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消費者に郵便物を直接送るDM(ダイレクトメール)は、いわばアナログなマーケティング手法です。しかし、現在も多くのマーケターに活用されています。Franklin Madison Directが発表した2026年版『Direct Mail Marketing Benchmark Report』によると、マーケターの95%が、高いエンゲージメント率と投資対効果(ROI)を理由に、今後12カ月間、ダイレクトメールへの投資を拡大または維持する予定だと回答しています。
このガイドでは、DMマーケティングの概要と、独自のキャンペーンを立ち上げる方法を解説します。さらに、ローイングマシンメーカーErgattaの創業者、トム・オーレット氏による、DMマーケティングを成功させるための実践的なコツもご紹介します。
DMマーケティングとは?
DM(ダイレクトメール)マーケティングとは、既存顧客や見込み客に、紙の販促物などを郵送するマーケティング手法です。主な販促物には、以下のようなものがあります。
- はがき
- パンフレット
- 手紙
- チラシ
- ニュースレター
- カタログ
- クーポン入りの封筒
- 小包
ダイレクトメールは効果的なマーケティング手法?
ダイレクトメールは、多くの企業にとって効果的なマーケティング手法です。Lobの2025年版『State of Direct Mail』レポートによると、経営幹部の79%が、ダイレクトメールを最も成果の高いマーケティングチャネルと評価しています。
ダイレクトメールが効果的とされる主な理由を見ていきましょう。
高いエンゲージメント率
Franklin Madison Directのレポートによると、消費者の79%が、受け取った郵便物を読んだり、内容を確認したりしています。一方、Litmusの2025年版『State of Email』レポートでは、マーケティングメールの開封率として最も一般的なのは20〜30%とされています。
記憶に残りやすい
RR Donnelleyの調査によると、消費者の60%が、購入時にダイレクトメールの内容が記憶に残っていたと回答しています。デジタル広告について同じ回答をした消費者は、44%にとどまりました。
強い感情的な反応を引き出す
2019年に行われたある研究では、ニューロマーケティングの手法を用いて、広告に接した消費者の視覚的な注意や感情反応、脳活動を測定しました。その結果、印刷物はデジタル広告よりも強い感情を呼び起こし、記憶に残りやすいことがわかりました。また、印刷物で紹介された商品やサービスは、より魅力的で価値が高いと受け取られる傾向も示されました。
ダイレクトメールはコストがかかる?
ダイレクトメールキャンペーンのコストは、いくつかの要素によって変わります。
- メーリングリスト。DMを送る相手の住所情報を準備するための費用です。
- 物理的な媒体。紙、インク、切手、封筒といった資材の費用です。
- デザイン・文章制作。DMのデザインや文章の作成を、デザイナーやコピーライターに依頼するための費用です。
- 郵送料。郵便物をターゲット層に届けるための費用です。
日本郵便のウェブサイトには、大量の郵便物を発送する事業者向けに、通数や発送方法に応じた割引料金を確認できるページがあります。また、国内のDM発送代行会社には、印刷や宛名印字、発送などを含む費用のオンライン見積もりができるサービスもあります。
たとえば、プリントパックの「DMまるごとパック」では、はがきDMの印刷から宛名印字、発送までをまとめて依頼でき、仕様や部数、納期に応じた費用をオンライン見積もりで確認できます。
また、ダイレクトメールサービスを利用して、メーリングリストの作成、DMのデザインや文章制作、印刷、発送などを手伝ってもらうこともできます。時間の節約にはなりますが、その分キャンペーンの費用は高くなります。
これらのコストを合わせると、ダイレクトメールは他の多くのマーケティング手法よりも高くつきます。たとえばFacebook広告では、広告を6,000回表示する費用は約6,000~1万8,000円が目安です。
ローイングブランドErgattaの創業者トム・オーレット氏は、「ダイレクトメールを使うのは、消費者の購買意欲が高まる時期に、十分な予算があり、新鮮で説得力のある明確なメッセージを発信したい場合に限られます」と、語っています。
ダイレクトメールを活用すべきタイミング
ダイレクトメール広告はデジタル広告よりも費用がかかるため、あらゆるマーケティング施策に適しているわけではありません。
オーレット氏は、ダイレクトメールの活用に適したケースとして、次の3つを挙げています。
商品の見た目に魅力がある
ダイレクトメールの大きな強みのひとつは、画面をスクロールする途中で目に入るデジタル広告よりも印象に残る形で、商品の魅力を伝えられることです。
「当社の商品は、見た目に大きな魅力があります。とても美しい商品なので、デザインの観点からも、ダイレクトメールと相性がよいと考えました」と、オーレット氏は言います。
