日本ビジネスメール協会の調査によると、ビジネスパーソンは1日に約46通のメールを受信しています。また、世界のメールマーケティング市場規模は、2025年には128億4,000万米ドル(約2兆1,018億円)に達し、2031年までには229億3,000万米ドル(約3兆7,534億円)に成長すると予想する調査もあります。
この日々世界中で利用されているメールを裏側で支えているのが、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバーです。
メールを活用して顧客との関係を築くマーケティング担当者や企業にとって、SMTPサーバーの仕組みは、押さえておきたい知識のひとつです。仕組みを知ることで、重要なメールを顧客に確実に届けられるようになります。
本記事では、SMTPサーバーの定義や仕組みをわかりやすく解説します。SMTPサーバーの導入を検討している企業は、参考にしてください。

SMTPとは
SMTPとは、メールを送信するための通信ルール(プロトコル)です。受信者の情報を確認して宛先のサーバーへメールを送信する役割を担い、受信は扱いません。
SMTPには、セキュリティやメール到達率の課題に対応するための拡張機能があります。たとえば、メール送信時に正規のユーザーかどうかを確認したり、送信中のメールを暗号化したり、配信結果を通知したりする機能を利用できます。
SMTP、IMAP、POP3の違い
SMTP、IMAP(Internet Message Access Protocol)、POP3(Post Office Protocol version 3)の違いは、メールの送信を担うか、受信を担うかという点です。それぞれの主な特徴は以下の通りです。
- SMTP:メール送信に使われるプロトコルです。メールクライアント(メールの送受信に使うソフトやアプリ)からメールを送信すると、SMTPを使用して受信者のメールサーバーまで届けられます。
- IMAP:メールの受信に使われるプロトコルで、届いたメールはサーバー上で管理されます。メールに対する既読や削除などの操作は、すべてのデバイスに反映されます。
- POP3:メールの受信に使われるプロトコルで、サーバー上のメールをデバイスにダウンロードして管理します。ダウンロード後にサーバーからメールが削除される設定になっていることが多く、ほかのデバイスからはアクセスできない場合があります。

SMTPサーバーとは
SMTPサーバーとは、SMTPに基づいて送信メールを宛先まで届けるサーバーのことです。メールクライアントからメールを送信すると、クライアントはSMTPサーバーと通信し、SMTPサーバーがインターネット上のほかのメールサーバーへメールを配信します。
たとえばECサイトの場合、メルマガを配信したり、注文完了時に購入確認メールが自動送信されたりすると、SMTPサーバーが宛先の特定や送信者の認証を行い、メールを受信者のサーバーへ届けます。
SMTPサーバーには、共有型と専用型があります。日常的な個人利用であれば無料の共有型SMTPサーバーで十分です。しかし、顧客や取引先などメールのやり取りが多い企業には、1日の送信数に上限があり、到達率や送信者レピュテーション(送信元がどれだけ信頼できるかを示す評価)が低くなる可能性のある共有型は適していません。有料の専用型SMTPサーバーであれば、送信できるメール数も多く、信頼性も維持できます。また、到達率が向上するだけでなく、サーバープロバイダーが提供する認証設定や配信結果の分析、運用サポートなどのサービスも利用できます。
主なSMTPサーバープロバイダー
SendGrid
SendGrid(センドグリッド)は、構造計画研究所が正規代理店として提供するクラウド型のメール配信サービスです。SMTPリレー(自社システムからのメールを別のサーバーが中継して届ける仕組み)により、高い到達率を保ちながらメールを配信できます。なりすましメールを防ぐ認証機能、開封率やクリック率の分析機能なども備えています。
料金:Essentials(エッセンシャル)プランは月間5万通で月額3,000円(税抜)から。無料トライアルあり。
Amazon SES
Amazon SES(Simple Email Service)は、AWS(Amazon Web Services)が提供するクラウド型のメール配信サービスです。一度に大量のメールを送っても安定して配信できるため、AmazonやNetflix(ネットフリックス)などの大規模サービスも利用していることで知られています。送信元のIPアドレスは、共有IP、自社専用IP、自社保有IPから選択可能です。
料金:送信メール1,000通あたり0.10USD(約16円)の従量課金。利用開始から12か月間は、毎月3,000通まで無料。
blastengine
blastengine(ブラストエンジン)は、ラクスライトクラウドが提供するメール配信サービスです。メールサーバーの管理や到達率の維持、エラーメールへの対応などをblastengine側が代行するため、これまでメール運用にかかっていたエンジニアの手間を大幅に減らせます。国内の携帯キャリアやメールプロバイダーへの到達率の高さも強みです。
料金:初期費用無料、月額3,000円で月間1万通から。無料トライアルあり。
ベアメール
