ネットショップを開設する際、最適な販売プラットフォームを判断するのはなかなか難しいものです。あまり考えずに利用するプラットフォームを決定すると、商品コンセプトに合ったサイトに仕上げられなかったり、機能性に不便を感じたりするかもしれません。この記事では、ネットショップの立ち上げを検討している人向けに、おすすめの販売プラットフォーム9つと、その選び方を紹介します。
ネット販売プラットフォームとは
ネット販売プラットフォームとは、ECサイトを開設・運営するためのシステムやソフトウェアのことです。プログラミングの知識がなくても簡単にECサイトを立ち上げられるため、多くの事業者に利用されています。
こうしたプラットフォームには、商品管理や決済処理などの基本的な機能だけを持つものから、海外に商品を販売する越境ECに対応できるものまで、さまざまな種類があります。
ECプラットフォーム9つの比較
1. Shopify
Shopifyは、充実した機能を低料金で利用できるECプラットフォームです。タブレットやスマホ経由で購入するモバイルコマースへの対応にも定評があります。価格は抑えながら本格的な機能を利用したい、あるいはモバイル経由での購入にも対応したいと考えている事業者に適しているプラットフォームと言えます。
Shopifyは、IT製品やクラウドサービスを比較できるITreview(アイティーレビュー)において2024年6月現在、機能への満足度は5ポイント中4.7ポイントを、価格への評価は4.3ポイントを獲得しており、類似のECプラットフォームと比較して高評価を得ています。商品管理機能やショッピングカート機能など各機能も軒並み評判が良く、数多くの日本企業が利用しています。約200種類のデザインテンプレートから好きなものを選ぶだけでネットショップを簡単に開設できるだけでなく、HTMLやCSSの編集による高度なカスタマイズも可能です。また、海外販売にも対応できるように多彩な決済方法を準備しており、支払いも現地通貨で行えます。
料金:
ベーシック:月額4,850円(月払い)、3,650円(年払い)(初月は月額150円)
スタンダード:月額13,500円(月払い)、10,100円(年払い)(初月は月額150円)
プレミアム:月額58,500円(月払い)、44,000円(年払い)(初月は月額150円)
Plus:月額2,300米ドル~
決済手数料:0.2~3.9%
詳細はShopifyの料金プランで確認
2. BASE
BASEは、初期費用・月額費用0円でECストアを立ち上げたい人におすすめのECプラットフォームです。BASEのスタンダードプランは、商品が売れたときに決済手数料とサービス利用料のみを支払う料金体系となっており、コストを抑えたい多くの事業者がBASEを利用してECサイトを立ち上げています。
また、操作が分かりやすくECサイト立ち上げまでのハードルが低いこともBASEの特長です。BASEの公式ウェブサイトには「販売開始までわずか30分で完了できます」と書かれていますが、実際に「30分でサイト立ち上げが完了した」という口コミがネット上で数多く見られます。
加えて、利用者の買い物を快適にする機能も充実しており、たとえば「最近チェックした商品」や「おすすめ商品」などのレコメンド機能、最新情報や割引キャンペーンを伝える「お知らせエリア」があります。また、BASEで作られたショップでの買い物を楽しめるアプリ「Pay ID(ペイ アイディー)」も用意されています。ショップ利用者はこのアプリを使えば、住所などを入力することなく会員IDだけでスムーズに支払いを行うことが可能となります。
料金:
スタンダードプラン:
月額0円+初期費用0円
決済手数料3.6%+40円
サービス利用料3%
グロースプラン:
月額16,580円+初期費用0円
決済手数料2.9%
サービス利用料0円
3. makeshop
makeshopは、多様なテンプレートが用意されており、ECサイト構築の知識がなくてもすぐにサイトを立ち上げられるため、初心者におすすめなECプラットフォームです。また、きめ細やかなサポートを無料で提供していることから事業者に好評を博しており、この点でも初心者向けと言えます。実際、ITreviewの評価では「サポート品質」が5ポイント中4.2ポイントでした。同項目での評価は3点台のプラットフォームが多いことを踏まえると、makeshopは高品質なサポートを提供していると言えるでしょう。
さらにmakeshopは、集客機能が優れており、多彩な連係機能を備えている特徴もあります。たとえば、Yahoo!ショッピングやLINEショッピングへの商品掲載がワンクリックでできる「かんたん出品連携」や、無料で利用できる海外販売機能、SEOの一括設定機能などが挙げられます。集客のやり方を学びながら利用できる点もmakeshopのおすすめポイントです。
料金:
プレミアムプラン:
月額12,100円+初期費用11,000円
決済手数料3.19%~+makeshopペイメントの利用料金 月額1,100円
