2024年、YouTubeの視聴者数は25億人に達しました。日本でも、2023年に行われた総務省の調査によると、全年代の87.8%がYouTubeを利用しており、YouTubeが幅広い層にアプローチできる強力なプラットフォームであることは間違いありません。YouTubeを利用するユーザーと視聴時間が増加するに従い、ビジネスにとっての機会も拡大しています。
この記事では、YouTubeチャンネルのはじめ方と、チャンネルを成功させるのに効果的な戦略を紹介します。
ブランドのYouTubeチャンネルをはじめるメリット
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- 新規顧客の獲得:動画投稿サイトのYouTubeは、世界で2番目に大きな検索エンジンであり、さまざまなコンテンツを求める人々にリーチできる優れたプラットフォームです。
- ブランド認知度の向上:動画マーケティングを活用することで、ブランド認知度が54%向上したというデータがあります。
- 顧客の流入経路の開拓:YouTube動画は時間が経っても継続的に視聴されます。チャンネルで一度動画を公開すれば、長期にわたって潜在顧客を呼び込むための窓口になる可能性があります。
- 顧客との関係構築:ブランドとつながりを持ちたいと考える消費者と、より深い関係を築くことができます。
YouTubeチャンネルのはじめ方
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1. チャンネル名を決める
ブランドやチャンネルの目的を表す名前をつけます。迷ったら、ブランド名やビジネス名をそのまま使うのもいいでしょう。たとえば、ShopifyのYouTubeチャンネル「Learn with Shopify」は、ブランド名とチャンネルの目的を含んだ名前です。
チャンネルの作成方法
- ブランドのGoogleアカウントにログインします。
- YouTubeに移動して、右上のプロフィール写真をクリックします。
- [設定] > [チャンネルを作成] ボタンをクリックします。
- チャンネル名とハンドルを入力し、[作成] をクリックします。
チャンネルの作成にあたっては、ビジネス運営に関連付けられた、ブランド用のGoogleアカウントを使用することをおすすめします。ブランド用のアカウントであれば、後から管理者を追加することが可能です。
2. ブランドに合わせて、ビジュアルを整える
自社のブランドガイドラインにあわせて、プロフィール画像とバナー画像を変更します。
ビジュアルを整えることでプロフェッショナルな印象を与えることができ、信頼感も増します。一貫性のあるビジュアルを使用することで、認知度の向上にもつながります。
プロフィール画像・バナー画像の設定方法
- 右上のプロフィール写真 > [チャンネルを表示] をクリックします。
- [チャンネルをカスタマイズ] をクリックします。
- バナー画像とプロフィール写真をそれぞれアップロードします。
プロフィール画像の選び方
プロフィール画像は、チャンネルアイコンとも呼ばれています。デフォルトでは、Googleアカウントのプロフィール写真にリンクされていますが、いつでも変更することができます。
プロフィール画像には、800×800ピクセルの、JPG、BMP、PNG、または非アニメーションのGIF形式の画像を用意しましょう。モバイルデバイスでは、非常に小さく表示されるため、小さいサイズでも認識しやすく、目を引くデザインにすることが重要です。文字の少ないロゴなどの画像がおすすめです。
バナー画像の選び方
バナー画像(チャンネルアート)は、プロフィール画像だけでは伝えきれないブランドの個性を視覚的に表現できます。セールや季節、イベントなどにあわせて、定期的にバナー画像を更新するのも効果的です。
2560x1440ピクセルの画像が推奨されていますが、視聴者のデバイスによって画像がトリミングされてしまうため、タイトルやロゴ、キャッチコピーなどの重要な情報は、中央のエリア(1235×338ピクセル)におさめましょう。ファイルサイズは、6メガバイト未満に抑えてください。
3. チャンネルの概要欄を充実させる
概要欄の設定方法
- 右上のプロフィール写真 > [チャンネルを表示] をクリックします。
- [チャンネルをカスタマイズ] をクリックします。
- [プロフィール]タブの、[説明] の項目に説明文を追加します。
- [リンク] の項目に、ECサイトのリンクを追加します。
説明
[説明] 欄では、ブランドや商品、ビジネスのミッションについて簡潔に伝えましょう。説明文には、ユーザーが検索しそうなキーワードを含めてください。適切なキーワードを含めることで、見つけてもらいやすくなります。
リンク
説明文の下に、最大14個のリンクを追加できます。他のSNSアカウントやストアのウェブサイト、ブログなど、他のプラットフォームのリンクを追加しましょう。
