世界最大のマーケットプレイスであるAmazonは、日本でのユーザー数は約6,724万人、全世界では2億人以上と驚異的な認知度を誇ります。また、アカウント作成や出品方法も比較的簡単で、ECサイトを無料で開設したいスモールビジネスから事業拡大を目指す企業まで、規模に関わらず魅力的な選択肢となっています。
この記事では、Amazonに出品する方法を6つのステップで解説します。
初心者向けAmazonでの出品方法
1. 競合調査や市場調査を行う
Amazonに出品する商品を決定するために市場調査と競合分析を行います。トレンドの商品や競争率が比較的低い分野で優れた利益率を持つ商品を探しましょう。現在の市場の状況を把握し、適切な商品を選定する方法には以下のようなものがあります。
Amazonのランキングをチェックする
Amazonのランキングは商品アイデアを見つけるのに最適です。中でも、Amazon売れ筋ランキングのページで現在売れている商品をチェックしてアイデアを得るとよいでしょう。人気商品のニッチなバージョンを揃えたり、不満点を改善した商品を提供できたりするかを検討しましょう。
また、楽天市場などAmazonの競合他社サイトのランキングをチェックするのも有効です。他社モールで人気の商品がAmazonでまだ販売されていなければ、その商品の取り扱いを検討するとよいでしょう。

キーワード選定ツールを使用する
キーワード選定ツールを使用することで、検索ボリュームによって、消費者が何に関心があるかを判断し、候補商品のリストを絞り込むことができます。
無料で検索ボリュームを調べることができるキーワード選定ツールには、以下のようなものがあります。

Amazonのレビューをチェックする
Amazonの商品レビューを確認して、顧客がブランドや商品の何を気に入り、何に不満を抱いているのかを調査しましょう。競合の商品に共通する問題点があり、もしその問題点を改善した商品を提供できるなら、その商品は競争力のあるものになります。
Amazonでの制限を確認する
販売する商品を決定した後はAmazonの制限対象商品に当てはまらないか確認します。例えば、美術品や監視装置、中古の電子機器などは販売が禁止されている商品です。特定のカテゴリーでは、登録前に出品許可を得る必要があります。アカウントを作成する前に、商品カテゴリーの概要を読みましょう。
2. 販売戦略を決定する
販売する商品や初期投資の金額に応じて、次のようなビジネスモデルでAmazonに出品できます。
- 小売り:最も一般的な出品方法で、仕入れ価格と販売価格の差額で利益を得ます。仕入れ先には卸売業者や倒産品を専門に取り扱うECサイト(超激安.comなど)といったものがあります。また、出品する市場とは異なる市場で商品を安く仕入れ、利益を乗せた価格で販売する小売裁定取引という方法もあります。
- ホワイトラベル:製造やプロダクトデザインの経験がなくても、独自のブランド名やロゴを追加したホワイトラベル商品を販売できます。この場合、質の高い商品を調達して、消費者の心に訴えかけるブランディングをすることが大切です。
- プライベートブランド:プライベートブランドの商品は、小売業者が指定した仕様に基づいて製造業者によって生産されます。小売業者は、商品を自社ブランドとしてプロモーションを行い、販売します。アリババなどのBtoB ECマーケットプレイスでもプライベートブランドの商品を見つけることができます。
- ドロップシッピング:Amazonドロップシッピングでは商品を在庫として保有しません。商品が購入されると、その注文は第三者に送信され、第三者が商品を顧客に配送します。
3. ビジネスプランを作成する
ビジネスの成功に不可欠な要素を詳細に記載した戦略的なビジネスプランを作成します。重要な項目として、次のような事項が挙げられます。
4. Amazon出品用アカウントを作成する
Amazon出品用のアカウントを作成するには、まず、小口と大口の2つの出品プランから自分のビジネスに適したプランを選びます。主な違いは予想される販売量です。

小口出品プランは課金型サービスで、1点につき100円がかかります。基本となる商品リストの登録や注文管理ツールを利用できます。毎月の販売数が49点未満となる場合は、小口出品プランが適しているでしょう。
大口出品プランはサブスクリプション型サービスで、月額4,900円で利用できます。毎月の販売数が49点以上となる場合や、広告や検索結果の上位表示といった特典を利用したい事業者に適しています。さらに大口出品プランは、より高度な出品ツールの利用や海外販売の機能、Amazonのおすすめ商品に表示される資格などが含まれます。
また、小口と大口、両方の出品プランにおいて、カテゴリー別に設定された販売手数料が別途かかります。
プランを選択したら、Amazon出品用アカウントの登録を開始します。以下の情報を準備し、出品用アカウントの登録ページに入力します。
- ビジネス用のEメールアドレスまたは既存のAmazonアカウント
- 銀行口座番号(Amazonから売上金を受け取る口座)
- 有効なクレジットカード
- 行政機関発行の顔写真付きの身分証明書(例:パスポート、運転免許証、など)
- 過去180日以内に発行された取引明細書(例:ガス・電気・水道料金等の請求書)
- 電話番号