makeshopエンタープライズ:
月額60,500円~+初期費用110,000円~
決済手数料3.14%~
4. STORES
STORESは、ECサイトの作成をパソコンからだけでなくスマートフォンからでも行うことができ、専門的な知識がなくても直感的に使えるので、初心者でも使いやすい販売プラットフォームです。無料で使えるプランだけでなく、有料プランもほかのサービスと比較して低コストで導入できるため、初期費用を抑えて事業を始めたい人にもおすすめです。実際、ITreviewの「導入のしやすさ」の評価項目では、5ポイント中4.9ポイントの高得点を獲得しています。
STORESは、フリープランでも多くの機能を利用できるため、その点でもおすすめです。たとえば、お知らせの配信や掲載、再入荷の通知、よくある質問の作成、ギフト設定などの機能を活用できます。さらに、48種類のデザインテンプレートを無料で提供しており、動画やバナー、売れ筋ランキングなどのパーツも自由に配置できるため、ネットショップの個性や世界観を表現しやすい点もSTORESの魅力と言えるでしょう。
料金:
フリープラン:
月額0円+初期費用0円
決済手数料5%(2024年7月から5.5%)
ベーシックプラン:
月額2,980円(税込、初月0円)+初期費用0円
決済手数料3.6~3.9%
5. 楽天市場
楽天市場は、戦略的に収益を伸ばしたい人や集客に力を入れたい人に適した販売プラットフォームです。楽天市場では、専任のECコンサルタントによるサポートを受けられます。ECコンサルタントは、各店舗の売り上げアップを目指して運営のアドバイスや企画提案、対応の相談に応じます。各都道府県の自治体や銀行との提携にも力を入れており、地域の特性に応じたサポートを提供できるのも楽天市場ならではの強みです。マーケティングに自信のない人でも、コンサルタントの力を借りることで、着実に収益を伸ばしていけるでしょう。
楽天市場の集客力も特筆すべきポイントです。楽天市場は国内ECサイトだけで約6兆円の流通取引額を誇るECプラットフォームであるため、ほかのプラットフォームと比較してより多くの人に商品を見てもらえる可能性が高いです。さらに、楽天市場は「楽天スーパーSALE」や「お買い物マラソン」といったセールイベントを定期的に主催し、利用者の購買意欲を高めています。ポイントプログラムも充実しており、リピーターを獲得しやすい点も楽天市場の特徴です。
料金:
がんばれ!プラン:月額25,000円+初期費用60,000円
スタンダードプラン:月額65,000円+初期費用60,000円
メガショッププラン:月額130,000円+初期費用60,000円
システム利用料:2~7%
モールにおける取引の安全性・利便性向上のためのシステム利用料:月間売上高の0.1%
楽天スーパーアフィリエイト:アフィリエイト経由売上の2.6~5.2%
決済手数料(楽天ペイ利用料):月間決済高の2.5~3.5%
ユーザーと店舗間のコミュニケーションを円滑にするR-Messe(アールメッセ)の利用料:3,000~5,000円
6. ショップサーブ
ショップサーブは、セキュリティ対策に注力しているため、安全性を重視したい人におすすめです。運用の監視は有人体制で実施しており、稼働率は99.99%です。さらに、過去データを活用した受注検知が行われており、不正受注を通知する機能やカードの不正利用を防止する機能も備わっています。利用者が安心してサイトを利用できるだけでなく、事業者が失注しづらい環境となっています。
ショップサーブは、充実したサポート体制も特徴のひとつです。出店後は専任の担当者が付き、運営を全面的にサポートします。ウェブページ制作や集客プロモーションも専任の担当者に代行を依頼できるため、初心者でも商品が売れやすいネットショップを立ち上げられるでしょう。
料金:
プラン4S:月額25,000円(税別)、年払い275,000円(税別)+開通料30,000円(税別)
プラン4G:月額65,000円、年払い715,000円(税別)+開通料30,000円(税別)
プラン4P:月額145,000円(税別)、年払い1,595,000円(税別)+開通料30,000円(税別)
決済手数料:~3.7%(一部プランでは要相談)
このほか、商品数、サーバー容量、アクセス量に対する費用、顧客情報などを管理するCMRの利用料・開通料などが必要
7. イージーマイショップ
イージーマイショップは、販売する商品画像や動画にこだわりたい人におすすめな販売プラットフォームです。イージーマイショップに登録できる商品画像サイズは、業界最高スペックの3Mで、フルHDサイズを超える高解像度の画像も対応可能です。画像はクリックせずにズームできる仕様のため、利用者は商品を隅々まで確認できます。
さらに、ひとつの商品に対して50枚以上の画像を登録できるため、複数の角度から商品を紹介する際に役立ちます。動画の埋め込みも簡単で、画像では説明しづらい商品の製造工程や活用例などを動画で紹介することも可能です。
