初めてのネットショップを訪問したときのことを思い出してみてください。ブランドについても、商品の品質についても、顧客満足度向上に向けたショップの取り組みについても、何も知らない状態です。こうした場合、そのショップが自分のニーズに合う商品を提供しているのかを探るため、まずは過去に商品を購入した顧客のレビューを探すことでしょう。
では、新規開店のネットショップの場合はどうでしょうか。始めたばかりで販売実績はもちろん、レビューや参考になる評価もありません。こうしたショップが、見込み客から信頼を勝ち取り、商品の販売へとつなげるには、どのようにすれば良いのでしょうか。実際、新しく起業する人のほとんどがこの問題に直面します。
販売実績がまだない時期に顧客の信頼を獲得するのは、非常に困難です。一方で、顧客から選ばれるためには、まず信頼してもらうことが必須となります。そこでこの記事では、顧客の信頼を勝ち取るための9つの方法を解説します。これらを学び、Eコマース事業を成長させましょう。
売り上げがゼロの時期に顧客からの信頼を得る9つの方法
1. ビジネスの人間らしい一面を見せる
消費者は、ブランドをすぐには信用しない傾向にあります。ブランドの最終的な目的は結局のところ、お金稼ぎであることを理解しているためです。とはいえ、人やブランドを信じたいという気持ちのほうが疑う気持ちよりも上回るものです。
だからこそ、ブランドの人間らしい一面を見せることが消費者の警戒心を解くために効果的となります。ビジネスの「中の人」、つまり自分自身を紹介してみましょう。特に、紹介することで嘘偽りのないことを伝えられたり、信ぴょう性を高められたりするのであれば、やらない手はありません。
たとえば自分で作ったものを販売している場合は、このケースに当てはまります。事業者の人となりを伝え、顧客が親近感を持てるようにしましょう。
ウェブサイトのAboutページは、こうした取り組みを実践するのに最適です。商品ではなく事業者に焦点を当てることで、事業者とブランドのストーリーを同時に伝えられます。消費者はブランドのことをより深く知ることができ、ブランドに対して信頼感を育めるようになります。
土屋鞄のランドセル向け特設サイトである「土屋鞄のランドセル」の例をご覧ください。
Aboutページでは、創業者の信念や商品に対する意欲を確認できます。こうした記載によって人間らしい一面を出すことができ、顧客が親近感を持てるようになります。
2. コンテンツを活用して顧客との関係性を作る
コンテンツは、ブランドのことをまったく知らない消費者にリーチする手段として非常に有効です。何らかの情報を公開すれば、押し付けがましくなることなく、徐々にブランドのことを知ってもらえるきっかけを作れます。大勢の人に同時にアプローチもできます。
定期的にコンテンツを作成・公開すれば、自社が事業や業界、顧客の課題解決に対して力を入れていると示すことができます。こうした取り組みは、確実に好意的な印象を与えられるものです。
また、コンテンツがあることで消費者はブランドに親しみを感じやすくなります。ブランドのストーリーを伝えたり、力強いブランドメッセージを打ち出していったりするとさらに効果的でしょう。事業者の人となりを伝えられるため、消費者はまるで事業者自身を直接知っているような感覚になり、信頼を持てるようになります。
コンテンツはまた、顧客から継続的な信頼を勝ち取るためにも効果的です。学習用コンテンツは、顧客サービスの充実を図るうえで欠かせないものです。こうした有用な情報がウェブサイトで提供されていれば、顧客は問い合わせることなく問題の答えや解決策を得られます。
さらに、コンテンツを提供している場所でやり取りができるようにするのも、消費者とつながるうえで有用です。消費者に一度コメントを残してもらえさえすれば、事業者から直接話しかける貴重な機会が生まれます。オンライン経由で一人ひとりと関係を築き、何度もやり取りするきっかけとなるでしょう。
コンテンツマーケティングは、ブランドの専門性を示すうえで非常に有用です。ネットショップのオーナーに豊富な専門知識があることを示せれば、消費者は販売している製品やサービスの品質を信頼するでしょう。
たとえば、ベッドやソファーなど家具を販売するRASIK(ラシク)は「くらしの情報」というブログを活用して、部屋に適した家具の特徴やレイアウト例といった消費者に役立つ情報を発信するとともに、家具に関する専門知識があることを示しています。
