Eコマースに参入したことは、人生で一番良い勉強になりました。実際に起業して学んだことは、MBAや他のどんなビジネスコースでも見つけることはできないでしょう。
そうは言うものの、それらはすべて自分が犯した失敗から学んだものでした。ひとつミスをするたびに、どうすれば良かったのかを振り返ることで、将来的に改善することができるようになります。そこで今日は私自身が犯したミスを共有することで、皆さんがそれらを回避し、より早く成功に至ることができるように手助けできればと思っています。
失敗その1:計算を急ぎすぎたこと
経験豊富な起業家に、ビジネスを運営する上で最も大切なスキルは何かと訊ねると、誰もが声を合わせて「計算能力」だと言うでしょう。開業時のビジネスは、私にとって趣味のようなものでした。そのため、本来すべきであった詳細なビジネスプランを作成したり、ビジネスに関する計算に力を注ぐことがありませんでした。
その結果、需要は十分にあるものの、収益は見込めない隙間市場に参入してしまいました。販売を試みていた商品はとても安価で、妥当な利益を上げるには予想よりもはるかに大きな売上を上げなければなりませんでした。
ビジネス性を見極めるための計算式はとてもシンプルです。どの程度利益性があるかを知るためには、以下の計算式を使うことができます:
利益 = 需要 * (収入 – 費用)
この計算式を分析するために、ここではまず2万人の人々があなたの取り扱っている商品を検索していると仮定しましょう(これは、主要キーワードとロングテールキーワード(複数の単語の組み合わせたもの)を使って大まかに予測したものです)。
その約半分の人たちにショップの存在を認識してもらえたと想定すると、潜在的バイヤーとなる人は1万人になります。コンバージョン率が平均約1~2%だとすると、100~200件の売上になります。平均発注額が100ドルで、売上純利益率が30%だとすると、あなたの利益は約3,000~6,000ドルになるという想定です。
もちろんこれらはかなり大まかな推定値です。どちらにしても、このような計算を事前にしっかりとしておくことで、どんな状況に身を置いているのかが良くわかります。私は2件のネットショップを運営してみて、ようやくこの計算の重要性が理解できるようになりました。2件目のショップの平均発注額は十分だったものの、利益率が低かったため、経費を差し引いた後にはお金はほとんど残りませんでした。
失敗その2:市場の隙間を見つけられなかったこと
私が始めたネットショップの両方は、ドロップシッピングモデルを基盤としていました。これは、私の商品と同じアイテムを取り扱う、何百という競合他社と対抗しなければならないことを意味していました。
差別化でもしない限り、私はその他のショップと同じに過ぎず、その状況に付加価値を与えることもできませんでした。しかもこれはAmazonやWalmartなどの大手企業と競争しなければならない以前の話でした。
1件目のショップでは市場に良い隙間を見つけたと思い、競合他社の調査や市場状況を把握することもなく、ただ無我夢中になって飛び込んでしまいました。そのため、そこで一人勝ちしていた大手企業のことに気付き損ねてしまったのです。彼らは私が持つ商品のすべてをすでに販売しており、何百件ものレビューや何千もの「いいね」を獲得し、人気のあるブログを持ち、メディア取材も無数に受けていました。つまり、彼らはその市場に存在していたベースのすべてに、すでに手を付けていたのです。それにも関わらず、私はチャンスがあると思い果敢に挑んでしまったのです。言うまでもなく、ショップは失敗に終わりました。
2件目のショップは、商品ではなく情報に関する大きなギャップが市場に存在していました。私はそのチャンスに飛びつき、必要調査を実施し、隙間市場で広範囲にわたるリソースを作り出すことができたのです。
そのような情報が他になかったわけではありませんが、より簡単に見つけることができ、ビジターにより役立つ情報を提示したのです。結果は、SEOの努力も相まって、競争の激しい隙間市場において、1ヶ月あたり15,000件もの自然検索による訪問を獲得することに成功したのです。
一番簡単に見つけられる隙間は情報に関するものです。これは経済的投資をあまり必要とせず、ビジネスの価値が商品と顧客リストだけでなく、発信するコンテンツも含むようになります。
失敗その3:商品に手を広げすぎたこと
私が運営していた最初のショップでは、環境に配慮したリサイクルバッグを販売していました。しかしバッグの売上はいまいちだったので、徐々にその他のエコ商品を追加するようになりました。
最終的には、「環境に配慮している」という共通点以外はあまり関連性のない広範囲な商品を抱えることになりました。より一般的なブランドであれば問題なかったのですが、残念ながらそうではありませんでした。そのため、有料検索からの売上に直接悪影響を及ぼすことはなかったものの、特定のお客様へアピールすることや、検索作業への対策が非常に難しくなってしまいました。
