EC事業を立ち上げたい人にとって、ECビジネスの始め方や、必要な基礎知識を事前に知っておくことが大切です。
この記事では、EC事業の立ち上げ方を9つのステップにまとめてわかりやすく解説し、EC事業成功のために知っておきたいことや事業計画の立て方なども紹介しています。
EC事業の立ち上げる9つのステップ
1. 取り扱う商品の選定
まず取り扱う商品の選定を行います。商品を選定する際に気を付けたいことは以下の5つです。
1. 顧客のターゲット層を意識する
どのような年齢層、性別、趣味趣向のユーザーに商品を届けたいかを明確にします。幅広いターゲット層に当てはまる商品を選べばより売り上げが期待できると考えられがちですが、ターゲットがしっかり絞れていないとEC事業開始後のブランディングやマーケティング、販売促進を効果的に行えない可能性があります。ターゲットを絞ることで、ターゲットユーザーへ商品の魅力を強くアピールすることができ、売り上げにつながります。
2. 利益率が高い商品を扱う
利益率が高い商品を扱うことは、EC事業を成長させるポイントの一つです。利益率が高い商品ばかりを売る必要はありませんが、利益率が低い商品は数量を販売しなければ利益が上がりません。利益率が高い商品を安定して売ることができれば企業の利益も上がります。そのため、取り扱い商品を決める指標の一つとして利益率も意識しましょう。
3. トレンドを把握する
トレンドを把握し、人気商品を扱うことは、顧客のニーズに応えることにもつながります。ネットショップのトレンドを把握するには、以下の2つの方法があります。
- Instagramの「旬の話題」機能やXの「トレンド」などで、SNSで注目を集める商品をチェックする
- Amazon、楽天市場、YAHOO!ショッピングなどマーケットプレイスの人気商品ランキングを参考にする
また、原材料や製造過程において環境に配慮したエコフレンドリーな商品などもトレンドアイテムの一つです。このほか、取り扱う商品がまだ決まっていない人は、ネットショップで売れる商品アイディアや自分で商品を発送しなくてもOKな商品も是非参考にしてください。
4. 今後売れそうな商品を予想し取り扱う
トレンドの把握ができたら、今度はこれから流行しそうなアイテムを予測しましょう。トレンドを把握するときと同様に、SNSやマーケットプレイスで人気が出てきている商品を常にチェックします。人気アイテム予測には、以下の情報も役に立ちます。
- Googleトレンド
- LINEヤフーfor Businessのマーケットトレンド情報
- 雑誌や情報誌のヒット予測
5. 特別感のある商品を探す
自社のECサイトでしか購入ができない商品や数量限定商品、期間限定商品はECサイトで売り上げにつながるアイテムの一つです。限定品など特別感のある商品はユーザーの購買意欲を刺激するので、可能であれば取り入れたい商品です。また、ブランド構築戦略の一環として自社のロゴやイラストなどを使ったオリジナル商品を開発し販売する手法もあります。
2.市場調査・分析
取り扱う商品の大枠が決まったら、次は市場調査と分析を行います。市場調査とは、販売する商品や提供するサービスについての消費者の意見を知ることです。マーケットリサーチとも呼ばれます。市場調査は調査会社に依頼するか、自分で行います。ここでは自分で調査を行う場合の2つの手法を見ていきます。
定量調査
定量調査とは、認知度や購入回数、リピート率、満足度など数字で表せるデータを集めて集計したものです。調査の代表的な方法には以下のようなものがあります。
- ネットリサーチ:インターネット上でアンケートに回答してもらいます。
- 郵送調査:プリントアウトされたアンケートや、オンラインで回答ができるアンケートへ誘導するURLを郵送して回答を促します。
- 会場調査:試飲試食会や試用できる会場を設け、その場で製品やサービスへの印象を回答してもらいます。
- ホームユーステスト:自宅で製品を試してもらうためにアンケートと製品を調査対象者へ送り回答を依頼します。自宅環境で試用してほしい製品や、効果が実感できるまでに数日間必要な製品の定量調査に使用されます。
定性調査
定性調査とは、インタビュー調査とも呼ばれ、数値では表現できないユーザーの印象や潜在ニーズを知るための調査です。主な方法は以下の通りです。
- デプスインタビュー:調査員が調査対象者に一対一でインタビューを行います。
- グループインタビュー:調査対象者を数名集めてインタビューを行います。
- 観察調査:街頭や店頭などで調査対象者の行動や身に着けているものを観察し情報を収集します。
調査が終わったらデータを集計し、結果を分析しましょう。ターゲットとなる消費者の行動パターンやニーズを得ることができれば、取り扱い商品のしぼり込みやマーケティング戦略に活かせます。
3. 競合調査
競合調査とは、同じ商品や類似商品を扱うECサイトや、競合他社を調べる調査です。競合他社を7~10社に絞り、スプレッドシートに価格帯や商品構成、特徴などをまとめます。競合調査をすることで競合他社の強みや、どのようなマーケティング戦略を実践しているのか、なぜ人気があるのかを把握できます。その情報を元に競合分析を行い、他社にない自社の魅力は何か、どのような方法で顧客に商品や自社の良さを伝えるかといった戦略を立てる目安になります。
4.事業計画書作成
実際に商品を販売し始める前に、事業計画書を作成する必要があります。事業計画書がなくてもEC事業を始めることはできますが、事業計画書を作ることでより効果的にEC事業を運営できるようになります。資金調達が必要な場合、銀行に提出したり、取引先との交渉の際、提示したりすることがあります。
事業計画書とは?
