BtoB マーケットプレイスとは、従来のBtoC オンラインストアと同様に、企業同士が製品を売買することができるプラットフォームです。BtoC と大きく違うところは、BtoC では個人消費者に対する取り引きが行われるのに対し、BtoB ではブランド、製造業者、卸売業者といった企業間同士で取り引きが行われる点です。
BtoB マーケットプレイス市場は、2020年には6兆6,400億ドル規模に及び、2028年までにはさらに18.7%成長するとGrand View Research社は予測しています。今回は、今後ますます成長への期待を持つことのできるBtoB マーケットプレイスについて、その定義、成功例やメリット・デメリットを紹介していきます。
BtoB マーケットプレイスとは?
BtoB マーケットプレイスとは、法人同士の取り引き(BtoB)を行うことのできるオンラインストアのプラットフォームのことを指します。企業間同士の複雑な取り引きやコミュニケーションをひとつのプラットフォーム上で行うことができるので、作業を合理化することのできるソリューションとして近年注目を集めています。
従来のように、自社のBtoB オンラインストアを立ち上げるには労力、時間だけでなく大きな初期費用がかかります。また、初期費用だけでなく、オンラインストアが立ち上がった後も運営、マーケティング、広告、物流のためのインフラなど、月々の作業や費用が山積みとなります。その一方、BtoB マーケットプレイスを利用すると、他企業が運営するマーケットプレイス上に自社の商品を出店するだけで法人取引を実現することが可能になるのです。手軽に運営をすることができるということ以外にも、BtoB マーケットプレイスを使うメリットは多くあります。
BtoB マーケットプレイスを使うメリットとは?
BtoB マーケットプレイスには、作業の効率を高め、企業間におけるビジネスリスクを軽減するために機能するメリットが数多くあります。第一のメリットとしてあげられるのが、ユーザーフレンドリーで使いやすいという点です。他の企業と繋がってビジネスを行うことが従来に比べて簡潔化され、BtoB マーケットプレイス上の他企業に対して容易に自社の製品やサービスを宣伝することができ、その結果大量の注文確保へと繋げることができます。初期設定と製品情報や価格の更新という継続的なメンテナンスを除くと、大幅に法人取引運営を簡素化、合理化することが可能となります。また、オートメーションツールを使うことにより、法人間の取り引きをよりスムーズ、シームレスに行うことができるようになるのです。
多くの企業が利用しているBtoB マーケットプレイスに参戦することにより、従来のような広告費用を使わずに取引先を取得することが可能となります。一部のBtoB マーケットプレイスでは有料広告を出すこともできます。しかし、全体的なマーケティングコストを削減することでより大きな注文を確保し、収益を向上させることに重点的に取り組むことができ、法人取引の利益率を高めることへと繋がるのです。
BtoB マーケットプレイスでは、今までは取り引きすることが難解だった海外の企業に対する取り引きもできるようになります。国際的な決済には物流、通貨変換などさまざまな問題が山積みでした。しかし、グローバル対応のBtoB マーケットプレイスを活用することにより、複数の国にわたる物流を統合的に管理することができ、プラットフォーム上で安心して国際精算まで行えます。
また、データと情報のセキュリティと機密性に信頼性があるということもメリットのひとつです。自社で運営するオンラインストアと違い、データ侵害や個人情報の保護をBtoB マーケットプレイスに託すことが可能となるため、セキュリティに重点を置いているBtoB マーケットプレイスを使うことにより、データの侵害を心配する必要が払拭されます。
BtoB マーケットプレイスのデメリットとは
BtoB マーケットプレイスに参戦することには、大きなメリットがあるのがわかりました。しかし、BtoB マーケットプレイスを導入する際に企業が直面する可能性のある一般的な課題を事前に理解しておくことも大切です。
まず第一に、BtoB マーケットプレイスの初期設定に時間がかかることがデメリットとして上がります。新しいプラットフォームに慣れない初期段階では、顧客を見つけ提示する方法を理解するのが難しい場合があります。プラットフォーム特有の売り方や顧客へのアピール方法を理解するためには、独自のリサーチや初期設定作業に時間を要するかもしれません。
