして行うことで、利益率が低下するリスクを抑えることができます。また、5,000円以上の購入で送料を無料にするなど、送料が無料になる条件を設定することで、顧客がカートに商品を追加する動機となり、アップセルやクロスセルにより客単価を高めることにつながります。
5. 商品の販売方法を決定する
ネットでオリジナルグッズを販売する方法としては、自分でネットショップを立ち上げる方法や、オンデマンド印刷会社のプラットフォームで販売する方法が一般的です。ほかにも、委託販売やイベントへの出店などの方法もあります。
オンラインで販売する場合、販売する商品の魅力を際立たせるために、ショップのデザインにはこだわりを持つことが重要です。自社ECサイトの場合はもちろん、オンデマンド印刷サービスのプラットフォームを利用する場合も、可能であれば商品の雰囲気に合った色で商品ページを統一したり、ターゲット顧客の好みに合ったショップデザインにしたりします。たとえば、社会人向けの商品であれば高級感や落ち着きを演出するために、落ち着いた色やフォントを使ってショップを作ると良いでしょう。
6. マーケティング戦略を考える
オリジナルグッズをより多くの人に購入してもらうためには、効果的なマーケティング戦略が必要です。オンデマンド印刷では、ベースとなるグッズが同じものになりやすいため、競合との差別化には工夫が必要です。セールスライティングや商品撮影などを通して、デザインのポイントやこだわりなどを伝えることが大切です。
また、Instagram(インスタグラム)などを活用して潜在顧客にアプローチするSNSマーケティングや、ECサイトだけではなくYoutTubeでのグッズ販売など複数の販売経路を活用するマルチチャネルマーケティングも効果的です。さらに、Googleなどの検索エンジンに表示されるリスティング広告や、ウェブサイト・アプリに表示してもらうディスプレイ広告なども良いでしょう。
オンデマンド印刷ビジネスを始めるためのヒント

サンプルを必ず注文する
オンデマンド印刷ビジネスを始める際は、販売商品のサンプルは必ず注文し、品質を自分自身で確認するように心がけましょう。実際に製品を手に取ったときの感触やデザインに不備がないかなどを確認します。サンプル割引や送料無料を提供しているオンデマンド印刷サービスもあるので、積極的に活用しましょう。
サンプルを注文することは、製品の品質を確認できるだけでなく、ショップやSNSで使用する商品写真の撮影にも役立ちます。また、商品について問い合わせを受けたときにも、手元にサンプルがあれば的確な返答が可能です。
配送方法や時間を把握する
多くの場合、オンデマンド印刷業者が配送管理まで代行するため、販売者は配送管理の手間を省くことができます。しかし、配送にかかる時間や費用、配送トラブルのサポート体制などについてはしっかりと把握し、顧客からの配送に関する問い合わせやトラブルに対応できるようにしておきましょう。
ショップに配送ポリシーを記載しておくことも大切です。配送時間について「お客様からご注文をいただいてから製造・配送いたしますので、商品の到着までに1週間ほどかかります」と記載するなど、配送に関する重要事項を明記しておきましょう。
商品のモックアップ画像を作る
商品デザインの最終確認やショップ用の商品画像として有効活用できるモックアップ画像を作りましょう。モックアップ画像を作ることでスピーディかつ手軽に商品をECサイトやSNSに掲載できます。
オンデマンド印刷サービスの多くは、商品のモックアップ画像を作成するサービスを提供しています。たとえばPrintfulでは、プリントや刺繍商品のデザイン作成ツールを提供しており、ワンクリックでモックアップ画像を作成できます。商品のみの画像はもちろん、モデルが商品を着用している画像など、800種類以上のモックアップ画像から事業に適した画像を選べます。
ニッチな分野を見つける
ニッチな分野に絞ることでターゲット層が明確になり、収益につながる商品を見極めやすくなります。基本的にオンデマンド印刷製品の利益率は低いため、売り上げを上げるには、単価を上げるか、販売数を増やすことが必要になります。ニッチな分野でブランドの地位を確立できると、単価が上げやすくなったり、リピーターやブランドのファンの獲得によって販売数を伸ばしたりすることが可能になり、利益を増やすことができるでしょう。
たとえば、は虫類が好きな人をターゲットに定め、ターゲット層のニーズを満たせる商品として、カメレオンやヘビなどの人気種をデザインしたTシャツやマグカップを制作する方法があります。
まとめ
オンデマンド印刷は必要なときに必要な数だけ印刷するため在庫を気にすることなく、オリジナルデザインの商品を手軽に制作・販売できます。初期費用がかからず、1点からでも印刷できるサービスもあり、リスクを最小限に抑えて事業を始められるのも特徴です。
プリントオンデマンドを利用した事業を始める際、商品を販売するネットショップの立ち上げも検討してみましょう。Shopifyは、オンデマンド印刷サービスのPrintfulと連携しているため、オリジナルグッズのネットショップをスムーズに立ち上げることができます。無料体験も実施していますので、ぜひお気軽にShopifyを使ってみてください。
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よくある質問
オンデマンド印刷とデジタル印刷の違いは?
オンデマンド印刷は、少量印刷や短納期に対応する印刷方法・サービスのことであるのに対し、デジタル印刷は、オンデマンド印刷を含む、版を使わずにデジタルデータを印刷する技術全体を指します。
オンデマンド印刷の価格は?
オンデマンド印刷は無料で利用できるものがほとんどです。登録料や月額利用料などの費用なしで商品をデザインし、販売することができます。商品が売れると、商品代金(原価)や販売手数料、配送料などが発生します。
オンデマンド印刷のグッズ制作価格は?
オンデマンド印刷のグッズ制作にかかる、おおよその原価は以下のようになっています。
- Tシャツ:1000~6,000円
- パーカー:2,200~9,000円
- トートバッグ:600~3,000円
- スマホケース:1,400~2,700円
- マグカップ:400~1,800円
- タオル:700~1,600円
- ブランケット:1,400~3,600円
- シール・ステッカー:240~500円
文:Momo Hidaka