ここでの失敗は経済的というよりもブランディングのエラーでした。ブランドはビジネスの実際の価値を映し出すので、きちんとしたブランド構築は非常に大切です。
失敗その4:コンテンツ計画をしなかったこと
4つ目のエラーも最初のショップ運営を通して経験したことです。コンテンツマーケティングにはあまり力を入れなかったため、オーガニック検索やSNSからのアクセスを得ることはとても大変でした。特に取り扱っている商品が当たり障りのないエコバッグだったので尚更だったかもしれません。その経験から、2件目のショップではこの点を修正し、コンテンツマーケティングを基盤にビジネスを立ち上げました。
面白味のない隙間市場に関するコンテンツを書くのは難しいことです。
実際のところ、エコバッグについて長々と文章を書ける人なんているでしょうか?ここでの秘訣は(私も後に学んだことですが)、コンテンツマーケティングは、商品ではなく顧客にフォーカスして実施すべきであるということです。
エコバッグの例で考えて見ましょう。まず、エコバッグを使う可能性がある人とはどんな人だと思いますか?「環境に関心のある人」がすぐ頭に浮かぶのではないでしょうか。それに加えて、「健康的な食生活を送る」「ヨガなどのエクササイズを定期的に行う」「自然美を重んじる」人などが考えられると思います。これらはすべて直感で頭に浮かんでくるものですが、調査を実施することによりしっかりと裏付けすることができるのです。
このように商品ではなく「理想的な顧客像 - ペルソナ」に注力したコンテンツマーケティング戦略を構築することにより、書く内容も豊富になり、オーディエンスとより強く関わることが可能になります。
隙間市場が技術性の高いもので、商品に関して50~100件ほどの記事を書くことができたとしても、情報が独り歩きするようなことはほぼないでしょう。コンテンツ作成への努力が報われるためには、顧客が「ただ商品を買ってくれる人」という以上に、彼らとより多くの共通点を見出すことが重要になります。
失敗その5:無料サンプルについて熟慮しなかったこと
ビジネスによっては、無料サンプルを配ることにより業績を伸ばすことが可能です。「環境配慮」がテーマの隙間市場においても、そのようなチャンスが巡ってきたことがありました。
ただ残念なことに、私は誤った判断をしてしまいそのプロジェクトでは損失を上げる結果に至ってしまいました。送付した無料サンプル300点の中から、売上につながったのはたったの1件だけ。かなりの痛手となりました。
無料サンプルや景品、試供品などは、商品を市場に送り出す効果的な方法ではありますが、すべて種類の商品や隙間市場に機能するものではありません。無料サンプルを配ることは日持ちのしない商品や消費材などに適しています。例えばスキンケア、食品、サプリメントなどがその例です。洋服などのその他の種類の商品については、たとえ同じものをもう一つ簡単に買うことができるとしても、無料サンプル戦略を機能させるのは難しいでしょう。
このとても高く付いた失敗から私が学んだことは、このような小道具では売上を増やすことにはつながらないということでした。ブランド構築には役立ちますが、それにはしっかりとした計画を事前に立てておくことが必要になります。
失敗その6:景品をかけたコンテストを計画なしで実施したこと
無料サンプルで大きな痛手を負ったにも関わらず、私は依然としてエコバッグビジネスの販促のための効果的な方法を探っていました。そこで、あるブロガーと組んでコンテストを実施することにしたのです。いくつかのリンクを選んでSNS上でのシェアを募り、フォロワーやEメールリストを増やしました。
今回は経済的な準備をしっかりと行い、景品には50ドルのギフト商品券を用意しました。その結果、ソーシャルメディアのフォロワー数は約3倍にも増え、コンテストは成功に終わりました。
いや、現実にはこれは成功したと言えるのでしょうか?その4にある通り「コンテンツ計画をしなかった」ので、せっかく増えたフォロワー対応のためのコンテンツ計画がまったくない状況だったのです。
SNS上で最新の注意を払うことは、最初から継続してフォロワーを引きつけておく必要があるということです。毎日コンテンツを見つけ、それをシェアし、定期的に新しいコンテンツをアップし、フォロワーと会話し、フォロワーに役立つ情報を発信するなどなど…。FacebookやTwitterがこんなに大変だとは誰が想像したでしょうか。私の場合、せっかく増えたフォロワーからは最終的には忘れ去られてしまいました。この経験を通して、教訓がまた一つ増えました。
