B2Cは、企業が製品やサービスを個人に直接販売する一般的な商取引の形態です。例えば、スーパーやネットショップは客へ直接商品を販売するため、B2Cに当たります。
本記事では、B2Cの定義やB2B(Business to Business)との違いについて解説します。さらに、B2Cの種類や成功事例、企業にとってのメリットも紹介します。
B2Cとは

B2C(Business to Consumer)とは、消費者向けの商品・サービス販売のことで、ビジネスモデルの一種です。例えば、アパレルブランドが自社ECサイトで洋服を販売したり、カフェがコーヒーを提供したりするケースが、B2C取引に該当します。ここでいう消費者とは、エンドユーザー(最終的な利用者)を指します。つまり、商品やサービスを再販売するのではなく、自ら使用する目的で購入する人々のことです。
B2Cは消費者向けビジネス全般を指し、D2C(Direct to Consumer)やサブスクリプションといった多様なビジネスモデルが含まれます。主な例として以下のような企業があります。
- ウェブサイトや実店舗で製品を直接販売するメーカー
- 個人向けにサービスを提供するプロバイダー
- 多様な商品を仕入れて販売する小売業者
B2Cで競争力を高めるためには、常に顧客視点に立った体験設計が求められます。スムーズかつ快適なショッピング体験を提供することで、持続的な成長を実現することができます。
B2CとB2Bの違い
B2CとB2Bは、誰に向けて商品を販売するかという点で大きく異なります。B2Cは商品やサービスを一般の消費者へ販売し、B2Bは法人や事業者へ販売します。
B2Bを主要なビジネスとする業種として、卸売業者、物流会社、業務用ソフトウェアの提供企業などが挙げられます。これらは企業を顧客とし、そのニーズに応じた取引を行っています。B2BのECサイトも存在します。
B2Cの5つの例と大手企業
B2Cは特にネットビジネスにおいてさまざまな形を見せています。オンラインのB2Cビジネス5つと、それぞれの代表的な企業を紹介します。
1. 直接販売
直接販売は、企業がECサイトやアプリを通じて、消費者に直接商品やサービスを販売するビジネスモデルです。企業は卸業者や小売店などの中間業者を通さず、顧客と直接やり取りを行います。
メーカーが自社で製造した商品を直接販売する場合(D2C)もあれば、小売業者が仕入れた他社製品を消費者に販売する場合もあります。どちらの場合も、最終的に企業が消費者に対して直接販売するという点は共通しています。
直接販売モデルの最大のメリットは、顧客との関係を自社で管理できることと、中間コストを削減できることです。顧客データを直接収集できるため、より精度の高いマーケティングや商品開発に活かすことができ、リピート購入やファン化の促進にもつながります。
一方で、集客や販売後のサポートまで、全てを自社で担う必要があるため、マーケティング力やカスタマーサービスが成功の鍵となります。
直接販売の例:
- ユニクロは、自社の公式ECサイトを運営し、消費者に直接アパレル商品を販売しています。実店舗とECサイトを連携させたオムニチャネル戦略も積極的に展開しており、オンラインで注文して店舗で受け取るサービスなども行っています。
- 無印良品も、自社ECサイトや公式アプリを通じて商品を直接消費者に販売しています。ブランドが持つ世界観を自社チャネルでしっかり伝えながら、国内外の消費者にアプローチしています。
- ニトリは、自社ECサイトを通じて家具・インテリアを直接販売しています。大型商品の配送も可能で、オンラインでもリアル店舗と同様の購買体験を提供しています。

2. 仲介プラットフォーム
仲介プラットフォームは、企業と消費者の間に立ち、商品やサービスの提供者と購入者を結びつけるビジネスモデルです。このモデルには、マーケットプレイス、比較サイト、マッチングサービスなどが含まれます。
企業側には、商品やサービスの認知度を高める集客支援やプロモーション機能を通じて販売機会を増加させる販売促進を行います。
消費者側には、多様な商品やサービスを一括で比較・検討できる選択肢の拡大、レビューや評価システムを通じて他の消費者の意見を参考にする信頼性の確保などの価値があります。
仲介プラットフォームは膨大なユーザー数を抱えることが成功の鍵となるため、検索エンジン最適化(SEO)を活用した集客が欠かせません。SEO対策を行うことで、検索エンジンでの上位表示が可能となり、潜在顧客のアクセスを増やすことができます。
仲介プラットフォームの例:
- Amazonはマーケットプレイスで、企業が自社の商品を出店し、消費者がその中から商品を選んで購入します。多数の出店者を集め、消費者に多様な選択肢を提供しています。
- じゃらんは比較サイトで、消費者は複数の企業が提供する宿や宿泊プランなどを一覧で比較できます。価格や機能、口コミなどを比較し、自分に最適な選択をすることができます。
- クラウドワークスはマッチングサービスで、特定のスキルを求める消費者と取引先を結びつけます。依頼者は自身の案件を提示し、企業や個人がそれに応じて提案を行います。

