UPCコードはアメリカとカナダにおける商品流通に欠かせない商品識別コードです。北米市場をターゲットに越境ECを行う場合は、このコードの利用を検討する必要があります。UPCコードは各国のGS1(流通システム開発センター)が管理しており、日本国内からも取得可能です。
本記事ではEC事業者向けに、UPCコードとは何か解説します。さらに、JANコードとの違いや具体的な取得方法、導入の必要性までを詳しく説明します。
UPCコードとは

UPCコード(Universal Product Code)はアメリカとカナダで使用されている商品識別コード(GTIN)です。商品パッケージに記載されているバーコードで、POSシステム(販売時点情報管理システム)で読み取ることで、商品名や金額などのデータを登録できます。小売店での精算処理や業者間の受発注管理に活用されています。
UPCコードは商品ごとに割り当てられます。例えば、全く同じ本が2冊ある場合、それらは同じUPCコードを持つことになります。
UPC-AとUPC-E
現在主に使用されているUPCコードはUPC-AとUPC-Eです。2つは記載される数字の桁数とバーコードの幅が異なります。
標準とされるUPC-Aは12桁の数字が記載されているのに対し、UPC-Aを圧縮したUPC-Eはバーコードの幅が小さく、記載される数字は8桁です。UPC-Eはバーコードの幅が小さいため、お菓子のような面積の小さい商品に適しています。
UPCコードを使用するメリット3つ
1.在庫管理の効率化
商品の詳細を手動で入力する必要がなく、商品の入出荷状況が即座にデータへ反映されるため、リアルタイムで在庫管理できます。
2.注文処理や発送の精度向上
UPCコードをスキャンすることで商品情報や価格を簡単に取得でき、正しい商品をピックできるため、素早く正確な注文処理や発送手続きが行えます。
3.リコールの実施が可能
不良品が発生した場合、北米に出荷した商品を容易に追跡できるため、該当商品の迅速な回収が可能です。
UPCコードの3つの構成要素

UPCコードはバーコードと数字列で構成されており、数字列は3つの要素に分けられます。UPC-Aの12桁の数字列を例として解説します。
1. U.P.C. Company Prefix(UPC用事業者コード)
はじめの6〜9桁の番号はU.P.C. Company Prefix(UPC用事業者コード)です。日本では、GS1事業者コードを取得済みの事業者が、流通システム開発センター(GS1 Japan)を通して申請できます。
U.P.C. Company Prefixの1桁目の数字はNS(ナンバーシステムキャラクタ)と呼ばれ、商品カテゴリに応じて数字が決まっています。標準は「0」で、その他に重量が一定でないものは「2」、薬品類は「3」など0~9の番号が割り振られます。
2. 商品アイテムコード
次の2〜5桁は商品アイテムコードです。事業者コードとの組み合わせで、特定の事業者の特定の商品を表します。
3. チェックデジット
最後の1桁はチェックデジットです。コードの読み取りミスを検出するための数字で、定められた計算式により算出します。
UPCコードと他の商品コードの違い

UPCコードの他にも、商品へ割り振られるコードが複数存在します。UPCコードとの違いを見てみましょう。
JAN
JAN(Japan Article Number)コードは日本で使用されている13桁のバーコードです。最初の2桁の数字は「45」または「49」であるという特徴があります。JANコードはUPCコードと互換性があります。2005年から、JANコードを記載した商品を北米へ輸出する事が可能となりましたが、まだ対応していない業者もいるため、取引の際は事前確認が必要です。
EAN
EAN(Europe Article Number)コードは世界中で使用されているバーコードです。JANコードと同じく、13桁の数字が表示されます。先頭の2桁の数字が国を表しています。JANコードはEANコードのひとつです。
GTIN
GTIN(Global Trade Item Number)は商品識別コードのことで、UPCやJAN、EANの総称です。13桁の識別コードであるJANとEANはGTIN-13、12桁のUPCはGTIN-12として種類が分けられています。国際組織であるGS1が、商品識別コードの国際規格として開発しました。商品やサービスへ異なるコードを割り当て、重複を避けることで、商品を識別します。
SKU
SKU(最小識別単位)も商品を識別するコードですが、小売業者が個別に作成するもので、在庫を管理するために使われます。例えば、ある小売業者が販売するTシャツが白と黒の2色展開で、それぞれサイズがS・M・Lの3つあるとします。この場合、そのTシャツは6SKUとなり、6種類のコードが作成されます。
ASIN
ASINは「Amazon Standard Identification Number」の略で、Amazon固有のコードです。Amazonがプラットフォーム上の数百万の商品を追跡する方法で、Amazonに出品する際に使用します。
UPCコードの必要性

