EC事業において何を取り扱うかは非常に重要な要素ですが、ひと口に商品といっても、物理的に形のある商品だけではありません。情報やサービスのように、物理的な形がないものも販売することができます。このような無形商品・商材は在庫管理が不要で、初期費用を抑えやすいという魅力があります。また、ビジネスアイディアによっては不労所得に変わる可能性も秘めています。この記事では、無形商品・商材とは何か具体例を挙げながら説明し、Shopifyで販売する際に便利なアプリをまとめました。
無形商品・商材とは
無形商品・商材とは、情報やサービスなどの物理的な形を持たない販売物のことです。労働力、技術や情報、サービスや体験などの目に見えないものが該当します。具体的には、ソフトウェアや電子書籍などのデジタルコンテンツ、家事代行やコンサルティングといった労働力、ツアーやイベントなどの体験が無形商材として挙げられます。事業者は顧客に対し、サービスや体験を提供することで代金を得ます。
無形商品・商材の例
デジタルコンテンツ
顧客が商品をダウンロードしたり、ストリーミングしたりする権利を販売します。一度作成すれば、恒久的に販売を続けることができるので、不労所得になる可能性もあります。ただし、デジタルコンテンツは容易にコピーされてしまうので、プレビューではウォーターマークをいれる、盗用防止用のアプリをいれるといった工夫が求められます。例としては次が挙げられます。
サービス
技術や知識、またはその成果物をサービスとして提供します。初期費用をかけずに始められるものが多いですが、サービスの提供については、規制が設けられているプラットフォームもあるので、販売の方法には十分に注意しましょう。例としては次が挙げられます。
- 記事ライティング
- 翻訳
- コンサルティング
- コーチング
- パーソナルトレーニング
- ファイナンシャルプランニング
- PCサポート
- SEOサービス
- 占い
- カウンセリング
- 鑑定
- 代行サービス
- ヘアサロン
体験、イベント
ツアーやアクティビティのプランを組み、サイトに予約システムを組み込んで、その参加の権利を売り出すことが可能です。また、コンサートの電子チケットもイベントに参加できる権利を売っていると考えられるので、無形商品・商材です。例としては次が挙げられます。
- 旅行
- アドベンチャー体験
- ワインテイスティング
- 電子チケット
講座、レッスン、ワークショップ
オンライン講座やワークショップも販売できます。コースとしてまとめて販売することも可能ですし、繰り返し講座を行うことでオンラインコミュニティとして発展していく可能性も秘めています。例としては次が挙げられます。
- 語学講座
- ヨガレッスン
- フィットネスプログラム
- 健康指導
レンタル
レンタルサービスは物理的な製品が介在しますが、貸し出すだけなので同じ製品を何度も使いまわすことができます。例としては次が挙げられます。
- カメラ機材レンタル
- パソコン機材レンタル
- ファッションアイテムレンタル
サブスクリプション
コンテンツやコミュニティのサブスクリプションも形がありません。例としては次が挙げられます。
電子ギフトカード
Shopifyでは、商品管理ページからギフトカード機能を使用して、顧客がオンラインで使用できるギフトカードを発行することができます。これは、無料で配布することもできますが、例えば「誕生日の友人へプレゼントしたい」といった顧客のニーズに応えて販売することも可能です。
Shopifyで無形商品・商材を販売するのに便利なアプリ9つ
Digital Downloads
Digital Downloadsはデジタルコンテンツ販売のために必要な機能が揃った、シンプルなアプリです。PDF、JPEG、ZIPファイルなどのデジタルファイルを、Shopifyで作ったネットショップで直接販売できるようにします。ダウンロード制限を独自に設定できるため、顧客が商品を購入すると、自動、または手動でリンクを送信することが可能です。日本語にも対応しています。Shopifyが公式に提供しており、無料で利用できます。
Sky Pilot
