EC事業において、何を商品として販売するかはビジネスの成否を分ける非常に重要な要素です。しかし、ひと口に商品といっても、物理的に形のあるものに限りません。情報やサービスのように、物理的な形がないものも販売でき、これらは無形商品や無形商材と呼ばれます。
無形商品・商材は、在庫管理不要で、初期費用を抑えやすいというメリットがあり、ビジネスアイディアによっては不労所得を得られる可能性も秘めています。この記事では、具体例を挙げながら無形商品・商材とは何かをわかりやすく解説するとともに、無形商品やサービスを販売できる7つのプラットフォーム、Shopify(ショッピファイ)で無形商品・商材を販売する際に便利なアプリをまとめました。
無形商品・商材とは
無形商品・商材とは、情報やサービスなどの物理的な形を持たない販売物のことです。労働力、技術や情報、サービスや体験などの目に見えないものが該当します。具体的には、ソフトウェアや電子書籍などのデジタルコンテンツ、家事代行やコンサルティングといった労働力、ツアーやイベントなどの体験が無形商材として挙げられます。事業者は顧客に対し、サービスや体験を提供することで代金を得ます。
無形商品・商材の例
デジタルコンテンツ
デジタルコンテンツとは、オンライン上にデジタルデータとして提供される商品やサービスです。一度作成すれば、恒久的に販売できるため、不労所得になる可能性もあります。ただし、デジタルコンテンツは性質上コピーされやすいため、ウォーターマークをいれたり、盗用防止用のアプリをいれたりする対策が必要です。例としては以下が挙げられます。
サービス
技術や知識、またはその成果物をサービスとして提供します。初期費用がかからないものが多いですが、サービスの提供に関しては、規制が設けられているプラットフォームもあるため、利用規約には十分に注意しましょう。例としては以下が挙げられます。
- 記事ライティング
- 翻訳
- コンサルティング
- コーチング
- パーソナルトレーニング
- ファイナンシャルプランニング
- PCサポート
- SEO対策
- 占い
- カウンセリング
- 鑑定
- 代行サービス
- ヘアサロン
体験、イベント
ウェブサイトに予約システムを組み込めば、独自にプランを組んだ旅行ツアーや体験アクティビティ、イベントなどの参加権を無形商品・商材として販売することができます。いわゆる電子チケットがイメージしやすいでしょう。例としては次が挙げられます。
- 旅行ツアー
- アドベンチャー体験
- ワインテイスティング
- コンサートの電子チケット
講座、レッスン、ワークショップ
オンライン講座やワークショップも販売できます。コースとしてセット販売も可能で、繰り返し講座を開催することでオンラインコミュニティとして発展する可能性も秘めています。例としては以下が挙げられます。
- 語学講座
- ヨガレッスン
- フィットネスプログラム
- 健康指導
レンタル
レンタル事業は物理的な製品が介在しますが、サービス自体は無形商材に当たります。貸し出しサービスは、最初にレンタルする物を用意する初期費用がかかりますが、一度購入すれば同じ製品を繰り返し利用できます。例としては以下が挙げられます。
- カメラ機材レンタル
- パソコン機材レンタル
- ファッションアイテムレンタル
サブスクリプション
コンテンツやオンラインコミュニティのサブスクリプションも無形商品として販売可能です。例としては以下が挙げられます。
無形商品・商材をネットで売る方法は2通り
プラットフォームで販売
無形商品やサービスの販売では、ジャンルごとに専用の販売プラットフォームを利用することができます。学習系、スキル系、旅行系、オンラインサロンなどプラットフォームごとに特化しているため、サービス内容に興味がある顧客を集めやすい点が大きなメリットです。また、出品する際の説明欄フォーマットや販売用機能なども専用のものとなっているため、初心者でもスムーズに無形商材の販売をスタートできます。
デメリットとしては、プラットフォームによっては高額なサービス手数料が取られたり、オリジナリティや差別化ポイントを明確にしないと競合に埋もれてしまう点が挙げられます。
自社ネットショップで販売
