1991年にカタログ通販からスタートした英国のアパレルブランドBodenは現在、ECを中心に世界各国で商品を販売しています。2025年にはECサイトをShopify(ショッピファイ)へ移行し、企業文化とテクノロジーの両面でさらなるDXを進めています。
また、英国の中古書籍販売店World of Booksは、2022年に米国企業を買収したことを背景に海外へ事業拡大を進め、並行してDXの推進にも力を入れて取り組んでいます。ECサイトのリプレイスにより、従来のシステムからShopifyに移行したことでコンバージョン率が約10%向上するなど、EC DXによる大きな成果を上げています。
Shopifyはこれら海外企業2社の担当者にインタビューを行い、DXを成功に導いたポイントは何だったのか、その経験からアドバイスを求めました。この記事では、BodenとWorld of Booksの取り組みから、DXを成功に導くために特に重要な4つのポイントを紹介します。

1. 自社を取り巻く変化を把握する
企業がDXを進めるには、自社を取り巻く環境がどのように変化しているのかを把握することが重要です。社内外の変化を把握することで、自社に必要な変革を見極められます。
Bodenでは、DXの必要性を考えるにあたり、まず自社の周りで起きている変化を、顧客ニーズ、市場環境、社内文化の3つに分けて考えました。
アパレル業界では、顧客ニーズや市場のトレンドが絶えず変化しています。また、従業員が職場に求めるものも、世代によって異なります。しかし、Bodenが長年使用してきた独自開発のECシステムでは、サイトを変更する際に複数のチーム間で調整が必要となり、顧客ニーズや市場環境の変化に迅速に対応することが難しくなっていました。
そこでBodenは、ECシステムをShopifyに切り替えるとともに、チームの働き方や企業文化の見直しにも取り組みました。

2. 何を優先すべきかを明確にして共有する
DXでは、検討すべき事項が数多くあります。方向性を見失わずに変革を進めるには、本来の目的を明確にして取り組むべき課題に優先順位をつけ、それをチーム全体に共有して定期的に確認することが重要です。
World of Booksは2022年に米国の競合企業を買収してから、海外売上が3倍以上に拡大しました。事業の急成長に伴い、英国と米国それぞれの事業運営、在庫管理、価格設定など、対応すべき経営課題も増えました。
さまざまな可能性を検討するなかで、社内の視点から変革を考えることに時間を費やしがちだったといいます。そこで、そもそも何のために変革に取り組むのかという原点に立ち返り、「顧客との良好な関係を築くこと」と「優れた顧客体験を提供すること」を軸に優先順位を決めました。その方針をチーム全体へ共有することで、共通の目的意識を持って変革を進めていったそうです。

3. テストと改善を繰り返す
DXの推進には、スピード感をもってテストと改善を繰り返すことが欠かせません。
World of BooksはShopifyを活用し、社内で集まったアイデアをもとに仮説を立て、テストを実施し、そこで得られたデータや知見を改善に生かすという、アイデア管理のプロセスを実践しています。Shopifyのアプリには、ローコードやノーコードで手軽に利用できるものが数多くあるため、それらを活用することで新しい施策を素早く試すことができるようになったといいます。
また、BodenでもShopifyを活用し、さまざまな部門のチームが知見を持ち寄り、新しいアイデアをテストする取り組みを進めています。以前は、新しい施策の妥当性を示す資料の作成や、概念実証(PoC)に膨大な時間を費やしていました。しかし、Shopifyには無料トライアルを利用できるアプリも多いため、本格的な導入前に新しい施策を試し、その効果を短期間で検証できるようになりました。現在では、社内のさまざまなチームにA/Bテストを行う文化が定着しているといいます。

4. 失敗を恐れずに挑戦できる環境をつくる
テストと改善を繰り返して成果を得るには、チームのメンバーが失敗を恐れずに挑戦できる環境が必要です。
World of Booksには従来、「最初に正解を出すことを重視する」という企業文化がありました。これは、テストと改善を繰り返す考え方とは相容れないものでした。そこで、リーダー自らが失敗の責任を引き受け、チームメンバーが失敗を恐れず主体的に挑戦できる環境づくりに力を入れたといいます。その結果、失敗を学びの機会として前向きに捉える企業文化にシフトしていきました。
Bodenでは、異なる部門のメンバーが自由にアイデアを出し合える環境を大切にしています。会議では、誰かのアイデアをほかのメンバーが発展させたり、実現が難しい場合には次のアイデアを検討したりする文化が根付いているといいます。うまくいかなかったアイデアも否定的に捉えず、可能性のあるものは小規模なテストで検証する姿勢を大切にしているそうです。
メンバーにとって心理的安全性のある環境が、アイデアの創出から検証、改善へとつながるイノベーションサイクルを支えているのです。
まとめ
DXとは単に新しい技術を導入することではなく、組織の働き方や企業文化も含めた変革です。
BodenとWorld of Booksの事例が示すように、DXを成功させるためには、顧客ニーズや市場環境の変化を把握し、目的と優先順位を明確にすることが重要です。また、失敗を恐れずに新しいことに挑戦し、テストと改善を繰り返せる組織づくりも欠かせません。
自社に必要な変革を見極め、改善を積み重ねながらDXを進めていきましょう。
DXについてのよくある質問
DXとは?
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略です。単にデジタル技術やツールを導入することではなく、それらを活用して、ビジネスの仕組みを新たに構築していくことを指します。
経済産業省が発行するデジタルガバナンス・コード3.0では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
DXの進捗状況を評価する方法は?
DXの進捗状況を評価するには、経済産業省が提供する自己診断ツール、DX推進指標を活用できます。
DX推進指標では、経営戦略や組織体制、ITシステムなどの観点から、自社のDXの成熟度をレベル0〜5の6段階で自己診断できます。定期的に診断を行い、目標と現状の差や進捗状況を確認することで、今後の課題や改善点を把握できます。
中小企業でもDXに取り組める?
中小企業でもDXに取り組むことは可能です。大規模なシステム改修を実施しなくても、身近な業務のデジタル化や、データを活用したサービスの改善、企業文化の刷新などを始めることもできます。
経済産業省では、中堅・中小企業等向けDX推進の手引きを公開しており、DXの進め方や成功のポイント、実際の企業事例を紹介しています。