1つ目に追加したリンクは、チャンネル登録ボタンの上に目立つように表示されるため、1つ目には、ECサイトのURLを追加することをおすすめします。その他のリンクは、視聴者が [他のリンクを表示]とクリックしてから初めて表示されます。
電話番号の認証
電話番号の認証を行うと、15分を超える動画の作成や、サムネイルの変更、ライブ配信など、YouTubeの中級者向けの機能にアクセスできるようになります。次の手順で電話番号を認証できます。
- プロフィールアイコンのドロップダウンメニューから [YouTube Studio] にアクセスします。
- スタジオページのサイドバーにある [設定] を選択し、[チャンネル] タブへ移動します。
- [機能の利用資格] > [中級者向け機能] > [電話番号の確認] の順にクリックします。
- 電話番号を入力し、指示に従って認証を完了します。
コンテンツ作成の計画を立てる
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1. ジャンルを決める
YouTubeのどのジャンルで知られたいかを考えて、どのような動画を投稿していくかを考えましょう。たとえば、美容ブランドの場合、メイクアップのチュートリアルや美容Q&Aなどのコンテンツが考えられます。
同じジャンルの中でもさらにニッチなテーマを狙うと効果的です。たとえば、美容の中でも環境に優しいプロダクトに特化するなど、より専門的なトピックに絞っていくことができます。ニッチであればあるほど、具体的な検索キーワードが特定しやすくなり、情報を求める人にピンポイントで届けられるようになります。
2. ターゲットを特定する
ターゲットとは、コンテンツに共感し、商品を購入してくれる可能性が高い層を指します。誰に向けて話すかを明確にすることで、コンテンツのアイデアを考えたり、動画を作成したり、ブランドを宣伝したりする作業が容易になります。
次のような観点から、ターゲットを特定していきましょう。
- デモグラフィック情報:年齢、住んでいる場所、性別、収入、学歴など、どういった属性のユーザーを対象とするか。
- サイコグラフィック情報:性格、興味関心、ライフスタイル、悩み、目標や夢、価値観など、何を考え、どんな行動をするユーザーを対象とするか。
3. ユニークな価値提案(UVP)を行う
UVPとは、そのチャンネルにしかないユニークな価値を提案・提供することです。「競合と比べて何が特別なのか」「視聴者は何が得られるのか」、そして「視聴者はなぜこのチャンネルを見るべきなのか」を明確にすることで、他のチャンネルとの差別化を図ることができます。
UVPの例:
- 忙しくて時間がとれない人に、毎日10分でできる手軽なエクササイズを紹介する
- 初心者でもかんたんに始められるDIYのアイデアを共有する
4. 競合分析をする
同じジャンルのチャンネルを分析しましょう。あなたのブランドならではのニッチなテーマを見つけるヒントにもなります。競合分析をするには、まず、自社の業界に関連するキーワードでYouTubeを検索し、次の条件に当てはまるチャンネルを探してみましょう。
- 同じターゲット層を対象にしている
- 似たテーマのコンテンツを提供している
- 同じジャンルで似た価値を提案している
競合のチャンネルを知ることで、あなたのブランドをどのように差別化できるかが見えてくるはずです。
5. 動画のアイデアをリスト化する
まずは広くアイデアを出して、後から絞り込んでいきます。次のような方法を駆使して、どんなテーマをとり上げるべきか、多くのアイデアを出していきましょう。
- カスタマーサポートのよくある質問をチェックする
- 競合チャンネルを見る
- 同じジャンルの最新ニュースを追いかける
- 既存の顧客からフィードバックをもらう
- トレンドの話題を調べる
テーマと同時に、どんな動画にするかを考えることも重要です。動画のアイデアとして、次のようなものがあります。
- チュートリアル/ハウツー:商品の使い方や、ジャンルに関連したことを教える動画
- ブランドストーリー:美しい映像や舞台裏の様子を使ってブランドの魅力を伝える
- エンターテイメント:視聴者を楽しませるドラマやトークショーなど
たとえば、生活・インテリア雑貨を販売する北欧、暮らしの道具店は、YouTube戦略で大成功を収めており、2025年1月の段階で、61.9万人の登録者を獲得しています。
ストアで扱う雑貨や洋服を紹介するだけでなく、さまざまな人の1日のスタートを追う『しあわせな朝食ダイアリー』や、夜の食事を追う『夜な夜なキッチン』など、人のくらしに焦点を合わせた魅力的なコンテンツを多数展開しています。
6. キーワード検索を行う
YouTubeは検索エンジンとして機能しており、YouTubeアルゴリズムはキーワードを活用して視聴者が求めている動画かどうかを判断しています。そのため、検索されているキーワードを特定し、SEO対策を行うことが重要です。