Amazon出品用アカウントが承認されると、商品リストを登録して販売を開始するための準備が整います。
5. フルフィルメントサービスのオプションを決定する
出品者には2つのフルフィルメントサービスのオプションが提供されます。1つは自社やサードパーティーによるフルフィルメント、もう1つはAmazonによるフルフィルメントです。
自社やサードパーティーによるフルフィルメント(FBM)
FBM(Fulfillment by Merchant)は、受注、発送、配送、返品、カスタマーサービスといった注文を受けた後の工程を自社で行うこと、またはサードパーティーに委託することを指します。これは、受注生産の商品や納品までに時間を要する商品に適した方法です。
Amazonによるフルフィルメント(FBA)
フルフィルメント by Amazon(FBA)では、商品をAmazonの物流拠点(Amazonフルフィルメントセンター)に送り、配送や返品の管理を委託します。このとき、在庫保管料や販売した商品ごとの配送代行手数料が発生します。在庫管理は出品者が行い、顧客が商品を受け取るまで、在庫の所有権は出品者にあることに注意しましょう。
この方法では、Amazonが顧客からの支払いを処理し、その後出品者に入金します。フルフィルメントをAmazonに依頼すると、Amazonのカスタマーサービスが顧客からの問い合わせ、返品・返金に対応します。
6. 商品登録をする
Amazonで商品をリストに登録する方法は2つあります。1つは、すでにAmazonで販売されている商品を登録する方法で、もう1つは、初めてAmazonに登録される新規商品のためのものです。
既存商品を登録する方法
既存商品を登録する場合、商品に付与されているAmazon標準商品番号(ASIN)を使用します。例として、卸売価格で購入したマグカップの販売を計画していて、すでにAmazonで同様の商品が売られている場合を見てみましょう。
- 既存の商品リストの「商品詳細」ページから「ASIN」をコピーします。
- Amazonセラーセントラルに移動して、カタログをクリックし、「商品を登録」を選択します。表示される検索バーにASINを入力すると商品リストが表示されます。ドロップダウンメニューから、商品の状態を選択します。
- 「この商品を販売する」をクリックして価格を設定し、フルフィルメントオプション(FBMまたはFBA)を選択し、ポップアップの指示に従います。アイテムのSKU(商品の在庫管理番号)のオプションを入力したら、「保存して終了」ボタンをクリックします。商品リストは出品アカウントの「在庫管理」ページで確認できます。

新規商品を登録する方法
Amazonで今まで販売されたことがない商品の場合は以下の手順で登録します。
- セラーセントラルのダッシュボードから、「商品を登録」をクリックし、「Amazonで販売されていない商品を追加します」を選択します。
- リストから商品カテゴリーを選択し、商品に関するすべての関連情報(商品タイトル、価格、詳細、画像、フルフィルメントオプション)を入力します。
- 入力が完了したら、「保存して終了」をクリックすると、商品が出品許可の確認へと提出されます。出品が許可されると、Amazonは商品に「ASIN」を割り当て、販売商品リストに掲載します。その後は「在庫管理」ページから商品リストにアクセスできます。
商品詳細ページが公開されると、Amazonで商品を検索して見つけることができるようになります。
Amazonで成功する商品リストの作成方法
商品リストの商品詳細ページは、Amazonで販売が行われる場所です。このページに入力する情報は、顧客が自分のニーズに合うものかを判断するのに役立ちます。商品ページの参考例として、魔法びんブランド「Thermos(サーモス)」のページを見てみましょう。
1. ターゲットを絞った商品タイトルを書く
ユーザーが見たときに、自分が探している商品であることが伝わる商品タイトルを書きましょう。また、検索結果の上位に表示されるようSEOを意識したキーワードを入れることが望ましいです。
商品タイトルの制限は200文字ですが、全角30〜40文字(半角60〜80文字)程度に収めることがAmazonセラーセントラルのガイドラインで推奨されています。加えて、Amazonのトラフィックの大多数がスマホからの利用なので、タイトルを簡潔なものにしてスマホでも読みやすくしましょう。
商品タイトルに記載されるすべての単語は検索可能なので、重要な情報を含めるようにしましょう。例えば、Thermosは「ブランド名:サーモス」、「商品ライン:水筒」、「種類:真空断熱ケータイマグ」、「特徴:キャリーループ付き」、「容器のサイズ:750ml」、「色:イエロー」のように記載しています。

