オリジナルTシャツの販売は、ネットで稼ぐ方法としても人気で、自宅にいながらお金を稼げる方法です。調査(英語)によると、米国においてオリジナルTシャツの印刷市場は、2030年まで年11%の成長率になると予測されています。日本においても米国と同様、市場規模拡大が期待されています。Tシャツのデザインや販売は、さまざまなオンラインツールのおかげで簡単に始められるようになりました。ターゲットとする層を見極めて、そうした層に需要のあるTシャツをデザインすれば、人気アパレルショップを低コストで始められます。
この記事では、オリジナルTシャツを販売したい方のために、ビジネスの始め方をわかりやすく解説しています。Tシャツの制作方法や販売・マーケティング方法などをまとめています。
オリジナルTシャツ販売の始め方6ステップ
1. ニッチ市場・サブニッチ市場を見つける
オリジナルTシャツ販売を始めるには、まずニッチ市場を見つけることが重要です。特定の分野に特化した比較的小規模なマーケットを見つけ、コアなニーズに応えられるようなオリジナルTシャツを作ることで競合他社との差別化を図れます。
ニッチ市場によっては規模が大きすぎる場合があるため、ニッチ市場をさらに細分化したサブニッチ市場に狙いを定める方法も有効です。例えば、面白い言葉やキャッチフレーズを使ったロゴTシャツを販売するとします。おもしろロゴTシャツの市場は競合が多いことから新規参入者にとっては売上を伸ばすことが難しい可能性があります。こうした場合、キーワードプランナーなどのキーワード検索ツールを使ってサブニッチ市場を見つけると良いでしょう。検索することで、「猫に特化したおもしろTシャツ」や「野球が好きな人向けのおもしろTシャツ」などが、おもしろロゴTシャツのサブニッチ市場にあたることが見えてきます。
参入するニッチ市場やサブニッチ市場を決める際には、以下の方法が役立ちます。
- Wikipedia(ウィキペディア)の趣味のページを参考にする
- Meta Business Suiteのインサイトを使ってターゲットとするニッチ市場のSNS上での規模を確認する
- 掲示板型SNSのReddit(レディット)の各コミュニティーであるsubreddit(サブレ)を確認し、メンバー数ややり取りの状況を参考にする
- 自分が興味・関心のある事柄や属するコミュニティも考慮する
ニッチ市場やサブニッチ市場が見つかったら、ビジネスプランを立てましょう。
2. 利用するオリジナルTシャツ制作サービスを決める
オリジナルTシャツ制作を依頼するサービスを決めます。プリントオンデマンドサービスを利用すると、在庫を抱えることなくオリジナルTシャツの制作・販売が可能です。
選ぶTシャツの素材や印刷方法によって販売数も異なってきます。Tシャツの質は、ブランドの評判に直結するため、最優先としてください。利益率を高めるために安価なサービスを選択することも可能ですが、顧客が商品の質にがっかりしてしまうとリピートしたり人に勧めたりしなくなってしまいます。
印刷の質やTシャツのフィット感、サイズ感、素材、柔らかさ、重さなどさまざまな観点に基づいて品質の高いものがある程度絞り込めたら、実際にサンプル品を注文することをおすすめします。ウェブ上ではわかりにくい質感や洗濯による影響などを考慮し、利用するサービスを決定しましょう。
3. Tシャツのデザインを作成する
ニッチ市場・サブニッチ市場に合わせたTシャツのデザインを作成します。デザイン性の高いオリジナルTシャツを作成するためには、売れているデザインを参考にする、プロのデザイナーに制作を依頼するといった方法をとることをおすすめします。
売れているTシャツのデザインを参考にする
Tシャツのデザインを作成する際には、デザインTシャツの販売サイトで売れているTシャツのデザインを参考にしてみてください。
デザインTシャツの販売サイト(日本語)
デザインTシャツの販売サイト(英語)
このほか、Googleトレンドで注目を集めているキーワードもデザイン作成の参考になります。
デザイン制作を依頼する