コンテストを実施するならば、その後の余波に対する計画をしっかりと立てておくことが大切です。その計画を立てることこそが、コンテスト自体よりも遥かに価値のあることになり得るからです。
失敗その7:単調な作業で時間を無駄にしてしまったこと
経済学には「機会費用」という概念が存在します。基本的には、複数の選択肢の中の何か一つを実行すると決めた時、その他の機会への時間がなくなることを「費用」と捉える考え方です。そのため、一つの機会の費用とは、実は存在するその他すべての機会のことを示すのです。
私のようにネットショップを一から立ち上げた多くの人は、すべてのプロセスを自分自身で処理されたのではないでしょうか。ネットショップを立ち上げることから、修正・加工、商品のアップロード、商品説明作成、そしてすべての販促活動に至るまで、まるで一人舞台のようなものだと思います。
一人ですべてできるのは素晴らしいことですが、ここでの問題は多大な時間がかかってしまうということです。なぜならその無駄にしてしまった時間は、家族と一緒に過ごしたり、新しいアイデアを練ったり、ビジネス関係を構築したりと言った、他のことに費やすことができる貴重な時間でもあるからです。
単調な作業には、必要なことと不必要なことの二種類があります。
必要な単調作業はできる限り自動化すると良いでしょう。このプロセスには多少の費用がかかりますが、解決できる悩みや節約できる時間を考えたら、投じた金額の価値を必ず上回るはずです。しかも、このような作業(在庫アップロードやデータ入力など)を、妥当な料金で進んで引き受けてくれる人を見つけるのは比較的簡単なことです。不必要な単調作業、つまりサイトのロゴデザインに時間を費やしすぎたり、画像サイズのピクセルをいじったり、サイト上にあるボタンの色にこだわったり、自分しかわからないようなディテールを修正したりと言った作業は省く必要があります。
これらの作業のいくつかは、コンバージョンに有利な効果をもたらすかもしれませんが、ビジターが増え、比較できる売上が出てからでないと何とも言えません。そのためビジネスの初期段階においては、これらの単調作業は避けたほうが得策です。
数時間かけてサイトの修正作業などをすると、よく働いた気分になるかもしれません。でも実はより効果的な時間の費やし方は他にもあるはずなのです。
失敗その8:理想的な顧客像をわかっていなかったこと
これは、最初のネットショップを運営していた時に学んだミスですが、2件目でも同じような失敗をしてしまいました。
隙間市場の調査は、「商品を見つけること」と「自分の顧客をよく知ること」の二つに分けることができます。ここで気をつけることは、顧客ありきで商品を展開することはできるものの、商品ありきで新規顧客を開拓することはとても難しいということです。
従来では、ほとんどの人が隙間市場調査には数字やアナリティクスを使うべきだと考えるでしょう。もちろんそれは絶対的に必要なことですが、私はもう一つの重要なステップである、「理想的な顧客像を考えて、その顧客プロフィールを構築する」ことを怠ってしまいました。
隙間市場に十分な需要があったとしても、理想的な顧客像なしではビジネスを成功させることはとても難しいでしょう。私が2件目のネットショップでミスしてしまったのは正にその点でした。業績が良かった月もありましたが、十分に顧客のターゲットを絞らなかったために、たくさんの売上機会を逃してしまったような気がします。
もう少し深く掘り下げてみると、隙間市場の中に更なる隙間を見つけることができるはずです。つまり、よりターゲットを絞ることはビジネスにとってより有利にはたらき、顧客の求めているニーズをより容易に識別することができるようになるというわけです。
私が運営していた2件目のネットショップでは、比較的複雑な電子機器を販売していました。隙間市場にある無数の選択肢の中にも、あまり複雑でないもの、標準的なもの、そしてとても高度なものといった、ある一定水準がありました。
私のショップではすべての種類を取り扱っていましたが、今になって振り返ると、一つの種類に限定した方が顧客の皆さんとより親密な関係を築くことができたのではないかと思っています。私のビジネスと適合するインフルエンサーとのネットワークを開拓することも、そんなに難しくなかったはずだと今では思います。私のショップは、「初心者にはプロ仕様すぎて、プロにとっては物足りない」という印象を顧客に与えてしまったのです。
失敗その9:具体的なマーケティング計画がなかったこと
「Fail to plan, plan to fail / 計画なくして成功なし(計画をしないということは、失敗することを計画しているようなものだ、という意味)」ということわざがあります。