2. 明瞭な商品画像をアップロードする
メインの写真は、商品が何であるかを明確に示すものでなくてはなりません。さらに、他の角度からのものや使用イメージが伝わる画像を追加しましょう。
より詳細な情報を提供するために動画を追加することもできます。また、高画質な画像をアップロードし、購入を検討している人が画像をズームインしたときに商品の細部を確認できるようにしましょう。

3. わかりやすい商品説明を書く
商品説明には、商品の仕様や利点を書きましょう。Thermosは、箇条書きで重要な情報を記載しているほか、写真やイラストでアピールポイントをわかりやすく伝えています。

4. 商品のバリエーションを取り入れる
バリエーションを使用すると、同じ商品の別のサイズや色、スタイルを簡単に表示することができます。商品の各バージョンには独自のASINと詳細ページがありますが、バリエーションを使用すると顧客が商品を素早く切り替えて見比べることができます。

Amazonの出品コスト
Amazonに出品する際には、Amazonチャネルの投資収益率(ROI)に影響を与える可能性がある手数料を考慮しましょう。これらの手数料は頻繁に発生するため、Amazonに出店すべきか検討する際も重要な指針となります。次に一般的な手数料を一部ご紹介します。
- 販売手数料:Amazonでの販売には、手数料が発生します。平均的な販売手数料は15%で、カテゴリーによって5%〜45%と大きく異なります。
- カテゴリー成約料:メディア商品の販売については、小口か大口かを問わず、商品ごとにカテゴリー成約料(1点につき80~140円)が発生します。
- FBA配送代行手数料:FBAを利用する場合、ピッキング、梱包、配送、カスタマーサービスを含む手数料が発生します。数百円からスタートし、費用は商品のカテゴリー、サイズ、重量によって異なります。
- その他の費用:フルフィルメントセンターに保管されている在庫に対する在庫保管手数料、保管期間が365日を超えた在庫に対する長期在庫保管手数料などがあります。また、Amazonにて返品、廃棄、または清算する未販売の在庫に対しても手数料が発生する場合があります。
手数料については、料金プラン、配送手数料、料金シミュレーターで詳しく調べることができます。
Amazonで出品する際のヒント
Amazonに出品すると、自社商品がより多くの消費者の目に触れるチャンスを得ることができ、ブランド認知度を向上させるのに役立ちます。より効率的に認知度を高めるコツを紹介します。
商品レビューを促す
商品購入のお礼メールを送って、レビューを書いてもらう確率を上げましょう。商品が競合のものよりも高い価格であっても、よい評価のレビューは購入の決定要因となることがあるため、できるだけ多く集めるようにします。
Amazonの出品者は、特定の注文に関するフォローアップメールを自動で購入者に送信することができます。ただし、詳細なガイドラインの動画にもある通り、以下のことはできません。
- マーケティングやプロモーションとなるような内容を含むメールを送信すること。
- Amazon以外のウェブサイトのリンクを記載すること。
- 高評価のレビューをリクエストしたり、インセンティブを付与したりすること。
顧客に肯定的なフィードバックを求めることはできませんが、レビューを残すようにお願いするメールを送ることは可能です。
メールマーケティングの効果的なアプローチは数多くありますが、メールを送信するタイミングは、「注文確認または配送段階」と「顧客が購入した商品を受け取った後」の2通までに抑えるようにしましょう。
スポンサープロダクト広告を出稿する
Amazonには、商品をAmazonの顧客にプロモーションするための強力な広告プラットフォームがあります。Amazonのスポンサープロダクト広告は、クリック課金型広告(PPC広告)です。パソコンでの広告は、関連する用語の検索結果の上、横、下、商品詳細ページに表示されます。

