手先が器用な方や何か物を作るのが好きという方にとって、ハンドメイド作品の販売は趣味の延長から始めることができるビジネスです。そのなかでも、アクセサリーやジュエリーは固定客やファンをつかみやすい商品であると言えます。また、ものづくりが得意ではない方でも、製作を外注にして自分のビジネスアイデアやコンセプトを形にしていく方法もあります。
この記事では、これからハンドメイドアクセサリーをビジネスにしていきたい方や、在宅でお金を稼ぐ方法を探している方向けに、販売方法からマーケティングまでわかりやすく解説します。
ハンドメイドアクセサリー販売の始め方
1. 販売したいハンドメイドアクセサリーを決める
最初のステップとして、まず自分がどのようなハンドメイドアクセサリーを取り扱いたいか考える必要があります。代表的なカテゴリーに分けて、素材、製作プロセス、価格帯、顧客層などそれぞれ異なる特徴を説明します。
💍ファインジュエリー
ファインジュエリーは、品質の高い貴金属や、天然の宝石などの上質な素材を使ったアクセサリーのことを指します。主に、結婚式や特別なシーンでの使用が想定されます。高度な技巧を用いて製作するため、大量生産には向いておらず価格も高単価です。
📿 ファッション・コスチュームジュエリー
ファッションジュエリーやコスチュームジュエリーとは、ファッション性を重視した日常生活向けのアクセサリーです。素材を限定せず、ビーズやワイヤー、メッキ、プラスチック、人工宝石なども使用され、コストや価格は低い傾向にあります。また、トレンド感のあるデザインへのニーズが高いことも特徴です。
👑 デザイナーズジュエリー
デザイナーズジュエリーは、独創的なデザインやアクセサリー作家のブランドが重視されるカテゴリ―です。3Dプリントの安価なものから、技巧と素材にこだわった高価なものまであり、価格は製作したデザイナーの人気に比例する傾向があります。一点ものやオーダーメイド品なども該当し、コレクターアイテムやプレゼントとして購入されています。
2. マーケット調査を行う
製品の開発を始める前にマーケット調査を行い、ターゲット顧客を理解してから販売戦略を立てることが大切です。そうすることで、調査から分かった結果をアクセサリーのデザインに反映させることができます。
販売戦略の立案
販売したいカテゴリーが決まったら、次は商品をアピールするための戦略が必要となります。それにはまず、同じジャンルの商品を販売している競合他社を確認し、どのような顧客をターゲットにしているのかを分析することが重要です。競合分析から分かった情報を基にターゲット顧客のニーズや、販売したいハンドメイドアクセサリーはどんなシーンに適しているかを考えていきます。
これにより、顧客に対してどのようにアプローチするべきか、あるいは商品を改善するかといった戦略が見えてきます。例えば日常的に身につけるファッションジュエリーでは、金属アレルギーの顧客に対応するため、同じデザインの商品でも肌に触れる部分をプラスチック素材や木製に変更したバリエーションなどがあると、アピールポイントになると考えられます。
戦略の検証
マーケティング調査やハンドメイドアクセサリー業界のトレンドから、ターゲット顧客に認知されるために適切かどうかを判断することも重要です。Google(グーグル)が提供しているGoogleトレンドなどを活用すれば、リアルタイムの業界トレンドを把握することができます。それと同時に、自分もユーザーの一人として普段の生活から「こんなアイテムが欲しい」というアイデアやインスピレーションを意識しておくことで、トレンドを先取りして商品を開発していくことができるようになります。
3. ブランドアイデンティティを決める
アクセサリービジネスを成功させるには、確固たるブランドが不可欠です。商品からどんなことを顧客に感じとって欲しいか、という視点でブランドを構築していきましょう。以下に必要な要素をご紹介します。
ブランドを通して伝えたいメッセージ
ブランドイメージを決定するには、商品群全体のデザインや雰囲気を決定づける、一貫したメッセージが必要です。ブランドミッションやビジョンなどの形で、顧客の感情に訴えかけるメッセージを作成しましょう。また、AboutページやSNSでブランド発足の背景や制作過程を載せ、顧客との距離を縮めることも効果的です。
一貫した商品のコンセプト
販売する商品のコンセプトを明確にしてブランドの統一感を出すことで、ファンとなってくれる顧客層をつかむことができます。その結果、特定のコミュニティ間でどんどん商品のうわさや口コミが広まっていけば、人気が高まり販売数を増やすことができるでしょう。
