自分の店舗がなくても商品を販売できる委託販売について解説します。ハンドメイド製作などを行なっている人などは参考にしてみてください。
自分の店舗がなくても商品を販売できる委託販売は、在宅ワークでハンドメイド製作などを行なっている場合、魅力的な選択肢の一つです。手先が器用であったり、ユニークな商品アイデアがあったりする場合は、この記事での解説を参考に、ぜひハンドメイド製品などの委託販売を検討してみてください。
委託販売とは
委託販売は、製作した商品の販売を、手数料を支払って第三者に委託する販売方式です。
よく似た販売方式に卸販売があります。前者は商品を預かってもらってその販売を代行してもらうのに対し、後者は店舗に商品をまるごと買い取ってもらう点が違うほか、委託販売は価格を製作者が自由に決められるのに対し、卸販売では店舗が販売価格を決めます。
委託販売の仕組みと流れ
商品のセールスポイントの整理
店舗に委託販売を依頼する前に、改めて自分の作った商品のセールスポイントを整理しておきましょう。
セールスポイントとは、商品を販売する時に強調したい特長のことです。素材や原材料、アレルゲンフリーなどのこだわり、オーガニックなどの認証、デザイン、取り扱いのしやすさ、品質、サイズ、ターゲット、価格などさまざまな観点から商品をみつめ、何を前面に押し出したいか、考えてみてください。
色違い、サイズ違いなど、バリエーションの多さもセールスポイントになります。例えば、商品がハンドメイドキャンドルなら、季節にあわせて使用するアロマオイルを変え、シリーズ化するといった売り方が考えられるかもしれません。
競合調査を行いながら、自分の商品の長所を客観的に理解し、優れた部分を人に対してわかりやすく説明できるようにしておきましょう。商品の魅力が伝わり、商品を置くことのメリットを感じてもらうことができれば、店舗に委託販売を引き受けてもらえる可能性が高まります。
委託先の選定
自分がハンドメイドした製品と同分野の製品が販売されているお店や、好きなお店を中心に、委託先の候補を探しましょう。お店は自分が手がけた製品を売る上での看板、ブランドの一部となります。詳細な条件を考慮する前に、気軽に好きなお店を思いつくだけリストアップした方が、より短い時間でより多くの候補を挙げられます。
委託先を選定する上で次に検討すべきは、それぞれにどんな商品が売っており、どのような客層が、どの程度のお買い物予算を用意するのかです。売りたいハンドメイド製品のイメージに合った品揃えで、なるべく同じ品質、価格帯のお店を選べば、客の需要とも合致しやすくなります。
他にも年齢層や男女比、立地条件や来客数も含めて、総合的な角度から、条件に適した委託が可能な製品について考慮すべきでしょう。その上で自分の商品が目立つように、極力同様のハンドメイド製品を取り扱っていないお店を選定しましょう。
また、委託先候補については、オンライン上のレビューのみをあてにするのではなく、実店舗であれば実際に足を運び、ネットショップであれば実際の利便性やカスタマーサポートを体験しておくのが重要です。
委託先との交渉と契約
もし委託したいお店がそもそも委託販売をしているのか分からない場合は、店舗スタッフに確認してみましょう。今まで経験がなくても自分が常連のお店であれば特別に交渉してくれる場合もあるかもしれません。交渉が可能であり、委託をお願いできるようであれば、次の項目について、なるべく細かく書面で契約を締結しましょう。
- 委託販売手数料
- 破損や盗難時の責任
- 返品時の委託先への返金
- 売り上げが発生した時の連絡頻度
- 入金先、入金頻度と期限
- 新製品の搬入や売れ残りの搬出に関する頻度、役割分担、制限事項
- 購入者からの問い合わせ時の対応の役割分担
商品の搬入
商品の搬入にあたっては、契約で割り当てられたスペースに商品がどれほど陳列できるかを、予め想定しておきましょう。委託先によっては搬入できる時間帯や搬入経路、搬入口に停められる車両のサイズなどが指定されている場合があります。事前に同じサイズのスペースを用意し、レイアウトをシミュレーションしておくと、効率よく搬入を終えることができます。
また、搬入先で検品が行われる場合があります。事前に了承を得た範囲でしか販売は委託できないため、契約にない商品を持ち込むことは避けましょう。
売り上げの確認と受領
売り上げは予め契約で締結した通りの振込先、手数料、期日などに基づき受領できますが、それに前もって、定期的に売り上げに関する報告を受けられるよう、契約に明記しておきましょう。委託販売の場合、売り上げごとに仕切精算書(売上計算書)という会計上の書類が委託者に発行されます。
売り上げが全くない場合でも定期的に報告を受けられるか、報告がない場合はその他の方法で委託先の保有在庫数を確認できるように契約で定めましょう。
委託販売にかかる費用と手数料の相場
販売を代行してもらう手数料には初期契約料や更新料などがあり、店舗により異なりますが、おおよそ販売額の20〜60%と言われています。商品を陳列しテナント料を必要とする実店舗の方がネットショップより高くなり、実店舗では大型店舗のほうが、個人店や小規模店舗よりも手数料が高い傾向にあります。
委託販売のメリット
開店せずに店舗販売できる