事業計画書(ビジネスプラン)とは、これから行うEC事業の内容や扱う商品、目標売上金額、収益を上げるために取る対策などをまとめた書類です。ECビジネスの事業計画書を作るメリットは以下の通りです。
- 事業の方向性や目的が明確になる
- 事業開始時に必要な予算や事業継続のための予算がわかる
- 事業内容や戦略を客観的な視点で見つめ直し、必要に応じて改善・修正することができる
- 社内外の人との情報共有が容易になる
- 銀行からの融資や資金提供の交渉材料になる
事業計画書は、ECビジネスを始める時だけではなく、事業開始後さらにビジネスを成長させたいときに、振り返り、改善策を講じる目安にもなります。上記の事業計画書の書き方や注意点を参考に、説得力のある事業計画書を作成しましょう。
5.ECサイトの選定
ECサイトには、自社ECサイトとECモールの2種類があり、どちらかのECサイトのみで事業を展開するのか、自社ECサイトとECモールを組み合わせて販売を行うのかを決定します。自社ECサイトとECモール、また両者を組み合わせて事業展開する際のメリットデメリットを紹介しますので、販売チャネル決定の参考にしてください。
自社ECサイトでEC事業を立ち上げるメリット
- 自由にカスタマイズできる
- 独自ドメインやサイトデザインを工夫したブランディングがしやすい
- アクセス解析など必要なデータを収集しやすい
自社ECサイトでEC事業を立ち上げるデメリット
- サイト構築や独自ドメイン取得など初期費用と準備期間がかかる
- 集客を行う必要がある
ECモールでEC事業を立ち上げるメリット
- 集客力が高くページを訪問してもらえるチャンスがある
- 初期費用が安い
- ホスティングや決済はモールが提供するので準備が簡易
- 顧客の信用を得られる
- サポート体制が充実している
ECモールでEC事業を立ち上げるデメリット
- 競合が多い
- 販売時に手数料が引かれるケースが多い
- ブランドの個性を出しにくい
自社ECサイトとECモールの両方で事業を展開するハイブリッド型とは?