ベアメールは、株式会社リンクが提供する、メールの到達率改善に特化したメールリレーサービスです。会員登録の完了通知や購入確認メールなど、確実に届けたいメールを、携帯キャリアやプロバイダーにブロックされずに届けられます。配信結果は管理画面からすぐに確認でき、届かなかった場合の原因調査や再送にも迅速に対応できます。
料金:初期費用50,000円(税抜)、最安プランは月間1万通で月額5,000円。
Cuenote
Cuenote(キューノート)は、ユミルリンクが提供するメール配信システムで、用途の異なる2つの製品があります。Cuenote SR-Sは、自社システムのメールを中継して速度と到達率を高めるメールリレーサービスで、送り先を変更するだけで導入できます。Cuenote FCは、1時間あたり1,000万通規模の高速配信と効果測定に対応した、メールマーケティング向けのサービスです。
料金:Cuenote SR-Sは初期費用50,000円で月額27,000円から。Cuenote FCは初期費用30,000円で月額5,000円から。
Shopifyのメールサービス
Shopify(ショッピファイ)を利用する場合、注文確認や配送通知などのメールはShopifyが独自のシステムで自動送信するため、企業がSMTPサーバーを用意する必要はありません。ただし、カスタムメールドメインでメールを送りたい場合は、別途メールホスティングサービスを利用する必要があります。Shopifyでメールを活用する方法は主に以下の通りです。
- Shopify Messaging(メッセージング):管理画面から直接、マーケティングメールや自動配信メールを作成できます。毎月1万通まで無料で送信でき、超過分は1,000通あたり1米ドル(約160円)の従量課金となります。
- メール転送:Shopifyで管理する独自ドメインがあれば、「info@yourdomain.com」のようなアドレスに届いたメールを、普段使っているGmail(ジーメール)やOutlook(アウトルック)などのメールクライアントの受信トレイへ転送できます。
- サードパーティのメールホスティング:外部のメールホスティングサービスと連携させることで、独自ドメインのメールを送信できるようになります。
- サードパーティアプリ:外部のSMTPサービスを接続できるShopifyアプリがあります。たとえばFlowSend(フローセンド)を利用すると、契約しているSMTPサービスなどを送信元に指定して、Shopifyからメールを送信できます。
SMTPサーバーの仕組み
- メールクライアントがSMTPサーバーに接続する:メールクライアントで送信ボタンを押すと、クライアントはSMTPサーバーに接続し、宛先や件名、本文などの情報を渡します。メール配信サービスを使って一括送信する場合は、そのサービスがクライアントの役割を担い、自前のSMTPサーバーに接続します。
- SMTPサーバーが宛先を調べる:SMTPサーバーは、受け取った情報から送信者と受信者のメールアドレスを確認します。次に、DNS(ドメイン名とサーバーを結びつける仕組み)を参照して、受信者のドメインのMXレコードを調べます。MXレコードとは、「このドメイン宛のメールは、このサーバーに届けてください」という情報です。SMTPサーバーは、これを見て正しい送信先を判断します。
- SMTPサーバーがメールを中継する:SMTPサーバーは、受け取ったメールを宛先のサーバーへと中継します。その過程で、送信者が正当か、受信者が実在するかが確認されます。ここで重要になるのが、送信者レピュテーションです。これが低いと、受信側のサーバーにメールを拒否され、メール不達になったり、迷惑メールフォルダに振り分けられたりすることがあります。
- 受信者のサーバーがメールを受け取る:メールが受信者のサーバーに届くと、SMTPサーバーの役目は完了です。受信側のサーバーは、迷惑メールフィルターやウイルスチェックなどを行ったうえで、メールを保存します。その後、受信者はIMAPやPOP3を通じて、受信トレイでメールを読めるようになります。
まとめ
SMTPサーバーは、メールを宛先まで確実に届ける役割を担います。とくに多くの顧客へメールを送る企業では、送信元の信頼性を担保しメールを届きやすくするために、有料のSMTPサーバープロバイダーを利用するのが効果的です。
まずは本記事で紹介したサービスを比較し、自社の送信量や目的に合ったメール送信環境を整えていきましょう。
SMTPサーバーに関するよくある質問
SMTPサーバーとは?
SMTPサーバーとは、SMTPというプロトコルに従って送信メールを宛先へ届けるサーバーのことです。
メールの送信にSMTPサーバーは必要?
必要です。すべてのメールはSMTPサーバーを経由して送信されています。
SMTPサーバーの確認方法は?
自分のメールのSMTPサーバーは、メールプロバイダーのアカウント設定やメールサーバー設定から確認できます。SMTPサーバーのアドレスは、通常「smtp.yourdomain.com」のような形式です。
SMTPサーバーは自社で構築できる?
SMTPサーバーを自社で構築することは可能ですが、基盤となるホスティングサービスが必要になるほか、サーバーやソフトウェアなどの専門知識が必要になり、構築の作業負担は大きくなります。また、構築後もセキュリティ対策などを継続する必要があり、運用負担やコストもかかります。




