日本のお酒に新しい価値を創るーー。そんなミッションを掲げて、日本酒のECサイトを始め、実店舗やお酒のサブスクリプション、イベントなど多彩な切り口で事業を展開しているのがKURANDです。日本の酒産業に貢献したいという熱いパッションを原動力に躍進するKURANDのPR担当の辻本さんに現状の取り組みや今後の計画についてお話をお聞きしました。
■日本酒のサブスクリプションサービスから事業スタート
「理系兄弟」「Te-hajime」「酒を売る犬 酒を造る猫」。KURANDのECサイトには、日本酒とは思えない、実に大胆なネーミングのオリジナル商品が並んでいます。サイトのデザインも新鮮そのもの。フレッシュで若々しく、シンプルで読みやすい。隅々までユーザー視点が徹底されています。
多くの消費者が「日本酒」と聞いたときに思い浮かべるイメージを、見事なまでに覆してくれるKURANDはいかにして生まれたのでしょう。
KURANDは、一般消費者向けの組織として事業をスタート。2013年に、完全会員制で日本酒を定期的に顧客に届ける「KURAND CLUB」をスタートしました。いわゆるサブスクリプションサービスです。
「お酒を造るのは得意でも売るのは苦手、という酒蔵さんは全国にたくさんあります。しかし、それではあまりにもったいない。そうした酒蔵さんたちと一緒にお酒を造って売っていこうという目的で始めたのがKURANDです。ちょうど海外でお酒のサブスクリプションサービスが台頭していたので、そうした事例を参考にしながら酒蔵さんに協力してもらい、酒蔵と共同で企画開発したお酒をお届けすることにしました」
日本酒は未成年者保護の観点から一部規制もあり、ネット広告で集客するのは難しい商材です。そこで、サブスクリプションサービスへの集客を図るためにメディア事業をスタートしました。
しかし、さらに大きな展開を目指しKURANDは新たな展開を図りました
「気軽に日本酒を楽しんでもらいたいと考え、荒木町や新宿三丁目などの野外のスペースを利用して、はしご酒のイベントを定期的に開催しました。しかし、どうしても天候に左右されてしまうんですね。そこで、角打ち(酒屋の店内で、酒屋で買った酒を飲むこと)をアレンジして、実店舗の『KURAND SAKE MARKET』を開きました。約100酒類もの日本酒の飲み比べができて、料理の持ち込みもできるスペースです」
これだけ多くの日本酒を選び放題、飲み比べし放題できるお店は過去に例がありません。「KURAND SAKE MARKET」は話題を呼び、大勢のファンを獲得。いまでは店舗数は姉妹店を含めて十数店舗にまで増えています。
■地道に酒蔵を開拓してオリジナルの日本酒を強化
サブスクリプションサービス、日本酒に関するオウンドメディア、イベント、そして実店舗の「KURAND SAKE MARKET」。すべてに共通するのは、日本酒マニアというよりも、ごくごく一般的なお酒が好きな消費者たちをターゲットに想定していることです。
「KURANDのメインユーザーは20代〜30代。ワインは飲むけれど日本酒はあまり、という方もターゲット。こうした人たちに日本酒を飲んでもらえる機会を増やさなければマーケットは広がらないと考えました」
日本酒の未来のためには、これまで日本酒とはあまり接点がなかったビギナー層を取り込むことが欠かせません。彼ら彼女たちにはどんなお酒が響くのか。どのような売り方をすれば日本酒ファンが増えるのか。リアルでシビアな問題意識をもとに、お客さま視点から逆算した、今までにないお酒を開発しようと酒蔵との提携を進めていきます。
「東京にある酒屋ということで耳を傾けてくれるところは多いのですが、お酒の業界には古い慣習が残っていて、特定のエリアでないと卸せないというエリア限定商品も少なくありません。古い業界なので、『ネットがメインの商売はちょっと』と断られることもあります(笑)。その一方で、飲食店向けにお酒を卸している東京の酒屋は売れている銘柄に注力しがちなので、地方のあまりメジャーでない酒蔵さんの場合、販路の開拓に苦労をされているのが現状です」
せっかく良いお酒を造りながらも、ブランド力があまりなく、かといって東京で営業活動を行おうにも余裕がない。KURANDが光を当てようとしているのはまさにそうした酒蔵です。
現在、KURANDと取り引きしている酒蔵の数は約50〜60。日本酒マーケットを活性化しようと、酒蔵出身のお酒のプロのスタッフが。酒蔵のもとに熱心に足を運び、地道に説得を重ね、こつこつと開拓を続けてきた成果です。
■わかりやすいコンセプトと斬新なデザイン・ネーミング
協力関係の酒蔵が増え、オリジナル商品が充実してきたところで、KURANDは2年前にECサイトを開設しました。
いまECサイトに並ぶ商品は日本酒が50〜60アイテム、果実酒が30〜40アイテム、焼酎が7〜8アイテム。豊富なラインナップに共通するのは、なんといっても「わかりやすさ」です。
「品揃えのモットーは、One Product One Message。一言でその商品の特徴を説明できる、そんなわかりやすさを重視しています」