3. セキュリティに力を入れていることを顧客に示す
最初の2つの戦略は、企業としての信頼性を示すことに焦点を当てています。いずれも、信頼を獲得するために欠かせないものです。しかし、サイトそのものについても、信頼性があることを示す必要があるでしょう。
NEC(エヌイーシー)のような大企業であっても情報セキュリティ事故は発生しているため、サイバーセキュリティは非常に重要な課題です。そのため、消費者がクレジットカード情報を提供することに対して慎重になるのは、当然といえます。個人情報を守るセキュリティプロトコルが脆弱だと、あっという間に顧客の信頼を失うでしょう。
サイトに対する信頼も勝ち取るために使える手段の一つとして、セキュリティバッジをウェブストアで表示できるようなセキュリティ強化アプリを利用することが挙げられます。セキュリティバッジとはサイトが安全であることを示すもので、Shopify(英語サイト)でも用意されています。
Shopifyアプリの「TrustedSite ‑ Trust Badges」は、その好例です。このアプリを使えば、顧客情報の保護はもちろん、有名なセキュリティ会社のバッジをサイトに表示することも可能です。そのため、売り上げにつながった割合を示すコンバージョン率の向上にもつながるでしょう。
複数の支払い方法を準備することも、安心して購入してもらうために有効な方法です。消費者のなかには、特定の支払い方法を好む人もいます。
たとえば、多くの消費者に利用されているPayPal(ペイパル)を支払い方法として提供すると、決済の安全性を高められ、顧客にも安心感を持ってもらえるでしょう。実際、Netfluential(ネットフルエンシャル)の調査では、普段使っている銀行のほうが信用できるためPayPalにお金を預けておきたくないと回答した人が全体的に多かったものの、金融情報の保護という点ではPayPalのほうが優れていると69%が回答しています。消費者が信頼している決済手段をネットショップに導入すれば、サイトの信頼感も高められるでしょう。
蓄電池などを販売するEcoFlow(エコフロー)の商品ページでは、「カートに入れる」ボタンのすぐ下にApple PayやAmazon Pay、PayPayなど、利用できる支払い方法のマークが表示されています。
なお、支払い方法に関する顧客のフィードバックは、すべて記録として残しておきましょう。PayPalを導入する予定があるかを問い合わせるメールを何十通も受け取った場合、導入を検討するのが良いかもしれません。もちろん、事業によって顧客が求める支払い方法は異なるでしょう。大切なのは、顧客の要望に意識を向け続けることです。
4. 優れた返品ポリシーを「売り」にする
返品ポリシーが好ましいものであると、顧客が商品の購入を迷った際も購入にすぐ傾きやすくなります。返品ポリシーとは、商品の返品を受け付ける期間や条件などのルールを指します。返品ポリシーが顧客にとって好ましいものであれば、顧客は自分が損することはないと感じられるため、ショップを一気に信用するようになるでしょう。
返品ポリシーが望ましいものであると、顧客サービスの質も良いだろうと顧客に感じてもらえるようになります。これは、顧客を大切にしていることが示せるだけでなく、気に入らなければ返品してもらって構わないと言えるほど商品に自信があることも伝えられるためです。
オンラインストアで返品ポリシーを設定すれば、商品販売時に顧客のリスクを下げられます。たとえば、購入30日以内は無条件かつ手数料不要で返品できる条件を設けた場合、消費者はそのブランドから商品を購入したいと考える可能性が高くなるでしょう。すべての顧客からの返品を無料で受け付ける余裕がない場合は、ロイヤリティプログラムに加入している顧客のみに限定するのも一案です。
たとえば、カメラなどを取り扱うシステムファイブでは、14日以内に連絡することや、開封済み商品を顧客都合で返品する場合は商品代金の70%を返金するといったルールを設けています。
返品ポリシーは、顧客に好ましいものを用意していたとしても、サイト上で目立つように示していないと効果は半減します。以下の方法で、返品ポリシーをサイト訪問者に伝えていくようにしましょう。
- 返品ポリシーの全容がわかるページを作成する(FAQページの一部にもなります)
- 商品ページの一部に返品に関するセクションを設ける