自社ECサイトとECモールのメリットを活かすために、両者を同時または時間差で利用して事業を展開するハイブリッド型の事業展開方法もあります。
- ECモールで事業開始し、その後自社ECサイトへ移行:最初はECモールで事業展開し、集客力を活かして顧客獲得と知名度向上を目指します。その後自社ECサイトへ移行しブランディングやマーケティングに注力します。
- 自社ECサイトで事業開始し、その後ECモールへ移行:最初自社ECサイトで商品販売を行っていたが思うように集客ができなかった場合、ECモールで事業展開するというやり方もあります。
- 自社ECサイトとECモールの両方を使う:自社ECサイトとECモールのメリットを活かせる方法ですが、在庫や商品ページなどの管理が煩雑になる、費用がかさむなどのデメリットがあります。Shopifyの場合、楽天市場との販売チャネル連携をすれば、受注の情報や在庫管理などShopifyで一括管理が可能です。
6. ECサイト立ち上げ
ECサイトの選定が終わったら、今度はECサイトのオープンに向けて準備を進めていきます。ECサイトの立ち上げには、ECサイトのデザイン決定、サイトで使用する画像の撮影や商品の登録、事業の特徴やメリットを説明するページの準備などさまざまな作業があります。テスト注文や受注後の発送の準備なども忘れずに行いましょう。
7. ブランディング
ブランディングとは、自社サービスや商品、企業イメージを消費者に認識してもらい、他社と差別化を図ることです。自社をブランドとして認識してもらうためには、自社の特徴や魅力が伝わるECサイト名、ロゴ、イメージカラーを決定します。特にロゴやイメージカラーはブランドのイメージを確立させるため、とても重要な要素です。広告や販促アイテム、自社オリジナル商品を扱う場合のパッケージにもロゴやイメージカラーを使い、消費者に自社サービスと製品を知ってもらいましょう。
8. 集客
ECサイトへの集客には、主に以下の3つの方法があります。
1. 広告を出す
広告を効果的に利用することで、オープンしたばかりのECサイトでもある程度集客をすることが可能です。ECサイトへの誘導に使われる広告は主に以下のものがあります。
- SNS広告:IstagramやFacebook、X(旧Twitter)などのSNS上に表示させる広告です。年代や居住地などターゲットに合わせた広告を出せるという特徴があります。
- リスティング広告(検索連動型広告):Yahoo!JAPANやGoogleなどの検索エンジンで検索されたキーワードに合わせて表示される広告です。購買意欲のあるユーザーにアプローチができるため、売り上げにもつながります。
- アフィリエイト広告:ブログやSNSなどのメディアを運営しているアフィリエイターに自社サービスや商品を紹介してもらう宣伝方法です。人気アフィリエイターはすでに多くのファンを抱えていることが多く、一度にたくさんのユーザーにアピールできる点が魅力です。
- 動画広告:主にSNSやYoutubeで使用される動画形式の広告です。制作費が高額になる傾向にありますが、画像よりも多くの情報を短い時間で伝えられ、閲覧者の記憶にも残りやすいというメリットがあります。
- バナー広告:画像とテキストを組み合わせたバナーという形式で表示される、ウェブサイト上の広告です。バナー広告はバナーのサイズやどのページに出稿するか等のさまざまな条件によって費用が異なります。
2. SEO対策を行う
SEO対策とは、検索エンジン最適化とも呼ばれ、自社のサービスや商品に関連するキーワードが検索された時、自社のECサイトが検索上位に表示されるよう対策を行うことです。Google Analyticsや Google Search Cosoleなどのツールを導入する、サイトマップを登録する、レスポンシブデザインにするなど、ネットショップのSEO対策を行いましょう。
3. SNSで宣伝する
ECサイトの運営者が自社のSNSアカウントを作成・運営し、販売している商品の宣伝やセール情報などをシェアしましょう。SNSの投稿をきっかけにECサイトを訪問する消費者も少なくありません。またSNSで商品を見た消費者からSNS上での問い合わせを受けることもありますので、定期的にSNSをチェックすることが大切です。
9. 分析・改善
アントレプレナーとしてEC事業を成功に導くためには、事業開始後の分析や改善が鍵となります。ECサイトのKPIを事前に設定しておくと、目標を達成したかを数値化できるので、分析しやすくなります。成長を続けるEC事業者は、ECサイトデザインや集客戦略、販売数などを細かく分析し改善を繰り返しています。
EC事業の立ち上げにかかる費用の目安
EC事業の立ち上げにかかる費用は、主に初期費用と運用費用があります。
EC事業立ち上げにかかる初期費用の例
- サイト構築費用:自社ECサイト構築の場合は無料~300万円程度、ECモールの場合は無料~10万円程度