また、独自のBtoB オンラインストアを構築し運営する費用よりは少なくおさまるかもしれませんが、BtoB マーケットプレイスに登録する際には初期費用や継続的な諸費用がかかります。プラットフォームごとに、サブスクリプション制度やコミッションフィー制度など登録料の種類があるため、全体的な費用を予め計算しておかないとプラットフォームに無駄な費用を費やすことになってしまいます。
BtoB マーケットプレイスでは、多くの企業が参戦しているため今までよりも多くの種類の他企業と繋がりやすいというメリットがあります。その一方、何千もの買い手と売り手が1箇所に集まっているため、必然的に競争率は厳しいものになる可能性があります。自社と同様の製品やサービスを提供する企業は数多くあるため、いかにユニークさをアピールできるかという点がBtoB マーケットプレイスで成功する鍵となります。
最後に、BtoB マーケットプレイスのプラットフォームには多数の種類が存在し、メーカーやサプライヤーにとって、どのプラットフォームを選択すれば良いかということを決定するのには時間がかかることがあります。自社に適したBtoB マーケットプレイスはどれなのか判断するためには、費用、プラットフォームの充実さ、セキュリティの細かさ、初期設定の仕方など、さまざまなポイントを十分に理解することが必要となります。プラットフォームの機能や品質はプラットフォームごとに大きく異なるため、実際にBtoB マーケットプレイスのプラットフォームを契約する前に入念なリサーチが必要となります。
BtoB マーケットプレイスの成功例
では、実際どのようなBtoB マーケットプレイスが存在するのでしょうか。ここでは、世界的に有名なBtoB マーケットプレイスをいくつか紹介していきます。
Amazon Business
Amazon は、BtoC 業界ではもちろん、BtoB 業界においても信頼性のあるプラットフォームです。Amazon Business という、BtoB 専用の別プラットフォームを作成し、BtoB 業界でもビジネスを拡大しています。2015年に設立され、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、インド、日本の8カ国で活用することが可能です。Amazon Business の最大のメリットは、その使いやすさでしょう。登録プロセスに沿って手続きを行うだけで簡単にサインアップすることが可能です。管理画面には、在庫数や価格設定などの登録を簡単に行えるだけでなく、見積書の発行や購入時に上司への確認作業も行うことができる「ワークフロー承認機能」なども備わっています。
Amazon Business は、特に中小企業の参画に強い後押しをしています。リソースの限られている中小企業でもグローバルな舞台でBtoB 取引に参戦できるよう、調達プロセスをデジタル変革することで、中小企業のニーズを満たすソフトウェアを作り出しているのです。データ収集をすることも可能で、それらをもとに広告戦略を考えたり、掲載優先順位を高めるための改善策を作り上げることもできます。
BtoC のAmazon オンラインストア同様、季節限定の値下げや限定割引、大口割引などを随時提供しており、数百万点の商品へのアクセスがあります。また、Amazon Business の強みはBusiness Prime などの配送です。条件に応じて適応可否がありますが、当日、翌日、2日後の配送や、パレット輸送、無料配送など、フルフィルメントのオプションが手厚くなっています。
Alibaba Group
Alibaba Group は、1999年に設立された中国を中心としたメーカーが参戦しているBtoB プラットフォームですが、世界主要国40ヶ国からの何百万という莫大な製品が取り扱われています。Alibaba Group のBtoB マーケットプレイスには、セグメンテーション、オートメーションツール、レポーティングなどの機能が備わっています。これらのツールから集めることのできるデータは、企業にとって有益な情報となります。
カテゴリー別に製品を探すことができ非常に使いやすいほか、翻訳機能、見積もりの作成、配送オプションなどさまざまな機能を提供しています。Alibaba Group に出品することは無料で、取り引き手数料も発生しません。しかし、Alibaba Group のプラットフォームを使うには契約費用として年間費用を支払う必要があります。また、自社の製品露出を高めるために、広告費用を支払うこともできます。すると、顧客の地域や検索履歴、キーワードを用いて広告ターゲティングを行うことも可能です。
