スズキのECモール「S-MALL」がブランド力と商品開発力を押し上げる!

20211月。スズキが運営するECモール「S-MALL」(エスモール)で、約160万円もの大型バイク「KATANA」の特別色100台がまたたく間に完売しました。スズキのブランド力、商品開発力、そしてデジタルマーケティングの力が見事に集約した瞬間です。「S-MALL」は複数のストアを集めたポータル型のECモール(現時点では3店)。スズキはそこで何を実現しようとしているのでしょうか。デジタル化推進部DX推進グループプロジェクトリーダーの大瀧一輝さんと前澤礼菜さんにお話をうかがいました。

一つのツイートが印鑑の売上を押し上げた

Twitterでのちょっとしたつぶやきが大きな反響を呼び、商品の売上を押し上げていく。SNSの世界では頻繁に見られる動きです。スズキは2018年にそれを経験し、ネットの力を確信。ECモール「S-MALL」の開設へと踏み出しました。

大瀧さんは振り返ります。

2018年当時、スズキのライセンス商品を販売しているサイトがありました。あまり認知されていなかったのですが、3月にスズキの好きな車と氏名を彫刻できるオーダーメイドオリジナル印鑑についてTwitterでつぶやいたら、1回の投稿だけで想像以上に売れたんです。驚くと同時に、こんな風にリアルタイムで商品が売れていく状況を見られる効果は大きいと感じました」


大きな反響を呼んだツイートが「S-MALL」開設のきっかけに

自分たちのアクションがお客様を動かしたその結果をクリアに可視化できる。デジタルマーケティングの力を実感した大瀧さんを始めプロジェクトメンバーは、ECで売れそうな商品を持っている関係部署や関連会社へのヒアリングを開始しました。デジタルマーケティングに本格的に取り組むのであれば、まずは関係者の意見を聞き、方向性を探ることが必須だと考えたからです。

「ヒアリングをしてわかったのは、どこもECに前向きであることです。国内の二輪販売子会社のスズキ二輪は非常に積極的で車両もネットで売りたいと言っていましたし、スズキ純正グッズを扱っている部品部は、グループ会社のスズキビジネスと組んでネットショップを始めようとしていました。でも、それぞれがバラバラに進めるのではなく、1つにまとめてスタートしたいと考え、デジタル化推進部が中心となって関係部門からプロジェクトメンバーを募り、構想や要件定義を進めました

約2ヶ月のヒアリングを経て、20187月、公式オンラインモール「S-MALL」の立ち上げが正式に決まりました。

公開当初の「S-MALL」トップページ

この決断には会社としての危機感も大きく働いていたといいます。いま自動車業界は、「電動化」「自動化」「コネクテッド」「シェアリング」といった技術革新が急速に進み、100年に一度ともいわれる大変革期に直面しています。

自動車の販売も以前とは様変わりしました。お客様が販売店に来店される回数は大幅に減り、オンラインでの購買行動がオフラインの購買を補完する形にシフトしています。

「ゲームチェンジが起きようとしている変革期においては、お客様ファーストでニーズを分析し、新たな価値や体験を生み出していかなければなりません。しかし、これまでのスズキの販売形態はBtoBtoCがメイン。顧客接点やコミュニケーション、データ活用の環境が整っていませんでした。私自身、これまで二輪の開発に携わってきましたが、『お客様は本当にこれを求めているのだろうか』『自分たちはお客様を本当に把握できているのか』といった疑問や危機感がずっとあったんです。

スズキにはたくさんの熱烈なファンがいますが、こうした熱いファンにずっとスズキを好きであり続けていただくためにも、スズキ公式ECサイトを立ち上げ、お客様とのコミュニケーションの機会を拡大し、商品企画にフィードバックしてお客様といっしょに商品を作っていこうと考えました。これこそがDXの本来のあり方だと思います

大瀧一輝さん(スズキ株式会社 デジタル化推進部 DX推進グループプロジェクトリーダー)

Shopifyで内製化を図ろう

S-MALL」のプラットフォームとして選ばれたのはShopify。その理由を前澤さんはこう語ります。

「元々は他のパッケージを採用予定でしたが、触れる範囲や事例がShopifyほど豊富ではなかったし、小さく早く始めるという点で条件が合いませんでした。その点、Shopifyは小さく素早く開発・改良できます。当時、日本で非常に伸びていると話題になっていましたし、ブートキャンプなど運用者がShopifyのパートナーとして成長できる機会も多く、活発なコミュニティも魅力的でした。この変革期において、自由度が高いShopifyは最良の選択だったと思います」

小さく早く始めて、素早く開発・改良できるのがShopifyの良いところ

当初はShopifyアプリを使い、パートナーに開発を委託していましたが、アプリのみのカスタマイズでは将来の拡張性に問題があったため、スズキは100%内製化へと舵を切ります。Shopifyのブートキャンプにも参加し、オンラインコミュニティにも参加して質問を繰り返し、内製化した「S-MALL」は徐々に完成に近づいていきました。

従業員向けに「S-MALL」が公開されたのは202010月。正式オープンは202111111時と決まっていました。このローンチのタイミングで、スズキはファンが待ちに待った新型の大型バイク「KATANA」に特別色を設定し、その予約受付を「S-MALL」で実施。その結果、関係者の予想を大幅に超える反響を巻き起こしたのです。

予想を大幅に上回る数のお客様が「KATANA」をカートに入れた

いまからさかのぼること約40年前。日本刀をモチーフにしたスズキのバイクが人気を集めていました。その名は「GSX1100S KATANA」。販売終了になった後も「復活させてほしい」としてファンから熱いコールが寄せられていたバイクです。