Shopifyなどを活用したオリジナルネットショップでも、無形商品やサービスを販売できます。プラットフォームに依存せず、自由度の高いカスタマイズ機能やオリジナルデザインを活用できる点がメリットです。また、専用プラットフォームの場合よりも販売できる商品の幅が広くなるため、たとえばオンライン講座とデジタルコンテンツなど複数ジャンルの無形商品を扱ったり、グッズや関連アイテムなど有形商品も同時に販売したりできます。
デメリットとしては、集客のためにはSEOやSNSマーケティング、リピーターをつかむための工夫などをすべて行う必要がある点です。専用プラットフォームとの併用や、別途集客を行う手段も考えておきましょう。
無形商品・商材が販売できるオンラインプラットフォーム7選
1. Shopify
Shopify(ショッピファイ)でも、無形商品やサービスの販売ができます。自社ECサイトを構築できるShopifyでは、プラットフォームに依存しない独自サイトを作成可能です。アプリでの拡張性が高い点も特徴で、商品の販売がメインのECサイトで、定期購読やオンラインサロン用のコミュニティメンバーシップ機能をアプリで追加するといった利用方法も可能です。ブランドを確立して、ファンやリピーターを増やしたい方は、独立ECサイトの構築によりビジネスを拡大できるでしょう。
最適な人:
- 独自のブランドを築きたい方
- 物販と無形サービス両方販売したい方
2. ココナラ
ココナラは、スキルの売り買いができる日本最大級のプラットフォームで、2025年時点で500万人以上の会員(出品者・購入者の合計)がいます。プログラミングやイラスト、ライティング、翻訳、占いなどさまざまな無形商品やサービスを手軽に出品でき、提供できるサービスの種類は740種類以上にものぼります。
最適な人:
- 多様な無形商品(スキル)を販売したい方
- 会員数の多いプラットフォームから集客したい方
3. MOSH
MOSH(モッシュ)は、月額制のレッスンやサービス、サブスクがスマホアプリ1つで簡単に提供できるサービスです。ヨガのレッスンやハンドメイド講座、英会話、コーチングなどのサービスを提供できます。サービス販売ページの作成や予約・決済の管理はもちろん、予約に連動したZoom連携機能や、デジタルコンテンツ販売機能なども備えています。
最適な人:
- レッスンなど月額サービスを提供する方
- スマホアプリで簡単に利用したい方
4. YOOR
YOOR(ユア)は、クリエイターやインフルエンサー、専門家が主催者となって、情報発信やファンとの交流を行うオンラインサロン、コミュニティ、ファンクラブなどを簡単に作れるオンラインプラットフォームです。主催者や参加者同士のコミュニケーションの場となる「トークルーム」はオンラインサロン向けに設計されており、プランやテーマごとにルームを分けることもできます。初期費用や月額料金はかからず、即日の開設も可能です。
最適な人:
- すでにファンや受講者がいる著名人などの方
- サブスクから安定収益を得たい方
5. Udemy
Udemy(ユーデミー)は、学習用のオンライン動画を販売できるプラットフォームです。受講生は世界180ヶ国7,300万人が登録しており、特にIT系のプログラミングや資格取得の講座が高く評価されています。他にもビジネススキル、デザイン、英会話、趣味など幅広い講座が販売されています。コンテンツの公開は無料で開始でき、動画作成についても日本語でのサポートが用意されています。
最適な人:
- IT系をはじめとした学習系動画を販売したい方
- 世界中のユーザーにリーチしたい方
6. ストアカ
ストアカは、教えたい人と学びたい人をマッチングするプラットフォームで、86万人の会員にアプローチできます。単発のレッスンから長期コース、月額サブスク、コミュニティサロンまで幅広い形式でサービスを提供でき、ビジネススキルやハンドメイド、料理、占い、フィットネス、相談、カウンセリングなど幅広いジャンルが掲載されています。掲載にあたっての初期費用・月額費用は無料で、オンラインレッスンを簡単に開催できるZoomとの自動連携機能や、講座の開催中に発生したケガや食中毒などの事故に対する補償制度も特徴です。
最適な人:
- 対面レッスンの販売もしている方
- スキルを販売したい方
7. PIXTA
