自宅から欲しい商品を購入して最短でその日のうちに届くネットショッピング。新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要の増加に伴い、ネットショッピングを利用する人が急増しています。
数あるネットショップの多くは、開設や運営にあたって特別な資格は必要ありません。しかし、酒類を販売する場合には「酒類販売免許」が必要です。
そこで今回は、酒類販売免許の概要や種類、取得方法、注意点について詳しく解説します。
目次
酒類販売免許とは?
「酒類販売免許」とは、酒類を販売するために必要な免許です。一般的に「酒販免許」と呼ばれています。酒税法により、実店舗やネットショップを運営して酒類を提供する際に取得することが義務付けられています。
万が一酒類販売免許を所持せずに酒類を取り扱っていると、法律により罰則や罰金が課せられます。そのため、酒類を取り扱いたい場合には、インターネット販売や実店舗販売などの経営形態に関わらず、必ず酒類販売免許を取得する必要があります。
ただし、酒類販売免許には複数の種類があり、経営形態に応じて適切な種類の酒類販売免許を取得しなければなりません。
次の項目では、酒類販売免許の種類について詳細に解説します
酒類販売免許の種類
前述の通り、酒類販売免許には複数の種類があるため、経営形態に応じて酒類販売免許を取得しなければなりません。
酒類販売免許は「酒類小売免許」と「酒類卸売業免許」の2つに大別されます。
ここからは、それぞれの免許の概要や対象となる経営形態について解説します。
小売免許
「酒類小売免許」とは、その名の通り小売店を対象にした酒類販売免許です。一般的に「小売免許」と呼ばれています。
酒類販売免許の定めている小売店とは、酒類を取り扱う飲食店や一般消費者などを対象に酒類を販売する経営形態のことです。
この酒類小売免許は、さらに「一般酒類小売業免許」と「通信販売酒類小売業免許」の2種類に分類されます。それぞれの概要について詳しく解説します。
一般酒類小売業免許
「一般酒類小売業免許」は、コンビニや酒販店などの店頭で酒類を販売する際や、アルコールを使用するお菓子の製造業に対して販売する際に必要な酒類販売免許です。店舗の有無を問わず、店頭で酒類を販売する際は必ず取得しておかなければなりません。
一般酒類小売業免許を取得すると、原則として全ての酒類の提供が認められます。
前述した通り、酒類小売免許は一般酒類小売業免許のほかにも通信販売酒類小売業免許があります。通信販売酒類小売業免許は、インターネットを介して酒類を販売するときに必要です。この通信販売酒類小売業免許については後ほど詳しく解説します。
ただし、一般酒類小売業免許でも、1都道府県の消費者に対してのみであればインターネットを介した酒類の提供が認められています。
しかし、インターネットを介して1都道府県のみに提供することはほぼありません。そのため、インターネットネットで販売したい場合は、基本的に通信販売酒類小売業免許が必要です。
このように、一般酒類小売業免許は酒類を提供する飲食店や酒販店、アルコールを使用するお菓子の製造業などの店舗を対象に、酒類を提供する際に取得が必要な酒類販売免許です。
通信販売酒類小売業免許
「通信販売酒類小売業免許」は、インターネットやカタログによって酒類を販売する際に必須となる酒類販売免許です。
通信販売酒類小売業免許の特徴は、販売できる酒類に制限があることです。ただし、ワインやウイスキーなどの外国産の酒類を輸入して販売する際には、原則として制限がありません。しかし、輸入にあたって食品衛生法に違反していないかの審査があることや、日本語で輸入者の名称と食品添加物などの表示が義務付けられていることなど、販売に際して多くの制約があります。
一方で、通信販売酒類小売業免許で販売できる酒類に制限があるものが、国産の酒類です。国産の酒類をインターネットやカタログによって販売するためには、製造者の製造・販売している酒類の各品目全ての年間販売量が、3,000キロリットル未満でなければなりません。