日本刀をモチーフにした「GSX1100S KATANA」

2019年には「KATANA」は完全な新型としてリバイバルを果たしました。そして、2020年3月のモーターサイクルショーで新型「KATANA」のカラーアンケートを実施。人気の高かった世に出ていないカラーリングの車両2台(REDとマットブラック)とともに全国を回りました。

今回、スズキは中でももっとも人気が高かった「RED」を採用し、特別色として限定100台で販売することを決定しました。その舞台として選ばれたのが「S-MALL」なのです。

ファンから人気が高かったREDを採用した「KATANA」特別色

「関係者からはサイトデザインやクリエイティブなどで様々な意見や指摘を受けました。また、車両の販売が重なったことで社内の説明や調整にも苦労しましたが、ぜひともやってみようと説得して回り、無事、発売が決まりました」

お客様は「S-MALL」上で0円で予約申込みを行い、予約後に販売店に行き決済をするという流れです。本当に売れるのか、売り切るまで何日もかかるのではないか。そんな不安は、予約開始時間の202111115時を過ぎるとすぐに払拭されました。

100台はわずか2分弱で完売しました。最終的には予想を大幅に上回る数のお客様が「KATANA」をカートに入れていました」(大瀧さん)

「KATANA」特別色の価格は1595000円。決して安い価格ではありません。それでも多くのファンが「S-MALL」に殺到し予約を入れたのです。

その後もファンの熱狂は続きます。Twitterでは、「赤カタナ」「KATANA」特別色を購入したお客さまが専用のアカウントを作り、その魅力を語るツイートが飛び交いました。内容はさまざまです。「赤カタナ」をきっかけにリターンライダーになったという方、「赤カタナ」のためにわざわざガレージを建てたという方、「赤カタナ」に乗りたいから大型の免許を取ったという方。ツイートの内容は違えども、共通するのは「赤カタナ」を手にした喜びです。

販売店も予想外の収穫がありました。既存顧客に紐付いていない注文が突然、店舗に飛び込んできたからです。「S-MALL」だけで予約を受け付けた「KATANA」特別色がファンの熱狂を呼び起こし、これまでにない新規の顧客層を開拓したことは明らかでした。

新規顧客層を開拓した「KATANA」特別色

2019年に『KATANA』のオーナーズミーティングを開催しましたが、残念ながらコロナ禍で『KATANA』特別色の発売以降はオフラインイベントを開催できていません。いつか近いうちに、また実施したいと思います。できれば『KATANA』特別色100台、ずらりと並べたいですね」(大瀧さん)

歴史を感じてもらえるラインナップに

2020年、スズキは100周年を迎えました。「S-MALL」にはその歴史を感じさせる商品が並んでいます。

一つが、一点物の前掛けです。1920年にスズキは「鈴木式織機株式会社」として創業しました。前掛けは「鈴木式織機」で織られた生地を使ったもの。雰囲気のあるデザインや色合いに仕立てられています。

「鈴木式織機」で制作された1点ものの前掛け
スズキの原点ともいえる「鈴木式織機」

S-MALL」に出店している「ESSENCIA(エッセンシア)」は、ハンガリーワインとハンガリー産蜂蜜などを販売していますが、これらもスズキの歴史の一端を表しています。

ハンガリー産貴腐ワインの魅力を堪能できる「トカイ・アスー・4プットニョシュEV」
ハンガリー生産最大手のフルメール社の天然はちみつ「ハンガリーアカシア蜂蜜500g瓶」

1991年、スズキはハンガリーに生産会社マジャールスズキ社を立ち上げ、1992年から四輪車の生産を開始。グループ会社のあるハンガリーという国を身近に感じてもらいたいという思いから、スズキビジネス特販事業部ではワインとアカシア蜂蜜を輸入販売してきました。

1991年に立ち上げたハンガリーの生産会社マジャールスズキ社

「スズキは、環境によって変化し続けながら、変わらずお客様に寄り添った価値を提供してきました。S-MALL』もスズキにとっての変化の一つ。これからもお客様に変わらずに価値を提供するために、私たちは変わり続けたいと考えています」(大瀧さん)

内製化に踏み切ったことでスキルが蓄積され、Webも含めて提案の幅が広がったというデジタル化推進部DX推進グループ。これからの「S-MALL」運営に関していまさまざまな構想を練り、着実に行動に移しています。

ラインナップ拡充策の一環として、今年1月には100周年記念の限定ヘルメット「スズキアニバーサリーヘルメット」の受付を開始しました。1月11日の10:00から抽選受付を開始しましたが、開始早々、高い反響を得て、最終的には約5,000件もの注文が入りました。

100周年記念の限定ヘルメット「スズキアニバーサリーヘルメット」

「世界限定70個のうち、日本販売分の30個を抽選で販売しました。『ESSENCIA』で販売しているワインやはちみつと、スズキのロゴを焼印した瓦煎餅とのセット商品の販売もスタートしました。問い合わせも多く、Twitter上で購入報告が次々に上がっています。おかげさまで瓦煎餅は好評のうちに販売を終了しました。こうした成功事例を一つずつ積み上げていきたいですね。オフラインのイベントも充実させていく考えです。思いついたらすぐに行動に移せるのがShopifyのいいところ。2022年はたくさん商品を発表できるように進めています。ご興味のある方はぜひご連絡いただきたいと思います」と大瀧さん。

激動する業界にあって、スズキは長い歴史を活かしながら革新的な取り組みにも意欲的です。運営する「S-MALL」からも、スズキらしい、スズキならではの商品やイベントが続々と登場するに違いありません。


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