パッケージデザインと開封体験は、ワンセットで購入体験を左右する重要な要素です。この記事では、おしゃれなパッケージデザインと魅力的な開封体験に必要な要素のほか、パッケージデザインの役割や作り方も合わせてご紹介します。あなたならではのオリジナリティ溢れるパッケージを作って、顧客維持につなげましょう。
おしゃれなパッケージデザインの例7選
デザイン例を参考に、オリジナリティあふれるパッケージを作りましょう。
1. 購入者の心理を意識する
商品を購入した人がどんな気持ちで購入したかを想像して、デザインを考えてみましょう。
たとえば、ROMERO & McPAULで購入したスリッパが無造作に箱に入れられているだけでは、特別感を感じられませんが、高級感のある保存袋にスリッパが収められていたらどうでしょうか。丁寧な梱包とパッケージに非日常を感じ、「普段より良い買い物ができた」と少しリッチな気分になれそうです。
パッケージそのものは、箱と袋を二重に使用しただけのシンプルな仕様ですが、購入者の心理を意識したデザインといえます。
2. コンテンツの世界観を表現する
他のコンテンツとコラボレーションしている商品なら、その世界観を表現するのもおすすめです。
キャラクターやモチーフをそのまま採用するのではなく、コンテンツの持つ独特の世界観を反映させてみましょう。おしゃれでオリジナリティ溢れるパッケージデザインができれば、ファンの目を惹きつけられるかもしれません。
たとえば、shu uemuraが海を舞台にした作品とコラボレーションしたコスメでは、海や太陽を連想させるカラーや、キャラクターのイメージカラーをパッケージに取り入れています。
世界観をイメージさせるデザインにすることで、コンテンツのファンだけでなく、既存のファンにも受け入れてもらいやすくなるでしょう。
3. 一般的なデザインと異なるパッケージにする
デザインが似通った商品の場合は、あえて異なるパッケージにすることで、差別化を図ることができます。
たとえば、はちみつのパッケージはガラス瓶やプラスチック製の容器が一般的です。そこで、BEE BRIGHTは蜜蝋の容器にしてみることで、他社商品との差別化に加え、使用後にキャンドルとして使ってもらう工夫をしています。
オリジナリティのあるデザインは、人の目を惹きつけるので、商品を手に取ってもらいやすくなるでしょう。
4. 商品をパッケージの一部に活用する
パッケージの一部に商品を活用してみるのも、印象に残りやすいのでおすすめです。
たとえば、こちらの肉商品のパッケージでは、動物のシルエットをデザインし、体の部分を透明にすることで、中身が見えるようになっています。
商品の一部を活用したデザインは、オリジナリティを出しやすいというメリットがあります。商品と関連性の高いデザインでなくても、注目を集めやすいでしょう。
5. 季節感を取り入れる
季節限定や期間限定のパッケージデザインは、特別感が感じられるので、購買意欲を刺激しやすいでしょう。
以下のようなタイミングで、限定デザインのパッケージを作成してみるのもおすすめです。
- 母の日
- バレンタイン
- クリスマス
- ホワイトデー
たとえば、ピエールエルメのバレンタイン限定のパッケージデザインは、パリ生まれのアーティストであるニコラ・ビュフが手がけたことで、かっこいいアート作品のように仕上がっています。限定コラボ商品はSNSにも拡散されやすいので、宣伝効果も期待できるでしょう。
6. 贈る場面を意識したデザインにする
ギフトを想定した商品のパッケージをデザインする場合は、そのままプレゼントできるような工夫をしてみましょう。
たとえば、ロイズのハロウィンバケットのように、個包装のお菓子の一つひとつに異なるイラストを描いたり、緩衝材を兼ねたおしゃれなラッピングを重ねたりすると良いでしょう。
一般的に、個包装のお菓子は、外側の大袋やバケットのデザインに力を入れることが多く、中身の一つひとつは意外にシンプルです。あなたならではのひと工夫をこらしてみましょう。
誰かに渡すことを想定したパッケージは、ハロウィンのようなイベントでも喜ばれます。
7. メッセージ性のあるデザインにする
メッセージ性のあるデザインや実際に一言添えられるようなパッケージも喜ばれます。たとえば、お菓子のパッケージに可愛らしい付箋のようなイラストがあると、メッセージを書きやすくなります。