Ergattaのローイングマシンは、チェリー材とオーク材を使用し、1台ずつ手作業で仕上げられた米国製です。ダイレクトメールなら、スマートフォンの画面よりも大きな紙面で、商品の美しいデザインや仕上がりを見込み客に伝えられます。
マーケティング施策にオフラインの接点を加えたい
ダイレクトメールの特徴は、オフラインのマーケティングチャネルでありながら、ある程度送付先を絞り込めることです。たとえば看板広告では、設置場所による絞り込みはできても、それ以外の条件でターゲティングすることはできません。この特性から、Ergattaはダイレクトメールを既存のマーケティング施策を補う手段として活用しています。
オーレット氏は次のように説明します。「Ergattaの商品は高額で、購入までにじっくり検討されるため、顧客との接点をいくつも設ける必要があります。そのため、新たなチャネルを取り入れたいと考えました」
「デジタル広告だけに頼らないようにしたいという狙いもありました。ダイレクトメールはデジタル広告よりも記憶に残りやすく、差別化しやすいうえ、まだ飽和していない媒体です。競合各社はGoogleでローイングマシン関連のキーワードに入札し、同じような層にFacebook広告を配信しています」
「たとえば、主にオンライン上で私たちのブランドに特に強い関心を示し、積極的に反応した2万5,000世帯に絞って送ることができます」
割引によって購入を促したい
Ergattaでは、すでにブランドとの接点があり、購買意欲の高い見込み客に魅力的なオファーを届ける目的で、ダイレクトメールを活用しています。そのため、同社のDMキャンペーンは、購買意欲が高まる時期に実施され、特定のプロモーションと連動しています。
「たとえば、『あのブランドを覚えていますか?詳しい情報をお届けします』と伝えるのではなく、『気になっていたあのブランドが、いまなら30%オフです』と訴求するイメージです」とオーレット氏は語ります。
このアプローチの有効性は、データからもうかがえます。Franklin Madisonの2026年版レポートによると、消費者の80%が、郵便物に好印象を持つ最大の理由として、特典や割引を挙げています。
DMキャンペーンを作る5つのステップ
次のステップを参考に、DMキャンペーンを成功させましょう。
1. ターゲットを絞ったメーリングリストを作る
まず、キャンペーンでどのような層にアプローチするかを明確にしましょう。たとえば、既存顧客に再び関心を持ってもらうためにDMを送る場合は、すでに保有している住所を利用できます。ただし、その住所をマーケティング目的で利用できるか、あらかじめ確認する必要があります。
見込み客にDMを送る方法としては、法人向けのリスト提供サービスを利用したり、地域を指定して宛名なしで配布したりする方法があります。外部の個人情報を利用する場合は、情報の取得経緯や利用条件を確認し、適切に取り扱いましょう。また、自社サイトなどで接点を持った見込み客に、DMを送る方法もあります。
米国の場合、たとえばErgattaは、DMサービスのPebblePostを利用し、季節限定の割引キャンペーンを実施する際に、購買意欲の高い見込み客へアプローチしています。対象となるのは、商品について詳しい情報を得るために、同社サイトのリード獲得フォームからメールアドレスを登録した人です。PebblePostがプライバシーに配慮した方法でメールアドレスと住所を照合し、Ergattaがその住所にDMを送ります。
2. オファーとCTAを決める
次に、DMを送る見込み客や顧客層に、どのようなオファーを提示するかを決めます。割引にはさまざまな方法があります。季節限定のキャンペーンでは、期間限定の割引を設けることで、早めの購入を促せます。
オーレット氏は、オファーには新鮮さと説得力が必要だと語っています。「単に『当社のローイングマシンは美しい』と伝えるのではなく、『ホリデーセールで500ドル引き』と訴求するのです」
特に価値の高い顧客層にアプローチしたい場合は、期間限定の特典を用意し、ロイヤルティプログラムへの参加を促すのもよいでしょう。
そして、顧客がオファーを利用できるよう、明確なCTA(コールトゥアクション)を記載します。購入ページやプログラムの登録ページにアクセスできるQRコードを掲載する方法もあります。
3. DMをデザインする
DMは視覚に訴える媒体です。ほかの郵便物に埋もれないよう、ひと目で関心を引くデザインにしましょう。
オーレット氏は、「ビジュアルは重要です。美しいだけでなく、際立っていなければなりません」と言います。質の高い写真や画像があるなら、積極的に活用しましょう。
「MetaやGoogleなどのデジタルチャネルと比べて、ダイレクトメールには、より大きな視覚的インパクトを与えられる可能性があります。デジタル広告は目立つ場所に表示されたとしても、次々と目に入ってくるため、ほかの広告に埋もれてしまいます」
Ergattaのカードには、高解像度の躍動感ある写真が使われています。中央にはロゴが大きく配置され、ひと目でErgattaのDMだとわかるデザインになっています。
「商品が美しく映り、見覚えのある顔が目を引くため、ほかの広告に埋もれません」とオーレット氏は語ります。