PIXTA(ピクスタ)は、デジタル素材を販売可能なプラットフォームで、1億以上の画像・イラスト・動画素材が公開されている、日本最大級のサービスです。価格の一部が報酬となる単体販売のほか、定額制プランに加入しているユーザーによるダウンロード数に応じた報酬体系も用意されており、一度登録すれば継続的な収益となる可能性もあります。プロだけなく初心者や副業の方でも販売可能なのが魅力ですが、登録時の簡単なテストや素材ごとの審査があります。
最適な人:
- 写真や動画を販売したい方
- 初心者から上級者まで利用可能
Shopifyで無形商品・商材を販売するのに便利なアプリ5つ
1. Digital Downloads

Digital Downloadsは、Shopifyで作成したネットショップで、電子書籍、デジタルアート、グラフィックなどのデジタルファイルを簡単に販売できるようにするアプリです。Shopifyが提供する公式アプリのため無料で利用でき、シンプルで使いやすくストアの管理機能とシームレスに連携することができます。また、ダウンロード制限を設定でき、顧客が商品を購入すると、自動または手動でリンクを送信できます。
最適な人:
- 完全無料で使いたい方
- 公式アプリを使いたい方
2. Sky Pilot

Sky Pilotは、電子書籍、音楽、動画、ソフトウェアなどのデジタルファイルを販売可能にするアプリで、ストア管理から数分で設定できる簡単な操作性も特徴です。無料プランでは100MBのファイルストレージと月間2GBの帯域幅が提供され、有料プランではさらにアップグレード可能なため、ビジネスの規模に合わせて利用することができます。また、ログイン通知やIPアドレスでの管理、PDFスタンプなどデジタルファイルを保護する機能も用意されています。
最適な人:
- ダウンロード用ストレージなどの用意がなく、小規模から始めてみたい方
3. Meety

Meety(英語)は、店舗やオンラインセミナーなどの予約を簡単に管理できるようになるカレンダーアプリです。無料でも多くの機能を利用できますが、有料プランではZoom(ズーム)、Google(グーグル)、Outlook(アウトルック)とシームレスな予約スケジュールの同期機能を利用できるようになります。パーソナライズされた予約管理やメール通知機能のほか、カスタマイズされた質問フォーム、再予約やキャンセル画面なども提供します。
最適な人:
- オンラインセミナー等の予約機能を使いたい方
4. 定期購買

定期購買は、商品のサブスクリプション販売を可能にするアプリです。日本製アプリのため日本語でのサポートに対応しており、直感的に操作しやすい管理画面も特徴です。また、商品ページやマイページのカスタマイズもできます。ファンクラブやレンタル、サンプル販売など様々な販売方法や割引にも対応しており、様々な規模のECサイトで利用可能です。導入を検討する場合は、無料プランで各機能を試せます。
最適な人:
- サブスクリプションの販売をしたい方
- 日本製のアプリを使いたい方
5. LDT Online Courses

LDT Online Courses(英語)は、オンラインコースを作成・管理するためのアプリです。映像、音声、PDF、テキストなどを組み合わせて、独自のオンラインコースを提供できます。試験を実施して点数を管理したり、受講者の進捗を確認したりなど、教育コンテンツを提供するのに便利な機能も充実しています。コースを修了した受講者に、PDFで修了証を発行することも可能です。有料プランと無料プランがあり、無料プランでは作成できるコース数に制限がなくなるほか、コンテンツを保存しておくストレージなどが提供されます。
最適な人:
- オンライン学習コンテンツの販売をしたい方
無形商品・商材のネット販売の注意点
無形商品・商材は、形がない分、有形商材と比べてトラブルが発生する可能性が高いため、売り方にはいくつかの注意が必要です。
詳細な説明と注意書きを添付する
無形商品・商材は、物理的な形を持たないため、販売者と購入者の間で商品に対する認識に齟齬が発生しやすく、トラブルになることがあります。商品販売時に詳細な説明を行い、顧客とイメージを事前にすりあわせることが、トラブルやクレーム防止につながります。
利用規約や禁止事項を定める
