オンデマンド印刷と聞くと、プリントオンデマンド出版や絵・イラストの販売を想像する人も多いでしょう。しかし、オンデマンド印刷を活用して実施できるビジネスは、ほかにもあります。
この記事では、オンデマンド印刷の概要に加えて、サービスを活用してオリジナルグッズを販売する手順やおすすめのオンデマンド印刷サービスなどを解説します。新規事業のアイデアを考えたり、オンデマンド印刷ビジネスを始めたりするのに役立ててください。
オンデマンド印刷とは
オンデマンド印刷(プリントオンデマンド)とは、必要に応じて、必要な数だけ印刷するシステムのことです。版を作る必要がある従来の印刷方法とは異なり、デジタルデータを直接プリントするため、短納期で1つからの印刷が可能です。オンデマンド印刷を利用したビジネスでは、小物やアパレルなどを受注生産し、在庫リスクなしで利益を得ることができます。
オンデマンド印刷では、静電気を利用してドラムユニットと呼ばれる部品にトナーを定着させ、熱と圧で紙にプリントするレーザープリントが主流です。他の印刷方法と同様に、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色を用いてフルカラー印刷ができるため、デザインする際に色の制約が少なく、オリジナリティのあるグッズが制作できます。
オンデマンド印刷のメリット
- デザインができ次第、すぐに販売を開始できる
- 在庫管理の手間や過剰在庫のリスクを軽減できる
- 商品の追加やデザインの変更、試験的な販売が簡単にできる
- 販売や配送も委託できるオンデマンド印刷サービスが多い
オンデマンド印刷のデリット
- 少量印刷に適しているため、注文数が増えるとコストが割高になりやすい
- 印刷できる商品の種類が限られている
- 熱で色を定着させるため、黒インクがテカりやすいなど色味の表現に限界がある
おすすめのオンデマンド印刷サービス
pixivFACTORY(ピクシブファクトリー)
pixivFACTORYは、2分でグッズを制作できる手軽さが特徴です。画像をアップロードするだけで、70種類以上のグッズを簡単に制作できます。プレビュー機能もあるため、仕上がりを確認しながら作業が進められます。デザインに利用できるイラスト素材も豊富で、好きな素材を選んでグッズを制作することもできるほか、クッションなどイラストに合わせた形状で制作できるグッズもあります。
発注は1つから可能ですが、複数発注すると割引も適用されます。Tシャツを例に挙げると、1枚なら1,650円ですが、30枚発注すると1枚あたり1,500円、50枚発注すると1枚あたり1,400円と発注数に応じてコストが割安になります。
初期費用をかけずにグッズ制作ができるほか、pixivが提供しているショップ作成サービスBOOTH(ブース)を使えば、月額固定費や出品費用を負担することなく販売も始められます。制作したグッズをBOOTHに登録すると、pixivFACTORYが注文ごとに自動で商品を製造・発送してくれるだけでなく、匿名配送が可能なため個人情報のやり取りが不要なのも魅力です。
印刷可能なグッズ例:
- Tシャツ
- マグカップ
- クリアファイル
- エコ・トートバッグ
- ステッカー
- クッション・枕カバー
- モバイルバッテリー
- パズル
SUZURI(スズリ)
SUZURIは、jpgやpng形式の画像をアップロードしてオリジナルグッズを制作できるサービスです。
SUZURIは消費者から注文を受けてから商品を製造するため、在庫管理や定期的な発注を行う必要はありません。販売者が原価をもとに価格を設定して商品を販売できるので、単価を高く設定したり、低単価で販売数を増やしたりするなど、自分に適した販売スタイルで事業を行えます。さらに、新作は定期的に「ピックアップ」に掲載されるため、出品したばかりの商品でも注目を集めやすく、売り上げが伸びやすいのもSUZURIの魅力です。
大量に発注する場合には特別クーポンが適用されるため、団体のユニフォームやノベルティなどの制作を考えている人にも適しています。たとえば、30万円の注文で24,000円、100万円の注文で100,000円の割引が受けられます。
印刷可能なグッズ例:
- Tシャツ
- パーカー
- マグカップ
- クリアファイル
- ステッカー
- トート・ショルダー・エコバッグ
- サンダル
- ペット服
Printful(プリントフル)
Printfulは、1時間以内に販売を開始できるオンデマンド印刷サービスです。5つのステップごとに所要時間の目安が示されており、はじめてオンデマンド印刷を利用する人にも作業の流れがイメージしやすくなっています。
- 販売する商品を選び、デザインを追加する:25分程度
- Printfulと販売サイトを接続する:10分程度
- 商品を販売サイトにアップロードし、タイトルや商品説明、価格などを記入する:15分程度