作りたいTシャツのデザインのイメージが固まったら、大まかなデザインのラフ画を描きデザインの工程に進みますが、デザインソフトウェアに慣れていない場合は、デザイン制作を外注するのが賢明です。
Tシャツのデザイン制作の外注先を探すには、クリエイター向けSNSやスキルマーケットが活用できます。
クリエイター向けSNSでデザイナーに依頼する
以下のようなクリエイター向けSNSでは、オリジナルTシャツのデザイン検索ができるほか、クリエイターやデザイナーのポートフォリオを閲覧することができます。気になる作品やクリエイターが見つかったら、メッセージを送ってみましょう。
スキルマーケットでデザイナーに依頼する
以下のような一般的なスキルマーケットにも、デザイナーやイラストレーターが多く登録しています。気になるデザイナーを見つけたら、ポートフォリオや過去の案件を確認し、自分のプロジェクトに合うかどうかを判断します。気に入った人が見つかったら、プラットフォームを通じて連絡を取り、デザイン制作を依頼してみましょう。
Tシャツデザインデータ販売サイトでデータやテンプレートを購入する
以下のようなTシャツデザインデータ販売サイトで、すでにできあがっているデザインやテンプレートを購入し、Tシャツにそのデザインを使うこともできます。デザイナーに依頼するよりも安価になる傾向にありますが、同じデザインを競合他社が販売する可能性もあるため、差別化が難しいというデメリットがあります。
- garalabo(ガララボ)
- Tshirt Factory(ティーシャツファクトリー、英語)
- Creative Market(クリエイティブマーケット、英語)
- Graphic River(グラフィックリバー、英語)
デザインやテンプレートを使ってTシャツを制作する場合には、商用ライセンスの購入が必要になります。
4. Tシャツのモックアップを作成する
デザインができたら、モックアップと呼ばれる商品サンプル画像を作成します。モックアップは、販売する商品イメージの最終確認に使えるほか、ネットショップに載せる商品画像としても活用できます。Adobe Photoshop(アドビフォトショップ)などの画像編集ソフトや、Tシャツデザインの作成アプリなどを使用することで作成できます。
Photoshop用のTシャツのモックアップテンプレートでは、複数のレイヤーを活用してTシャツの色を変えたり、しわや折り目が付き立体的なTシャツ画像にデザインをのせて、着用時の見え方を再現したりできます。
また、モックアップはPhotoshopをダウンロードしなくても、以下のようなTシャツデザインの作成アプリを使えば無料で作成できます。
なお、ネットショップで実際に載せる画像については、モックアップを使うほか、実際に商品サンプルを注文して写真を撮影する方法もあります。
5. Tシャツのデザインを検証する
作成したオリジナルTシャツのデザインがターゲット層からの支持を得られるか検証します。具体的には、以下のような方法が考えられます。
個人のSNSで意見を求める
Facebook(フェイスブック)やInstagram、TikTok(ティックトック)などのSNSで、できあがったモックアップ画像を公開し潜在顧客の意見を求めましょう。作成したオリジナルTシャツの感想を集めることができ、改善点を洗い出すことにもつながります。ただし、友人や家族など、身近な人からの評価は甘くなってしまうこともありますので、注意が必要です。
クラウドファンディングでテストマーケティングをする
オンライン上の不特定多数から資金を集めるクラウドファンディングを使ってテストマーケティングができます。この手法を使えば、オリジナルTシャツ販売の資金調達ができるだけではなく、見込み客の反応や購入者のフィードバックを得ることも可能です。手間と時間がかかるものの、今までにない新しいタイプのTシャツビジネスを考えているのであれば、クラウドファンディングを使うのが良いでしょう。
6. オンラインショップを準備する
