エンタープライズ企業がECサイト運営するにあたり、業務アプリや複雑なバックグラウンドシステムとECサイトのAPI連携は必要不可欠です。在庫管理システムやCRM(顧客関係管理)ソフトウェア、フルフィルメントサービスなどとECサイトを連携させることは、オペレーションの円滑化とともに、顧客に快適な購買体験を提供することにもつながります。
Webアプリケーション同士をつなぐAPIの設計には、REST(レスト)と呼ばれる手法が広く活用されてきました。その後のインターネット技術の発展に対応するため、GraphQL(グラフキューエル)が開発され、この2種類が現在のスタンダードとなっています。
この記事では、GraphQLとRESTを比較し、その違いについて解説します。それぞれのメリットだけでなく、Shopify(ショッピファイ)とGraphQLの互換性についても言及していますので、ぜひ参考にしてください。

RESTとは
RESTは、「Representational State Transfer(具体的な状態の受け渡し)」を略したもので、インターネットと同様のHTTPの仕組みを使ってアプリケーション間の通信を行うAPIの設計手法です。顧客情報や商品データは「リソース」という形で管理され、各顧客のIDや特定の注文を示す「URI(識別用パス)」によって識別されます。
RESTに基づくAPIは、アクセスしたいリソースのURIを指定して、HTTPメソッドでデータを操作するといったシンプルな仕組みで実装することができます。
RESTには以下の6つの原則があります。
- 統一インターフェース:リソースはURIで表現され、操作はHTTPに則った命令文、データのやり取りもJSONやXMLで行われるなど、インターネットにおいて標準的なインターフェースに統一されます。
- 階層化システム:認証やキャッシュなど中間階層を挟んだ場合でも、利用者は意識することなく操作ができます。
- キャッシュ可能:取得した結果を一時的に保存し、再利用することでサーバーへの負担を軽減し、レスポンス速度を向上することができます。
- ステートレス:サーバー側はデータ取得に関する過去のセッション情報を保存しないため、処理を単純化することができます。
- クライアント・サーバーの機能分離:クライアント(リクエストを要求する側)とサーバーは役割が分離されているため、開発や更新をそれぞれ個別に行うことができます。
- オンデマンドコード(任意):フォームの入力エラー検出などの必要に応じて、処理用コードをサーバーがクライアント側に渡し、機能を拡張することが可能です。
RESTのメリット
- シンプルでわかりやすい:「../products」「../clients」のように一目でわかるURLでリソースを指定でき、HTTPメソッドにより「GET/PUT/DELETE」等の動詞で操作できるため、直感的にわかりやすく学習コストも低く済みます。
- ステートレスやキャッシュによる高速化:キャッシュにデータを一時保存できるだけでなく、ステートレスにより通信履歴も保存しないため、サーバーは各リクエストを個別に処理でき、高速化が実現します。
- システム開発の柔軟性が高い:クライアント・サーバーの分離により互いのシステムに干渉することなく、メンテナンスや開発、更新ができます。
RESTのデメリット
- 複雑な処理が困難:ステートレスという性質から、複数のページにまたがる会員情報の入力や、エラー時に入力状況を復旧させるといった処理に対応しにくいという特徴があります。
- オーバーフェッチ(データの過剰取得):URIごとのデータの取り出ししかできないため、在庫数のみ知りたい場合でも、商品の説明文なども一緒に取得することとなり、非効率です。
- アンダーフェッチ(データの取得不足):複数のURIにまたがるデータを取得したい場合、それぞれのURIで個別にリクエストを行うため通信回数が増えてしまいます。