4. 発送プロセスを効率化する
キャンペーンの規模が大きい場合は、印刷や宛名印字、発送をまとめて依頼できるDM発送代行会社の利用を検討しましょう。
自社で発送する場合も、郵便物を事前に仕分けることで、発送作業を効率化し、郵送料を抑えられることがあります。日本郵便では、一定の条件を満たす大量の広告郵便物や、郵便番号ごとに仕分けた郵便物に割引料金が適用されます。
たとえば広告郵便物は、同じ形状・重量の郵便物を一度に2,000通以上差し出すことなどが条件です。事前に郵便局の承認を受け、郵便番号ごとに仕分ける必要があります。利用条件や割引率は発送方法や通数によって異なるため、詳しくは日本郵便やDM発送代行会社に確認してください。
5. キャンペーンの効果を測定する
コンバージョン数と顧客獲得単価(CPA)を追跡し、キャンペーンの効果を測定しましょう。
Ergattaでは、購入時に入力された配送先住所とDMの送付先住所を照合し、コンバージョンを追跡しています。そのデータとキャンペーンにかけた費用をもとに、DMを受け取って購入した顧客のCPAを算出できます。
さらに、DMによって生まれたコンバージョンの増加分である「インクリメンタリティ(増分効果)」の測定にも取り組んでいます。測定方法のひとつは、DMを送らなかった顧客グループと、送ったグループの結果を比較することです。
「インクリメンタリティの測定は難しく、完璧な方法があるわけではありません。DMを送らなかったとしても、受け取った人たちは購入していたのかもしれません。その影響を切り分けることが最も難しいのです」とオーレット氏は説明します。
測定方法のひとつが、ホールドアウトグループを設けることです。これは、キャンペーンの対象から意図的に外した顧客グループを指します。PebblePostなどの一部のDMサービスでは、このグループとDMを送ったグループの結果を比較し、キャンペーンによる増分効果を測定しています。
このほか、QRコード、キャンペーン専用の短縮リンク、問い合わせ用の専用メールアドレスをDMに掲載する方法もあります。これらを利用すれば、DMに対する顧客の反応を直接追跡できます。
DMメールキャンペーンを成功させる3つのコツ
ダイレクトメールキャンペーンを成功させるための、専門家による3つのヒントをご紹介します。
1. デジタルチャネルでテストする
DMは制作や発送に費用がかかるため、掲載するメッセージやクリエイティブは、事前に効果を確かめておくことが重要です。Ergattaでは、デジタルマーケティングチャネルでテストを行い、成果の高い組み合わせを見極めています。
「まずはデジタルチャネルで、どのクリエイティブ、メッセージ、オーディエンスの組み合わせが効果的かを確認します。そのうえで、DMという新たな媒体に展開するのです」とオーレット氏は言います。
何をいつテストするかを整理するために、マーケティングプランを作成するのがおすすめです。Shopifyのマーケティングプラン用テンプレートを活用してみてください 。
2. 購買意欲の高い見込み客に絞る
ダイレクトメールは、ブランド認知の向上を目的とするのではなく、マーケティングファネルの下層にいる見込み客の購入を後押しする手段として活用しましょう。
「幅広い層に商品やブランドを知ってもらうためのチャネルではありません。すでに購買意欲が高まっている見込み客に対象を絞って活用し、そこから徐々に広げていくのが効果的です。新規顧客の開拓やファネル上層の施策に使うには、費用がかかりすぎます」とオーレット氏は言います。
3. シンプルにまとめる
DMキャンペーンを成功させるために、凝ったパンフレットを作る必要はありません。
「DMは、CPM(1,000回表示あたりのコスト)で見ると非常に費用のかかるチャネルです。パンフレットや大判の郵便物はさらに高額になりますが、それに見合う効果があるとは限りません」とオーレット氏は言います。
デザインもメッセージも、シンプルにまとめましょう。
「ブランドや商品について多くのことを一度に伝えようとするのではなく、思わずカードを手に取りたくなるような美しい商品写真を見せ、ホリデープロモーションなどの短く印象的なメッセージに絞りましょう」とオーレット氏はアドバイスします。
DMマーケティングに関するよくある質問
DMキャンペーンで適切なターゲットにアプローチするには?
自社の顧客データを属性や行動にもとづいて分類し、ターゲットを絞り込みます。見込み客に送る場合は、法人向けのリスト提供サービスを利用したり、地域を指定して宛名なしで配布したりする方法もあります。
DMキャンペーンの成果を測定するには?
ダイレクトメールマーケティングの重要業績評価指標(KPI)には、コンバージョン率、顧客獲得単価(CPA)、投資対効果(ROI)などがあります。これらを他のマーケティング戦略や業界平均と比較して、DMにかけた費用に見合う成果が得られているかを判断しましょう。
DMマーケティングとメールマーケティングの違いは?
DMマーケティングはメールマーケティングよりも費用がかかりますが、高い反応率が期待できます。DMに反応する人の割合は、マーケティングメールを開封する人のおよそ2倍です。