オンラインショップを準備してオリジナルTシャツ販売を開始しましょう。Shopify(ショッピファイ)を使ってECサイトを構築すれば、さまざまなプリントオンデマンドサービスと連携させることができるため、便利です。こうした機能を使えば、顧客がECサイトで商品を購入した際、プリントオンデマンドサービス会社に自動で注文情報を送り、制作から梱包、発送までを行ってもらえます。
Shopifyと連携できるプリントオンデマンドサービスは、主に以下のとおりです。
オリジナルTシャツ販売で考慮すること5つ
1. プリント技術
オリジナルTシャツのプリント技術には、主に以下の3つがあります。デザインとの相性や価格の差があるため、自分が作るオリジナルTシャツに合ったものを選びましょう。
シルクスクリーン
シルクスクリーンは、自社デザインのTシャツを販売するストアで昔からよく使われる技術で、丈夫で長持ちするという特徴があります。布製品やマグカップ、帽子などの製品にもプリントできるので、製品ラインを増やす場合にも活用できます。
メリット
- 大量生産でコストパフォーマンスが上がる
- 金・銀、蛍光カラーやラメを使ったデザインに対応している
デメリット
- 導入時に多くの人手が必要
- 少量生産には不向き
- 色を一つずつ重ねており色数が増えるとコストと制作時間が上がるため、4~5色以上や複雑なデザインは不向き
熱転写
熱転写にはさまざまな種類があり、たとえばデザインに沿って裁断された熱転写シートを熱圧着して貼り付ける方法があります。こうした熱転写シートを使えば、自宅のパソコンでデザインを印刷し、アイロンで簡単に転写することが可能ですが、Tシャツを商品として販売する場合には、印刷業者が特別な熱転写紙に印刷をするプラスチゾル転写という手法を使うのが良いでしょう。
メリット
- 熱転写紙への印刷のみまとめて印刷業者に依頼しておけば、Tシャツの受注時に都度Tシャツに転写することが可能
- フルカラーでの印刷が簡単で速い
- 小ロットでも比較的安価に印刷できる
デメリット
- プラスチゾル転写用のヒートプレス機の導入が必要となるため初期費用がかさむ
- 他のプリント方法と比べて質と耐久性に劣る
- Tシャツへの転写を自社で行うため制作時間が他より必要となる
ダイレクト印刷(DTG)
専用プリンターを使って、Tシャツにデザインを直接印刷する方法で、商業用のTシャツ印刷で広く使用されています。品質においては、シルクスクリーンと同等であるとされており、熱転写よりも高品質であると言われています。
メリット
- 初期費用が不要
- 少量でも簡単に手頃な価格で印刷できるため、少量の場合に費用対効果が高い
- フルカラーや複雑な色、細かなデザインを正確に再現できる
デメリット
- 大量生産をしてもコストと所要時間を抑えられない
2. デザイン
売れるオリジナルTシャツを作るには、デザインにこだわる必要があります。デザインはシンプルかつオリジナリティのあるものが好まれます。印刷の品質を確保するには、300dpi以上の画像解像度が必要です。キレイにプリントアウトするために、背景を透過させたり、十分な大きさの画像を使ったりするとよいでしょう。使用する印刷機やプリント技術によって適切な仕様は異なるため、あらかじめ確認をしてからデザインファイルを用意することをおすすめします。
3. 品質
オンラインでTシャツを販売する際、品質も重要な要素となります。印刷にカスレやひび割れがあったり、生地に縮みや破れがあったりした場合、顧客は商品にがっかりしてしまい、二度と購入することはなくなるでしょう。
品質にこだわることで生産コストがかかりますが、販売価格を高く設定しやすくなります。品質にどの程度こだわるかを決める際には、製品原価ではなく利益率を基準にすると良いでしょう。
4. ブランディング
