EC物流とは注文された商品が顧客の元へ届くまでの一連の物流プロセスのことです。入荷から顧客対応まで幅広い業務があります。梱包のクオリティや配送スピードなどの配送戦略は顧客満足度にも繋がるため、ECサイトを運営するならEC物流についてしっかりと理解しておきましょう。
この記事では、EC物流の流れや課題、EC送料の設定パターンなどを紹介します。EC物流がよくわからない方や、これからECサイトを始める予定の方はぜひ参考にしてください。
EC物流とは
EC物流とは、Eコマースにおける入荷や梱包、配送など一連の物流プロセスのことです。
商品の梱包と配送だけのイメージが強いEC物流ですが、ネットショップで販売する商品の入荷や検品、保管なども業務に含まれます。
EC物流の流れ(注文フルフィルメントプロセス)
EC物流は「注文フルフィルメントプロセス」ともいわれていて、入荷から顧客対応まで6つの流れがあります。
ここでは、EC物流の6つの流れと業務内容を紹介します。
1. 入荷・検品
ECサイトで販売する商品を卸売ショップや販売メーカーなどの仕入れ先から入荷し、商品の種類や数量などが間違っていないか検品作業をおこないます。
入荷の数や頻度が多いと、ミスに繋がる可能性も高くなるため、丁寧で正確な検品作業が求められます。
2. 保管(棚入れ)
検品作業まで完了したら、商品別に決められた棚へ保管(棚入れ)します。
保管業務は、先に保管した商品が奥になってしまわないように新しく入荷したものは後ろに保管したり、人気商品は手に取りやすい位置に保管したりするなどの工夫が必要です。
配列方法など事前にルール決めをしておくと、出荷のときに商品を探す時間が短縮され、誰でも対応できるようになるため、作業効率向上に繋がります。
3. 管理(棚卸し)
管理(棚卸し)とは、商品の在庫や品質を把握することです。在庫管理により事業利益を示す売上総利益の把握も可能です。
管理では、帳簿に記載されている在庫数と一致しているか、使用期限が近い商品はないか、仕入れ時よりも商品の劣化や損傷がないかなど、適切な商品管理ができているか確認しましょう。
また、売上から売上原価を引いた金額で「売上総利益」が求められ、売れ残っている商品は差し引くことができないため、在庫は資産として利益に大きく関わってきます。在庫管理は経営状況を把握するためにも大切な作業といえます。
4. ピッキング・流通加工
顧客から注文が入ると、出荷指示書に従って保管してある棚などから対象商品をピッキングします。
この際に、ラッピングや商品へのネーム入れ、アイロンがけなどが必要な場合は「流通加工」もおこないます。
流通加工は、商品に付加価値をつけるためにおこなう作業のため、受注前におこなうラベル貼りや競合他社との差別化のためにひと工夫加える作業も含まれます。
流通加工のクオリティーによって、商品を受け取った顧客のリピート率やレビューにも影響するため、丁寧に実施しましょう。
5. 梱包・出荷
商品の梱包を丁寧に効率よく進め、宛名を作成し、自社または外部の配送業者へ受け渡したら出荷完了です。
商品の梱包には個装、内装、外装の3つがあり、商品のサイズに合ったものを利用できれば送料のコストカットになります。また、商品を破損や傷から守るために、緩衝材の利用もおすすめです。
最近では、Instagram(インスタグラム)などのSNSで開封動画を投稿するユーザーもいるため、梱包は綺麗で開けやすく、自社オリジナルデザインなどを採用して独自性を強調すると良いでしょう。梱包動画を投稿・シェアしてもらえるようになれば、自然に商品やショップの宣伝ができ、効率的なSNSマーケティングをおこなうことができます。
Eコマースのビジネスでは、顧客に届くまでの日数が短いほど顧客満足度に繋がりやすいため、配送スピードは可能な範囲内の最短で設定しましょう。手作業の宛名作成も顧客が多くなるにつれて時間がかかり、配送スピードが落ちてしまうため、アプリなどを利用して宛名作成の時間を短縮するのも一つの方法です。
6. 顧客対応
お届けした商品に不具合などがあった場合の顧客対応もEC物流の一つです。商品の返品や交換など問題に合わせた適切な対応が求められます。
不具合があった際の対応が悪い場合、ショップの信用性やイメージがマイナスになる可能性もあります。そのため、素早く丁寧な顧客対応を心がけましょう。
EC物流の課題
EC物流の課題を4つ紹介します。
作業ミス
入荷から顧客対応まで人間が対応するため、ヒューマンエラーが起こりやすくなります。例えば、ピッキングするとき商品の種類や数を間違ったり、検品ミスで不具合のある商品を届けてしまったりするケースです。
このようなミスは、返品対応の増加や顧客満足度とブランドイメージの低下に繋がります。そのため、人の手を介さない倉庫管理システムの導入や作業内容の単純化とマニュアル化を徹底すると良いでしょう。
倉庫管理システムは人的ミスを防げ、作業内容の単純化とマニュアル化は非効率な作業を減らせるので作業ミス減少に繋がるでしょう。
人手不足