Eコマースのウェブサイトを立ち上げる時、すでに顧客がどんな人か、どこにいる人たちなのかがわかっている場合には、マーケティング計画を作成するのはそう難しくはないでしょう。残念なことに、私はそのどちらともよくわかっていなかったため、計画は試行錯誤により進めていかざるを得ず、その日暮らしの計画でしかありませんでした。
どんなECサイトにも、基礎的なことをすべてカバーしてくれる包括的なマーケティング計画が必要です。流通チャネルによっては。他のチャネルと比べて、マーケティング計画がより良く機能する場合があります。クリック課金(PPC)広告を採用することがより効果的なビジネスもあれば、サーチエンジン最適化(SEO)やSNSを通して本領を発揮するショップもあるでしょう。また、Eメールも堅実な販売チャネルとして機能します。
計画がどのようなものであっても、ネットショップ立ち上げ当初からしっかりと導入することが大切です。新しいチャンスは自然とやってくるものですが、基礎がしっかりとしていれば、少しずつ確実に成長していくことが可能になるのです。
失敗その10:クリック課金広告企業の甘い言葉にはまってしまったこと
ビジネスが駆け出したばかりの時は、数多くあるサービスやソフトウェアの中から解決策を見つけるのは簡単です。私も、直面した問題への解決策を見出そうと、いろいろなサイトのチェックにどのくらいの時間を費やしたかわかりません。
そんな時、一つの広告企業が目に留まりました。誰でも良かったのですが、その会社は私の目にはとても魅力的に映りました。料金は高めだったので、もしうまく機能しなかったらかなりの損失になる可能性のあるものでした。しかし彼らのマーケティング関連の動画や、彼らの顧客の業績の良さに、いつの間にか惹きつけられてしまったのです。
その後、彼らと電話で話す機会がありました。その中で、彼らは私のビジネスを根底から覆し、そこからはオートパイロットのようにビジネスを独り立ちさせることができると説得されてしまったのです。
彼らにサービスを依頼したことは大失敗でした。大きな費用を費やして6ヶ月契約を交わしたにも関わらず、その期間に生じた売上はすべて私が自ら行った検索エンジン最適化(SEO)によるもので、クリック課金(PPC)広告からのものは何一つありませんでした。彼らは優れた広告会社だと思いますし、彼らを責めているわけでもありません。あくまでも、彼らの提供するソリューションは、私の取り扱う隙間市場には適さない、ということを見過ごしてしまった私の判断違いだったのです。
今までに見てきたクリック課金企業は、以下のように二種類の支払いスキームを設定していました:
a) 広告会社はあらかじめ設定された料金をチャージし、その中からの一定金額を顧客広告に使う。もしくはb) 自分で決めた(最低取り決め金額以上の)金額を広告代として広告会社に支払い、その金額のパーセンテージをサービス料として支払う。
(a)のスキームは、小規模ビジネスにとって大きな出費となるだけで、あまり利益を出すこともないでしょう。
(b)のスキームは、始めるにあたって大きな予算が必要となります。
また、私のようにドロップシッピングを採用している人にとって、うまく機能させるには難しいシステムかもしれません。このようなサービスを通してある程度の利益を得た友人もいますが、生活を支えられるほどのレベルではありませんでした。ご自分で商品を生産している、もしくは非常に利益率の高い商品を調達できるようであれば、この方法を検討するのも良いかもしれません。多くの企業がPPCで大成功を収めていますが、しっかりと費用対効果を考えておくことが大切です。
新しい起業家の皆さんへのアドバイス
これまでは私が実際に経験してきたミスの数々を紹介してきましたが、皆さんは「ビジネスが正しい軌道に乗っているかどうかを、どのように判断すれば良いのか」という疑問を抱いているのではないでしょうか。皆さんの将来を予見することはできませんが、少しでも参考になるように、以下にネットショップの立ち上げと運営を成功に導くために、大変ではあるものの、やるだけの価値がある作業をまとめました:
- 隙間市場の調査をする:需要はあるのか?
- 顧客を知る:具体的にどのような人にサービスを提供しようとしているのか?
- 市場にギャップを見つける:付加できる価値はあるか、もしくは他と同じただのショップの一つに過ぎないのか。
- しっかりとしたマーケティング計画を設定する。
- 注意散漫になって時間を無駄にしてしまうことを避ける。
- 実行する前によく考え、一緒に仕事をしようとする会社を入念に調査する。高い利益を“保証”するような会社は避ける。
- 微調整を必要としない、シンプルで使いやすいデザインを採用する。
そして最後にはなりましたが、粘り強くがんばってください!
エディターの注釈: この記事の原案は、2014年7月10日に投稿されました。
原文:Shabbir Nooruddin 翻訳:クリンカース恵子