また、Alibaba Group のマーケットプレイスにおける大きな特徴としては在庫をAlibaba Group に置かなくて良いという点です。よって、Amazon Business と違い全てソフトウェアベースなため、在庫管理のための倉庫などに投資する必要がありません。
楽天市場
楽天市場は、日本版Amazon と呼ばれるほど日本で親しまれているオンラインストアプラットフォームです。楽天市場は基本的に日本におけるマーケットプレイスでしたが、Ebates を買収した後、アメリカでも存在感を出し始めている企業です。
楽天市場の特徴は、店舗画面のカスタマイゼーションが細かくできる点です。店舗画面だけでなく、商品ページまで細かくカスタマイズすることができ、それぞれの企業が自社ウェブサイトに似たようなデザインにすることはもちろん、でも動画や独自のメッセージングなどを入れ込むことにより、他者との差別化を図りやすいインターフェイスとなっています。
カスタマーサポートにも力が入っており、販売者専用のE コマースコンサルタントとともに楽天市場の使い方についてトレーニングやガイダンスを受けることが可能です。
India Mart
India Mart は、1996年に設立されたインドを代表するBtoB マーケットプレイスのプラットフォームです。India Mart は、個人企業、中小企業、大企業向けに設計されていて、インド全土の買い手と売り手を結びつけるデジタルプラットフォームです。India Mart では、耐久消費財、アパレル、製薬関連製品、建設製品、化学製品などさまざまな業界の製品とサービスが取り引きされています。
India Mart のプラットフォームポータルでは、リード管理システム、支払い保護プログラム付きの支払いソリューション、EメールやSNSを使った売り手と買い手のコミュニケーションサポートなどを行うことができます。
Droppe
Droppeは、ヨーロッパのメーカー100社を超える広大なネットワークを持つBtoB マーケットプレイスです。主に安全装置、輸送用品、清掃用品、工具、手袋、テープや衛生用品などという工業製品の取り引きが行われています。買い手は、必要とする製品特定の技術用件や詳細情報を入力して製品を検索することができ、とてもユーザーフレンドリーなインターフェイスが提供されています。
ヨーロッパの名だたる老舗メーカーから新興サプライヤーまで、Droppe 上では業界のトップブランドに簡単にアクセスすることが可能です。Droppe のBtoB マーケットプレイスを利用することにより、工業製品の調達プロセスを簡易化、合理化することができ、企業の貴重な時間と労力を節約することにつながります。
BtoB 卸売ストアを作ってみよう
このように、BtoB マーケットプレイスには法人取引を行う企業にとって費用、時間、労力を削減しつつ効率的に新規取引先を獲得するためのメリットが多くあります。初期設定をする際に直面する課題もありますが、入念なリサーチを行うことにより課題を克服することは可能です。
今後も大きな成長が期待されるBtoB マーケットプレイス市場。ショピファイでも、簡単に卸売ストアを制作することが可能です。法人取引も、今後はオンライン上で行えるように準備が必要となるでしょう。
よくある質問
BtoB 取引とは?
BtoB 取引とは、企業間で行われるビジネスの取り引きのことを指します。BtoC が、企業(Business)から一般顧客(Customer)に対する取り引きなのに対し、BtoB は企業(Business)から企業(Business)への取り引きということです。一般的に、BtoB 取引では製品の大量注文が行われることが主流で、製品が卸売価格で売買されます。
デジタルマーケットプレイスとは?
デジタルマーケットプレイスとは、買い手と売り手の双方が製品やサービスを取り引きするための場となるオンラインプラットフォームのことを指します。特定の製品やサービスを探している購入企業と、それらの製品やサービスを提供している販売者またはプロバイダーをオンラインプラットフォーム上でマッチングさせる機能を持っています。
卸売とは?
卸売とは、企業、メーカー、流通業者から直接大量の製品を購入し、消費者へと再販するビジネスを指します。卸売では、大量購入をする代わりに通常消費者が目にする小売価格より低価格で取り引きがされるのが一般的です。つまり、BtoB 取引では通常卸売価格でやりとりがされます。