デジタルコンテンツは、コピーや無断転載されやすいため、ウォーターマークなどで対策を行い、ダウンロードコンテンツの使用許可範囲、契約期間などを明確に定めましょう。キャンセルポリシーや返品の条件についても、利用規約に明記しておきましょう。
販売プラットフォームや決済システムの規約を確認する
無形商品・商材は、使用するECプラットフォームによっては販売が禁止されていることもあるため、事前に規約を確認しましょう。
例えば、メルカリは物理的な形がない商品の取り扱いを全面的に禁止しています。BASE(ベイス)では、金融系の情報商材や、寄付・募金など対価となるサービスの提供がない商品の取り扱いが禁止されています。
また、決済システムで、禁止業種が定められていることがあります。例えば、Stripe(ストライプ)では、金融商品や仮想通貨の取引等のコンサルティング、住宅ローンコンサルティング、サイキックサービスおよび占い師、個人への寄付などが禁止されています。ShopifyペイメントはStripeを使用するため、Shopifyペイメントを利用する場合には、Stripeの禁止業種に該当する商品・商材の販売はできません。
特定継続的役務は法律で規制対象となる
身体の美化、知識・技能の向上などを目的とする長期的なサービスで、その目的の実現が確実でないサービスは、特定商取引法で「特定継続的役務」とされ規制対象となります。
現在、この特定継続的役務に指定されているのは、次の7つです。
- エステ:期間が1ヶ月以上、かつ金額が5万円以上
- 美容医療:期間が1ヶ月以上、かつ金額が5万円以上
- 語学教室:期間が2ヶ月以上、かつ金額が5万円以上
- 家庭教師:期間が2ヶ月以上、かつ金額が5万円以上(ただし、幼稚園、小学校向けの「お受験対策」コースは対象外)
- 学習塾:期間が2ヶ月以上、かつ金額が5万円以上(ただし、浪人生のみを対象にしたコースは対象外)
- 結婚相手紹介サービス:期間が2ヶ月以上、かつ金額が5万円以上
- パソコン教室:期間が2ヶ月以上、かつ金額が5万円以上
これら規制対象のサービスを提供する場合は、トラブルを未然に防止するため、法律に則って作成された契約書面を提示することが必要とされています。書面には、法律で定められた内容を記載し、書面をよく読むべきであるということと、クーリングオフが可能であるということを、赤枠の中に赤字で記載する必要があります。
まとめ
無形商品・商材は、在庫管理の必要がなく、不労所得になる可能性もあり、商品の選択肢として検討する価値があります。
ただし、物理的な形がないために、トラブルやクレームになることもあるため、注意が必要です。顧客との間に齟齬が生じないよう、詳細な説明や注意書き、利用規約を明確にするなどの対策が必要です。また、プラットフォームや法律により禁止の商品もあるため、利用規約や法律を事前に確認しましょう。
Shopifyでも、無形商品やサービスを販売可能です。アプリを利用することで、無形商品やサービスの提供が簡単に可能になります。予約管理やサブスクリプションなど必要に応じて自由に機能を追加できます。
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無形商品・商材についてのよくある質問
無形商品・商材とは?
無形商品・商材とは、情報やサービスなどの物理的な形を持たない販売物のことです。
無形商材の具体例は?
無形商材の具体例としては、電子書籍やソフトウェアなどのデジタルコンテンツ、家事代行やコンサルティングなどの労働サービス、ツアーやイベントなどの体験が挙げられます。他にも、講座やワークショップ、サブスクリプションなども無形商材に含まれます。
無形商品・商材を販売する際の注意点は?
無形商品やサービスは、性質上トラブルにつながりやすいため、以下の点に注意してください。
- 詳細な説明と注意書きを添付する
- 利用規約や禁止事項を定める
- 販売プラットフォームや決済システムの規約を確認する
- 法律で規制対象となる無形商品・商材を確認する
Shopifyで無形商品・商材は販売できる?
Shopifyでも、無形商品やサービスを販売可能です。アプリを利用することで、無形商品やサービスの提供が簡単に可能になります。予約管理やサブスクリプションなど必要に応じて自由に機能を追加できます。
文:Shigemi Saki