ECサイトの売上を伸ばすには、集客や購入導線の改善だけでなく、決済まで進んだ顧客が問題なく支払いを完了できる環境を整えることが重要です。購入意思のある顧客が決済まで進んでも、支払いがスムーズに完了しなければ、売上機会の損失につながります。
そこで注目したい指標が「決済承認率」です。決済がどの程度正常に行われているかを把握でき、機会損失の規模や売上アップに向けた改善点などを特定しやすくなります。
本記事では、決済承認率の意味や低下する原因、向上させる7つの方法を解説します。Shopify(ショッピファイ)を活用した改善策も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

決済承認率とは
決済承認率(オーソリ承認率)とは、決済が試行された取引のうち、カード発行会社などの審査を通過し、正常に承認された取引の割合を示す指標です。
クレジットカード決済では、顧客が購入手続きを行うと、入力されたカード情報や利用可能額、不正利用のリスクなどをもとに、カード発行会社が取引を承認するか判断します。承認されれば取引を進められますが、承認されなければ、顧客に購入意思があっても支払いを完了できません。
決済承認率は、次の計算式で算出します。
- 決済承認率(%)=承認された取引数÷決済が試行された取引数×100
たとえば、1,000件の決済が試行され、そのうち960件が承認された場合、決済承認率は96%です。
決済承認率と購入率の違い
決済承認率と購入率は、計測する対象と範囲が異なります。購入率とは、ECサイトを訪問したユーザーのうち、実際に商品を購入した人の割合です。一方、決済承認率は、購入手続きに進んで決済を試行した取引のうち、正常に承認された取引の割合を示します。
たとえば、ECサイトへの訪問者が1,000人いて、そのうち100人が決済を試行し、90人の決済が承認された場合、購入率は9%、決済承認率は90%です。
- 購入率:90人÷1,000人×100=9%
- 決済承認率:90人÷100人×100=90%
購入率が低い場合は、商品ページや価格、購入までの導線などに課題がある可能性があります。一方、決済承認率が低い場合は、カード情報の入力ミス、不正検知システムの発動、システムや端末のトラブルなどが原因で決済エラーが発生した可能性があります。両者を分けて分析することで、顧客が購入に至らない原因を特定しやすくなります。

決済承認率が重要な理由
売上機会の損失を防げる
決済承認率を高めると、決済拒否による売上機会の損失を抑えられます。 株式会社YTGATE(ワイティゲート)が実施した調査では、自社EC事業者200社の決済承認率が平均85.4%、中央値88.0%である一方で、承認率が85%未満の事業者は全体の36.5%を占めていました。決済承認率が84%と88%のECサイトで、ともに月間取引件数が1万件、平均注文額(AOV)が5,000円の場合、毎月の売上に200万円の差が生じます。
広告やSEOによって訪問者を増やし、商品ページや購入導線を改善しても、決済が承認されなければ売上にはつながりません。決済承認率を高めることで、新たな集客コストをかけずに、すでに獲得している購入機会を売上につなげられる可能性があります。
顧客体験の向上につながる
「購入したいのに支払えない」という状況を減らすことは、顧客満足度を高め、ECサイトへの信頼を守るうえで重要です。決済が拒否されると、顧客はカード情報を入力し直したり、別のカードや決済方法を試したりしなければなりません。原因が分からなければ、購入を諦めてほかのECサイトへ移ってしまう可能性もあります。
顧客が決済拒否の原因を判断することは難しいため、カード会社や決済サービス側に原因があっても、「このサイトではスムーズに購入できない」と受け取られるおそれがあります。正当な取引が円滑に承認される環境を整えることは、顧客の負担や離脱を減らし、顧客体験の向上につながります。
問い合わせ対応の負担を軽減できる
決済エラーを減らせば、顧客からの問い合わせだけでなく、原因の調査やカスタマーサポートにかかる社内の負担も軽減できます。決済が拒否されると、「カードが使えない」「エラーの原因が分からない」といった顧客からの問い合わせに対応しなければなりません。担当者は取引状況や拒否理由を確認し、カード情報の再入力や別の決済方法を案内しなければならないほか、原因によっては、決済サービス事業者への確認が必要になることもあります。
決済情報の入力環境や不正利用対策、システム設定などを見直して決済承認率を高めることで、問い合わせ件数や対応時間の削減が期待できます。その結果、担当者は売上アップにつながる業務に時間を充てやすくなります。