EC市場が拡大している反面、少子高齢化や就業人口の減少などによりEC物流の人手不足は深刻化しています。
人手不足は、出荷ミスや遅延の発生、入荷や在庫管理の不十分で機会損失を招く、サービスの質が低下しブランドイメージの低下など、さまざまな問題が発生します。
解決策の一つとして、倉庫管理システムを導入すれば、ロケーション管理や入出庫管理、在庫管理、棚卸し管理など今まで人がしていた作業を代わりにやってくれるので、倉庫内の人手不足改善に繋がるでしょう。
総務省によると2023年の世界のEC市場売上高は推定5.8兆米ドルに達しています。予測によると、この数字は数年以内に39%成長し、2027年には8兆ドルを超える見込みです。人手不足の問題は早めに解決したほうが良いでしょう。
物流コストの増加
EC物流では、物流コストの増加が課題になっています。物流コストとは、物流全般にかかる費用のことで、人件費や輸送・運送費、倉庫・設備の賃料などです。
特に、運送・輸送コストが増加しており、外航海運の価格が高くなっていることやドライバー不足と再配達の増加などの影響で宅配便の価格が上昇していることなどが要因です。そのため、人件費などほかの部分でコスト削減していく必要があります。
物流コストが高いと、売上が良くても利益は少なくなるため、余計な物流コストは削減するように心がけましょう。
発送までに時間がかかる
EC物流の出荷までの作業工程は多く、受注後の流通加工が多い場合はさらに時間が必要になります。
しかし、配送スピードが遅いと顧客満足度の低下に繋がるため、丁寧かつ迅速に出荷できる仕組み作りが大切です。人が作業したほうが良い工程とデジタル化できる部分は倉庫管理システムなどを導入し、人とデジタルで役割分担していくと良いでしょう。
EC送料の設定パターン6つ
1.送料を無料にする
送料無料は、商品価格のみで商品を購入できることです。しかし、送料が単純に無料になるのではなく、顧客かショップが費用を払っています。送料を無料にするための方法は、主に4つあります。
- 送料をカバーするために商品価格を上げる(顧客が負担)
- 送料全額を利益から引く(ショップが負担)
- 送料の一部をカバーするために商品価格を少し上げる(ショップとお客さまが負担)
- 特定のお客さまのために割引コードを発行する(ショップが負担)
また、最低注文額を設定して送料を無料にする方法もあります。この戦略は、平均注文額を増やして送料を相殺します。ただし利益から送料を差し引くので、送料を負担するのはあくまでショップ側です。
2. 送料を一律にする
送料を一律にする方法とは、すべての商品と配送先の送料を均一に設定することです。
似たサイズと重量の商品を多く取り扱っているECサイトにおすすめの方法ですが、サイズや重量が異なる多様な商品を販売している場合の送料一律はメリットが少ないでしょう。
3. ローカルデリバリーを提供する
ローカルデリバリーとは、ショップから顧客に直接配達する方法で、近郊エリア限定のサービスです。地域密着型のショップを運営している企業や、一部地域だけでも送料を安くしたい場合におすすめの方法です。
EコマースプラットフォームのShopify(ショッピファイ)では、Shopify plusを契約した上で、登録地域が20か所以内などの条件を満たしていれば、半径や郵便番号で配送エリアを簡単に設定できます。設定した配送エリアに該当する顧客が注文したときだけ「ローカルデリバリー」のオプション表示が可能です。一定額以上の注文に無料または安い配送料でローカルデリバリーを提供できれば、配送コストの削減と多くのローカル顧客の獲得に繋がるでしょう。
4. 地域別にする
ECサイトでは、地域別の送料設定が可能です。ECサイトの配送料は地域によって変動し、沖縄や北海道などの離島の場合は本州より高くなる傾向にあります。地域別の送料設定は、ショップ側の負担を軽減できるメリットがありますが、送料が高くなる地域に住んでいる顧客には魅力がないため、カゴ落ちのリスクが高くなります。幅広い地域で顧客を獲得したいショップには不向きでしょう。
また、地域別の送料設定は顧客側からすると送料の把握が難しいので、購入まで至らない場合もあります。そのため、送料早見表など一目でわかりやすい送料の価格表が必要です。
5. 重量やサイズ別にする
送料は地域別以外に、重量やサイズでも変動するため、これらに合わせた方法で送料を設定できます。
重量やサイズ別に送料を設定するメリットは、ショップ側の配送コスト削減と管理がしやすい点です。一方、顧客側は送料の把握が難しく、たくさん購入すると送料が高くなるので購入まで至らない場合もあります。
そのため、梱包に利用する箱や封筒などで可能な限り軽く、小さくしてあげることで、送料を安く提供できます。例えば、クッション性を必要としない衣類の場合はポリ素材の封筒が良いでしょう。
また、送料計算ツールのようなものを設置すれば、顧客が商品をカートに追加したときに正確な送料を提示できます。重量やサイズ別で送料を設定する場合は、このようなツールの導入も検討しましょう。