イージーマイショップのデザインテンプレートには、画面サイズに応じて自動的に商品一覧を並べ替える機能が搭載されています。そのため、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも快適にサイトを閲覧できます。
料金:
無料版:
月額0円+初期費用0円
決済手数料5.0%+40円
スタンダード:
月額2,970~3,300円+初期費用3,300円
決済手数料1.57%+20円~5.0%+40円
プロフェッショナル:
月額5,940~6,600円+初期費用3,300円
決済手数料1.57%+20円~5.0%+40円
カートプラン:
月額1,980~2,200円+初期費用3,300円
決済手数料1.57%+20円~5.0%+40円
8. Adobe Commerce
Adobe Commerceは、BtoC・BtoB向けのネットショップや複数のストアをひとつのプラットフォームで一元管理できるため、複数の販路で事業を行う予定のある人に適しています。ほかのプラットフォームと比較して在庫管理の機能が充実しており、リアルタイムで在庫状況を把握・可視化できます。商品の過不足をいつでも確認できるので、在庫がなくなる前に注文したり、在庫過多の際はセールを実施したりなど、必要な対応を適宜行えるでしょう。
さらに、利用者がオンラインで購入した商品を実店舗で受け取る、または実店舗で購入した商品を自宅に配送するなど、さまざまな配送オプションに対応できるのも特徴です。Adobe Commerceには、AIが関連性の高い商品を利用者に提案する機能もあり、最適な商品を選ぶサポートも提供できます。利用者にとっては求めていた商品を購入できたことで満足度が高まり、事業者にとっては売り上げアップにつながる優れた機能です。
料金:年間の流通取引総額と平均注文額に基づいて算出
9. EC-CUBE
EC-CUBEは、オープンソースのため、自由度の高い販売プラットフォームを探している人におすすめです。オープンソースとは、ソースコードを無償で公開しているソフトウェアのことです。コードを自由に編集できるため、EC-CUBEではテンプレートの編集やブロック単位でのデザイン調整もできます。こうした自由度の高さから、EC-CUBEは日本で最も選ばれているオープンソースの販売プラットフォームとなっています。
基本的な機能として、商品の検索やお気に入り機能、税率対応などが備わっており、すぐにネットショップの運営を開始できます。プラグインを活用すれば、売上集計、ランキング機能、サイト分析、メルマガ・クーポンの配信、レビュー機能など、多彩な機能を追加可能です。ネットショップにどのような機能を取り入れたいかが明確な人にとって、EC-CUBEは持っている理想を実現させるサービスとなるでしょう。
料金:
スタンダードプラン:
月額49,800~84,800円(税別)+初期費用70,000円(税別)+取引手数料
取引手数料(EC-CUBEペイメントプラスを利用する場合):
クレジットカード決済手数料2.79%~3.6%
決済サービス基本利用料(月額)2,980~9,980円(税別)
販売プラットフォームの選び方
販売プラットフォームを選択する際には、予算面と機能面の両面を考えながら検討しましょう。
予算面
販売プラットフォームにかけられる金額を割り出し、選択できるプラットフォームやプランを考えていきます。ECプラットフォームを利用する際には、以下の費用がかかります。
- 初期費用
- 月額料金
- 決済時の手数料
- サポート費用
- サーバーの利用費用(サーバーの管理機能がついていない場合)
目安として、個人でオンライン販売を実施する際に必要となる費用は、初期費用が数千円から10万程度、維持費が月額数千円から10万円程度です。
販売プラットフォームの予算を考える際は、売上高の2割程度に収まるようにすることをおすすめします。「3・3・4の法則」や「1・5・4の法則」と呼ばれる通販事業でよく目安にされている法則がありますが、これは商品売上高における理想的な内訳を示したもので、いずれも運営コストと利益を合わせて4割に収めることを理想としたものです。手元に残る利益は、一般的に売上高の2割程度とされているため、推奨される運営コストの割合は4割から2割を引いた値、つまり売上高の2割となります。
ネットショップの規模や構築方法によって、必要となる予算は異なります。予算をあまりかけられない場合は、低コストで豊富な機能を利用できるサービスを選びましょう。一方、事業開始当初から多額の予算をかけられる場合は、販売プラットフォームをゼロから構築できる業者に相談し、求める機能を豊富に取り入れたネットショップを開設することも可能でしょう。しかし、事業の売り上げが思うように伸びない可能性を考慮に入れ、まずは低額で事業を始めることをおすすめします。事業拡大とともに予算を増やし、利用できる機能を拡張する方針でビジネスを展開するとよいでしょう。
機能面