こちらの株式会社TRINUSのホワイトデー限定のパッケージでは、3月14日から連想させられる円周率(3.14)を使ってハートを描いています。「割り切れない」ことから「縁(円)が続く」「これからもよろしく」というメッセージを表現したデザインです。
魅力的な開封体験に必要な10の要素
魅力的な開封体験を実現するには、おしゃれなパッケージデザイン以外の要素も重要です。
商品を購入した人に感動的な開封体験を与えることができれば、SNSでの拡散も期待できるでしょう。
1. パッケージ
箱や封筒などのパッケージは、開封体験において最も重要な要素です。
たとえば、サステナビリティを意識した素材を用いたり、ユーモアのあるデザインを取り入れたりすることで、オリジナリティを感じてもらいやすいでしょう。
一方で、パッケージの素材やデザインにこだわるほど、価格が高くなってしまうのも事実です。また反対に、値段の安さやパッケージの頑丈さを優先しすぎると、十分なブランディング効果が得られないこともあるので、良いバランスを見つけられるように試行錯誤を重ねましょう。
2. 薄紙
商品を薄紙でラッピングするのもおすすめです。
パッケージデザインとは異なり、表に出ることは少ないですが、ユーザーの開封体験の向上には欠かせない要素のひとつです。
必要に応じて以下のような工夫も検討してみましょう。
- ブランドのロゴを薄紙に印刷する
- ブランドのイメージカラーの薄紙を使用する
パッケージデザインだけでなく、薄紙までこだわることで、ワンランク上の開封体験を提供できます。
3. 詰め物
競合と差別化した開封体験を提供するのであれば、詰め物にもこだわってみましょう。よく使われる詰め物には、次のようなものがあります。
- エアパッキン
- エアピロー
- ファームインサート
- スタイロフォーム
これらの詰め物は一般的なので、開封体験を向上させるためのインパクトはそれほどありません。そこで、以下のような詰め物にしてみることで、プレミアム感を演出できます。
- 色付きのクリンクルペーパー
- 梱包用のカンナ屑
一般的な詰め物とは異なり、パッケージを開封した人に特別感を与えることができます。
4. ステッカー
ステッカーは、低価格でさまざまな使用方法ができる効果的なツールです。たとえば、以下のような使い方ができます。
- ラッピングした薄紙の封をする
- ボックスに貼る
- ユーザーへのプチギフトにする
ブランド名やロゴをモチーフにしたステッカーなら、ブランディングにも効果的です。
5. 名刺・カタログ
名刺やカタログを同梱して、ブランドや商品のプロモーションを行うこともできます。名刺やカタログの他にも、ニュースレターなども取り入れて、ユーザーとのコミュニケーションを深めましょう。
6. 明細表
レシートや明細表でもブランドのコンセプトを表現することで、開封体験を向上させることができます。
多くの人にとって、明細表は開封後すぐに目にしたいものではありません。そのため、同封する際は、商品の下のような目につきにくい場所に入れましょう。
また、ブランドロゴやカラーを取り入れて、オリジナルデザインにするのもおすすめです。明細表にクーポンコードを記載すれば、リピート購入を促すこともできます。
7. 手書きのメッセージ
手書きのメッセージは、数が増えると対応が難しくなりますが、新しくビジネスを立ち上げたタイミングでは顧客獲得に効果的な方法です。
商品を購入してくれた人に心のこもったメッセージカードを添えることで、顧客とのつながりを深めることができます。また、手書きのメッセージを同封することで、購入してくれた人への心配りとブランドの背後の人間像が伝わります。
8. 説明書
商品の説明書の同封が必要な場合は、パッケージの内側に入れるのがおすすめです。購入してくれた人が商品を適切に、かつ簡単に使い始められるような情報を伝えましょう。
一般的に、購入した商品の利用方法がわからないと、使われないままの状態になってしまう場合がほとんどです。簡単に使い始められるように説明書を同封することで、購入後のアフターフォローにもなるので、信頼関係の構築につながります。
9. テープ
パッケージデザインで独自性を出すのであれば、テープにもこだわりましょう。
一般的な透明の梱包用テープだけでなく、カラフルなテープを使用したり、ブランド名が記載されたテープを作成したりするのもおすすめです。ブランド独自のテープをデザインできれば、パッケージを見ただけでブランドを認知してもらえるようになるでしょう。
10. 無料サンプル・プチギフト