まずは、Googleキーワードプランナー、Ahrefs、Semrush、Mozといった、SEOツールで、自分のジャンルで人気のキーワードをリストアップしましょう。
ーワードを特定したら、特定したキーワードを動画のタイトルや説明文、タグ、さらには動画内のセリフに取り入れることで、検索結果の上位に表示されやすくなり、ブランドの認知度向上にもつながります。また、キーワードを知ることで、ターゲット層のニーズに応える動画を作りやすくなるというメリットもあります。
動画を撮影し、編集する
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YouTubeに投稿する動画制作をするのに、プロの動画制作者になる必要はありません。今は、スマートフォンでも十分な画質の映像を撮影できます。動画編集ソフトを使用できれば、質の高い動画に仕上げることが可能です。
1. 適切な機材を選ぶ
YouTubeチャンネルは、特別な機材がなくてもスマホと時間さえあれば始められます。スマホでできることに物足りなさを感じた場合は、次のような撮影機材の導入を検討してみましょう。
- デジタル一眼レフカメラ
- 外付けマイク
- 照明機材
- 動画編集ソフト
- 動画ファイルの保存場所(クラウド、HD、SSDなど)
- 三脚
- ジンバル
2. 撮影する
撮影は事前準備が肝要です。次のポイントを準備して、撮影に挑みましょう。
- 動画全体の構成(台本や絵コンテに起こしておくとスムーズ)
- 動画のメインテーマ・メッセージ
- 動画に使用したいインサート映像
- 出演者
- 撮影場所(例:音声を収録したい場合、雑音はないか。屋内の場合、十分な明るさがあるか。屋外の場合は、撮影日の天気や、日の出、日の入りの時間など)
- 撮影スケジュール
- 撮影した映像や音声データの整理方法
3. 編集する
動画編集ソフトやアプリを使用して編集を行います。編集のポイントには次が挙げられます。
- 不要な部分をカットしてテンポを整える
- 動画の冒頭やエンディングにブランドロゴやタイトルを追加する
- BGMや効果音を足す
- 字幕やテロップを足す
- カラーや明るさを調整する
編集作業が終わったら、動画をYouTubeでサポートされている形式(MP4、MOVなど)で書き出します。
4. 投稿する
編集が完了したら、次の手順で動画を投稿します。
- YouTubeのプロフィールアイコンの横にある [作成]をクリックします。
- [動画をアップロード] をクリックし、編集済みの動画ファイルを選択します。
- タイトル、サムネイル、説明文などを入力し、カテゴリを選択します。
- 動画のアップロードが完了したら、[完了] をクリックします。
YouTubeチャンネルを成長させるためのステップ
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1. チャンネル登録者を1,000人獲得する
登録者1,000人を集めるのは、大きなハードルです。しかし、1,000人の登録者を獲得したということは、視聴する価値があり、視聴者のニーズに合ったコンテンツを提供しているチャンネルであるという証明にもなります。次の方法を試して、1,000人獲得を目指しましょう。
- 小さな目標に分ける(例:登録者を月100人獲得する)
- 動画内に「チャンネル登録ボタン」を設置する
- 概要欄に「チャンネル登録URL」を追加する
- メルマガの読者や他のSNSフォロワーにYouTubeのチャンネルへの登録を呼びかける
2. コミュニティを作る
YouTubeではコミュニティが強力なツールになります。応援してくれる人が増え、魅力的なコミュニティができれば、新しい視聴者を惹きつけることができます。次の方法を試して、コミュニティを盛り上げましょう。
- 同じジャンルで発信している既存のチャンネルと交流する
- 視聴者がどんなコンテンツが見たいかについて、アンケートをとる
- コンテストやプレゼント企画を実施して、話題を集める
3. 継続する
登録者を獲得するにも、コミュニティを盛り上げるにも、投稿を継続して、視聴者の関心を引き続けることが求められます。毎日動画を投稿する必要はありませんが、無理のないスケジュールを組み、継続的に投稿しましょう。
4. 他のプラットフォームで宣伝する
公式ウェブサイト、TikTok、X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、メルマガなどで、チャンネルを宣伝するのも効果的です。他SNSのプロフィールにYouTubeチャンネルのリンクを貼る、メルマガの末尾に登録リンクを追加するなどして、チャンネル登録を呼びかけましょう。
5. 他のチャンネルとコラボする
近い視聴者層を持つチャンネルを特定し、コラボをすることで、お互いのチャンネルの視聴者にリーチできます。