3. 広告掲載
広告を使って消費者にアプローチするのもB2Cの例の一つです。企業が消費者向けに無料のコンテンツやサービスを提供し、その閲覧や利用時に消費者に広告を表示します。また、SNSプラットフォームやオンラインメディアに広告を掲載するのもこのモデルに当てはまります。
魅力的なコンテンツでユーザーを集客し、その閲覧行動に基づいて広告を配信することで、商品やサービスを効率的に販売できます。広告の種類には、バナー広告、動画広告、ネイティブ広告などがあり、ユーザーの興味や行動に基づいて最適な広告が表示されることが一般的です。
一方、広告を使ったアプローチは市場の動向や予算に影響されやすいという欠点があります。また、過度な広告表示はユーザーの離脱を招く可能性があるため、ユーザー体験(UX)を損なわないようバランスを取る必要があります。
広告掲載の例:
- YouTubeでは、ユーザーがアップロードした動画に広告を挿入することでその動画の視聴者に商品やサービスを宣伝できます。
- Instagramは写真や動画を共有するプラットフォームで、ストーリーズやフィードに広告を出すことができるため、自然な形で消費者にリーチできます。
- ハフポストはニュースやブログ記事を提供するオンラインメディアで、記事内に広告を掲載できます。

4. コミュニティ運営
コミュニティ運営は、企業が共通の興味や価値観を持つ消費者同士の交流を促進し、その関係性や体験価値を高めることで収益を生み出すビジネスモデルです。
企業は、ユーザー同士が自発的に情報を共有・交換できるようなプラットフォームや仕組みを提供し、信頼性と継続性のためにコミュニティ管理に取り組みます。
収益を得る方法として、有料会員制度やプレミアム機能の提供、コミュニティ内での商品・サービス販売、広告配信が挙げられます。
企業にとって、こうしたコミュニティの運営は、一時的な収益の創出にとどまらず、顧客との長期的な関係を築く手段となります。消費者は顧客にとどまらず、ブランドと共に価値を共創する参加者として位置づけられます
コミュニティ運営の例:
- YAMAP(ヤマップ)は登山者向けのGPSアプリで、ユーザー同士が登山記録や情報を共有するコミュニティを形成しています。基本機能は無料で提供し、プレミアム会員向けに高度な機能を有料で提供するフリーミアムモデルを採用しています。
- CAMPFIRE(キャンプファイヤー)オンラインサロンはクリエイターや専門家が主宰するコミュニティに月額制で参加できるサービスです。参加者は主宰者の知見を得たり、メンバー同士で交流したりすることで価値を感じ、継続的に課金するモデルとなっています。
- Facebookではユーザーが自分の興味関心に応じてグループを作成し、情報交換やディスカッションを行っています。Facebook自体は、これらの行動履歴や興味をもとに、ユーザーに合わせた広告を表示することで大きな広告収益を得ています。

5. サブスクリプション
サブスクリプションは、企業が商品やサービスへの継続的なアクセスを提供し、その対価として月額または年額などの定期課金を受け取るビジネスモデルです。デジタルコンテンツやソフトウェア(SaaS)、さらには日用品や食料品の定期配送など、さまざまな分野で広く採用されています。
売り上げが一定の周期で発生するため、企業側は将来的な収益をある程度予測することができ、経営計画の精度が高まります。また、サブスクリプションは顧客との継続的な接点を持つことで、顧客生涯価値(LTV)を最大化する上でも効果的な手法だと言えます。
サブスクリプションモデルでは顧客獲得コスト(CAC)にも注目が必要です。例えば、SNS広告やインフルエンサーを活用して集客した場合、初期投資が大きくなることもありますが、その後の継続課金によって回収できる構造を設計できれば、収益性は高くなります。
一方で、サービスの利用価値が顧客にとって十分に明確でない場合には、短期間で解約(チャーン)されるリスクがあります。
サブスクリプションの例:
- Disney+(ディスニープラス)は月額制で映画やアニメ、オリジナル作品などに無制限でアクセス可能な動画ストリーミングサービスです。
- Spotify(スポティファイ)は音楽配信プラットフォームです。無料プランでは広告が表示され、プレミアムプランでは広告非表示などの特典が得られます。広告収入とユーザー課金のハイブリッド型です。
- Sansan(サンサン)は個人向けにEightという名刺アプリを展開しています。基本機能は無料だが、スキャン代行などのプレミアム機能は月額課金で提供しています。