- サイトのフッター(ページの下部)に返品ポリシーページへ移動するリンクを挿入する
5. 顧客の問い合わせに対応できる体制を作る
ブランドについて聞きたいことがある顧客は、ウェブサイトのコンタクトフォームやメール、SNSなどさまざまな方法で問い合わせを行うでしょう。問い合わせ内容としては、返品ポリシーや配送日時、製品情報などが考えられます。こうした問い合わせには、可能な限り迅速かつ丁寧に対応することが大切です。
2分以内に必要十分な回答をくれるブランドと、1日経ってから短い回答のみをくれるブランドなら、より信頼できるのは前者でしょう。
迅速な対応が当たり前になっている現代において、スピードは特に重要です。可能であればサイトにShopify Inbox(ショッピファイインボックス)のようなチャットサポートを導入しましょう。ほぼすぐ回答を得られると訪問者にわかるようにすることで、見込み客は質問しやすくなります。問い合わせがあった際、相手の懸念などについてリアルタイムで対処したり、アップセルやクロスセルを提案したりすることが可能になります。
チャットサポートは、顧客サービスを充実させるうえで欠かせないものになりつつあります。全国の10~60代2,086名を対象に行われたコスモス株式会社の調査によると、カスタマーサポートの中でストレスを感じたことがあるチャネルの第1位は電話で、全体の60%を占めていることがわかりました。一方、チャットボットに対してストレスを感じた人は33.5%、人が対応したチャットに対してストレスを感じた人は28.8%と、電話と比較して大幅に低いことが明らかになっています。
6. 商品情報を詳しく伝える
顧客は、購入しようと考えている商品について詳しく知れば知るほど、実際に購入する可能性が高くなります。サイトでは具体的に伝えるのがベストです。「本革」ではなく「バケッタレザー(本革)」と記載するほうが魅力が伝わります。
商品説明にはたとえば、次の要素を入れると良いでしょう。
- 商品の正確な寸法と重量
- 原材料
- 保証に関する情報
- 各付属品の機能やメリット(「調整可能なストラップ」「利用者に合わせて調整できます」などの記載)
また、商品の使い方や品質がわかる画像と動画をできるだけ多く掲載するのも効果的です。顧客は生活の中での利用シーンをリアルに想像できるようになるため、商品の特徴やメリットなどを信じやすくなります。
7. サンプルの配布を検討する
ショップ立ち上げの時期に販売数を確保し、ビジネスを軌道に乗せていくのは至難の業です。商品を顧客のもとに届ける確実な方法の一つが無料で提供することです。
商品サンプルを無料で提供すれば、見込み客側のリスクを減らしながらショップへの興味や信頼を引き出すことが可能になります。こうした手法は、すべてのビジネスに適しているわけではありませんが、たとえば少量で無償提供できる商品(食品など)を販売している場合には良いでしょう。商品に納得してもらうことで、購入へのハードルを下げることができます。
成果につながる無料サンプルの提供方法には、次のようなものがあります。
- 一定数の人に商品を無料で提供してレビューを依頼し、十分な数の高評価レビューが集まったら、サイトに掲載する。
- ターゲット層に商品の情報を広めてくれるインフルエンサーやブロガーに商品を送る。
- ポップアップストアやイベントなどを通じて無料サンプルを配布する。商品を気に入った人が後ほどオンラインで検索する可能性があります。
サンプルの提供は信頼を築くうえで有効な方法ですが、取り組みの効果を最大限に高めるには、適切な人に提供する必要があります。ブランドに愛着を持つ顧客を得るまでには長い道のりが必要となります。その第一歩としてブランドの認知度を上げるために、サンプルを提供して高評価レビューを集めるのが良いでしょう。
8. 購入を検討している人の不安解消にFAQページを活用する
FAQページを充実させれば、さまざまなことが実現します。
FAQページは、ブランドや商品に関する消費者の疑問に答えるだけでなく、専門知識があることを示したり、商品に関する情報を提供したり、経営理念を伝えたりするのにも活用できます。つまりFAQページは、消費者がブランドにもっと親しみを感じ、安心して商品を購入できるよう、後押しするツールとして活用できるのです。
FAQページは、一般的には消費者に情報を提供したり、購入に関する不安を軽減したりする目的で作成されます。しかし、買いたいという気持ちを消費者から引き出すためにブランドストーリーやブランドの強みを伝える際にも有用です。