Sky Pilotは電子書籍、音楽、動画、ソフトウェアなどのデジタルファイルを、ネットショップで直接販売できるようにするアプリです。顧客は高品質のコンテンツを、ショップから直接ダウンロードできるようになり、会員ページから購入したファイルをフォルダに整理することも可能になります。また、有料プランを選択すれば、サブスクリプション形式で販売したり、Vimeoと連携してストリーミング視聴を提供したりすることも可能です。日本語にも対応しています。無料プランでは、100MBのファイルストレージが利用可能です。
Single
Singleは音楽の販売や動画のレンタルに適したアプリです。視聴用のクリップを商品ページに添付することができます。顧客にサブスクリプション形式で販売できることに加えて、ストアからライブ配信を行ったり、ライブ配信のチケットを販売したりすることもできます。また、購入された音楽は自動でBillboard(ビルボード)のチャートに報告してくれます。月額プランのほかに、購入ごとに料金が発生するプランもあります。ただし、アプリ自体が日本語には対応していないため注意してください。
BookThatApp
BookThatAppはShopifyでサービスを提供する際に、予約機能が導入できるアプリです。提供するサービスの種類に合わせて6種類の予約フォームが用意されており、レンタルサービス、美容院やサロン、ホテルなど宿泊期間の入力、ツアーやアクティビティなど、予約が必要なサイトのカレンダー機能を作ることができます。
フォームは24時間365 日予約可能で、リアルタイムで同期されるため、ダブルブッキングを受け付けてしまう心配がありません。Googleカレンダーとの連携も可能です。日本語にも対応しています。無料プランはありますが、無料プラン利用中に受付できる予約件数の上限は10件です。利用を継続する場合は、ショップで必要な予約件数や必要な機能にあわせて、適切なプランを選びましょう。
Meety
Meetyは予約機能のついたカレンダーアプリです。時間単位または日単位のスケジュールをたて、タイムスロットを作成し、スロットをスタッフに割り当てることで、予約の承認を簡単に管理できます。Zoom、Google、Outlookとシームレスに予約スケジュールを同期できるため、オンラインでのセミナーなどにもおすすめです。日本語にも対応しており、無料で利用できます。
定期購買
定期購買は商品のサブスクリプション販売を可能にする日本製のアプリです。ファンクラブや各種割引設定、プランを上げるアップセル機能など、サブスクリプション販売に便利な機能を網羅しています。商品ページやマイページのカスタマイズも可能です。導入や、他のアプリからの移行などの際、日本語でのサポートが提供されています。導入を検討している場合は、無料プランでお試しが可能です。
Locksmith
Locksmithは商品やデジタルコンテンツに対するアクセス制限を設定できるアプリです。特定の条件を満たす顧客にのみアクセスを許可する設定ができるので、活用することで、会員限定の特典や、限定の割引などを提供できます。現在対応している言語は英語のみです。料金は月額12ドルからで、利用できる機能ごとに4つのプランが用意されています。
Pasilobus
Pasilobusはデジタルコンテンツの盗用を防止するアプリです。動画や写真などコンテンツのスクリーンショット保護、検索エンジンロックなどの機能を提供しており、閲覧者がスクリーンショットを試みる際にウォーターマークを追加して画像を保護してくれます。現在対応している言語は英語のみです。無料プランがあります。
LDT Online Courses
LDT Online Coursesはオンラインコースを作成・管理するためのアプリです。映像、音声、PDF、テキストなどを組み合わせて、独自のオンラインコースをつくり、提供できます。顧客はショップからコースにアクセスできます。試験を実施して点数を管理したり、受講者の進捗を確認したりと、教育コンテンツを提供するための機能も充実しています。コースを修了した受講者に、PDFで修了証を発行することも可能です。日本語にも対応しています。無料プランでは、3コースまで作成することが可能です。
無形商品・商材のネット販売の注意点
無形商品・商材は、形がない分、有形商材と比べて販売時にトラブルが発生する可能性が高いという理由から、売り方にはいくつかの注意が必要です。
詳細な説明と注意書きを添付する