決済承認率が低下する原因
カードや顧客情報に問題がある
購入直前まで進んだ顧客でも、わずかな入力ミスやカードの利用状況によって決済できないことがあります。主な原因は、カードの有効期限切れ、利用可能額の不足、利用停止などです。カード番号や有効期限、セキュリティコード、請求先住所などの入力ミスでも、決済が承認されない場合があります。
特にモバイル決済では、画面の見づらさや入力フォームの使いにくさが、入力ミスにつながることもあります。
カード会社が取引を拒否している
カードが問題なく使える状態でも、カード発行会社の判断によって決済が拒否される場合があります。たとえば、高額取引や短時間での連続決済、海外からの利用、通常とは異なる地域や端末からのアクセスなどは、不正利用の可能性があると判定されることがあります。
審査基準や不正利用の判定方法はカード発行会社によって異なるため、同じ顧客や購入条件でも、使用するカードによって承認結果が異なる場合があります。
不正利用対策が適切に設定されていない
EC事業者側の不正利用対策が、決済承認率を下げる原因になる場合もあります。判定条件が厳しすぎると、正当な取引まで拒否する「誤検知」が発生するためです。一方で、対策が不十分な場合も、不正取引やチャージバックの増加によって加盟店のリスク評価に影響し、審査が厳しくなる可能性があります。
また、EMV 3-Dセキュア(取引情報から不正利用のリスクを判定し、必要に応じて本人認証を行う仕組み)による本人認証に失敗した場合や、顧客が追加認証を途中で中断した場合も、決済を完了できません。
システムや通信環境に問題がある
顧客とカードのどちらにも問題がないのに決済できない場合は、システムや通信環境に原因があるかもしれません。具体的には、決済サービスとの接続エラー、処理のタイムアウト、システム障害、ソフトウェアの不具合などです。顧客の通信環境が不安定な場合も、処理が途中で中断される可能性があります。
こうした技術的なエラーは、カード発行会社によるネットワーク拒否とは異なります。ただし、決済サービスや分析ツールによっては承認されなかった決済として集計されることもあり、決済承認率を押し下げる要因になります。

決済承認率を向上させる7つの方法
- 決済データと拒否理由を分析する
- 正確な決済情報を送信できる環境を整える
- 不正利用対策と3Dセキュアの設定を最適化する
- 複数の決済手段を用意する
- 決済画面とシステム環境を改善する
- 決済の再試行やカード情報の更新に対応する
- 決済サービスの提供元と連携して改善を続ける
1. 決済データと拒否理由を分析する
決済承認率を改善する第一歩は、どのような取引が、なぜ拒否されているのかを把握することです。承認率の推移や拒否理由に加え、カードブランド、決済金額、国や地域、利用端末、時間帯などに分けて分析します。特定の条件で拒否が増えていないかを調べることで、優先して取り組むべき課題が見えてきます。
全体の承認率だけでなく、条件ごとの数値を継続的に比較すれば、改善施策の効果も判断しやすくなります。
2. 正確な決済情報を送信できる環境を整える
カード発行会社へ正確な情報を送信できれば、入力ミスや情報不足による決済拒否を減らせます。カード番号、有効期限、セキュリティコード、請求先情報などの入力欄を分かりやすくし、誤りがある場合はその場で修正できるようにします。また、入力形式に誤りがあったり、必須項目が未入力だったりした場合にエラーメッセージを表示することで、入力ミスの防止につながります。
承認に必要な情報は確実に取得しながら、不要な入力項目を減らし、顧客が迷わず操作できる設計にすることが重要です。
3. 不正利用対策と3Dセキュアの設定を最適化する
不正利用を防ぎながら正当な取引を通すには、不正検知のルールと3Dセキュアの運用を最適化する必要があります。高額注文や海外取引を一律に拒否するのではなく、金額、地域、端末、購入履歴など複数の情報からリスクを判定できるよう設定を見直すことが重要です。
EMV 3Dセキュアの運用においても、すべての取引に一律で認証を行うのではなく、AI不正検知サービスを導入してリスクを判定し、高リスク取引には3Dセキュア認証を行う方法も有効です。また、初回のカード番号登録時に3Dセキュア認証を行い、その後は不正利用のリスクに応じて再認証を求める運用も、安全性と決済のしやすさを両立した購買体験につながります。
4. 複数の決済手段を用意する
カード決済が拒否された場合でも、別の支払い方法を選択できれば、購入完了につながる可能性があります。デジタルウォレット、銀行振込、コンビニ決済、後払い決済など、顧客層に合った選択肢を用意しましょう。複数の決済手段を提供してもカード決済自体の承認率は変わりませんが、決済全体の成功率を高め、売上機会の損失を抑えられます。
自社の決済データや顧客の居住地域、注文金額などを確認し、利用ニーズの高い決済手段を優先的に導入することが重要です。
5. 決済画面とシステム環境を改善する
使いやすい決済画面と安定したシステム環境を整えることで、入力ミスや処理の中断を防ぎやすくなります。特にスマートフォンでは、入力欄やボタンの見やすさ、表示速度、操作のしやすさを確認しましょう。決済システムやソフトウェアを最新の状態に保ち、接続エラーや処理の遅延が発生していないかを継続的に監視することも重要です。
実際の端末やブラウザを使って定期的にテストし、特定の利用環境で決済失敗が増えていないかを確認しましょう。
6. 決済の再試行やカード情報の更新に対応する
一時的な理由で拒否された決済は、時間を空けて再試行することで承認される場合があります。特に継続課金では、適切なタイミングでの再試行に加え、カード情報の自動更新機能も有効です。カードの有効期限切れや再発行があっても、最新情報が反映されれば決済エラーを防ぎやすくなります。
ただし、カードの利用停止による拒否など、再試行では解決できないケースもあります。拒否理由に応じて別のカードや決済方法を顧客に案内することも重要です。
7. 決済サービスの提供元と連携して改善を続ける
自社だけで拒否の原因を特定できない場合は、利用している決済サービスのサポート窓口に相談しましょう。相談先には、カード会社などとの契約やシステム接続を仲介する決済代行会社や、決済処理や取引管理の基盤を提供する決済プラットフォーム事業者などがあります。
サービスによっては、拒否理由やカード発行会社別の取引傾向など、自社だけでは把握しにくい情報を確認できる場合があります。必要に応じて、自社の事業内容や不正利用対策の実施状況を共有することも、原因の特定に役立ちます。