機能面についても、よく確認したうえでECプラットフォームを選択すると、スムーズなサイト運営が実現しやすくなります。具体的には、以下のポイントを確認しましょう。
- 事業に必要な機能があるか
- 安全性が高いか
- カスタマイズ性が高いか
事業に必要な機能があるか
まず、自身のオンライン販売事業に必要な機能が揃っているプラットフォームを見つけるのが重要です。販売プラットフォームでは、主に以下の機能を利用できます。
- 商品の登録や検索機能
- 商品のお気に入り登録機能
- おすすめ商品の表示機能
- 商品レビュー
- 在庫管理
- カート機能
- 決済機能
- 配送管理
- マーケティング機能
- 分析機能
- お問い合わせ機能
上記を参考に、事業にどの機能が必要かを考えてみましょう。たとえば、商品を外部の業者から直接顧客のもとに配送できるドロップシッピングを利用してビジネスを行う場合は、外部業者との連携を効率化・自動化できる機能があると便利です。外部業者の商品を自分のオンラインストアに登録したり、顧客から注文が入った際に外部業者に発注をかけたりするときにスムーズになります。なお、Shopifyではドロップシッピングに対応するアプリが豊富に用意されているため、こうしたビジネスを始めるならShopifyを使用するのがおすすめです。
また、AmazonやYahoo!ショッピングなど自社ECサイト以外のショッピングモールでも出店することを考えている場合は、複数の販路に対応できるプラットフォームを選ぶとよいでしょう。在庫を一元管理できる機能があれば、在庫切れ商品を注文できてしまう不具合や、確認作業に手間取ることを避けられます。
ネットショップの利便性を高めたいなら、商品関連の機能が豊富に搭載されているプラットフォームが、売り上げアップに焦点を当てるなら、クーポンの配信機能などのマーケティング機能が充実しているプラットフォームが適しています。将来的にアメリカや中国などへの販売を視野に入れているなら、ECプラットフォームの比較時に複数の言語や決済方法、関税などの細かい送料計算に対応できるかを確認しましょう。
安全性が高いか
ネットショップの取引では、利用者の個人情報を扱うため、セキュリティ機能が充実した販売プラットフォームを選ぶことが重要です。クレジットカード決済を利用する場合は、2段階認証機能や、データを暗号化して情報のやり取りをするSSL機能が搭載されているもの、クレジットカードの情報を適切に管理していることを示すPCI DSSに準拠しているものなど、客観的に安全性を証明できるプラットフォームを利用しましょう。
自分で一からネットショップを構築できる自由度の高いプラットフォームを選ぶ場合は、セキュリティ対策も自分で行わなければならない可能性があります。その際は、利用するサーバーの保護やアクセス制御などを行いましょう。
カスタマイズ性が高いか
カスタマイズ性が高い販売プラットフォームを選ぶのも有効な手法です。カスタマイズ性が高いプラットフォームなら、サイトデザインを事業に合わせて調整し、さまざまな機能を追加して利便性を高められます。
たとえば、Shopifyには8,000種類を超えるアプリがあるため、あらゆるニーズに対応できます。必要な機能が搭載されているアプリが見つからない場合でも、Shopifyのプログラミング言語であるLiquid言語を使用し、必要な機能を自力で開発可能です。
まとめ
ネット販売プラットフォームを選ぶ際は、予算やカスタマイズ性・安全性などの機能を考慮することが重要です。適切なプラットフォームを選ぶことで、ネットショップの運営が効率化され、売り上げや顧客満足度の向上が期待できます。
Shopifyは比較的低コストで利用できるにもかかわらず、初心者でもブランドや商品のコンセプトに適したサイトデザインに仕上げられたり、海外販売ができたりなど、多様なニーズに応えられます。無料体験も実施していますので、ぜひ一度お試しください。
続きを読む
よくある質問
ECプラットフォームとは?
ECプラットフォームとは、事業に必要なECサイトの構築や運営を支えるシステムのことです。商品登録や在庫管理、注文・決済処理などの業務をサポートするため、事業者は専門知識がなくても、スムーズにECサイトを立ち上げ、運営できます。
おすすめの販売プラットフォームは?
- Shopify
- BASE
- makeshop
- STORES
- 楽天市場
- ショップサーブ
- イージーマイショップ
- Adobe Commerce
- EC-CUBE
コンテンツ販売に適したプラットフォームは?
オンライン講座などの動画コンテンツ販売に適したプラットフォーム
- Shopify
- BASE
- Udemy(ユーデミー)
- OneStream(ワンストリーム)
- ココナラ
テキスト販売に適したプラットフォーム
- カラーミーショップ
- note(ノート)
- Brain(ブレイン)
文:Yukihiro Kawata イラスト:Rachel Tunstall