雑貨などを販売するFrancfranc(フランフラン)の例を見てみましょう。FAQページは「商品不具合について」や「在庫について」などのセクションに分かれており、各セクション内にはさらに「返品・交換について」など具体的な回答が簡潔に用意されています。また、詳細を確認できるよう、各回答内にはほかのページへのリンクも設置されています。
FAQページに記載される内容には、次のようなものがあります。
- Aboutページやホームページに入れられなかったブランドに関する情報
- 顧客にとって重要であると判断できる、商品に関する一般的な情報(「当社の製品はオーガニック、パラベンフリー、グルテンフリー、ソイフリーです」など)
- 証明書やライセンスなど、顧客から信頼を得られる情報
- 顧客によく尋ねられる質問、または競合他社がよく質問される内容への回答
9. 信頼を損なう些細な問題を解決する
最後に、ネットショップを丁寧に隅から隅まで、パソコンとスマートフォンの両方から必ず確認するようにしてください。
一緒に働く人や友人にも、運営しているサイトで安心して商品を購入できそうか聞いてみましょう。安心して購入できると思えるのはなぜか、反対に安心して購入できないのなら、何が原因なのかもあわせて確認することが重要です。原因としては、ホームページの記載で事業内容をうまく伝えられていない、配送にかかる時間が十分に記載されていないといったものが考えられるでしょう。また、ドメイン名が長くて覚えづらいのが原因となる場合もあるかもしれません。その場合は、ドメイン名を新たに取得することを検討してみましょう。
事業者本人は、自分が正直で信頼に足る人物だと思っていても、顧客がそう感じられるとは限りません。些細なミスがないか、サイトをくまなくチェックしましょう。文章に誤字脱字や文法ミスがあれば、ブランドに対する信頼が損なわれ、コンバージョン率も下がります。Enno(エンノ)のような校閲ツールを使えば、事業者が書くことに慣れていない場合もミスを拾うことができます。
ほかにも、リンクが切れていると雑な印象を、グラフィックの質が低いとプロらしくない安っぽい印象を与えます。いずれも些細な問題に思えるかもしれませんが、顧客がブランドを信頼するかどうかを一瞬で決定するほどの影響力を持っています。そのため、こうした細部を見過ごさないようにしてください。
まとめ
顧客とのつながりを築くには、まずビジネスの人間らしい一面を見せ、コンテンツを通じて信頼を得ることが重要です。さらに、セキュリティ対策を徹底し、返品ポリシーを顧客に好ましいものにして、迅速な対応が可能なカスタマーサポートを提供すれば、消費者の懸念を払拭できます。
また、FAQページを活用し、詳細な商品情報を提供することも顧客の不安を取り除く有効な手段となります。最後は、サイト上の小さなミスにも注意を払い、信頼を損なう要素をなくしましょう。こうした取り組みを実践することで、売り上げがゼロの状態から顧客との信頼関係を築くことが可能です。
ネットショップを開設して商品を販売するEコマース事業を検討しているなら、ぜひShopifyをご活用ください。Shopifyでは、Aboutページや返品ポリシーの作成、ブログコンテンツの利用などを簡単に行えます。無料体験も実施しています。
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よくある質問
クライアントや顧客との信頼関係を構築する方法は?
- カスタマーサポート充実に向けてリソースを投入する
- 配送や返品などのショップポリシーにおいて透明性を保つ
- 問題を解決するために全力を尽くす
ビジネスで売り上げゼロの段階から顧客の信頼を得るには?
- 初期の顧客をお得意様のように大切にする
- 一人ひとりに合わせた顧客サービスを提供して信頼関係の構築を図る
- 顧客の興味に基づき、楽しく買い物できるようなコンテンツや資料を作成する
- 新規顧客向けにロイヤリティプログラムを提供する
- 返品ポリシーを目立つところに表示する
顧客との関係強化に必要なことは?
- 顧客のニーズや課題を理解する
- 一人ひとりに誠実な対応を心がける
- 顧客に対し定期的に情報発信する
- 顧客からのフィードバックをサービスに反映する
- メルマガやブログなどのコンテンツを活用する
文:Yukihiro Kawata