具体的にいうと、仕入れる酒類製造者が製造しているいずれかの品目が、ひとつでも年間販売量が3,000キロリットルを超えていると、通信販売酒類小売業免許を取得していても販売できないということです。たとえば、仕入れ先の業者が作るビールの年間販売量が3,000キロリットル未満だったとしても、焼酎の年間販売量が3,000キロリットルを超えていると、インターネットやカタログでは販売できません。
インターネットやカタログを介して国産の酒類を提供したい場合は、通信販売酒類小売業免許の取得するだけでなく、仕入れる酒類製造者の年間販売量にも注意が必要です。
卸売業免許
「酒類卸売業免許」は、酒類の販売業者や製造者に必要な酒類販売免許です。業者に酒類を卸す際には、この酒類卸売業免許の取得が義務付けられています。
酒類卸売業免許はさらに「洋酒卸売業免許」「自己商標卸売業免許」「ビール卸売業免許」「全酒類卸売業免許」の4種類に分けられます。それぞれについて詳しく解説します。
「洋酒卸売業免許」はウイスキーやワインをはじめ、リキュール、スピリッツ、発泡酒などの洋酒を卸売する際に必要な酒類販売免許です。自社で製造したものを卸売するだけでなく、他の卸売業者から仕入れた洋酒を卸売することもできます。
「自己商標卸売業免許」は、自社開発した独自ブランドの酒類を卸売する際に必要な酒類販売免許です。この免許では、自己商標卸売業免許のみを取得している場合、自己商標または銘柄以外の酒類の卸売は認められません。
「ビール卸売業免許」とは、その名の通りビールを卸売する際に必要な酒類販売免許です。ビール卸売業免許を取得すると、ビールであれば銘柄に関わらず卸売できます。ただし、同じく販売酒類に制限のある洋酒卸売業免許や自己商標卸売業免許と比較して、取得が難しいという特徴があります。
「全酒類卸売業免許」とは、種類に関わらず酒類全ての卸売が認められる酒類販売免許です。全酒類卸売業免許を取得すれば、その他の酒類卸売業免許とは違い酒類に制限なく卸売できます。ただし、制限が無くなる分、取得のハードルが高いことが特徴です。
このように、酒類を販売業者や製造者に卸売する際には酒類卸売業免許が必要です。さらに、酒類卸売業免許は4種類に細かく分類されるため、取り扱う酒類の種類に応じて適当な種類の免許を取得しなければなりません。
酒類販売免許の取得方法/申請方法
酒類販売免許には複数の種類があり、取得するべき酒類販売免許は、販売方法や販売先、販売する酒類によって異なります。では、酒類販売免許の取得及び申請はどのような流れで行うのでしょうか。
ここからは、酒類販売免許の取得方法や取得にかかる費用について、詳しく解説します。
免許取得で必要となる要件
酒類販売免許の取得には、それぞれの種類によって複数の要件が設けられています。要件を満たしていないと、取得・申請が認められません。この項目では、免許取得で必要な要件を種類別に紹介します。
まず、小売店への販売に必要となる「一般酒類小売業免許」について解説します。この免許の取得には、人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需要供給要件の4種類の要件を満たしていなければなりません。
それぞれの要因の概要は以下の通りです。
一般酒類小売業免許の取得要件 人的要件
場所的要件
経営基礎要件
需給調整要件
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次に、「通信販売酒類小売業免許」の取得要件について解説します。通信販売酒類小売業免許の取得にも、一般酒類小売業免許と同様に4種類の要件が設けられています。それぞれの要件について詳しく見ていきましょう。
通信販売酒類小売業免許の取得要件 人的要件
場所的要件
経営基礎要件
需給調整要件
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最後に、「酒類卸売業免許」の取得要件は以下の通りです。なお、需要調整要件は「全酒類卸売業免許」と「ビール卸売業免許」のみ対象です。
酒類卸売業免許の取得要件 人的要件
場所的要件
経営基礎要件
需給調整要件
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このように、それぞれの酒類販売免許で人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需給調整要件が設けられており、全ての要件を満たしていなければ取得できません。