- 包装資材:1つあたり150~300円程度
- 販売する商品の仕入れにかかる費用:扱う商品の種類や数によって変動
このほか、ECサイトに独自の機能を追加したり、商品撮影をプロに依頼したりする場合には追加で費用がかかります。
EC事業の運用費用の例
- サーバー維持費:年間500円~1万円程度
- ドメイン料:年間500~6,000円程度
- 決済手数料:売り上げの3~5%
- 配送料:1回につき300~2,000円程度
ECサイトのプラットフォームでは、サブスクリプション形式でサーバー料金やドメイン料金が含まれているプランもあります。
EC事業を成功させるポイント5つ
EC事業を成功させるためには、以下5つのポイントに注意して事業展開することが重要です。
1. 事前調査をもとに戦略を立てる
市場調査や競合調査などの調査を事前に行い、これらの調査の結果と分析をもとに戦略を立てます。ユーザーのニーズに合わない集客戦略や販売戦略をとっても、販売にはつながりません。そのため、EC事業を展開する前に市場の動向や顧客ニーズを理解し、それに合わせた戦略を考えて実行しましょう。
2. マルチチャネル戦略をとる
マルチチャネル戦略とは、ECサイトだけではなく、SNSやアプリ、実店舗など複数の販売チャネルを組み合わせる戦略です。消費者との接点を増やすことで、売り上げにつながります。顧客はチャネルが複数あることにより、すぐに商品を購入し、受け取ることが可能です。顧客満足度向上やリピーター獲得にも有効です。
3. 複数のモールで事業展開する
ECモールには、モール上で商品を検索し購入することに慣れているユーザーがいます。複数のECモールで事業展開することで、集客を行わずに一定数のユーザーへ自社商品や自社サイトをアピールする機会が得られます。ECモールはランニングコストが発生することでも知られているため、必要なコストや費用対効果をよく考えたうえで複数モールでの事業展開をするかどうかを決定しましょう。
4. ECサイトの使いやすさを重視する
使いやすいECサイトは、購入までの導線がスムーズであるため、ユーザーはストレスなく支払いページまで到達できます。商品に関する必要な情報は見つけやすい位置に配置されているか、スマホやパソコンでも円滑に操作ができるか、文字は小さすぎないかなど、ユーザーが商品を購入しやすいECサイトを構築しましょう。
商品ページでは、質の良い複数の画像を用意する、使用シーンがわかる画像を載せるなどの工夫も大切です。
5. 顧客対応やアフターサービスを充実させる
素早い顧客対応や充実したアフターサービスは、顧客満足度向上につながるだけではなく、リピーター獲得にも有効な手段です。具体的には以下のような対策を取ることができます。
- 顧客からの質問にはできるだけ素早く返信する
- チャットボットを活用しユーザーからの疑問を素早く解決できるようにする
- よくある質問ページを設置する
- 返品ポリシーや交換対応の流れやルールを明確にする
まとめ
EC事業立ち上げは、立ち上げ準備から事業が軌道に乗るまでに時間がかかることもあります。EC事業を立ち上げた後も、自社ECサイトのデザインを研究したり、マーケティングやブランディング強化に注力したりと、常にECサイトや戦略を分析し改善する姿勢を持つことが重要です。今回ご紹介したEC事業の立ち上げ方や事業を成功させるポイントを参考に、EC起業を実現しましょう。
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EC事業の立ち上げ方に関するよくある質問
EC事業立ち上げに必要な初期費用の目安は?
EC事業立ち上げに必要な初期費用の目安は以下の通りです。
- サイト構築費用:自社ECサイト構築の場合は無料~300万円程度、ECモールの場合は無料~10万円程度
- 包装資材:1つあたり150~300円程度
- 販売する商品の仕入れにかかる費用:扱う商品の種類や数によって変動します。
EC事業計画作成のポイントは?
EC事業の事業計画書を作成するときのポイントは以下の通りです。
- 専門用語を避け、誰が読んでもわかりやすいように書く
- 表や図、画像を使って視覚的に見やすい工夫をする
- 具体的に根拠を持って書く
EC事業立ち上げフローは?
EC事業を立ち上げるフロー(流れ)は以下の通りです。
- 取り扱う商品の選定
- 市場調査・分析
- 競合調査
- 事業計画書作成
- ECサイトの選定
- ECサイト立ち上げ
- ブランディング
- 集客
- 分析・改善
アパレルECとは何ですか?
衣類などのファッションアイテムを販売しているECサイトのことです。
EC起業は難しい?
EC起業は簡単ではありません。しかし、EC事業の立ち上げ方などのサイトを参考にして事業を立ち上げ、成功に導いている人もいます。取り扱い商品の選定や市場調査、事業計画書の作成など準備を念入りに行うことで、ECビジネスを成長させることが可能です。