Shopifyで決済承認率を改善する方法
- Shopifyペイメントを活用する:Shopifyペイメントは、決済機能がShopifyに統合されているため、注文や支払いを管理画面から一元管理できます。外部システムとの複雑な連携を減らし、安定した決済環境を構築しやすくなります。また、承認率最適化機能やリスクに応じた3Dセキュアも利用でき、決済承認率の向上に役立ちます。
- 不正利用対策を最適化する:Shopifyは、取引ごとに高度な不正解析を自動で実行します。AVS(住所確認システム)やCVV(セキュリティコード)の認証設定を厳しくしすぎると、正当な取引まで拒否される可能性があるため、解析結果を確認しながら設定を見直しましょう。
- 顧客に合った決済方法を提供する:Shopifyでは、Shop Pay(ショップペイ)、Apple Pay(アップルペイ)、Google Pay(グーグルペイ)などを利用できます。顧客が使いやすい決済方法を用意することで、カード決済が通らない場合の離脱を防ぎ、決済全体の成功率を高められます。
- ストア分析とShopifyサポートを活用する:Shopify管理画面の「ストア分析」から「レポート」を開くと、不正注文に関する指標や高リスク注文などの傾向を確認できます。原因を特定できない場合は、Shopifyサポートに相談しながら改善を進めましょう。
まとめ
決済承認率を向上させるには、決済データや拒否理由を分析したうえで、決済情報の入力環境、不正利用対策、決済手段、システム環境などを見直すことが重要です。決済セキュリティを確保しつつ、正当な取引の誤検知を抑え、安全性と決済のしやすさを両立させましょう。
Shopifyでは、Shopifyペイメントや不正解析、多様な決済方法、ストア分析などを活用できます。決済承認率を継続的に測定、検証し、売上機会の損失を防ぎながら、顧客が安心して支払いを完了できる環境を整えましょう。
決済承認率に関するよくある質問
決済承認率とは?
決済承認率とは、決済が試行された取引のうち、カード発行会社などの審査を通過し、正常に承認された取引の割合を示す指標です。
決済承認率と購入率の違いは?
計測する対象と範囲が異なります。購入率は、ECサイトを訪問したユーザーのうち、実際に商品を購入した人の割合です。一方、決済承認率は、購入手続きに進んで決済を試行した取引のうち、正常に承認された取引の割合を示します。
決済承認率を高める主なメリットは?
- 売上機会の損失を防げる
- 顧客体験の向上につながる
- 問い合わせ対応の負担を軽減できる
決済手段を増やすと決済承認率は向上する?
決済手段を増やしても、クレジットカード決済自体の承認率が上がるわけではありません。ただし、カード決済が拒否された顧客が別の支払い方法を選べるため、決済全体の成功率を高め、売上機会の損失を抑える効果が期待できます。