委託販売ではテナントやドメインのレンタルも、販売員や販売サイト更新担当の人員確保も、店舗やウェブサイト全般の保守も必要ありません。それらは全て店舗側が行ってくれます。
既存の店舗の知名度を活かせる
既存のブランドによる集客力を活かして、ビジネスを軌道に乗せるまでの時間を短縮できます。もしファンが確立しているブランドに委託販売できたなら、ぜひ自分でもSNSなどで積極的に営業活動をしましょう。
委託販売のデメリット
在庫管理の必要性
商品の在庫管理は、自分で行う必要があります。実店舗で陳列しきれない場合や、ネットショップなどで返品が出た場合なども、在庫リスクを負うのは自分であることを理解しておきましょう。
委託先との契約の難しさ
口頭でも契約は締結できますが、トラブル防止のためには、業務委託契約書を用意しなければなりません。商品が盗まれたり、事故や天災で破損したりした場合は、誰がどのように責任を取るのか、商品の搬入や搬出にかかる費用や作業は、自分と店舗のどちらがどれだけ負担するか、委託先の同意を得て契約書に記載しておく必要があります。
委託販売の経験がある店舗なら、既に契約書の雛形があるかもしれませんが、内容の変更が必要な場合は変更点の精査や弁護士の確認などに時間がかかります。
いずれの場合においても委託者は自分の製品を売る以上、主体的に契約に関わり、全ての条文についてきちんと理解しておきましょう。
商品の説明やアピールの方法が限定される
委託販売では、商品について顧客に自分で直接説明することができません。商品について委託先に理解してもらい、代わりに説明をしてもらう必要があります。
また、アピールの方法にも制限がつく場合があります。たとえば実店舗だと、ポップ設置の可否が定められていたり、設置できたとしてもサイズに規定があったりします。ネットショップの場合、サイトの仕様で掲示できる文字の大きさやフォント、文字数に制限があります。
委託販売店やネットショップの見つけ方
実店舗の場合は思い当たる場所に実際に自分で足を運んでみて、お店の雰囲気や店員の対応を調査しましょう。ネットショップの場合は商品検索からカートへの追加、配送方法や日時の指定、決済手段の選択肢の広さ、購入処理完了の連絡、商品の到着まで、一連の購入の流れを自ら体験するなどして、委託販売に相応しい店舗か判断しましょう。
委託先を探すばかりでなく、店舗側からスカウトされて商品を置かせてもらうという場合もあります。売りたい製品の展示会や同人イベント等に参加することで、興味を持った店舗に声をかけてもらえる可能性が高まります
また、店舗側から注目された時に声がかかりやすいように、主要SNSのアカウントも整備し、連絡先を目立つように掲示しておきましょう。笑い話に繋がるようなユーモラスなポップを掲示しておいても、後日の思い出話などから商機に繋がるかもしれません。短く覚えやすいネーミング、印象に残りやすいキャッチコピー、製品のデザインにおけるこだわりは全て、自分だけの唯一無二なブランド構築に繋がります。ブランドは自分の製品を他社のそれと差別化する、分かりやすい要素です。なるべく早い段階から意識して構築に努めましょう。
まとめ
委託先の契約に注意が必要など難しい部分はありますが、商品を製作するスキルがあるなら、あと商売を始めるにあたって必要なのは売り場だけです。ぜひこの記事を参考に魅力的な委託先を見つけ、ハンドメイド製品を販売してみてください。
よくある質問
委託販売と卸販売の違いは?
委託販売では店舗が販売を委託者に頼まれて代行しており、商品は所有していませんが、卸販売の場合は店舗側が商品を買い取り、自ら価格を決めて実店舗やネットショップで再販しています。委託販売では商品の売り上げのうち、契約で定めた手数料のみが店舗の取り分となる代わりに、店舗側は売れ残りの管理や処分をする必要がありません。委託する側からすると自前で店や販売員などを用意しなくて済み、その分のリソースを製品開発や製作に充てられる点が委託販売の魅力です。
ハンドメイド商品の委託販売は儲かる?
一概に儲かるとは言えません。ただし、販売を委託するのがハンドメイド製品の場合、人的リソースを商品の製作に充てられるというメリットがあります。
委託販売の手数料の相場は?
販売額の20〜60%と言われています。他にも初期手数料や委託契約更新料などが必要な場合もあります。委託先の知名度や店舗の規模、委託者の実績などに応じて、損益分岐点を割らない範囲で手数料を決めましょう。
どんなものが委託販売されている?
ハンドメイドアクセサリーなどの装飾品、イラストや写真集などの芸術品、家具や電子回路などの実用品に至るまで、様々な製品が実店舗やネットショップで委託販売されています。
ネットショップと実店舗ではどちらが委託販売向き?
製品によってどちらが向いているかは異なりますが、売り場としてはネットショップの方がアクセスしやすく、実店舗の方が商品の実物が見やすいなどの特徴があります。肌触りや匂い、味、使い勝手などが魅力的な商品であれば、実店舗向きです。そのような商品をネットショップに委託する場合は、問い合わせに応じて商品サンプルを送付するなどの対応が望ましいでしょう。
委託販売で特に注意すべき点は?
委託先との契約内容です。手数料を差し引いても利益が出るビジネスモデルになっているか、双方の義務は想定できる全てのケースについて規定されているか、権利は自分だけに不利になっていないかなど必ず確認しましょう。