具体的な例としては、原宿ファッション向けに明るく派手なアクセサリーや、高齢の方でもつけやすい落ち着いたデザインなどが考えられます。コンセプトに沿った商品は特定の顧客の記憶に残りやすく、ファンを増やすことができます。
ロゴやパッケージ
ブランドアイデンティティを視覚的に伝えるために、ロゴや商品を入れるパッケージも重要な役割を果たします。Hatchful(ハッチフル)などの無料ツールを使用すれば、簡単にロゴを作成できます。より的確にブランドイメージを顧客に伝えるため、予算があればプロのデザイナーへの依頼も検討する価値があります。
事業計画
ターゲット顧客へのリーチ方法や、必要なコスト、数年後の事業展望などを、具体化して事業計画に取りまとめます。こうした資料は、ブランドアイデンティティとターゲット顧客のニーズの相性や、ビジネスモデルの課題などを客観視し、検証するために役立ちます。
事業計画では、商品の価格設定についても具体的に想定しておくことが重要です。学生や社会人、専業主婦(主夫)など、ターゲット顧客の層によって購入できる商品の価格帯は決まってきます。ターゲット層の収入を考慮した買いやすい価格で、かつ適切な利益が出る価格設定を行う必要があります。競合他社の商品価格を確認したり、厚生労働省が発表している統計を利用することで、価格帯やニーズの市場調査を行うことができます。
4. ハンドメイドアクセサリーを製造または調達する
事前準備が終わったら、商品となるハンドメイドアクセサリーを製造または調達していく手段を確保します。商品の調達方法は、デザインの複雑さや価格帯、素材、必要な技術レベルに応じて決まります。
オリジナルで制作する方法
- 精巧な一点もののジュエリー製作:理想のデザインを具現化できる点がメリットです。一方で、製造コストから価格帯となるため、その価値に合う商品の質を提供するには、高度な技術を身につける必要があります。
- 既製パーツを利用したハンドメイド:既製品のパーツを仕入れて組み立てる、比較的手軽な方法です。単価は低くなりがちですが、基本的な工具と知識があれば製作できるため、製造スタッフを雇って規模を拡大しやすいメリットがあります。
- 工場への委託製造:大衆向けのファッションジュエリーであれば、自分で作成したデザインをもとに大量生産することができます。生産コストや、実際の製品とイメージに齟齬がないように、委託先とのコミュニケーションが重要となります。
- オンデマンドプリントでの製作:イラストやデザインを印刷したアクセサリーのほか、設計データをもとに3Dプリントで製作することもできます。最も手間をかけずにアクセサリーを製作できる方法ですが、依頼コストやプリンターの機能によってデザインの幅が決まってしまう場合があります。
外部から調達する方法
ゼロからのオリジナルデザインというわけにはいきませんが、国内・海外の卸業者が扱う製品をドロップシッピングで販売したり、デザイナーから直接購入するといった方法でラインナップを拡充する方法もあります。ただし、販売戦略やブランドアイデンティティに合う商品を探したり、仕入れ費用と利益を考慮した販売価格を設定したりといった面で手間はかかる点に注意が必要です。
5. アトリエや作業場の構築
アクセサリーを製作するには作業スペースが必要になります。作業場を確保するには、以下のポイントを考慮しましょう。
機動性
作業を邪魔しない広い空間が必要です。特に、組み立てに複数の工程を要する場合は、流れに沿って導線を確保できることが重要になります。また、細かなパーツを整理するには、わかりやすく小分けされた収納スペースが必須です。立ち上げ時に充分なスペースと機材を用意するための予算が足りない場合や、ブランドの成長に合わせて雇用を増やすことでスペースが狭くなる場合には、他のクリエイターと共同のアトリエや作業場を検討する方法もあります。
安全性
アクセサリー製作で化学物質や特殊器具を扱う場合には、十分な換気と安全対策が不可欠です。また、これらの化学物質や製作工程に関する法律や規制も確認しておく必要があります。作業者の安全を確保するためには、フェイスマスクや安全ゴーグルの使用、機械への巻き込み防止のため髪をまとめるといったルールを設定しておくことも欠かせません。
適切な在庫の保管