申請の流れ
酒類販売免許の要件を全て満たしていれば免許の申請ができます。酒類販売免許の申請の流れは以下の通りです。
①酒類指導官付職員に相談する
②取得要件を満たしているか再度確認する
③必要書類を揃える
④管轄の税務署に必要書類を提出する
⑤審査
⑥免許付与などの通知
酒類販売免許を取得したい場合は、初めに酒類指導官付職員への相談が必要です。ただし、酒類指導官付職員は全国どの税務署にも配置されているわけではありません。酒類指導官付職員が配置されている税務署を探しておもむき、指導を受けましょう。酒類指導官付職員に相談の上、問題がないと判断されれば申請のための手続きが進められます。
申請が認められた場合は、取得要件を再度確認しましょう。取得要件は先程詳しくご紹介しましたが、それぞれの免許で前述した4種類の要件があり、それぞれに細かく要件が設けられています。
該当の免許の要件を再確認し、全ての要件を満たしていれば書類の準備に入ります。
取得要件の確認ができたら必要書類を揃えます。酒類販売免許では多数の書類を揃える必要があるだけでなく、免許の種類ごとに必要書類が異なるため注意が必要です。
必要書類については後ほど詳しく解説します。
必要書類を揃えたら税務署に提出します。提出する税務署は、最寄りの税務署ではなく酒類の販売予定地を管轄している税務署です。なお、管轄している税務署は、国税庁のホームページから確認できます。
必要書類の提出方法は、税務署に持参するか郵送するかのいずれかです。税務署に行けない場合は郵送で提出しましょう。
管轄の税務署に必要書類を提出すると審査が始まります。万が一書類に不備があった場合や追加で書類の提出が求められた場合は、速やかな対応が必要です。
審査期間は原則として2ヶ月以内ですが、申請件数が多いと2ヶ月以上かかる場合があります。2ヶ月以上経過しても審査結果が届かない場合は、一度税務署に確認することをおすすめします。
審査が終了すると、書面で審査結果が通知されます。審査に通過していた場合には、審査結果とともに該当の酒類販売免許が交付されます。
また、免許の付与には3万円の登録免許税が必要です。登録免許税を納めると免許通知書と酒類販売免許が付与され、その時点で酒類の取扱いが認められます。
このように、酒類販売免許の申請は管轄の税務署で行います。事前に必要書類や管轄の税務署を確認しておくと、申請がスムーズに進められます。
なお、免許の申請から取得までの期間は約3ヶ月です。内訳としては、酒類指導官付職員への相談や書類を揃えるなどの準備期間が約1ヶ月、審査期間が約2ヶ月です。
ネットショップを開設するにあたり酒類の取扱いを予定している場合は、余裕を持って酒類販売免許を取得することをおすすめします。
取得にかかる費用
酒類販売免許の取得にかかる費用は登録免許税の3万円です。申請時に費用が発生することはありません。
ただし、登録免許税は取得免許1件ごとに発生します。複数酒類の酒類販売免許を取得する場合は、取得件数分の登録免許税を納付しなければなりません。たとえば、2種類の酒類販売免許を取得するときにかかる登録免許税は6万円です。
また、酒類販売免許にはさまざまな書類の提出が求められ、書類を取得する際に発行手数料もかかります。書類の発行手数料については、後ほど詳しくご紹介します。
このように、酒類販売免許には一件ごとの登録免許税と必要書類の発行手数料がかかります。
必要な書類
先ほどご紹介した通り、酒類販売免許の申請にはさまざまな書類の提出が求められます。酒類販売免許の申請に必要な書類は以下の通りです。
- 酒類販売業免許申請書
- 酒類販売業免許の免許要件誓約書
- 免許申請者の履歴書
- 定款の写し
- 契約書などの写し
- 地方税の納税証明書
- 最終事業年度から3事業年度より前の財務諸表
- 土地・建物の登記事項証明書
- 通信販売酒類小売業免許申請書チェック表
- その他審査の参考資料
酒類販売業免許申請書には、販売場の敷地の状況・建物などの配置図・事業の概要・収支の見込み・所要資金額及び調達方法・取引計画書に関する書類の6つの次葉が含まれます。
取引計画書に関する書類以外の次葉については、定められた形式ではなく同等のものを添付しても構いません。
