近年、アパレル業界では、一度販売された商品を再び流通させる「リセールビジネス」への注目が高まっています。
従来、中古のアパレル商品は古着としてリユースショップや古着屋で販売されたり、フリマアプリで個人間取引されたりするのが中心でした。しかし近年では、消費者の価値観の変化やサステナブルな取り組みへの関心の高まりを背景に、アパレルブランド自身が自社商品の買い取りや再販売に取り組むケースも増えています。
本記事では、リセールビジネスの概要や市場が拡大している理由、アパレルブランドが参入するメリット、主なビジネスモデルについて解説します。

リセールビジネスとは
リセールビジネスとは、一度販売された商品の買い取りや引き取りを行い、再び販売するビジネスモデルです。
アパレルでは、着用済みの衣類やバッグ、靴などを回収し、必要に応じてクリーニングなどを行ったうえで再販売する形が一般的です。

リセールビジネスが拡大している理由
消費者の価値観が変化している
リセール市場が拡大している背景のひとつに、消費者の価値観の変化があります。以前は、新品を購入すること自体に価値を感じる消費者が主流でしたが、近年では、新品か中古かにこだわらず、商品の状態やデザイン、価格、自分の好みに合っているかどうかを重視して購入する人が増えています。
特にアパレルでは、すでに販売が終了した商品や過去の人気アイテム、ヴィンテージ品など、新品市場では手に入りにくい商品に魅力を感じる消費者も多くいます。また、必要に応じて商品を手放し、別の商品を購入するといった消費行動も広がっています。こうした価値観の変化が、リセール市場の成長を後押ししています。
サステナビリティへの関心が高まっている
リセール市場が拡大している背景には、サステナビリティへの関心の高まりもあります。アパレル業界では、大量生産、大量消費による廃棄物の増加や、製造時に発生する環境負荷など、サステナビリティへの取り組みが課題として挙げられ、消費者の意識も高まってきています。
リセールを利用すれば、不要になった衣類やバッグなどを廃棄せず、次の利用者につなげることが可能になり、資源の有効活用にもつながります。こうした循環型の消費に対する意識の広がりが、リセールサービスを選ぶ理由のひとつとなり、市場の成長を後押ししています。
オンラインで中古品を売買しやすくなっている
オンラインで中古品を売買しやすくなったことも、リセール市場が拡大している理由のひとつです。以前は、中古品を売る場合はリユースショップへ持ち込む必要があり、購入する側も実店舗で商品を探すのが一般的でした。しかし現在では、フリマアプリやECサイトなどを通じて、スマートフォンやパソコンから手軽に売買できます。
また、下取りや買い取り、配送までオンライン上で完結できるサービスも増えています。不要になった商品を二次流通に回しやすい環境が整ったことで、リセールがより身近になり、市場拡大を後押ししています。