B2CとB2Bの主な違い

B2BとB2Cはビジネス戦略が大きく異なります。これらの違いを理解することで、適切な戦略を策定し、ターゲット層により効果的にリーチできます。
販売の仕方
- B2C販売は主に個人消費者を対象とした取引であり、購買プロセスはシンプルかつスピーディーです。
- B2B販売は法人や組織が相手となるため、複数の関係者による調査・承認が必要となり、販売プロセスが長期化する傾向にあります。また、製品のカスタマイズ対応が求められる場合もあります。
マーケティング戦略
- B2Cマーケティングでは、感情的な訴求やブランド戦略が重視され、SNS広告やテレビCM、インフルエンサーの活用などが中心となります。
- B2Bマーケティングは、合理性や業務効率の向上といった実利に基づく訴求が基本です。ただし近年ではB2Cの手法も取り入れられており、感情的な要素やインフルエンサー戦略も注目されています。
価格設定と支払い条件
- B2Cの場合、商品の価格は基本的に一律であり、購入者はその場で全額を支払います。割引やセールなどの販売促進策が頻繁に活用されます。
- B2Bの場合、価格は顧客の規模や契約内容、取引条件に応じて個別に設定されます。また、交渉によって割引や分割払い、請求書払いなど柔軟な支払い条件が提示されることもあります。
B2Cのメリットとデメリット

B2Cビジネスモデルには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 市場の規模:消費者の数は企業の数より圧倒的に多く、潜在的な顧客層が広い。
- 売上発生の速さ:購買サイクルが早いため、短期間で売り上げが見込める。
- 柔軟な価格戦略:セールやクーポンなど顧客の反応を見ながら施策を調整できる。
- 参入障壁の低さ:ShopifyなどのECプラットフォームを活用することで、少人数・低資本でもスモールビジネスを立ち上げやすい。
- 顧客データの得やすさ:消費者に直接販売することで、コンバージョンデータ、メールアドレス、顧客行動パターンなどのデータを収集し、分析しやすい。
デメリット
- 顧客単価の低さ:1人あたりの購入金額が企業間取引に比べて小さく、利益率も低め。
- 顧客対応コストの高さ:多数の顧客に個別に対応するため、手間がかかる。
- 苛烈な価格競争:個人の消費者は価格に敏感で、競合との差別化が難しい。
- 需要予測の難しさ:消費者行動は流行や季節に大きく左右される。
まとめ
B2Cは、インターネットやスマートフォンの普及とともに急速に拡大しました。さらに、ShopifyのようなECプラットフォームの登場により、個人や小規模事業者でもオンラインビジネスを立ち上げ、グローバルな市場で消費者と取引することが可能になっています。
一方で、競争の激化や価格への敏感さ、顧客対応の煩雑さといった課題も無視できません。さまざまなツールを活用し、顧客視点に立ったサービスを提供することが、B2C市場で成功するための重要な鍵となるでしょう。
よくある質問
B2CとBtoCの違いは?
B2CとBtoCはどちらも「Business to Consumer」の略で、表記が異なるだけで意味に違いはありません。
B2C企業大手の具体例は?
AmazonなどのECサイト、ユニクロなどの小売店、Netflixなどの動画配信サービスはいずれもB2Cです。
B2CとB2Bの違いは?
B2Cは企業が一般消費者向けに商品やサービスを提供するモデルで、B2Bは企業同士で取引を行うビジネスモデルです。
B2CやB2B以外のビジネスモデルは?
B2Cの主なメリットは何?
市場が広く、個人ニーズに直接対応できる点や、オンラインツールを活用すれば小規模でもグローバル展開が可能な点が主なメリットです。
B2Cで成功するための戦略は?
顧客ニーズに合った商品設計、使いやすいECサイト、SNSを活用したマーケティング、そしてデータに基づいたパーソナライズ施策が鍵となります。
文:Hisato Zukeran