酒類販売業免許の免許要件誓約書は、通信販売酒類小売業免許の申請時のみ必要です。申請者だけではなく、申請者の法定代理人、申請法人の役員、申請販売場の支配人の誓約書の提出が求められます。
免許申請者の履歴書は、個人であれば申請者の履歴書を提出します。法人の場合は、監査役を含めた役員全員の履歴書を提出してください。
契約書などの写しとは賃貸借契約書、請負契約書、農地転用許可に係る証明書など、土地や建物、設備に関する契約書の写しを提出します。
地方税の納税証明書は、都道府県及び市区町村が発行する納税証明書です。この証明書にて未納の税額がない旨と、2年以内に滞納処分を受けていない旨が記載されていなければなりません。
最終事業年度から3事業年度より前の財務諸表は、法人が提出しなければならない書類です。個人が申請する場合は、最終事業年度から3事業年度より前の財務諸表ではなく収支計算書を提出しましょう。
土地・建物の登記事項証明書は、全部事項証明に限ります。また、申請販売場が複数ある場合は全ての申請販売場に係る登録事項証明書の提出が求められます。
その他審査の参考資料とは、販売したい酒類についての説明書や通信販売の対象であることの証明書、カタログのレイアウト図や納品書などのことです。必要に応じて参考資料があれば添付しましょう。
このように、酒類販売免許の申請にはさまざまな書類を提出しなければなりません。提出漏れや記載漏れがあった場合、審査時に提出を求められます。その分審査にかかる時間が長くなるだけでなく、提出の手間も増加します。スムーズに酒類販売免許を取得するためにも提出書類が揃っているか、書類の記載漏れがないかを確認の上提出してください。
ネットショップ(通販)で酒類販売する時の注意点
ネットショップで酒類を販売する際にはさまざまな注意点があることを把握しておかなければなりません。そこで最後に、ネットショップで酒類を販売する時の注意点をご紹介します。
ネットショップで酒類を販売する際の主な注意点は以下の通りです。
- 通信販売酒類小売業免許の取得が必須
- 表示基準を厳守しなければならない
ネットショップで酒類を販売したい場合には、通信販売酒類小売業免許の取得が酒税法で定められています。
万が一、通信販売酒類小売業免許を取得していないにも関わらずネットショップで酒類を販売した場合には、酒税法によって懲役一年、または50万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
また、前述したとおり、通信販売酒類小売業免許を取得していても全ての酒類をネットショップで販売できるわけではありません。とくに、国産の酒類については、製造者の品目ごとの年間販売量が3,000キロリットル未満であることが条件です。いずれかの品目の年間販売量が3,000キロリットルを超えている製造者から仕入れて販売した場合、免許の取り消し処分を受ける可能性があります。
くわえて、未成年者の飲酒防止に関する表示基準を必ず把握し、遵守することが必要です。日本では20歳未満の飲酒は法律で禁止されているため、酒類を販売する側は20歳未満の飲酒防止に努めなければなりません。
未成年者の飲酒防止に関する表示基準とは、端的に言うと注意書きのようなものです。ネットショップで酒類を販売する際は、以下の書類に表示基準を記載してください。
- カタログや商品ページ
- 申込(購入)画面
- 納品書やメールなどでの通知時
申込(購入)画面については、表示基準を記載するとともに、申込者の年齢記載欄を設けてください。
このように、ネットショップで酒類を販売する際には、通信販売酒類小売業免許の取得や免許の範囲内での販売、未成年者の飲酒防止に関する表示基準の記載が必須です。
法律に違反しないように、酒税法を正しく把握した上でネットショップでの酒類提供を始めましょう。
まとめ
気軽に始めやすく、さまざまな商品を販売できるネットショップですが、酒類を販売するためには酒類販売免許の取得が義務付けられています。
酒類販売免許には複数の種類があり、それぞれで対象の酒類や販売対象が異なります。ネットショップで酒類を販売したい場合には、通信販売酒類小売業免許を取得しましょう。
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