- 支払情報を登録する:5分程度
- 品質確認のために商品サンプルを注文する:5分程度
ほかにも、Printfulは在庫保管や配送をすべて代行してくれるなど、充実したサービスが特徴です。消費者が注文した時点で商品が製造されるため、初期費用や在庫リスクが発生しません。さらに、品質問題による再配送率が0.24%と低いことから、提供している製品が高品質であることがうかがえます。Printfulは、メールとチャットで複数の言語に対応した24時間年中無休のサポートを提供しているため、安心してビジネスを運営できるのも魅力です。
印刷可能なグッズ例:
- Tシャツ
- 帽子
- パーカー
- スウェット
- トレーナー
- スウェット
- マグカップ
オリジナルプリント.jp
オリジナルプリント.jpは、アパレルからマグカップまで1500種類以上のグッズを制作できるサービスです。特徴的なサービスとして、写真1枚から全面プリントのアパレルグッズが作成できる「SMAREL」、子どもの絵や写真でグッズを作成する「tukutte」、名前からオリジナルマークを作成する「plusmark」などがあり、これらのサービスを活用してオリジナルグッズをデザインすることもできます。
いずれのサービスも1点から注文でき、価格と納期を即座に確認できるため、事業計画を立てやすいでしょう。独自のデザインツールを使用すれば、データのアップロードやデザインも簡単にできます。
また、当日出荷が可能なのもオリジナルプリント.jpの特徴です。対応可能な商品はTシャツやタオル、マグカップなどに限られますが、当日の13時までに入稿・注文すれば、注文日に発送してくれます。急なイベントなど、できるだけ早く対応しなければならない場合は、オリジナルプリント.jpを利用すると良いでしょう。
印刷可能なグッズ例:
- Tシャツ
- パーカー
- ステッカー・シール
- トート・エコバッグ
- マグカップ
- アクリルグッズ
- スマホケース
- 枡・升
paintory(ペイントリー)
アパレルに特化したプリントオンデマンドサービスを利用したいなら、paintoryがおすすめです。ベースとなる製品は、有名ブランドやセレクトショップでも採用されているものなので、高い品質が保証されているのも安心材料となるでしょう。素材の種類に加え、カラーバリエーションも豊富なため、自分のブランドイメージに合った洋服を準備しやすいのも魅力です。
知識や経験がなくても簡単に洋服のデザインからネットショップの開設、配送委託まで行えるため、初心者にもおすすめのサービスです。
印刷可能なグッズ例:
- Tシャツ
- デニム・ショートパンツ
- スポーツショーツ
- 帽子
- ビブス
- スウェットパーカー
- コート
- ジャケット
オンデマンド印刷を活用したグッズ販売のやり方
1. 販売する商品を決める
最初に、オンデマンド印刷を活用してどのような商品を販売するかを決めます。Tシャツやクリアファイル、シールに至るまで、オンデマンド印刷サービスを活用すれば、さまざまなアイテムの販売が可能です。
販売する商品とともに、商品ラインナップも充実させましょう。その際、闇雲に商品の種類を取りそろえてしまうと、ショップの統一感が失われてしまうため、商品の種類はターゲットに合わせ厳選します。その分カラーバリエーションなどを充実させ、消費者が選べるようにすることで、消費者の購買意欲や満足度を高めましょう。ほかにも、マグカップ専門のショップにして、デザインをすべて変え一点物として販売するのも、統一感を出しつつバリエーションを豊かにする方法として良いでしょう。
2. デザインする
オンデマンド印刷ビジネスの成功には、魅力的なデザインが不可欠です。自分でデザインできる場合は、自身のデザインスキルを存分に生かしましょう。Pinterestなどでインスピレーションを得るのも良いでしょう。
自分でデザインすることに自信がない場合は、デザインを外注する方法もあります。CrowdWorks(クラウドワークス)やLancers(ランサーズ)、ココナラといったクラウドソーシングサイトを活用すると良いでしょう。外注する際は、希望するデザインの参考となるような資料や下書きのほか、利用目的やターゲットにする顧客層などの情報も具体的に伝えましょう。共有した情報をもとに、デザイナーはより依頼者の期待に添うデザインを制作してくれるはずです。
3. 制作したデザインを商品に合わせて調整する
デザインが完成したあとは、販売する商品に合わせてデザインを微調整しましょう。利用するオンデマンド印刷サービスがデザインの入稿に関するガイドラインを公表している場合は、その内容を確認し、規定に沿った画像データを作成します。規定に従うことで、より質の高い仕上がりになるでしょう。