ユーザーの購入履歴を元に、無料サンプルやプチギフトを同封することで、クロスセルを促進できます。
たとえば、シャンプーを購入してくれた人にコンディショナーのサンプルをプレゼントすれば、新たに商品を購入してくれる可能性が高まるでしょう。ユーザーが興味を持ってくれそうなサンプルやプチギフトを同封することで、さらなる売上アップが期待できます。
パッケージデザインの役割
パッケージデザインには、ブランドや商品のイメージを伝え、購買意欲を刺激する効果があります。また、商品の中身を保護したり、表示義務のある内容を記載するという大切な役割もあります。
商品のイメージの良し悪しを決めてしまうので、一目見ただけで魅力が伝わるようなデザインを考えましょう。商品の特徴を表現したパッケージデザインであれば、効率よく魅力をアピールできます。
ただし、既存の商品の場合は、デザインをリニューアルすることで、購入率が下がるケースもあるので注意が必要です。
パッケージデザインの作り方4ステップ
パッケージデザインは、デザイナー1人で作成できるわけではありません。企画・開発担当者へのヒアリングや市場調査を通して、ニーズと目標に合ったデザインを考えましょう。
1. 会社の担当者にヒアリングする
パッケージデザインを作成するにあたって、商品の企画・開発担当者に必要な情報をヒアリングします。主なヒアリング内容は次のとおりです。
- 商品のコンセプト
- ターゲット
- 現状の課題
- 売上状況
- 販売先
- 目標や理想
商品のコンセプトやターゲットを明確にしなければ、手に取ってもらえるような魅力的なデザインを作ることはできません。また、商品によっては、購入を検討している人の悩みを解決できるようなパッケージにすることも重要です。
目標とする売上数や以下のような目標をヒアリングして、希望するデザインのイメージを具体化しましょう。
- 競合商品と同レベルに知名度を上げたい
- ママに好まれるような商品にしたい
- 結婚祝いのプレゼントに選ばれるようにしたい
ヒアリングの際には、商品のセールスポイントの絞り込みも欠かせません。特にアピールしたい商品の特徴は、キャッチコピーとしてパッケージデザインに組み込んでみましょう。
2. 商品の情報収集をする
以下のような商品情報を集めておきましょう。
- 商品の素材・材料
- 包装資材
- サイズ
- 色数
- 想定しているイメージ
- 商品名の由来
- ロゴの意味
特に、ロゴはパッケージをデザインする際にも重要な要素の一つです。ロゴに使用されているデザインの意味やフォント・色などについて理解することで、パッケージとのバランスを取りやすくなります。
また、包装資材によっては商品を入れると膨らんでしまい、パッケージの見栄えにも影響が出るので必ず確認しておきましょう。素材と形状によって、印刷方法や色も決まるので注意が必要です。
デザインするパッケージのサイズが小さい場合は、商品コードやJANコードのような必要事項を問題なく記載できることを確認する必要があります。
加えて、パッケージデザインの料金は色数によって変わるので、事前に担当者に確かめておきましょう。ほかにも、想定する商品のイメージがあれば、それに合わせてパッケージをデザインする必要があります。
3. 市場調査をする
競合商品の販売方法や購入客層などを調査します。
他社と差別化し、オリジナリティのあるデザインにするには市場調査が欠かせません。どのような場所で販売され、どのようなコンセプトでパッケージがデザインされているかを確認しましょう。
また、過去に発売された商品がどのように販売され、どのような層が購入しているかを調べるのもおすすめです。想定していた層とは違う層が購入している可能性もあるので、パッケージをデザインする際に活かしやすいでしょう。
4. ラフ案を作成する
集めた情報を元にラフ案を作成します。紙にイメージを描いて、方向性が決まったらパソコンでデザインを作成するのが一般的です。
納得のいくデザインになるまで、こだわってラフ案を作成しましょう。
パッケージデザインの考え方のコツ
考え方のコツを押さえて、購入につながるような効果的なパッケージデザインを作りましょう。
1. パッケージの目的を明確にする
パッケージデザインには、多くの役割があるので、何を重視するかを明確にします。
- 販売促進
- 商品の保護
- ブランドや商品のイメージアップ
- 雑貨や小物のようにインテリアの一部として飾ってもらう
- SNSの拡散を狙う