6. 配送方法で送料を変える
ECサイトでは、宅急便やメール便などの配送方法で送料を変える設定方法もあります。
例えば、ゆうパックの送料は「820円〜」、ヤマト運輸の宅急便は「940円〜」、クロネコヤマトのメール便は「80円〜」配達できます。荷物の追跡や保険などのオプションをつける場合はオプション料金がかかるため、送料は高くなります。
顧客に配送方法の選択肢を提示できると、早く届いて欲しい場合は宅急便、送料を安く抑えたい場合はメール便など顧客の希望にあった方法で発送でき、顧客にとってもメリットになるでしょう。
EC物流の利益率を考える
Eコマースを成功させるには、利益率も気にする必要があります。送料はECサイトにとって大きな支出となるため、送料を含めた利益率を把握しましょう。一見、送料は少額の経費に見えますが、雪だるま式に膨れ上がり、利益率を低下させる原因の一つとなってしまいます。慎重な送料設定と配送業者のリサーチが重要です。送料には、追跡や保険などのオプションもあり、高額商品を取り扱っている場合は、これらのオプションを付け加える前提で配送業者を比較したほうが良いでしょう。
EC物流の税関手続きと申請
国外に商品を発送するときは、適切な税関書類が必要です。
税関書類は郵便局や配送センターで入手できるので、添付が必要な書類などわからない点は書類を取りに行ったときに質問しましょう。また、Shopifyでもオンラインで税関書類の入手が可能です。
追加の関税費用
追加の関税費用がかかる場合、商品の配達時に顧客が負担することになります。顧客が予想外の請求に驚かないようにするために、配送ポリシーに追加関税の可能性を記載しておきましょう。
赤文字や太文字などを利用して、目立つように記載すると顧客も見つけやすくなります。
EC物流代行サービスを利用する
EC物流代行サービスを利用すれば、配送作業を外部に委託でき、自社で物流をする手間を省けます。顧客から注文が入ると、EC物流代行サービスの業者が自動でピックアップ・梱包・配送まで対応してくれます。
EC物流代行サービスのメリット
- 安い配送費用:EC物流代行サービスは大量の荷物を複数の販売業者のために発送するので、安い送料が適用されています。また、大手の配送ロジスティクス企業や3PL(サードパーティロジスティクス)と連携しているケースが多いため、多様な配送オプションから選択できます。
- 短い配送時間:在庫を管理する倉庫を全国各地に持っているEC物流代行サービスを選ぶと、顧客に1番近い倉庫から発送できるため、配送時間を短縮できます。
EC物流代行サービスのデメリット
EC物流代行サービスの利用は万人向けではなく、デメリットも存在します。
- ブランド体験:自社オリジナルパッケージ方法などこだわりの梱包がある場合、希望通りの梱包方法に対応してくれるEC物流代行サービス業者は多くありません。しかし、梱包方法はブランドの独自性をアピールできるポイントなので、対応してくれるEC物流代行サービスを見つけましょう。
- 追加コスト:EC物流代行サービスを利用すると配送料は安くなりますが、梱包料金や倉庫保管料金などの支払いも必要になります。受注数や月額料金などEC物流代行サービスによって料金設定が違うので、経営状況に合っている業者を選びましょう。
まとめ
EC物流には6つの流れがあり、小さなミスが機会損失や配送の遅れなどに繋がるため、倉庫管理システムの導入や作業内容の単純化・マニュアル化などの対応が重要です。
また、送料はショップ負担の送料無料が顧客にとって1番魅力的ですが、送料が経営を圧迫する原因にならないように、最適な送料設定を選ぶようにしましょう。
EC物流代行サービスを利用すれば配送料が安くなり、配送スピードが向上するメリットはありますが、オリジナルのパッケージに対応してもらえなかったり、配送料以外の費用を請求されたりするといったデメリットもあります。EC物流代行サービスの利用検討や業者選びは慎重におこないましょう。
送料無料や即日配達など、顧客がEC物流に求める要望は年々高まっています。EC物流の理解を深めて、顧客満足度やブランドイメージ向上に努めていきましょう。
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よくある質問
EC物流とは
EC物流とは、Eコマースにおける入荷や梱包、配送などの一連の物流プロセスのことです。
フルフィルメントとは?
フルフィルメントは、顧客が注文を確定するところからパッケージを受け取るところまでのプロセスです。
フルフィルメントに配送は含まれますか?
フルフィルメントに配送は含まれます。フルフィルメントは、顧客の注文確定から配達完了までの一連の流れであり、配送はそのフルフィルメントプロセスの一部です。
注文フルフィルメントプロセスの6ステップとは?
入荷・検品、保管(棚入れ)、管理(棚卸し)、ピッキング・流通加工、梱包・出荷、顧客対応(返品)がフルフィルメントプロセスの6ステップです。
文:Momo