ブランドの規模に応じて適切な在庫管理を行えるよう、製造数や仕入数を考慮した保管スペースが必要です。大量の売れ残り在庫の保管は固定費用がかさむうえ、素材によっては時間経過や保管状態で劣化してしまうこともあります。小規模なブランドの場合は在庫を少なめにして売れ残りのリスクを抑え、大規模なブランドの場合は多めの在庫を確保して顧客の需要に迅速に対応できるようにしておくことが必要です。また、在庫管理アプリを使用すると効率的に在庫を管理することができます。
6. 商品の写真撮影
顧客に商品を魅力的に伝えるには、商品の魅力を伝えるきれいな商品写真が欠かせません。基本的には、スマートフォンとシンプルな照明の物撮りで事足りることも多いでしょう。ただしハンドメイドアクセサリーでは、微細なディテールや光の反射が美しく見えるように、自然光を利用したり背景を工夫するといった撮影のコツをつかむ必要があります。また、複数の角度や着用イメージを提供することで、顧客が商品をイメージしやすくなります。
ディテールを伝える商品写真とともに、モデルに試着してもらった使用感が伝わる写真も用意しておくことが重要です。買い物や友だちとのランチ、ビーチで水着で遊ぶときなど、さまざまなシーンを顧客に想起してもらうために屋外で撮影することも効果的です。魅力的な写真を使用することで顧客の興味を引き付け、商品ページのクリック率や購入率を大幅に向上させることが可能です。
7. 販売プラットフォームの構築
ブランドの方向性が定まり、商品の製造や調達のめどが立ったら、次はECサイトを開設する段階です。
ECサイトの構築
Shopify(ショッピファイ)などのECサイト構築ツールを使用すると、簡単にウェブサイトを作成することができます。Shopifyではジャンルに合ったウェブサイトを簡単に構築できるShopifyテーマやテンプレートも用意されているため、ぜひ活用してください。
また、ハンドメイドアクセサリー事業に適したShopifyアプリも豊富に用意されています。その一例をご紹介します。
- Loox - Photo Reviews:顧客の写真レビューを集め、サイト上に表示できるアプリ
- Instagram shop by SNPT:Instagram(インスタグラム)から商品購入可能なギャラリーを作成するアプリ
- Kiwi Size Chart & Recommender:商品のサイズ表を作成したり、顧客への推奨サイズの提案機能を追加するアプリ
ECモールの活用
ハンドメイド販売の始め方がよく分からない場合は、ECモールを活用すれば商品を登録するだけで簡単に販売を始めることもできます。楽天市場、AmazonやPayPayモールなど、商品を登録して販売できるプラットフォームはたくさんあり、商品とターゲット顧客に合わせて選ぶことができます。海外への販売を検討している場合は、世界各国に展開しているハンドメイド販売サイトであるEtsyを活用するといいでしょう。
商品の回転率を上げる施策
ECサイトでは商品の回転率を上げることで、定期的にお客が入る人気店であることと、しっかり管理されているという印象を与えることができます。定期的に新商品を追加したり、セールやプロモーションを行ったりする施策は、特に有効です。これにより顧客の興味を引き続け、リピーターを増やすことができます。
例えば、季節ごとの新作コレクションや期間限定商品の販売などが行なわれていると、顧客が定期的にショップを訪れたいと感じる環境を作ることができます。これによりショップの活気を保ち、売上のアップにつながっていきます。
8. ブランドを宣伝する
ブランドの宣伝とECサイトへの流入増加には、SNSや広告を利用します。これらのマーケティング戦略は商品や顧客層、予算によって異なるため、最適な手法を見つけるには試行錯誤が欠かせません。代表的な宣伝方法を、いくつかご紹介します。
SNSマーケティング
SNSは、ブランドの想いや商品の魅力をターゲット顧客に伝えるための重要なツールです。日本国内では、SNSの利用者が2024年末に8,388万人に到達するといわれており、多くの顧客にリーチすることができます。
各SNSはユーザー層や雰囲気が異なり、例えばTikTok(ティックトック)はインパクトのある短い動画、Instagramでは洗練された写真が好まれています。自分のブランドにとってどの媒体でどんなコンテンツが効果的か、投稿を通してテストを繰り返し、ターゲット顧客を理解していく必要があります。
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーを通して商品を宣伝する方法では、その知名度を活かせるだけでなく、実際の使用感を伝えられたり、顧客の信頼を獲得しやすいといったメリットがあります。特に若い年代の間では、インフルエンサーを通して知った商品を買うという行動が当たり前なことになってきています。
