2024年、消費者はどのような商品やサービスを購入したいと考えているのでしょうか。
本記事では、複数の企業が実施した調査結果を踏まえて予測した2024年の消費トレンドを紹介します。トレンドを押さえた消費動向もあわせて紹介しますので、どのようなものが売れやすいのかを知りたい人はぜひ参考にしてください。
2024年度の消費トレンド予測7選
世界的に有名な市場調査会社のEUROMONITOR INTERNATIONAL(ユーロモニターインターナショナル)などの調査をもとに、2024年の消費トレンドを8つ予測しました。
1. AIから助言を得たもの
消費者がAIに質問し、得た助言をもとに購入する商品を選ぶことが多くなりました。
調査によると、42%の消費者がAI音声アシスタントにおすすめされた商品の情報を抵抗なく受け入れていることが明らかになっています。企業側もトレンドを捉え、53%の業界関係者が今後5年間で生成AIへの投資を予定していると答えています。
調査結果からAIが一過性の流行ではなく、消費者を満足させるための重要なツールとなりつつあることが理解できるでしょう。事業者もAIを消費トレンドとして押さえ、有効活用できるように手を打つ必要があります。
一例として、消費者にふさわしい商品を提案するためにAIを使用することが可能です。たとえば株式会社ワコールでは、3Dボディスキャナーが3秒で体のサイズを計測し、計測したデータを分析して体に合う商品をAIが提案するサービスを実施しています。
2. 体験や経験ができるもの
現代の人々は、一時的でも楽しめるコト消費(体験消費)を重視する傾向にあります。コト消費は消費目的ではなく、体験や経験を得るために商品やサービスを購入することです。
調査では、55%の消費者が商品やサービスを実際に体験できる店舗で買い物をしたことがあると回答しています。さらに女性インサイト総研が15歳以上の女性893人を対象に「買い物するときに求めるもの」を調査したところ、63%が「楽しい気持ちになれる」ことを求めていることが明らかになりました。
これらの結果から、消費者はただの商品やサービスだけでなく、心が動かされる楽しい体験を求めていることがわかります。事業者もトレンドを踏まえ、消費者が商品やサービスの良さや楽しさを実際に体験できるような工夫を取り入れることが重要です。
たとえばSKINCARE LOUNGE BY ORBIS(スキンケア ラウンジ バイ オルビス)は体験型の店舗として、スキンケアやメイクのレッスンを行っています。レッスンを通じて、自分に合う化粧品がわかるため、購買意欲が強く刺激されるのが特徴です。
3. 環境に配慮されたもの
地球への影響を考慮したうえで、製品やサービスを購入する消費者は多いです。
調査では、64%の消費者が環境に良い影響を与えようと努力していることがわかりました。消費者の努力に応えるため、45%の業界関係者も今後5年以内に環境に配慮していることを証明できる認証を取得する計画を立てていると報告しています。
このように、消費者が環境に配慮された商品を好んでいるため、サステナビリティを踏まえた包装や配送方法を採用するなどの取り組みを実施することが重要です。環境に配慮した取り組みは消費者のニーズに応えるだけでなく、取引先など外部からの評価にもつながるため、企業に長期的な利益をもたらすでしょう。
4. 社会情勢に深く関わるもの
政治や社会問題への関心が高まり、消費者の購買行動にも影響を与えています。
調査によれば、32%の消費者が政治や社会問題に積極的に関与していると回答しています。その一環として、消費者が自身の価値観に合ったブランドを選ぶことが多くなっています。2023年の調査では、消費者の52%が自分の信頼している企業やブランドからのみ購入していたことがわかりました。つまり、ブランドも政治や社会問題に関する方針を公表することで、賛同する消費者からの購入を期待できるわけです。
しかし、ブランドが社会的・政治的な主張を取り入れた商品を販売する際、消費者に与える影響を慎重に考慮しなければなりません。価値観が一致するブランドを好む消費者がいる一方、党派性のあるブランドを避ける消費者も存在するためです。
社会的・政治的な主張を取り入れた商品は、良くも悪くも話題になりやすいことも踏まえたうえで、販売するかどうかを検討しましょう。
5. 得したと感じやすいもの
物価高騰の影響を受け、消費者は支出をためらうようになっています。
調査によると、74%の消費者が日用品の値上げに懸念を抱いており、44%がこれまで以上に節約する意向を示しています。女性インサイト総研の調査からも、65%の消費者が買い物をする際に「節約できる安いもの」を求めていることがわかっています。
実際、消費者の多くは安価な代替品を見つけたり、クレジットカードやポイントを活用したりするなど、さまざまな節約術を駆使するようになりました。このような背景を踏まえると、事業者は消費者が「得した」と感じる体験を提供することが重要になっているといえるでしょう。そのための手段として、割引やクーポンなどのキャンペーンや節約につながる商品の提供などが考えられます。