無形商品・商材は、物理的な形を持たないため、販売者と購入者の間で商品に対する認識に齟齬が発生しやすく、トラブルになることがあります。商品販売時には詳細な説明を行い、顧客のイメージとすりあわせることが、クレームやトラブルの防止につながります。具体的な事例や顧客の声などを引用し、商品・商材の内容をイメージしやすくすることも有効です。
利用規約や禁止事項を定める
デジタルコンテンツなどダウンロード商品は、商品の性質上、返品が不可能ですので、利用規約にその旨を明記しておきましょう。また、デジタルコンテンツは、コピーや無断転載がされやすいものです。ダウンロードのコンテンツの使用許可範囲、契約期間などは明確に定めておきましょう。
販売プラットフォームや決済システムの規約を確認する
無形商品・商材は、使用するECプラットフォームによっては販売が禁止されているところがあるので、販売する際は事前に規約を確認しましょう。
例えば、メルカリは物理的な形がない商品の取り扱いを全面的に禁止しており、BASE(ベイス)では、金融系の情報商材や、寄付、募金などの対価となるサービスの提供がない商品の取り扱いが禁止されています。
また、決済システムにおいても、禁止業種が定められていることがあります。例えば、Stripe(ストライプ)の決済システムでは、金融商品や仮想通貨の取引等のコンサルティング、住宅ローンコンサルティング、サイキックサービスおよび占い師、個人への寄付などが禁止されています。
Shopifyペイメントは、処理システムとしてStripeを使用しているため、Shopifyペイメントを使用する場合、Stripeの禁止業種に該当する商品・商材の販売はできませんので注意してください。
法律で規制対象となる無形商品・商材を確認する
無形商品・商材の中でも、顧客の身体の美化、知識・技能の向上などを目的に、長期的に高額なサービスを提供するもので、その目的の実現が確実でないサービスは、特定商取引法で「特定継続的役務」とされ規制対象となります。現在、この特定継続的役務に指定されているのは、次の7つです。
- エステ:期間が1ヶ月を越えるもので、金額が5万円を越える場合
- 美容医療:期間が1ヶ月を越えるもので、金額が5万円を越える場合
- 語学教室:期間が2ヶ月を越えるもので、金額が5万円を越える場合
- 家庭教師:期間が2ヶ月を越えるもので、金額が5万円を越える場合。幼稚園、小学校向けの「お受験対策」コースは対象外。
- 学習塾:期間が2ヶ月を越えるもので、金額が5万円を越える場合。浪人生のみを対象にしたコースは対象外
- 結婚相手紹介サービス:期間が2ヶ月を越えるもので、金額が5万円を越える場合
- パソコン教室:期間が2ヶ月を越えるもので、金額が5万円を越える場合
これら規制対象のサービスを提供する場合は、トラブルを未然に防止するため、法律に則って作成された契約書面を提示することが必要とされています。書面には、書面をよく読むべきであるということと、クーリングオフが可能であるということを、赤枠の中に赤字で記載する必要があります。
まとめ
無形商品・商材は、形のある商品とは異なり、在庫管理の必要がなく、販売も容易です。デジタルコンテンツやサービス、体験、講座など多岐にわたり、ネットショップを始める際には選択肢として検討する価値があります。ただし、無形商品・商材は物理的な形がないため、販売には注意が必要です。詳細な説明と注意書きを添付する、利用規約を明確にする、販売に利用するサービスの規約を事前に確認するなど、対策をとることで問題なく販売を行うことができます。Shopifyでも無形商品・商材の販売は可能です。アプリを活用することで、販売プロセスを効率化したり、トラブルを未然に防いだりすることができます。ネットで稼ぐ方法を探している人、これからネットショップを開設する人や新たな商材を模索している人は、無形商品・商材の可能性を是非探ってみてください。
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無形商品・商材についてのよくある質問
無形商品・商材とは?
無形商品・商材とは、情報やサービスなどの物理的な形を持たない販売物のことです。
無形商品・商材を販売する際の注意点は?
- 詳細な説明と注意書きを添付する
- 利用規約や禁止事項を定める
- 販売プラットフォームや決済システムの規約を確認する
- 法律で規制対象となる無形商品・商材を確認する
Shopifyで無形商品・商材は販売できる?
はい、販売できます。
文:Taeko Adachi