たとえば、アンティーク時計の専門店FIRE KIDSのYouTubeチャンネルでは、腕時計の魅力を発信し、10万人以上の登録者を持つインフルエンサーや、時計専門誌「クロノス」の編集長とのコラボ動画を発表し、それぞれ2万回以上の再生回数を達成しています。
6. ツールを活用する
さまざまなツールを活用しましょう。編集ツールを使用すれば、より品質の高い動画を効率的に作成できます。また、検索キーワードを特定してSEO対策を強化したり、投稿した動画のパフォーマンスを測定して次の動画に反映することで、より多くの視聴者を集められる可能性があります。たとえば、次のようなツールが便利です。
- 動画編集ソフト: iMovie(Macユーザー向け)、Windows Video Editor(Windowsユーザー向け)
- キーワードリサーチツール:Googleキーワードプランナー、Semrush、Ahrefs
- パフォーマンス分析ツール:TubeBuddy、Social Blade
他にも、公式の管理・分析ツールのYouTube Studioがあります。
7. YouTube向けのSEO対策を行う
ターゲットが使用するキーワードを特定し、概要欄や動画に含めることで、チャンネルが検索結果の上位に表示されるようになります。YouTube向けSEO対策のポイントには次が挙げられます。
- キーワードリサーチをする:視聴者が動画を探す際に使う検索キーワードを調べる
- タイトルと概要欄を最適化する:特定したキーワードを動画タイトルと説明文に含める。クリック率も検索順位に影響するため、興味を引きそうなタイトルをつける
- タグとカテゴリを活用する:動画に適したカテゴリを選択し、関連するタグをできるだけ多く追加する
YouTubeチャンネルを分析する
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YouTubeアナリティクスを理解する
YouTubeアナリティクスのページでは、チャンネルの成果を把握するためのデータを確認できます。視聴回数や登録者数など、指標の変化を分析し、効果的な戦略を見極めましょう。
視聴者のデータを読み解く
アナリティクスには膨大なデータがありますが、チャンネル開設直後はまず、視聴者に関する次の指標に注目することをおすすめします。
- トラフィックソース:視聴者がどういった経路でチャンネルにアクセスしたかを確認できます。視聴者が多く流入している経路を特定して強化しましょう。
- 視聴者のデモグラフィック情報:視聴者の属性の共通点を探し、どんなトピックに関心をもってくれそうかを逆算して、企画を立てましょう。
- チャンネルの視聴者が見ている他のチャンネル:ターゲット視聴者が他にどのクリエイターを視聴しているかを把握できます。競合との差別化に役立ちます。
動画の成果を評価する
次の指標を参考に、チャンネル内のコンテンツを分析し、人気が出た動画の要素を検討しましょう。データを活用することで、より多くの視聴者に指示されるコンテンツを作成できます。
- 人気のある動画:視聴回数の多い動画を特定し、それに関連したトピックやスタイルの動画を増やしましょう。
- 平均視聴時間:視聴時間が短い場合は、興味を引けていない可能性があります。逆に長い場合は、視聴者を惹きつけ続ける力がある証拠です。
- 視聴者維持率:動画の各時点で何パーセントの視聴者が視聴を続けているかを表しています。視聴者が離脱するポイントを特定し、その原因を探りましょう。
上級者向けのチャンネル活用術
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さらに、次のような活用方法も取り入れていきましょう。
- 広告機能でYouTubeを収益化する
- YouTubeショッピングを利用する
- グッズ販売をする
- 動画にウォーターマークを追加してブランド認知を高める
- 動画の透かしにチャンネル登録ボタンを設置する
- 情報カードで関連コンテンツをリンクする
まとめ
YouTubeチャンネルを活用することで、競争力を高め、ブランドの信頼感や認知度を高めることができます。ターゲット層を明確にした上で、どんな価値が提供できるか考え、コンテンツの作成に活かしましょう。
継続的に動画を投稿し、コミュニティを築き、チャンネルを成長させることができれば、ブランドの発展にとっても大きな武器になります。データを活用しながら改善を重ね、視聴者のニーズに応えるコンテンツを提供することで、長期的な成功につなげられます。YouTubeを活用して、ブランドの可能性を広げていきましょう。
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よくある質問
YouTubeチャンネルを始めるのにいくらかかる?
YouTubeチャンネルは無料で始められます。動画の撮影と投稿はスマホで行うことができ、編集もフリーソフトを利用すれば費用はかかりません。
YouTubeを始めるには何が必要?
チャンネル用のGoogle アカウントが必要です。
文:Taeko Adachi