6. AR技術を取り入れたもの
AR技術を取り入れた商品やサービスも、徐々に注目を集めるようになりました。ARはAugmented Realityの略で、日本語で拡張現実を意味する言葉です。カメラやアプリを通じて、さまざまなものを現実世界に反映させられます。たとえば洋服の青山では、アプリで自分の姿を写すことで、AR技術を活用した試着を体験することが可能です。
statista(スタティスタ)の調査による世界各国で暮らす16歳以上の消費者のうち、半数以上がARを利用した試着に興味を示しています。なかでも20代前半までのZ世代と40代前半までのミレニアル世代では、90%以上が関心を持っていることが明らかになりました。さらに3DやAR機能を備えた商品ページがコンバージョン率(成約率)を94%向上させたことが、ShopifyのARに関する調査(英語)で明らかになりました。
AR技術をうまく活用すれば、消費者は店舗に足を運ばずとも商品の良さを理解できます。事業者にとっても接客することなく売上を伸ばせるため、積極的に活用するとよいでしょう。
7. SNS広告で興味を持ったもの
SNS広告は、消費者の購入行動に影響を与えています。株式会社ニュートラルワークスが実施した調査では、10代~70代までの男女424名のうち、58%が内容によってはSNS広告をクリックしていることがわかりました。また、全体の17%はSNS広告を見て、商品やサービスの購入を決定したことも明らかになっています。
特にZ世代の若年層は、全体の40%が検索エンジンとしてInstagram(インスタグラム)などのSNSを利用していることが日経BPコンサルティングの調査でわかっています。株式会社SHIBUYA109エンタテイメントの調査では、20代の女性450名のうち、82%が遊ぶ場所を調べる際にInstagramを利用していることも明らかになりました。
このように、SNSは日常的によく利用されているため、興味を惹く広告を打ち出せれば、商品やサービスの詳細を見てもらえます。SNS広告を打ち出す前は、ターゲット層がどのSNSを利用しているのかを調査することが重要です。
2024年の消費動向予測6選
物価高騰により、2024年は節約や貯蓄に努める消費者が多いと予想されますが、人々がまったく消費をしないわけではありません。そこで企業の調査や消費トレンドを踏まえ、上記5つを2024年の消費動向として予測しました。
1. 旅行
2024年度の消費動向として人気があるのは旅行です。新型コロナウイルスの影響で思うように外出できなかったことや、新型コロナウイルスの感染症分類が5類に引き下げられたことが要因だと考えられます。また、旅行は消費トレンド「体験や経験ができるもの」に当てはまり、消費者を日々のストレスから解放する手段としても有効です。
博報堂生活総合研究所や株式会社クレオの調査でも、旅行にお金を費やしたいと考える人が最も多いことが明らかになりました。さらに、2024年は3連休の数が前年に比べて増加するため、休日を利用した旅行計画が立てやすくなります。
旅行への関心が高まる背景には、新型コロナウイルスの脅威がなくなりつつある現状と、ストレス解消や新しい体験・経験への欲求があります。
2. 将来の準備
2024年の日本では、将来の準備に向けた支出が増えると予想されます。博報堂生活総合研究所の調査結果によると「2024年にお金をかけたいもの」の第6位が投資で、2023年度と比較して約3%を増加率を見せています。また、第8位の「老後の暮らしの準備」も2023年度比で約4%の上昇で、2番目に高い上昇率を記録しました。
さらに同社が実施した「2024年度に始めたいこと」の調査結果を見ると、第2位が副業、第3位が投資・資産運用、第4位が貯蓄となっています。
このような背景を踏まえると、消費者は将来の安定性を求めていると考えられます。そのため、将来に向けて収入や資産を増やすための情報を提供できる商品やサービスの売り上げは増加するでしょう。たとえば、簡単に始められる副業や安全な投資先の選び方、資産運用の知識などについてまとめたコンテンツが挙げられます。
3. 食事
2023年度に引き続き、食事にお金をかけようと考えている消費者は多いです。博報堂生活総合研究所が「2024年にお金をかけたいもの」を調査した結果によると、外食が第3位、普段の食事が第4位となっています。しかし2023年度と比較すると、食事への支出は減少傾向にあり、節約の意識が高まっていることもうかがえます。
つまり、消費者は質の高い食事を求めているものの、支出は抑えたいわけです。事業者は消費者のニーズに応えられるよう、コストパフォーマンスのよい食事を提供できるように努めるとよいでしょう。
4. 健康