アパレルブランドがリセールビジネスに参入するメリット
新たな収益機会を獲得できる
アパレルブランドがリセールビジネスに参入するメリットのひとつは、新たな収益機会を獲得できることです。従来、ブランドが収益を得られるのは新品を販売するタイミングが中心で、一度購入された商品が中古市場で再販売されても、その取引から直接利益を得ることはできませんでした。
しかし、自社で商品の買い取りや下取り、再販売の仕組みを構築すれば、これまで外部の中古市場で行われていた取引を自社のビジネスに取り込めます。また、新品よりも購入しやすい価格帯の商品を用意することで、新たな顧客層へのアプローチも可能です。新品販売だけに依存せず、ひとつの商品から複数回の収益機会を生み出せる点は、リセールビジネスならではの強みです。
顧客との接点を増やせる
アパレルブランドがリセールビジネスに参入することで、顧客との接点を増やせる点も大きなメリットです。通常の商品販売では、購入後に顧客との関係が途切れてしまうこともありますが、リセールの仕組みを取り入れることで、商品の買い取りや下取り、再販売などを通じて継続的に関係を築きやすくなります。
たとえば、不要になった商品をブランドに返却してもらい、その際にクーポンやストアポイントを付与すれば、次回購入につなげることも可能です。また、リセール商品をきっかけに初めてブランドを知る顧客が増える可能性もあります。新品販売とリセールを組み合わせることで、購入前後を含めた幅広い顧客接点をつくり、長期的な関係構築につなげられます。
ブランド価値を維持しやすくなる
アパレルブランドがリセールビジネスに参入することで、二次流通市場におけるブランド価値を維持しやすくなります。外部のフリマアプリや中古販売店だけに流通を任せる場合、商品の状態や販売価格、見せ方などをブランド側で管理することは難しくなります。一方、自社でリセールの仕組みを構築すれば、商品の品質基準を設けたうえで再販売したり、ブランドの世界観に合った形で商品を届けたりすることが可能です。
また、適切な価格や情報を提示することで、二次流通における商品の価値が大きく損なわれるのを防ぎやすくなります。新品だけでなく中古品の流通にも関与することは、アパレルのブランディングや商品の価値を長期的に維持するうえで有効です。
循環型ビジネスを推進できる
アパレルブランドがリセールビジネスに参入することで、循環型ビジネスを推進しやすくなります。商品を一度販売して終わりにするのではなく、不要になった衣類やバッグなどをブランドが回収することで、状態を確認したうえ再販売したり資源として有効活用したりできます。
こうした循環の仕組みをブランド自ら構築することは、環境負荷の軽減だけでなく、持続可能なブランド運営を実現するうえでも有効です。
リセールビジネスの主なビジネスモデルと活用事例
自社運営型
自社運営型は、アパレルブランドが自ら中古商品の回収や査定、再販売までを行うビジネスモデルです。自社でリセールプログラムを構築し、顧客から不要になった商品を買い取ったり、下取りしたりして再流通させます。
このモデルのメリットは、商品の品質基準や販売価格、掲載方法などをブランド側で管理しやすい点です。一方で、査定や在庫管理、クリーニング、配送などの運用体制を自社で整える必要があるため、導入時には一定のコストやノウハウが求められます。
株式会社オンワードホールディングスは、回収した自社ブランドの衣料品を再販売するオンワード・リユースパークを自社で展開し、東京・吉祥寺の実店舗やオンラインショップで販売しています。
回収した商品のうち状態の良いものを再販売し、その収益をサステナブル活動に活用している点が特徴で、商品の再販売と環境への取り組みを組み合わせて企業ブランディングにも役立てています。
外部プラットフォーム型
外部プラットフォーム型は、ブランドが外部のリセール事業者や専用プラットフォームを利用して再販売を行うビジネスモデルです。リセールプラットフォームには、中古商品の回収、査定、在庫管理、販売などを代行してもらえるものや、プラットフォームのみ提供するものなどがあります。
プラットフォームの顧客基盤を通じて、ブランド認知を高めたり新しい顧客層にリーチできたりするのが利点です。一方で、販売方法や顧客体験を管理しにくいため、提携先の選定やブランドイメージとの整合性が重要になります。
人気ブランドを多数展開するベイクルーズグループは、メルカリShopsでリユースセレクトショップのCIRCULABLE SUPPLY(サーキュラブルサプライ)を運営し、自社ブランドの中古品や厳選したブランドの中古品を販売しています。自社サイトとは切り離し、顧客との間に新しい循環サイクルを構築している事例です。
システム連携型
システム連携型は、ブランドが外部のリセールサービスと連携し、自社サイト内で再販売を行うビジネスモデルです。
買い取りや査定、物流などの業務は代行してもらえるため、リセールのためのシステム開発が不要になります。サービスによってはブランド専用のリセールECサイト構築まで請け負ってくれるため、新品販売のサイトと分けて運用することも可能です。
主なサービスには以下のようなものがあります。
- Free Standard(フリースタンダード):回収から査定、メンテナンス、専用ECサイト設計や物流まで代行する。事業者独自のリユース店舗での販売も可能。
- Selloop(セループ):リセールビジネスの戦略検討から運用まで支援する。市場リサーチや下取りシステム、物流などのサービスを要望に合わせてカスタマイズできる。
BEAMS(ビームス)は、Free Standardと連携して公式リセールサービスのBEAMS digroo(ビームス ディグロー)を2026年2月に開始しました。過去にビームスの店舗や公式オンラインショップで購入された商品を再販売するサービスで、商品の査定額をポイント還元する仕組みを採用しています。過去の商品に新たな価値を与えながら、顧客との継続的な関係構築を目指している点が特徴です。
まとめ
リセールビジネスは、一度販売された商品を再び流通させることで、新たな収益機会や顧客接点を生み出せるビジネスモデルです。アパレル業界では、消費者の価値観の変化やサステナビリティへの関心、オンライン取引の普及などを背景に、市場が拡大しています。
ブランドがリサイクルビジネスに参入する方法には、自社運営型や外部プラットフォーム型、システム連携型などがあります。自社の体制や目的に合った方法を選ぶことで、ブランド価値を維持しながら循環型ビジネスを推進できます。今後は、新品販売だけでなく、商品の二次流通まで含めた顧客体験を設計することが、ブランドの成長を考えるうえで重要になるでしょう。
リセールビジネスに関するよくある質問
リセールとリユースの違いは?
リユースは商品を繰り返し使用する考え方全般を指し、リセールはその商品を再販売する行為やビジネスを指します。リセールは、リユースを実現する方法のひとつと考えるとわかりやすいでしょう。
リセールビジネスはなぜ注目されている?
消費者の価値観の変化やサステナビリティへの関心の高まり、フリマアプリやECサイトの普及などが主な理由です。中古品を購入することへの抵抗感が薄れ、オンラインで手軽に売買できる環境も整っています。
アパレルブランドがリセールビジネスを始めるメリットは?
新たな収益機会を得られるほか、買い取りや下取りを通じて顧客との接点を増やせます。また、二次流通にもブランド自身が関与することで、ブランド価値の維持や循環型ビジネスの推進にもつながります。
リセラーとは?
リセラーとは、商品を仕入れて別の顧客に再販売する事業者や個人のことです。メーカーやブランドから商品を仕入れて販売するケースのほか、中古品や限定商品などを購入し、二次流通市場で販売するケースもあります。