GraphQLとは
GraphQLは、Facebook(現Meta platforms)社が開発したAPI向けのクエリ言語とその実行環境です。GraphQLは2012年に発表され、2015年にはオープンソース化されています。現在はNetflix(ネットフリックス)やAirbnb(エアビーアンドビー)などの大手ネットサービスをはじめ、多くの中小企業にも利用されています。RESTにおける前述のデメリットを解消するために開発されたという背景があり、データを扱う際の柔軟性や効率性が高いという特徴を持ちます。
GraphQLのクエリ言語を使うことで、必要なフィールドだけを指定して過不足ないデータの取得が可能です。また、スキーマと呼ばれるクエリの詳細に関する仕様を定義することで、開発者は使用すべきクエリがわかる仕組みです。
GraphQLのメリット
1. 複雑なデータ構造に適している
GraphQLは、複雑なデータを正確かつ迅速に処理しやすいという特徴を持ちます。ECサイトでもレコメンド機能やパーソナライゼーションなどで扱うデータが複雑化していると、RESTでは通信遅延のリスクが発生しやすくなります。一方、GraphQLによるAPIは、データが複雑な構成をしてたとしても必要な部分だけを指定することができます。
2. データ転送量の削減
必要なデータだけを指定して取得することができるため、RESTに比べてデータ転送量を削減することが可能です。不要なデータによる転送効率の悪化や遅延を予防でき、帯域幅を節約してWebパフォーマンスの向上にもつながります。
3. サーバーとの通信回数の削減
GraphQLは、必要なデータを1回の通信で取得できるため、RESTに比べて通信回数を削減することができます。たとえばRESTでは商品レビューを読み込む際に、コメント、投稿者のユーザー名、投稿時間が別々のURIで管理されており、1回の通信ではレビューが表示できないケースがあります。GraphQLなら通信回数が減ることで読み込み時間も短縮されるため、より円滑なユーザー体験を提供できるようになります。
4. 開発者体験の向上
GraphQLではあらかじめスキーマを厳密に定義するため、バックエンドとフロントエンドでデータの整合性を維持しやすくなります。開発者にとっては、どのようなクエリを書けば必要なデータが取得できるか明確なため、迷うことなく設計することができます。さらに、コーディングツールなどにスキーマを読み込ませて必要な設定を行えば、開発中のタイプミスやデータの矛盾を自動検知してくれるため、バグを未然に防ぐことが可能です。
5. 柔軟性が高い
GraphQLのAPIは、データ構造やシステムの変化にも対応しやすい特徴があります。たとえばクエリで要求されたデータのみを返す仕組みのため、オブジェクトやフィールドを増やした場合でも既存のクエリには影響を与えず、後方互換性が維持されます。これにより、対応するクエリを追加するだけでデータ構造の変更に対応することができます。
また、削除された項目があれば対応するフィールドにエラーが返ってくるため、開発者は変更点をすぐに把握することができます。一方、REST APIではクライアント側とサーバー側の処理が独立しているため、変化した箇所のすり合わせが難しく、バージョンアップが進むほどに不具合が積み重なっていく可能性が高くなります。
6. パフォーマンスの向上
GraphQLを活用してパフォーマンスの向上を実現した例に、Shopifyがあります。約20万件の公開データを対象とした調査(英語)では、Shopifyのオンラインショップは、他のプラットフォームを利用した店舗と比較すると最大で2.4倍、平均すると1.8倍もの高速化を実現したと報告しています。ShopifyではストアフロントAPIにGraphQLを採用したことで、サイトスピードの向上につながりました。
GraphQLのデメリット
- 開発コストがかかる:比較的新しい技術のため、学習コストや開発コストがかかります。
- セキュリティ面でのリスクがある:柔軟性が高いことにより、不正なクエリが実行されるリスクを含みます。事前にバリデーションや認証、APIキーを使ったアクセス制限といった設定を正しく行う必要があります。
- 場合によってはサーバーに負荷をかける可能性がある:想定外の大量のデータ取得や複雑なリクエストはサーバーに負荷をかけるため、クエリ深度やクエリコストの制限などの対策が必要です。
- ツールやライブラリが少ない:RESTに比べると新しい技術のため、ツールやライブラリが不足しているケースがあります。
- エラー時のデバッグが複雑化するリスクがある:RESTはエラーの際に「404エラー」「500エラー」などのエラーコードを返しますが、GraphQLはエラーがあっても通信成功である「200 OK」を返し、エラーを見逃すリスクがあります。

ShopifyにおけるGraphQL
Shopifyでは、GraphQLが一般公開された当初からいち早く導入を開始しています。2025年4月からは、GraphQLをShopifyの標準APIとしており、以降Shopifyアプリストアに申請されるアプリは全てGraphQLの使用が必要となりました。Shopifyは、GraphQLの導入により、1秒間に100万回以上のクエリ処理を行っています。
GraphQLとRESTの将来性
大規模なECサイトを運営する上で、GraphQLはデータ量や通信量の削減、複雑なデータ構造への対応、開発者体験の向上といったメリットがあります。Shopifyでは、購入者と開発者の双方にとってより円滑かつ効率的な体験を提供すべく、GraphQLが適切であるという判断を下しています。
一方で、RESTはシンプルで扱いやすい、開発コストが比較的低い、ネット上にトラブルシューティングなどの情報が多いといったメリットがあります。必要となるシステム構成の複雑さやデータ量、用途に合わせて選択することが重要と言えるでしょう。
まとめ
GraphQLもRESTも、アプリケーション連携においてよく活用されるAPI規格です。RESTは多くの実績があるシンプルなAPIで、HTTPメソッドを使うため導入しやすく、ステートレスによりサーバー側の負荷を抑えられる特徴があります。さらに、クライアント・サーバーの役割を分離する仕組みにより、お互いが干渉することなくメンテナンスや開発、更新が可能です。しかし、柔軟性に欠け、データの過剰取得やデータの取得不足による通信回数の増加といったデメリットもあります。
一方、GraphQLは2015年にオープンソース化されたクエリ言語とその実行環境のことで、RESTのデメリットを解消するために開発されたという背景があります。複雑なデータ構造に対応しやすく、データ転送量や通信回数の削減、開発者体験の向上、高い柔軟性とパフォーマンスの向上といったメリットが挙げられます。ただし、開発コストがかかる、新しい技術のためツールやライブラリが少ないといったデメリットもあります。
情報量が多く構造が複雑化する傾向にあるECサイトにおいて、GraphQLの採用がパフォーマンスの向上につながる可能性が高くなります。Shopifyでは標準APIとしてGraphQLを導入しており、ECサイト利用者、開発者の双方の快適な体験向上を実現しています。
GraphQLとRESTの違いに関するよくある質問
RESTとは?
RESTとは、HTTPの仕組みを利用してアプリケーション間のデータ転送を行うAPI設計手法のことです。「Representational State Transfer」の略が名前の由来です。
GraphQLとは?
GraphQLとは、Facebook(現Meta platforms)社が開発したAPI向けのクエリ言語とその実行環境です。必要なフィールドだけを指定して情報を呼び出せるため、過不足ないデータの取得が可能です。
GraphQLとRESTの違いは?
GraphQLとRESTの違いは、RESTが従来から使用されているシンプルかつ導入しやすいAPI規格であるのに対し、GraphQLはインターネットの発展に伴う高速化や複雑化に対応できるように誕生したものです。
RESTはGraphQLに淘汰される?
RESTとGraphQLにはそれぞれのメリットデメリットがあり、淘汰はされません。ニーズに合わせて使い分ける形で共存し続けることが予想されます。
GraphQLを活用しているサイトは?
- Shopify
- Netflix
- Airbnb
- GitHub
- PayPal