デザインの配置を調整する際は、デザインツールが重宝します。たとえば、Tシャツを制作する場合はTシャツデザインの作成アプリを使用し、パターンの配置や配色などを確認します。オンデマンド印刷サービスが提供しているデザインツールを活用し、実際の商品がどのように見えるかを把握することで、より理想に近い商品に仕上げられるでしょう。
4. 商品価格を設定する
価格設定の際は、原価以外にも、税金や決済手数料、送料を考慮に入れ、利益を確保できるようにしましょう。特に送料については、まず販売価格に組み込むべきかどうかを検討する必要があります。
消費者が決済に進んだ際に送料が追加されるシステムを採用すると、購買意欲が減退する可能性があるため注意が必要です。商品代金にあらかじめ送料を加算して販売価格を設定すると、販売価格は高く見えるかもしれませんが、決済時に合計金額が増えないため、カゴ落ち(決済まで来て購入をやめてしまうこと)しにくくなります。
送料を販売価格に組み込まない場合、送料を無料にするという方法もありますが、送料を無料にする商品を限定したり、期間限定のキャンペーンとして行ったりしないと、利益が得られなくなってしまう可能性があります。そのため、送料を無料にする場合は利益を確保できるように条件を設定しましょう。たとえば、5,000円以上の購入で送料を無料にするなどが考えられます。特定の金額以上の購入で送料無料とすると、消費者がカートに商品を追加する動機となり、客単価を高めることにもつながるでしょう。
5. 商品の販売方法を決定する
続いて、商品の販売方法を決定しましょう。ネットでオリジナルグッズを販売する方法として、自分でネットショップを立ち上げる方法、あるいはオンデマンド印刷会社のプラットフォームで販売する方法が一般的です。ほかにも、委託販売やイベントへの出店などの方法があります。
オンラインで販売する場合、販売する商品の魅力を際立たせるために、ショップのデザインにはこだわりを持つことが重要です。自社ECサイトの場合はもちろん、オンデマンド印刷サービスのプラットフォームを利用する場合も、可能であれば商品の雰囲気に合った色でサイトを統一したり、ターゲット顧客の好みに合ったサイトデザインにしたりします。たとえば、社会人向けの商品であれば高級感や落ち着きを演出するために落ち着いた色やフォントを使ってショップを作ると良いでしょう。
6. マーケティング戦略を考える
オリジナルグッズをより多くの人に購入してもらうためには、効果的なマーケティング戦略が必要です。代表的なマーケティング戦略は、以下のとおりです。
- 商品のセールスライティングを行う:ベースとなるグッズは同じ物があふれているオンデマンド印刷では、他と差別化できるように、デザインのポイントやこだわりなどを伝えることが大切です。ケーキをモチーフにした商品のセールスライティングで、甘い物がそれほど好きではない人への誕生日プレゼントにするアイデアを伝えるなど、商品を利用したアイデアを伝えるのも良いでしょう。
- 商品写真のクオリティを上げる:グッズのサンプルなどを利用して商品撮影することで、オンデマンド印刷サービスが提供するモックアップ画像(完成イメージ画像)よりも使用シーンや着用感などが伝わりやすくなり、商品が魅力的に見えます。
- セールを実施する:定価より安く販売することで、消費者が購入の決断をしやすくなります。セールを実施する際は、本日限定などの期限を設けると効果的です。
- SNSマーケティングを行う:InstagramなどのSNSで商品の使用画像や着用動画などを投稿することで、より多くの潜在顧客にアプローチできます。
- マルチチャネルマーケティングを行う:YouTubeでグッズ販売したり、Twitchでグッズ販売したりするのも効果的です。複数の販路を持つことで、安定した収益が得られる可能性が高まります。
- 広告出稿する:広告を打ち出すことでより多くの消費者に商品を認知してもらえます。消費者の興味関心に応じてGoogleなどの検索エンジンに表示されるリスティング広告や、ウェブサイト・アプリに表示してもらうディスプレイ広告などがあります。
オンデマンド印刷ビジネスを始めるためのヒント
サンプルを必ず注文する
オンデマンド印刷ビジネスを行う際は、販売商品のサンプルは必ず注文し、品質を自分自身で確認するように心がけましょう。実際に製品を手に取ったときの感触やデザインに不備がないかなどが確認すべきポイントです。サンプル割引や送料無料を提供しているオンデマンド印刷サービスもあります。
サンプルを注文することで、製品の品質を確認できるだけでなく、ショップやSNSで使用する商品写真の撮影にも役立ちます。また、商品について問い合わせを受けたときにも、手元にサンプルがあれば的確な返答をすることができます。
サンプルを活用して、自信を持って製品を販売できるように準備を整えましょう。
配送方法や時間を把握する