例を挙げてみましょう。岐阜の舩坂酒造店が醸造した「29(ニク)」のコンセプトは、”肉によく合う”日本酒。一目瞭然のコンセプトです。
「大吟醸酒とは」「アミノ酸度とは」。既存の日本酒ECサイトでありがちなそうした小難しい表現や説明文はKURANDのサイトでは単なる脇役に過ぎません。主役は、どんな人が見ても理解できる、日本酒のキャラクターです。
ボトルやラベルのデザインもラインナップの決め手の一つ。
「お酒っぽくないデザインを心がけています。かといって、オシャレすぎてコンセプトが伝わりにくくては意味がありません。特徴が伝わりやすいデザインで、思わず手に取ってみたくなるデザインが大事ですね。デザインが可愛いから、格好いいからという理由で手に取ってもらいたい。それも立派なきっかけですから」
KURANDではネーミングも重視しています。日本一理系な兄弟蔵元が数値をもとに綿密に造りあげた究極の食中酒「理系兄弟」、味噌に合う日本酒の「てまえみそ」、日本酒との初めての出会いを演出する超甘口の食前酒「Te-hajime」。KURANDオリジナルの日本酒は、枠にとらわれない自由な発想、大胆なネーミング揃いです。日本酒とはこんなにも自由なお酒だったのか、と感じずにはいられません。
一つ一つの商品には、商品情報のほかに、おすすめの飲み方、ペアリング(よく合う料理)、開発ストーリーが添えられています。ビギナーにも理解しやすい商品情報、日本酒が誕生するまでの開発ストーリーは、造り手に丹念にヒアリングしたからこそ可能なコンテンツです。
ペアリングの細かさにも圧倒されます。カルパッチョ、浅漬け、もやしナムル、おろし豆腐ハンバーグ、春雨炒め。各商品ごとにピンポイントで料理名が挙げられています。
「酒蔵さんにお尋ねすると、さすが造り手というべきか(笑)、具体的なおすすめ料理が挙がってくるんですね。それを紹介しない手はありません」
SNSでの情報発信にも余念がありません。酒蔵からの情報をもとに、熱燗にはちみつを入れて飲んだり、アイスクリームの「雪見だいふく」に熱い日本酒をかけて食べるといったスタイルを提案しています。後者は、SNSで2万ビューを獲得。大きな反響を呼びました。
「いずれも酒蔵さんからの提案をアレンジした店舗スタッフのアイディアです。日本酒はもっと自由にカジュアルに飲まれていい。お酒を楽しむのに、難しい知識やルールは必要ありませんし、しばりはないはずなんです」
■海外販売を想定してShopifyにシフト
オープンから半年後、KURANDのECサイトはプラットフォームをShopifyにシフトしました。
「セキュリティを確保するためというのもありますが、いずれは海外にも販売していきたいと考えていたのでShopfiyを選びました。海外への販売しやすさはShopifyの大きな特徴ですからね。もう一つ、そのシンプルさにも惹かれました。以前はエンジニアが手を加えていましたが、Shopifyならたくさんあるアプリを活用して、サイトを運営できます。開発業務が特定のエンジニアに属人化することもありません。使ってみて感心したのが、データの収集が容易な点です。ユーザーの属性など見たいデータが管理画面上で見られるのはいいですね。以前は、いちいちECツールやGoogle Analyticsを見ないといけなかったので手間がかかっていたんですよ」
越境ECのスムーズさ、シンプルでありながらShopifyの中で完結できる機能性が決め手になったようです。すでに台湾との取り引きは始まっているとか。今後の展開が楽しみです。
おすすめのアプリについても聞いてみました。
「ウェブマーケティングができるKlaviyoは便利ですね。レビュー紹介のアプリのJudge.meも有効に使っています。やはりレビューの効果は高いですよ。現在はチャットボットのサービスができるアプリを探しているところです。これから、日本語化されるアプリも増えていくと思うので期待したいですね」
現状、ECサイトの品揃えは日本酒が中心ですが、これからは、日本のお酒マーケットの裾野を拡大していくために、クラフトビールやワインの扱いも増やしていく計画です。すでにクラフトビールは実現に向けて動いているとか。
「クラフトビールの業界も新しいビジネスモデルが登場して変わりつつあります。私たちの取り組みに賛同してくださるところも増えてきました。ECサイトのコンテンツも強化していきたいですね。お酒を軸にしたいろいろなサービスの展開も考えています」
次々に斬新な商品やサービスを提供しているKURANDが見つめる先は、酒類業界の活性化にとどまりません。お酒づくりは農業にも深く寄与しています。水、米、麦、ブドウ。日本のお酒はちょっと大げさに言えば、地域経済にも寄与する貴重な商材なのです。
「農家の方たちとも連携を進めています。ワクワクするようなお酒との出会いを提供することで、日本のお酒をより多くの人に楽しんでいただきたいですね」
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