商品のパッケージデザインは、目的を達成するための手段であり、自己表現ではありません。自分の好みや感情、イメージでデザインを決めるのではなく、目的を達成するのに効果的であるかを重視して考えましょう。
目的があいまいだと、誰の心にも響かない中途半端なデザインになってしまいます。
2. 競合との違いや独自性を表現する
販売されている数多くの商品のなかから手に取ってもらうには、競合との差別化が重要です。
既存の競合商品との違いを感じてもらえるように、優れている点やオリジナリティのある点をパッケージに表現できるようにしましょう。パッケージデザインのコンセプト設計をする際に、差別化する点や独自性を出す方法をしっかりと決めておく必要があります。
そのためにも、商品の企画・開発担当者へのヒアリングだけでなく、市場調査を丁寧にしてユーザーのニーズを把握することが欠かせません。オリジナリティのあるデザインで、目に留まるようなパッケージを作成しましょう。
3. トレンドを意識する
長く愛されるブランドやデザインにするには、トレンドや経済状況を意識することが重要です。
たとえば、昨今ではSDGsの取り組みが進んでいるため、パッケージにも省資源や自然素材などの活用が求められる傾向があります。ラベルレスのデザインや自然素材、リサイクル素材などを用いたパッケージが好まれる場合も少なくありません。
また、VRやメタバースにも注目が集まっているので、将来的には仮想空間の店舗におけるパッケージデザインの需要が出てくる可能性もあるでしょう。
トレンドや経済状況は日々変化しています。最新の情報をキャッチアップして、トレンドに沿ったデザインを提案できるように、アンテナを張っておきましょう。
まとめ
パッケージデザインには、商品のイメージを伝え、ユーザーの購買意欲を促進する役割があります。
商品に注目してもらうにはどうしたら良いか、ターゲットとするユーザーが求めているものは何かを考えたうえでデザインを考えましょう。
そのためにも、競合他社がどのようなコンセプトでパッケージを作成しているかを調べてみるのがおすすめです。オリジナリティのあるデザインができれば、より多くの人の目を惹くことができます。
ターゲット層によって好まれるデザインは異なるので、今回紹介したデザイン例やEC物流の記事も参考にしながら、効果的に商品の魅力をアピールできるパッケージを作成してみてください。
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よくある質問
パッケージデザインが必要な理由は?
多くの人に商品を手に取ってもらうきっかけになるほか、購買意欲を刺激する効果もあります。パッケージに使用する素材やデザインによって、商品への期待感が膨らみ、購入の後押しにつながります。
商品を発送する際に用意した方が良いものは何?
商品を発送する際には、以下を用意しましょう。
- パッケージ
- 梱包材
- 宣伝用の資料や名刺
- 納品者
- メッセージカード
- サンプルやプチギフト
- 梱包用のテープ
魅力的なパッケージに加えて、メッセージカードやサンプルなどを用意することで、リピート購入が期待できます。
パッケージをデザインするのにおすすめのアプリやソフトは?
パッケージデザインを作成する際におすすめのアプリやソフトは以下のとおりです。
- Canva
- パッケージデザインAI
- Adobe Express
- Photoshop
- Illustrator
特に、Canvaには無料で利用できるパッケージデザインのテンプレートが豊富に揃っています。パッケージデザインを専門の仕事としていない人でも手軽に作成できるので、利用してみると良いでしょう。
また、パッケージデザインAIでは、商品のデザインイメージを入力するだけで、ターゲット層に好まれるパッケージを作成できます。
パッケージデザインの費用相場は?
パッケージデザインの費用相場は以下のとおりです。
- デザイン会社:約50,000〜300,000円
- 印刷会社:約40,000〜90,000円
依頼するデザインの種類によっても費用が異なります。
一般的に、個包装のお菓子のパッケージのような小さなデザインは50,000円程度ですが、箱のような大きなデザインは300,000円程度である場合がほとんどです。
依頼する会社によっても料金形態が異なるので、複数を比較してみると良いでしょう。
文:Kana Fukuzumi イラスト:Gracia Lam