オンデマンド印刷サービスでは、オンデマンド印刷業者が配送を代行するため販売者は配送管理をしなくて良いことが多いですが、配送にかかる時間や費用、配送トラブルのサポート体制などについてはしっかりと把握し、消費者からの配送に関する問い合わせやトラブルに対応できるようにしておきましょう。
ショップに配送ポリシーを記載しておくことも大切です。配送時間について「お客様からご注文をいただいてから製造・配送いたしますので、商品の到着までに1週間ほどかかります」と記載するなど、配送に関する重要事項を明記しておきましょう。
商品のモックアップ画像を作る
商品デザインの最終確認やショップ用の商品画像として有効活用できるモックアップ画像を作りましょう。モックアップ画像を作ることでスピーディかつ手軽に商品を掲載でき、新作発表などで、SNSにもすぐに投稿できます。
オンデマンド印刷サービスの多くは、商品のモックアップ画像を作成するサービスを提供しています。たとえばPrintfulでは、プリントや刺繍商品のデザイン作成ツールを提供しており、ワンクリックでモックアップ画像を作成できます。商品のみの画像はもちろん、モデルが商品を着用している画像など、800種類以上のモックアップ画像から事業に適した画像を選べます。
ニッチな分野を見つける
ニッチな分野に絞ることでターゲット層が明確になり、どのような商品を販売すると収益が伸びるのかを考えやすくなるため、利益率を高めることができます。基本的にオンデマンド印刷製品の利益率は低いため、売り上げを上げるには単価を上げるか販売数を増やすことが必要になります。ニッチな分野でブランドの地位を確立できると、単価が上げやすくなったり、リピーターやブランドのファンの獲得によって販売数を伸ばしたりすることが可能になり、利益を増やすことができるでしょう。
ニッチな分野を見つける方法として効果的なのは、ターゲットを絞ることです。そのあとは、ターゲットの需要を満たせる商品を考えて販売しましょう。たとえば、は虫類が好きな人をターゲットに定め、ターゲット層のニーズを満たせる商品として、カメレオンやヘビなどの人気種をデザインしたTシャツやマグカップを制作するなどが考えられます。リピーターや売り上げの多さでそこからさらに絞り込んでいくのも良いでしょう。
まとめ
オンデマンド印刷は必要なときに必要な数だけ印刷するため、在庫を気にすることなくオリジナルデザインの商品を手軽に制作・販売できます。初期費用がかからず、1つからでも印刷できるサービスもあり、リスクを最小限に抑えて事業を始められるのも特徴です。
プリントオンデマンドを利用した事業を始める際、商品を販売するネットショップの立ち上げも検討してみましょう。Shopifyは、オンデマンド印刷サービスのPrintfulと連携しているため、オリジナルグッズのネットショップをスムーズに立ち上げることができます。無料体験も実施していますので、ぜひお気軽にShopifyを使ってみてください。
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よくある質問
オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いは?
オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いは、印刷時に版を使うかどうかにあります。オンデマンド印刷は版を使わずにデータを直接プリントするため、データの入稿後すぐに印刷できます。一方、オフセット印刷はデータを入稿したあと、製版・刷版の工程を経て印刷されます。
オンデマンド印刷とデジタル印刷の違いは?
オンデマンド印刷は、少量印刷や短納期に対応する印刷方法・サービスのことであるのに対し、デジタル印刷は、オンデマンド印刷を含む、版を使わずにデジタルデータを印刷する技術全体を指します。
オンデマンド印刷の利用価格は?
オンデマンド印刷は、少量印刷や短納期に対応する印刷方法・サービスのことであるのに対し、デジタル印刷は、オンデマンド印刷を含む、版を使わずにデジタルデータを印刷する技術全体を指します。
オンデマンド印刷の利用価格は?
オンデマンド印刷は無料で利用できるものがほとんどです。登録料や月額利用料などの費用なしで商品をデザインし販売することができます。商品が売れると、商品代金(原価)や販売手数料、配送料などが発生します。
オンデマンド印刷のグッズ制作価格は?
グッズ制作のおおよその価格は以下のようになっています。
- Tシャツ:500~5,000円
- パーカー:2,000~7,000円
- トートバッグ:1,000~4,000円
- スマホケース:1,000~3,000円
- マグカップ:500~2,000円
- タオル:1,000~15,000円
- シール・ステッカー:10~500円
文:Yukihiro Kawata