健康に気を配る消費者が増えていることから、購買傾向として健康関連の消費が増加すると考えられます。実際、博報堂生活総合研究所が「2024年に始めたいこと」を調査した結果では、第1位が「運動・体操・筋トレ」です。さらに「2024年にやめたいこと」の調査結果では、第4位に「食べ過ぎ・飲みすぎ」や第7位に「お菓子・甘い物」がランクインしています。
このように、消費者は健康的なライフスタイルを求めているため、需要に応えるフィットネスやサプリメントなどの商品やサービスは人気が高まると予測されます。
5. 美容
美容に気を配る消費者が増えていることは、EUROMONITOR INTERNATIONALの調査からもわかります。同社が実施した調査では、85%の消費者が効果のある美容商品には出費を惜しまないと回答したことが明らかになりました。
また、調査から特に人気が高いと予想されるのは、日常生活に簡単に取り入れられ、結果がすぐに出る商品です。たとえば、毎食後に飲むだけで効果を期待できるドリンクやサプリメント、スキンケア用の美容液や化粧水などです。また、顔に当てるだけで肌を保湿できたり、毛穴汚れを落とせたりできる美顔器なども該当します。
事業者も消費者のニーズを捉え、簡単に利用でき、効果を目で確認できるような商品を提供することで、さらに収益を伸ばせるでしょう。
6. 教育
2024年度は、教育関連の消費も増えると予想されます。博報堂生活総合研究所の調査「2024年にお金をかけたいもの」では「子どもや孫の教育・勉強」が12位に、「自分の教養・勉強」が15位にランクインしていることがわかりました。また「2024年に始めたいこと」の調査では「資格や免許の取得」が8位に、「転職」が10位に入っています。
貯蓄に対する意識の高まりや調査を踏まえると、より給料が高い企業へ転職するために資格や免許を取得しようと考える消費者が増えていることがうかがえます。
まとめ
2024年の消費動向は物価高騰により節約志向が強まっていますが、特定の分野では支出が増えると予測されます。なかでも楽しい経験や体験を得られる旅行への消費は、増加する見込みです。また貯蓄や投資関連の支出も、将来への不安から増える傾向にあります。他にも、消費トレンドの美容や健康の影響を受け、フィットネス関連の支出も増加すると考えられます。
消費トレンドや消費動向をきちんと考慮したうえで、販売する商品やサービスの方向性を決めると売上が伸びやすくなるでしょう。
商品を販売する際は、Shopifyの利用をおすすめします。ネットショップの開業やサイトのデザインを簡単に行えるうえに、数多くのアプリと連携しているため、複数のプラットフォームで集客を行うことも可能です。無料体験も実施していますので、気軽にShopifyを利用してみてください。
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よくある質問
注目したい2024年の消費者のトレンド予測は?
- 生成AIから助言を得たもの
- 体験や経験ができるもの
- 環境に配慮されたもの
- 社会情勢に深く関わるもの
- 得したと感じやすいもの
- AR技術を取り入れたもの
- SNS広告で興味を持ったもの
上記7つが、2024年の消費トレンド予測です。特に日本の消費者トレンドとして、体験や経験のできるものに注目が集まっています。例として、東京ディズニーリゾートはチケット料金を徐々に値上げしているにもかかわらず、入園者数は2022年に2,208万人、2023年に2,630万人と、増加傾向にあります。また、一人あたりの客単価も2023年には過去最高水準に達しました。楽しい体験や経験への支出が増えていることがうかがえます。
2040年度までの市場における消費トレンド予測は?
- ウェルネス市場
- フーディング市場
- 個人の拡張市場
- 自己表現市場
- 人生学習・メタワーク市場
- 新移民市場
- 超富裕層市場
- デジタルBOP市場
- 相互扶助・コモンズ市場
- マルチコミュニティー市場
- ネオモビリティー市場
- 個人リソースマネジメント市場
- 社会リソースマネジメント市場
- 都市OSデータ活用市場
- モノの統合サプライ市場
2040年までに市場における消費トレンドとして、上記15の市場が活発化すると株式会社日経BPが発表しました。技術の進化とともに、個人のライフスタイルや社会の変化に対応して発展して市場が変化していくと予測されています。
2023年の消費行動は?
2023年の消費行動は、新型コロナウイルスの収束が大きく影響しています。デロイトトーマツが20歳から79歳の男女5,000人を対象に行った調査によると、外出への不安が軽減されたことから、2023年度はレストランや旅行への支出が増加したことがわかりました。一方で、在宅勤務の減少や収入の減少、物価高により、フードデリバリーや日常の食料品・日用品への支出は減少傾向にありました。
2023年度においても、消費者は支出を見直す一方で、外出に関連する活動への支出を増やしていることがうかがえます。
文:Yukihiro Kawata