オリジナルTシャツ販売においては、魅力的なブランドを確立させることが不可欠です。どのニッチ市場をターゲットにするか、デザインはどうするか、生地の品質はどうするかなど、それぞれの選択がブランディングに影響します。Tシャツショップの名前やブランドのロゴも、魅力的で他にないようなものにすることが、競合他社の多いTシャツビジネスにおいては重要となります。選んだニッチ市場やサブニッチ市場に合わせたマーケティング戦略やウェブサイト構築を行うことで、顧客訴求力を高めることにもつながります。
5. 在庫管理
在庫管理も、オリジナルTシャツ販売を行う上で重要な要素の一つです。印刷業者に依頼したり、大量購入をしたりして自社で在庫を管理する方法のほか、プリントオンデマンドサービスを使うことで在庫管理や発送業務を省略する方法もあります。両者を組み合わせることも可能です。
在庫を持てば、他のサービスを経由せずに販売できるようになるため、利益率を上げられます。逆に、1枚から注文ができるオンデマンド印刷を選べば、在庫を抱えるリスクがなく、ビジネスを始めたばかりの個人事業主や小規模事業者は安心して市場に参入ができます。ただし、リスクが少ない分、利益が抑えられる傾向にあります。ビジネスの規模にも合わせて、メリットとデメリットを理解したうえでどちらの方法を使うのかを判断しましょう。
なお、十分な予算を確保できる場合には、印刷機に投資して自社でアパレルラインを作るのも一つの手です。
オリジナルTシャツ販売の成功事例
アニメや日本語Tシャツを取り扱うImouri(イモウリ)
Imouriは、アニメや日本語ロゴを使ったオリジナルTシャツ販売ブランドです。販売に使用されるECストアはShopifyを使って構築しています。
創業者は、自分に合うアニメTシャツが見つからなかったことからオリジナルTシャツビジネスに参入しました。創業当初は小さな衣料品ビジネスを立ち上げたものの、その後日本のポップカルチャーやアニメに特化したTシャツ販売を行い、現在ではプリントオンデマンドのTシャツブランドとしての地位を確立しています。
Imouriの成功の秘訣は、Redditや有料広告を使ってデザインを検証することで、早い段階で潜在顧客のニーズを理解し、売れるデザインを見極められたことにあります。
まとめ
オリジナルTシャツ販売を行うには、まずニッチ市場やサブニッチ市場を見つけることから始めましょう。オリジナルTシャツの制作サービスは数多く存在しており、在庫を抱えずに1枚から発注ができるプリントオンデマンドを利用する方法から、大量生産をして高い利益率を確保する方法まで、自分のビジネス戦略に合わせて選ぶことが可能です。
Shopifyなら、ECサイトとプリントオンデマンドサービスを連携させてTシャツ販売が行えます。注文情報が自動でプリントオンデマンドサービスに送られ、生産から梱包、発送までを行ってもらえるため、手間をかけずにオリジナルTシャツ販売が行えます。EC事業への参入を検討中の方は、オリジナルTシャツ販売も視野に入れて検討してみてください。
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オリジナルTシャツ販売に関するよくある質問
オリジナルTシャツ販売に必要な許可は?
著作権や肖像権が発生するイラストや作品、写真を使用する場合、著作者や肖像者の許可を得る必要があります。商品化するにあたり、利用料が発生する場合もあるため、事前に確認をして書面で契約を交わしましょう。オリジナルTシャツのデザインを自分で行った場合や、商品化・販売が可能なフリー素材を使ったデザインの場合は特別な許可は不要です。商用利用可能なフリー素材を使う場合、素材によっては商品化し販売することを禁止していることもあるため、利用規約を確認しましょう。
オリジナルTシャツの販売価格相場は?
オリジナルTシャツの販売価格相場は、2000~3500円程度です。価格は使用するプリント技術やTシャツの質、デザインにより変動します。また、大量に仕入れることにより、販売価格を抑える方法もあります。
オリジナルTシャツの納期の目安は?
オリジナルTシャツの納期の目安は、3~13日程度で、即日発送が行われる場合もあります。使用するプリント技術やTシャツの在庫により前後します。
文:Masumi Murakami