コラボレーションを打診する際には、インフルエンサーのイメージがブランドのイメージと合致しているか、アカウントやハッシュタグが適切に運用されているかを確認することが重要です。Shopifyでは、最適なインフルエンサーとスムーズなマッチングをサポートする機能としてShopify Collabs(英語のみ)も提供しています。また、中国などではライブ放送を通して商品を購入するライブコマースが主流になっているので、海外販売を検討している場合は特に効果的な手法です。
ポップアップショップ、卸売、アートマーケット
対面での販売は、アクセサリーを手にとった顧客の反応を直に確認できる貴重な機会となります。商品の改善点やターゲット顧客のニーズを理解するためにも、新興ブランドにとっては特に重要です。自身のアトリエでイベントを開催したり、小売店の一部を借りてポップアップショップを展開したりすることは、ブランドの露出度を高めるだけではなく、さらに売れる新しいハンドメイドアクセサリー製作に繋がっていきます。
9. ビジネスを拡大する
販路拡大や業務改善
ECサイト以外にも、オムニチャネルで販路を開拓していくことはビジネス拡大のために重要です。地元のショップを通じた委託販売を行ったり、既に人気のある販売プラットフォームに売り込んだりする方法が考えられるでしょう。
データ分析
定期的なデータ分析を行い、販売傾向や顧客のフィードバックをもとに改善を重ねることは欠かせません。どの商品がよく売れているか、どのようなマーケティング施策が効果的かを、常に把握していく必要があります。例えば、商品画像のABテストを行ってどのような写真が評判がいいのか判断をしたり、違うコンセプトの商品を同時発売してターゲット顧客の好みを調査したりする方法が考えられます。マーケティングツールを使用してこうしたデータを収集し、商品のラインナップやプロモーション戦略を最適化し続けていきます。
固定客を得る施策
アクセサリーは、生活用品のように自然に継続的な来店を促すことは難しいため、いかに固定客を増やすかという点が事業継続の重要な要素となります。ポイント制度やメール会員・SNSフォロワー向けのクーポン配布などの施策で、顧客の再来店を促していくことができます。また、プレゼント用の商品を作るなどして、さまざまな目的で顧客が来店できるような施策を組むことも効果的です。顧客との継続的な関係構築に、ある程度の予算を投資していくことは、長期的な売上向上につながっていきます。
まとめ
アクセサリーやジュエリーの市場は比較的飽和しているため、参入するのは難しいと感じられるかもしれません。ですがハンドメイドアクセサリーの販売ビジネスは、ごく小規模からゆっくりと段階的にスタートしていくことができるという特徴があります。実際に、これまでにも多くのデザイナーたちが、初めは自宅の片隅で始めたサイドビジネスから徐々に成功していきました。なによりお金になる趣味は、成功に欠かせないアイデアとモチベーションがどんどん湧いてくるという点が大きなアドバンテージになります。
新しいデザイナーが入り込む余地はまだ十分にあります。勇気を出して、成功に向かっての第一歩を踏み出してみませんか?
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ハンドメイドアクセサリー製作に関するよくある質問
ハンドメイド作家に資格は必要?
基本的には必要ありません。なくても売ることはできます。ただし工具や機械によっては、使用するために資格が必要となるのでご注意ください。
ハンドメイドアクセサリーを製作するのに必要な工具は?
製作しようとしているアクセサリーの種類によって異なります。事前に作られたパーツの組み立てのみを必要とするファッションジュエリーであれば、ペンチなどのシンプルな工具だけで済みます。一方でファインジュエリーを製作するには、高価で特殊な機器が必要になります。
ハンドメイドアクセサリー事業の立ち上げにはいくらかかる?
費用は製作工程の複雑さによって金額が異なります。自宅の片隅を使って、基本的な素材を揃えるだけならば、数万円ほどの投資で事業を始めることができます。特殊機器や高価な素材を使うなら高額なコストもかかります。
自分のブランドを構築するためには何をすれば良い?
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文:Ryotetsu イラスト:Pete Ryan