AmazonでPPC広告を出稿する際は、以下のような手順で進めると良いでしょう。
- 自動ターゲティングから始める:Amazonの検索アルゴリズムにより、潜在的なキーワードを含むすべての商品リストが自動的に提案されます。最初はすべてのキーワードに同じ入札条件を指定し、さまざまなキーワードのパフォーマンスデータを取得したら、最も効果的なキーワードにターゲットを絞りましょう。
- 自動ターゲティングキャンペーンを評価する:少なくとも数週間分のデータを得ることができたら、自動ターゲティングキャンペーンを評価して、どのキーワードが最も効果的だったかを判断します。これを手動キャンペーンに移行し、最も関連性の高いキーワードのみに集中します。手動キャンペーンでは、キーワードごとに入札を調整することができます。
- キーワードと入札の手動キャンペーンを継続的に改善する:異なる入札額だとさまざまな配置や結果をもたらす可能性があるため、成果のある戦略を見つけるまで繰り返しキャンペーンを行います。
- インサイトを活用して商品詳細ページを最適化する:PPC戦略を洗練させるにつれて、どのキーワードが商品と関連するかの感覚が得られるようになります。それらのキーワードを商品詳細ページに記載することで、広告費を支払わずにより多くのオーガニックトラフィックを獲得できるようになります。
プロモーションを活用する
プロモーションを活用することで、販売を促進してブランドの認知度を高めることができます。Amazonプラットフォームで人気のあるプロモーションの一つは、「Amazonタイムセール」に掲載される数量限定タイムセールです。
タイムセールは次のように役立ちます。
- Amazonプライムデーや休暇などのイベント時に商品が発見される可能性が高まる
- 販売数が増えると同時にレビュー数も増える可能性がある
- 販売数が増えると検索エンジンの表示順位も上がるので、プロモーション終了後のコンバージョンを促進できる可能性がある
- タイムセールで新商品の販売を試すことで、新規顧客を獲得できる可能性がある
タイムセールは、セラーセントラルの「推奨情報を表示する」に表示されます。対象となるカテゴリーは、健康、セルフケア、ホーム&キッチン、家庭用電化製品、ファッション、食料品などさまざまです。
外部トラフィックを促進する
外部のマーケティングチャネルを活用し、Amazonの商品リストへのトラフィックを促進しましょう。自社サイトへのトラフィックを促すのと同様に、広告やSNSマーケティングを活用できます。
ブロガーやインフルエンサーとコラボレーションする場合、AmazonアソシエイトやAmazonインフルエンサー、Shopify Collabsなどのインフルエンサーとつながるための外部プラットフォームも通じて、リーチを拡大することができます。
さらに、割引コードを作成してSNSなどの外部チャネルでシェアし、Amazonでの購入を促すこともできます。
価格設定を適切に行う
最適な価格戦略を見出すことは、競合他社も多く出品するAmazonでは特に重要です。以下のような項目を考慮し適切な価格設定をしましょう。
Amazonマーケットプレイス公正価格ポリシーに準拠する
Amazonストアにおける適正な価格設定に関するポリシーに明記されているように、顧客の信頼を損なうような価格を設定することはできません。Amazonは、直近の価格よりも大幅に高い価格を設定すること、個別に販売する単価よりも高い価格でセット商品を販売すること、過剰な配送手数料を追加することなど、価格設定において警告を発した実例を紹介しています。アカウントが一時停止とならないように、商品の価格を公正に設定しましょう。
価格設定を自動化する
Amazonの価格自動設定ツールを使用すると、自動的に価格を決定することができます。自動設定ツールは無料で利用することができ、価格設定のパラメータを設定することで競争力のある価格に自動的に調整するよう指定できます。
まとめ
Amazonは、多くの日本人にとってオンライン通販の定番サイトであり、世界規模のECモールです。Shopifyのストアオーナーなど、すでに自社ECサイトを運営している企業は強敵のように感じるかもしれませんが、販売チャネルのひとつと捉えて適切なアプローチで活用すれば、マルチチャネル販売で利益を上げることができます。
よくある質問
Amazonへの出品は無料でできますか?
Amazonへの出品は、無料ではできません。カテゴリーによって5%〜45%の販売手数料が発生します。また商品カテゴリーによっては、カテゴリー成約料が別途発生します。
Amazonに出品するための初期費用はどのくらいですか?
Amazonに出品するための初期費用は、小口出品プランの場合アカウント設定は無料、大口出品プランへの登録は月額4,900円かかります。
自宅からでもAmazonに出品できますか?
自宅からでもAmazonに出品できます。個人でも自宅を拠点にしたオンラインビジネスを構築することができます。
Amazonで販売するのに適した商品は何ですか?
- おもちゃ
- ホーム&キッチン
- ビューティー
- 本
- ゲーム
- 家電&カメラ
文:Kyoko Kitamura