アメリカやカナダの市場で商品を販売する場合、UPCコードが必要となる可能性があります。2005年から、北米でJANコードの受入れが可能となりましたが、すべての企業が対応しているわけではないからです。
オンライン販売マーケットプレイスで商品を販売する場合も、UPCコードが必要な場合があります。例えば、米国版Amazonは基本的にUPCなど商品識別コードが必要です。ハンドメイド品やホワイトラベル製品などUPCコード無しで販売できる商品もいくつか存在しますが、別途UPCコード免除申請が必要です。
自分の店舗やECサイトを通じて消費者へ直接商品を販売する場合は、UPCコードが必要とは限りません。その場合は、独自のバーコードを作成して在庫管理やフルフィルメント業務を効率化するとよいでしょう。Shopifyには、在庫を追跡し整理するための無料のバーコード作成アプリがあります。
UPCコードの取得方法

1. UPC Company Prefixの登録申請を行う
UPCコードを取得するためにはまず、GS1 Japanを通してU.P.C. Company Prefix(UPC事業者コード)の登録申請を行う必要があります。GS1 JapanのU.P.C.に関するお問い合わせから、まずはUPCコード担当者へ連絡しましょう。なお、UPC Company Prefixの手続きや申請料はGS1 Japan公式サイトに明記されておらず、UPCコード担当者へ連絡して確認する必要があります。
2. GS1事業者コードを取得する
U.P.C. Company Prefixを取得するためには、GS1事業者コードを登録する必要があります。UPC担当者からの返事を待つ間に、GS1事業者コードの新規登録手続きページから申請しておきましょう。既にJANコードを利用している場合、GS1事業者コードは取得済みです。
GS1事業者コード登録申請にかかる料金は、コンビニ払い、Pay-easy(ペイジー)、または銀行振り込みで支払えます。銀行振り込みの場合は、振込手数料を申請者が負担します。なお、申請料が税込10万円を超える場合は、銀行振り込みのみが利用可能です。
登録申請料は事業者全体の年間売上高と支払年数(3年払いまたは1年払いを選択)により決まります。初期申請料と登録管理費の合計が登録申請料となります。
支払い後、GS1 Japanが入金を確認してから3営業日以内に、GS1事業者コードがメールと郵送で通知されます。
3. UPC Company Prefixを取得する
手順1で問い合わせた担当者を通じて登録申請を行います。この際、UPCコードを使用する予定の商品アイテム数も合わせて申告しましょう。GS1 USによる審査結果は、7〜14営業日でGS1 Japan経由で通知されます。審査に通ったら登録申請料を支払い、入金を確認後、約7〜14営業日でUPC Company Prefixの登録通知が郵送されます。
4. 商品アイテムコードを設定する
UPC Company Prefixの取得後、販売予定の各商品に個別のアイテムコードを設定します。商品アイテムコードの桁数は、UPC Company Prefixの桁数によって決まります。
- 事業者コードが9桁:2桁(01〜99)
- 事業者コードが8桁:3桁(001〜999)
- 事業者コードが7桁:4桁(0001〜9,999)
- 事業者コードが6桁:5桁(00001〜99,999)
5. チェックデジットを計算する
商品アイテムコードとGS1事業者コードを元に、チェックデジットを計算します。GS1 Japanのチェックデジット自動計算入力フォームを利用すれば簡単に算出できます。
6. 3つの数字を合わせる
取得したUPC Company Prefixと設定したアイテムコード、計算したチェックデジットを組み合わせて、UPCコードが完成します。
まとめ
UPCコードは北米で使われている商品識別コードです。2005年からはJANコードが表記された商品を北米へ輸出することが可能となりましたが、対応していない企業もあるため、商品を販売する場所や取引先でUPCコード表記を求められた場合は、取得する必要があります。
UPCコードを取得するためには、まずGS1 JapanのUPC担当者へ問い合わせ、UPC Company Prefixの登録申請を行います。もしGS1事業者コードをまだ取得していない場合は、先にGS1 JapanのサイトからGS1事業者コードの新規登録を行いましょう。
よくある質問
UPCコードとは何ですか?
UPCコードは北米で使用されている商品識別コードの一種です。どの製造元・販売元による、どの商品なのかを識別します。
UPCコードを取得するにはどうすればよいですか?
はじめにGS1 JapanのUPC担当者へ問い合わせて、UPC Company Prefixの登録申請を行う必要があります。もしまだGS1事業者コードを登録していない場合は、先にそちらを済ませておきます。
北米ではすべての商品にUPCコードがありますか?
すべての商品にUPCコードがあるわけではありません。地域の農家が直接販売する農産物やハンドメイド商品など限定的な範囲で流通している商品には、UPCコードが使われていないことが多いです。
UPCコードを検索するにはどうすればよいですか?
UPCコードはBarcode Lookup(英語)やUPCitemdb(英語)などの専用ウェブサイトで検索できます。UPCコードの12桁の数字を検索窓に入力すると、対応する商品情報が表示されます。
Amazonで販売するにはUPCコードが必要ですか?
Amazonで商品を販売する場合、基本的にUPCコードなどの商品識別コードが必要です。ただし、UPCコードを持たないオリジナル商品やホワイトラベル製品を扱う場合、Amazonに申請して承認を受ければ出品できる場合があります。
UPCコードはどこで見つけられますか?
UPCコードは通常、商品のパッケージやラベル、梱包材に記載されています。バーコードとともに12桁の数字で表示されているのが一般的です。
文:Hisato Zukeran